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19,無気力な新卒社員

 これは、久晴の人事異動事件が一件落着したばかりからの話である。

 先日の騒動に幕が下ろされたばかりの頃、改めて人事異動が白紙撤回された久晴はまとめた荷物を机に戻しながら仕事を熟している。

 久晴の右隣の席には、就労ビザ更新の都合で影武者の真理香が席に着いている。

 本物の真理香はと言うと、不貞腐れた顔で自分のオフィスルームに籠もっている状態。

 さすがに、ロンドン支社での呼び方は事情を知らない人達に怪しまれると思った久晴の提案で、本社では本物の真理香の事を「お嬢様」と呼び影武者の真理香の事を「真理香さん」と呼ぶことになった。

 一応、本物の真理香も了承してはいるが「お嬢様」と呼ばれると不機嫌な顔を見せる。

「お嬢様、人前では基本的に明るいけどボッチだと寂しがり屋なところがあって」

 と琴音が話したことで、本物の真理香の行動から何となく性格が分かってきた久晴。

(そういうことか、参加したいイベントに俺を強引に連れて行く理由が……)

 と思う久晴は、オフィスルームにいる本物の真理香が今どうなっているか言わなくても想像が出来た。

 机に荷物を戻した久晴は、本来の仕事に戻り社内プレゼン用の資料制作に取り組む。

 隣で見る影武者の真理香は、テキパキと熟す久晴の仕事ぶりに新鮮な驚きを見せる。

 終業後、本物の真理香がいるオフィスルームに姿を現す久晴と仲間達。

 菜摘は、事情を偽って怪しまれないよう優菜と共に帰宅させている。

 本物の真理香は、久晴と仲間達の顔を見ると急に元気になり談話を始める。

 まるで、時間を取り戻そうとする勢いのある本物の真理香に圧倒される久晴は何を言えばいいのか困惑の表情を見せる。

 それでも、英美里や咲良などの女子社員同士で笑いながら会話を楽しんでいる。

 その光景は、元気で仲良しの女子高生が談笑しているように見える。

 久晴はというと、女性に対する苦手意識が完全に克服していないのか目の前の彼女達の輪に入り込む勇気が出せず遠い目で静観することしか出来ない状態。

 その様子を見た本物の真理香は、笑顔で手招きしながら自分の隣に来させる。

 手招きする本物の真理香を見た久晴は、

(……笑顔の中に恐怖が……。もし、拒否したら何されるか……)

 と思い仕方なく隣に近寄る。

 すると、久晴の左腕に抱きついた本物の真理香は、

「まだまだね。一人二人は大丈夫なのに、大勢になると苦手意識は発動するみたい。これも、修行の一つよ。修行の一つ」

 と言って会話に強制参加させる。

 その時、何を話せばいいのか分からず仕舞いの久晴。

 自分の話した内容が覚えていないくらい、頭が真っ白になっていた。

 唯一、影武者の真理香の就労ビザ更新が残り一週間だけ記憶に残るのみ。




 翌日、久晴は菜摘の行動が気になって仕方なかった。

 影武者の真理香を見た菜摘の反応が初対面の人に会うような素振りを見せていることに気がついた久晴は、

「菜摘さん、いつもの真理香さんだよ。いつもの」

 と言って菜摘を説得する。

 ところが、余計に不思議そうな顔を見せる菜摘は首を傾げてしまった。

「久晴さん、変に説得したら余計怪しまれます」

 と耳打ちで話し掛ける影武者の真理香に、どうやったら菜摘を納得させられるか悩んでしまう久晴は心の中で自問自答を繰り返す。

(どうすれば、一体どうすれば……)

 そんな中、本物の真理香が宣伝一課に姿を現す。

 余計に不味いと感じた久晴は、最悪な事態が脳裏を駆け巡る。

(……最悪だ……。絶対に、正体が菜摘さんに知られてしまう……!)

 ところが、菜摘は左右に首を振って二人の真理香を見比べる。

「ホントだ……。髪の色が違うだけで、顔立ちや姿形が瓜二つのそっくりさんだ……」

 と思わず喋った菜摘に、どのような反応をすればいいのか困惑する久晴。

 まさか、二人の真理香を見て瓜二つと菜摘が言うなんて想定外。

「菜摘、前にも言ったじゃない。私、お嬢様と似ているから髪を黒く染め戻したって」

 と影武者の真理香が言って、クスッと笑い平然とした態度を見せる。

 一体、何が起きているのか久晴でさえ考えることが出来ない。

 そんな中、本物の真理香が久晴にウインクをして笑顔を見せたとき、

(そうか、俺の知らないところで企てていたとは……)

 と胸の内で言って、二人の真理香が一枚上手だと思う久晴であった。


 菜摘の疑いが解け仕事に戻れる久晴は、社内プレゼンに向けて資料の作成を再開。

 と思ったら、鳴り響く一本の電話で仕事の妨害を強いられることになる。

 電話を取ったのは、久晴の右隣にいる影武者の真理香である。

「もしもし、こちら宣伝一課です。失礼ですが、どちら様でしょうか?」

 と言って、電話を取った影武者の真理香は手本となるような電話応対を見せる。

 久晴にとって電話は、阿久井との長電話地獄がトラウマとなって出来れば避けたい。

 しかし、久晴の切なる願いは叶わなかった。

「久晴さん、中日本支社の小柴支社長から電話が入っています」

 影武者の真理香の一言で項垂れる久晴は、仕方なく電話に変わることにした。

「多田野君、せっかく電話を掛けているというのに警戒することは無いだろう。もっと、元気で明るく対応をして貰いたいものだ」

 と言って、電話から小柴の声が久晴の鼓膜が破れそうな音量が漏れ出す。

「こっ、小柴支社長、今度はどのようなご用件で……?」

 と久晴は言って、早めに終わらせようと恐る恐る用件を聞き出そうとする。

 ところが、小柴は用件を言わないどころか必要以上に絡んでくる。

「なんだ、その塩対応は冷たいなー。折角、栄転と思った転勤が白紙になって残念だよ」

「あっ、あの……、すみませんが、今度は何を企んでいるのか……」

 と言う久晴は、戦々恐々の面持ちで手が震えている。

「多田野君、何も企んではいないから心配するな。少し、世間話をしたいだけだ」

 と言って絡んでくる小柴は、落語家のように冗談を交えて話し掛けてくる。

 一件、誰もが笑える冗談でも久晴からしては長電話自体がトラウマの対象。

 それでも、戦々恐々な久晴に仕事とは無関係のようなことを聞き出そうとする小柴。

 久晴は、パワフルな小柴の長電話に防戦的に誤魔化して対応する。

 電話が長期化するにつれて、久晴の心に疲れが蓄積して次第に喋らなくなる。

「いやいや、長電話で申し訳なかった。ここから、本題の話に移ろう」

 と言って小柴が話題を変えると、少し安堵した表情を見せ用件を聞く久晴。

 その用件は、久晴にとって安堵から困惑へと変わる内容だった。

「実を言うと、来月から新入社員の中にこちらに配属される大卒の新人が入ってくる」

 と小柴が言い出すと、大卒を聞いただけで何をすればいいのか想像が出来ない久晴。

(大学の新卒社員? はて、小柴支社長は何を考えているのやら……?)

 と思い、大卒のイメージを想像する久晴。

(大卒と言えば、専門卒の俺に比べて頭の回転が良く何でも出来るイメージが……。中には、瀬浪のようなプライドが高いヤツもいるかも……)

 新卒とは故、人それぞれ個人差があり当たり外れがあるのは世の連れ。

 出来れば、二度と関わりたくないような新卒が来ないことを心に中で願う久晴は様々なプレッシャーを今感じている。

(もし、新卒が女の子だったら……。考えただけで頭痛が……)

 小柴の次の一言で、違う意味で驚いてしまう久晴。

「開作課長には、事前に説明して承諾済みだ。新人研修で、新卒にCADに製図に関して簡単な操作指導を頼む。本来なら、研修は一週間だが二週間に延長したから安心してくれ」

 なんと、新卒社員にCADの講師の依頼と聞いた久晴は、

「そっ、そういうのは、設計課にお願いすれば……」

 と言って、小柴の依頼を断ろうとする。

 断る久晴に、小柴は事情を話し説得してきた。

「最初は設計課に話しを持ち掛けたが、工学系ではない上に設計経験が無い新卒に教える暇が無いと断られて……。そこで、多田野君の噂を聞き開作課長に話を持ち掛けた訳だ」

 どうやら、設計課は新卒の若手よりも即戦力を求める傾向があり一年ほど前の人事の会議で最初は欲しがっていたことを噂で耳にしたことのある久晴。

 真理香のプレゼンで、現職場の宣伝一課に配属となった。

 まさか、CAD関係の指南役の白羽の矢を立てるなんて想定外の久晴。

「時間は少ないと思うが、指導をお願いしたい。多田野君」

 と言い残し、小柴は一方的に電話を切ってしまった。

 一体、誰が来るのか想像が出来ない久晴は頭を痛めるのであった。

 それから、昼休みが終わり久晴は自分の現上司である高光に真意を聞き出す。

「この通りだ、ここは小柴支社長の顔を立てるつもりで引き受けてくれ。大丈夫、普段の仕事に関して経験したことを新卒に教えるだけだから」

 と言って、簡単そうに話し掛ける課長の高光。

 だが、教える立場として問題点を指摘して気難しい表情を見せる久晴。

「課長、CADの操作を教えたとしても知識や経験は容易く教えることは難しいですよ。俺の場合、専門学校や仕事などで場数を熟しているから出来るのであって……」

 久晴の説明を聞いた高光は、自分の思い描いた想定とは違うことに、

「やっぱり、多田野君のようになるまでには経験を積む必要があるのか……。小柴支社長は、CADの操作方法だけ教えるだけだからと言われて承諾したが……」

 と言って、溜息を吐きながら困り果てる。

 二人のやり取りを横から聞いた宣伝一課の女子メンバーが、野次馬のように興味を示し近寄ってきた。

「CADの操作指導の依頼でしょう。教科書通り、教えてやればいいだけの話じゃん」

 と言う英美里は、ポジティブ思考で捕らえていた。

 追い打ちを掛けるように、咲良が久晴の肩を軽く叩いて説得してくる。

「咲良が主催したCAD教室が今ここで役に立つチャンス。いつも通り、教室でやってることをやればいいだけの話。簡単、簡単」

 英美里と咲良のポジティブ思考の説得に、困惑した表情を見せる久晴。

 一体、誰が来るのか不安が募るばかり。

 そこへ、本物の真理香が訪問してきた。

「こっちの調査では、受講者は文系の大学卒の男性。これまでの経験なら、要点をまとめた操作方法を教えてあげれば問題ないわよ。大丈夫、多田野さんの仕事ぶりなら」

 と言って、久晴を激励する本物の真理香は穏やかな笑顔を見せる。

 それに対して、久晴は気難しい表情を崩すことは無く渋々引き受けることに。

(教える相手は文系の大卒……。せめて、理数系であったら少しは楽だけど……)

 と思う久晴の肩に、言葉では表せない謎のプレッシャーを感じるのであった。

 一週間後、就労ビザ更新が完了してロンドンに飛び立つ日がやって来た。

 影武者の真理香の要望で、見送りは久晴と本物の真理香の二人のみ。

 もちろん、二人の真理香の正体を知られないための処置である。

 久晴は、飛び立つ飛行機を見上げてロンドンに飛び立つ影武者の真理香に感謝する。

 先日の騒動の解決に一役買ってくれたことに感謝しながら、影武者の真理香が搭乗する飛行機が飛び立ち視線から消えるまで見送った。

 その後、来週から待ち受ける講師の件で肩を落として社員寮に帰宅する久晴を誰もが目撃したことは言うまでもなかった……。


 週が明け、出社する久晴の足取りは重く沈んだ表情を見せる。

 そう、依頼された新卒社員のCAD操作講習の講師を務めるからだ。

 それに対して、真理香達は普段通り平然とした表情で出社する。

(一体、真理香さん達は何を考えているのだろう……。こっちは、先日からテキストを作成に追われていたというのに……)

 と思って不満そうな目で真理香達を睨む久晴は、何も言わず重い足取りで本社のオフィスビルに向かうのであった。

(ちなみに、今いる真理香は影武者では無く本物なので金髪である)

 始業して一時間後、課長の高光がスーツ姿の若い新卒の男性を連れてやってくる。

「今日から、社員研修の一環としてCAD講習を受けることになった新楽にいら航太こうた君だ。研修期間が短いが、みんな仲良くしてくれ」

 と言って新卒を紹介する高光は笑顔を見せる。

 紹介された新卒は、深々と頭を下げて自己紹介する。

「初めまして、新楽航太と申します。短いですけど、宜しくお願いします」

 すると、久晴や真理香達は一斉に「お願いします」と言いながら揃って挨拶する。

 当然、主任である琴音から自己紹介が始まる。

 中には、咲良のような個性的な自己紹介をする者がいる。

 最後に、久晴が淡々とした自己紹介をすると、

「今回、CAD講習の講師を務めてくれる。期間は短いが、僕から宜しくお願いする」

 と言って、笑顔で会釈をする高光。

 平常心は保っているが、果たして自分に講師が務まるのか内心不安が募る久晴。

 今現在は、社員研修の休憩時間で十分後に大会議室へ戻ることになる新卒は女子達から質問攻めを受けることになる。

「大学は文学部を専攻していまして、アメリカに二年間留学をしていました」

 と新楽が質問に答えると、留学のキーワードだけでキャーキャー騒ぎ出す女子メンバー。

 久晴は、その様子を静観すること以外は何も出来ず新卒に関する情報を聞き出すどころかCAD講習の場所と日時を伝えるチャンスを逃してしまう。

 研修期間中のデスクは、里中が座っていた席に座ることになる新楽。

 研修期間中、新楽には予備用のノートパソコンを貸し出すことになる。

 休憩時間が終わろうとした頃、新楽は研修に戻るべく急ぎ足で大会議室へと戻る。

 久晴は、去って行く新楽の姿を追いながら本日行うCAD操作講習の指導内容を再確認するのであった。

 それから、午後四時半を過ぎた頃だろうか。

 久晴は、ミーティングルームで講習のためのテキストやプロジェクターなどを準備する。

 そこへ、本日の研修を終えた新楽が姿を現す。

「多田野さん、開作課長から聞いて来ましたけど……」

 と言って新楽は、ミーティングルームで何をするのか不安そうな表情を見せる。

 すると、久晴は自作のテキストを新卒の新楽に手渡すと、

「改めて、CADの操作講習の講師を担当することになった多田野です。短い期間だけど、今日から約二週間に渡ってCADの基本的な操作に関して教えます」

 と改めて自己紹介をする久晴は、少し緊張しているのか肩が強張っている。

 新楽も、緊張した面持ちで久晴の指定した席に座る。

 新楽の席の前には、貸し出し用のノートパソコンが起動して使える状態。

 プロジェクターに映し出されているのは、久晴が出張で使用しているノートパソコンの画面が映し出されている。

「自分の経験上、初級レベルの基本的な内容をテキストにまとめている。もし、分からないことがあったら何でも聞いてくれ」

 と言って、講師の立ち振る舞いをする久晴。

 そんな中、新楽は今時の若者のような信じられない質問を久晴にしてきた。

「多田野さん、パソコンの操作について教えて下さい」

「えっ……? 新楽君は、大学のレポートはどうやって作成したの……?」

 と久晴は思わず言って、目を疑うように新楽に質問してきた。

 すると、新楽は手持ちのカバンからタブレット端末とスマホを取り出して返答する。

「大学の時は、レポートを提出するのにタブレット端末やスマホで作成しました。教科書や書籍などは、全てタブレットからオンラインで購入して閲覧しています」

 なんと、今時の若者らしくスマホやタブレット端末で作成したと聞いて驚く久晴。

 当然、一番気になるパソコンに関する質問を久晴は不安になって新楽に問い掛ける。

「では、パソコンの授業とかは……?」

 久晴の質問に、新楽は驚愕する返答をする。

「もちろん、小学校から必修で受けました。でも、スマホやタブレットのほうが便利で学ぶ必要ないと無視していました」

「え……? ちょ、チョット待ってくれ。もしかして、タイピングも無視?」

 と言って、耳を疑って新楽に質問する久晴の表情は間抜けにも見えてくる。

「はい、タイピングよりもフリック入力の方が便利だったので」

 と新楽の返答に、面倒なことに巻き込まれたと思い頭を抱える久晴。

 だが、本題に移らないと話にならないと思い様子を伺いながら指導をする久晴。

 当然、タイピングやマウス操作が素人同然の新楽がCADを覚えてくれるはずも無く久晴の話を聞くだけで全く扱う様子が見受けられない。

 新楽のやる気の無い受講姿に、先行き不安で何をどうすれば覚えてくれるのか悩んでしまう久晴であった。


 それから、翌日も同じ時間帯で新楽にCADの操作方法を教える。

 だが、期間は短いというのにCADの操作を覚える様子が見受けられない新楽。

 その事を真理香達に話すと、何となく教える立場の苦労を理解してくれる。

「ハア……、せめて……。せめて、タイピングをしっかり勉強していたら……」

 と言って久晴は、肩を落として溜息を吐いて疲れた様子を見せる。

 疲れている久晴を見た真理香達は、思わぬ苦労を強いられていることを理解する。

 しかし、パソコンの操作に興味を示さない人に短期間でCADの操作を教えるのは無理難題に近く久晴同様に困惑した表情を見せる真理香達。

 果たして、新卒の新楽がCADを覚えてくれるのか先行きが不安の久晴。

 それでも、刻々とタイムリミットが迫っていることには変わりなかった。




 翌日の昼休み、会社から支給される社内情報誌に目を通す久晴。

 周囲には真理香達が囲んでいるというのに、気にする様子を見せず社内情報誌に釘付けの久晴は手掛かりを求めていた。

(何か、何か新楽が興味を示す何かがあれば……)

 と思う久晴は、新入社員の紹介に新楽に関する記事を必死に探す。

 真理香達は、熱心に社内情報誌を読む久晴を奇妙な目で見るだけで言葉が出ない。

 あの、場の雰囲気を壊して積極的に話し掛けてくる咲良でさえ沈黙してしまう。

 そんな沈黙の中、久晴は新卒の新楽に関する記事を見つける。

(えっと、「新楽航太、将来の夢は海外で活躍したい」っか……。もしかして、自分の希望している部署に配属できないことに……)

 と黙読する久晴は、新楽のやる気の無い受講姿の原因の手掛かりを掴んだ気がする。

 その中に、好きな食べ物はラーメンと記載していたことに目が入る久晴。

 そんな中、沈黙を破ったのは以外にも真理香が久晴の背後から近寄って社内情報誌を見て思わず重い口を開いてしまう。

「なるほど、新卒君がやる気を出さない理由は何となく分かったけど……。いくら、希望部署に配属されないからって不貞腐れているなんてワガママとしか言いようがないわ」

 真理香の一言が切っ掛けで、英美里や咲良が我先に久晴が読んでいる社内情報誌を奪って新楽に関する自己紹介記事を読んで話題に花を咲かせる。

「あっ、あの……。それ、俺のだけど……」

 と言って久晴は、暴走する真理香達の行動に狼狽えるだけで止められなかった。

 とりあえず新楽に関する情報は手に入れたが、どのように接すればいいのか依然とし頭の中がモヤモヤしている久晴であった。


 それから、午後三時を迎え休憩中の久晴は真理香に相談を持ち掛ける。

「真理香さん、新楽さんに関して相談したいことが……」

「珍しい、まさか年上の久晴さんが私に相談するなんてどういう風の吹き回し? もしかして、新卒君と世代が同じだから?」

 と言って真理香は、久晴の心情を見透かすように問い掛ける。

 すると、言わなくても気まずい表情を見せ図星だと分かってしまう久晴。

 久晴の気まずい表情を見た真理香は、気にすること無く相談に乗ることにした。

「新卒の彼、どうやったらスイッチが入ってくれるのか? もし、前日と同じ無気力な受講態度が変わらなければ後先ダメな社会人生活を強いられると思って……」

 と言う久晴は、自分の過去を重ね合わせ真理香に相談する。

 真理香は、心配そうな久晴の表情を見て同情していた。

 その上で、真理香は確認するように久晴に質問してきた。

「久晴さん、何で新卒君に熱心なの? もしかして、小柴支社長のため? それとも、同情する何かがあったの?」

 すると、久晴は暗い表情を崩すこと無く胸の内を打ち明ける。

「確かに、小柴支社長に頼まれたことも理由の一つがある。けど、彼は若いから追い掛けている夢の手助けしたい思いがあるから」

 久晴の胸の内を聞いて、意外な驚きを感じた真理香は手助けしたい理由を聞き出す。

「なんで、手助けしたいわけ?」

 すると、久晴は自分の経験談を語って真理香に理由を打ち明ける。

「俺の場合、CGクリエイターの夢があって両親や兄弟に相談したけど猛反対で結局は社会人。しかし、以前勤めていた会社がブラック化により夢から遠ざかって……。だから、彼には俺みたいな残念な生き方をして欲しくないから」

 一応、久晴の言いたいことは伝わったが、まさか熱意があるなんて想像すらしなかった驚きと同時に感心する真理香。

「なるほど、だから新卒君のやる気スイッチを探そうと社内情報誌を熱心に……。「夢は海外で活躍したい」がキーワードのようだけど、具体的に新卒君が何で海外を目指しているのか分かればいいけど……。以外に難しいわね、人に教える立場って」

 と言って、顔を曇らせ久晴の心情を理解する真理香。

 顔を曇らせる真理香を見た久晴は、改めて他人に教える事への難しさを痛感する。

 そんな中、真理香は仲間同士で集まる普段の女子会を思い出す。

「私達の場合、共通の話題を持ち合ったり仕事上の愚痴を言い合ったりしてストレスを発散しているわ。やっぱり、何処かで直接聞いた方が分かり易いかも」

 真理香の話を聞いた久晴は、男同士で話し合いするときを脳内でシミュレーションする。

(やっぱり、男同士は食事処か居酒屋に行って面と面を向かって話し合うのが定番……。やっぱり、その手で直接聞いた方が手っ取り早いか……)

 久晴は、社内情報誌で新楽に関する記事を見たとき趣味に関して何も記載していないことを思い出し別なアプローチが必要だと自己分析したとき何かを思い出す。

「新楽君、確かラーメンが好きだったことを記事に……。今晩、何処かに誘ってサシで話し合ってみるか……」

 と小言で呟くと、休憩時間が終わると察したのか職場に戻る久晴。

 当然、真理香に相談に乗ってくれたお礼を言って急ぎ足で職場に向かう。

 真理香は、久晴の背中を見ながら小言で呟いたことを聞き逃さなかった。

「なるほど、男同士の身の上相談。これは、見逃さないわけには行かないわね」

 と言って、何かを企む笑みを浮かべ職場に戻る真理香。

 この後、昨日と同じく久晴はCADの講師を務めるが、相変わらず新楽は消極的で無気力な受講姿を見せ覚える様子は見受けられない。

 そんな中、久晴は意外な事を言い出した。

「この後、時間は空いているかな?」

 なんと、久晴は新楽の予定を聞き出してきたのだ。

 久晴の問い掛けに、思わず頷いて予定が空いていることを主張する。

「だったら、駅前のラーメン屋に寄っていかない? 大丈夫、お代は俺が出すよ」

 と言って久晴は、相手の様子を伺いながら新楽を誘ってみる。

 すると、後輩の立場である新楽は様子を伺いながら頷いて久晴の誘いに乗る。

 沈黙した新楽の頷きに了承したと判断した久晴は、

「終業後、ロビーで待っている。明日の講習もここで行いますので遅れないように」

 と言い残し、本日の講習を修了して機材を片付けるのであった。


 終業後、久晴は新楽を誘って駅前のラーメン屋へ足を運ぶ。

「今日は、俺が奢るから遠慮しなくていいぞ」

 と言って久晴は、新楽にラーメンを奢ることを約束する。

 奢ると言われたら誰もが喜ぶ筈が、新楽だけは申し訳なさそうな気まずい表情で久晴の後について行く。

 久晴は、年明けから常連で通っている珍しいラーメン屋を新楽に紹介する。

 久晴と共に入店した新楽は、今まで通ってきたラーメン屋の常識を覆す驚きを感じる。

「なっ、何ですか? まるで、西部劇みたいなラーメン屋は?」

 と言って新楽は、ラーメン屋にしては異質な店内を見渡し驚いていた。

 新楽の言うとおり、店内は西部劇を連想させるような店構えとそれに似合う小物がレイアウトされたまとまった雰囲気。

 白い壁には、西部劇の映画を流し雰囲気を盛り上げている。

「ここの店長、西部劇が大好きで映画を流してテンションを上げている。最初来たとき驚いたけど、雰囲気が面白くて暇があれば通い気づけば常連になった」

 と言って久晴は説明すると、ラーメン屋の内装だけで雰囲気の概念を覆された新楽は意外な驚きと同時に斬新さに興味を示しどのようなラーメンが出るのかワクワクする。

「もしかして、この店って二郎系ですか?」

 と言って、久晴に質問してくる新楽は目を輝かせている。

「残念、二郎系ではない。でも、この店の店長は高級フレンチ店で腕を振るった元シェフだと聞いているから味は保証する」

 と言って答える久晴は、ガッカリしていないか少し不安になる。

 しかし、今流行の二郎系ではないにも拘わらずワクワクする新楽を見て不安は無用だと察し内心安堵する久晴。

 二人は、テーブル席に腰を下ろすと女性店員が水とメニューを差し出し厨房へ戻る。

 入店前に決めた久晴は、メニューを見て何を頼むか迷っている新楽に質問してきた。

「ところで、新楽さんは何を頼むか決めた?」

 すると、新楽は何を注文するのか悩むだけで迷っている。

 損な新楽を見た久晴は、意外な事を言いだしてきた。

「じゃあ、今の君は何も入っていない器だけの状態かもしれないな」

「あの、多田野さん? 何を言いたいのでしょうか?」

 と言って、久晴が何を伝えたいのか理解できず首を傾げる新楽。

 久晴は、新楽の疑問に答えるように話し掛ける。

「今の君は、学校で色々と勉強しても社会に出ればゼロからスタート。一つでも武器が多ければ、大きなアドバンデージを手に入れることになる」

 久晴の一言で、新楽は今の自分が何処にいるのか言わなくても理解が出来たが反論したいことがある訴える。

「多田野さん、僕だって海外留学で英会話をマスターしました。それに、英検だって一級を取ってますよ。それだけでも、大きなアドバンデージではないですか?」

 新楽の反論に対して、久晴は説得するように話し掛ける。

「確かに、英検や英会話は大きなアドバンデージの一つ。でも、会社が求めているのは即戦力になるプラスアルファー。海外で活躍したいなら、国内で実績を積んでからだな」

 その一言で、久晴の伝えたいことが何か理解をして英会話以外に特技が無いことを痛感し反論が出来なくなる新楽。

「ラーメンだって、主役の麺とスープと様々なトッピングを乗せて一つになる。逆に、麺とスープだけの味気ないラーメンを見て食べたいと思う?」

 久晴の言葉に説得力を感じた新楽は頷き、次に何を言うのか聞き逃さないよう沈黙して耳を傾ける。

「今の君は、新たな武器を手に入れるチャンスを与えられた。まさに、人気店の店主から極意を学ぶ弟子が今の君。俺が、その人気店の店主かどうかは分からないけど。だから、最悪でもパソコンの操作は慣れてくれ。CADは、定期的なオンラインを考えている」

 と言う久晴の訴えに、一定の理解をした新楽は頷いて約束をする。

 そんな中、新楽は支社長に依頼されたのに何も知らない自分に教えてくるのか疑問に思い質問してみる。

「多田野さん、何で僕にCADやパソコンの事を教えるのですか? もしかして、配属先の上司からの依頼ですか?」

 新楽の質問に、自分のこれまでの経験談や出来事を振り返って主張する。

「確かに、支社長からの依頼も一つ。それ以上に、俺より若い新楽さんには後先になって後悔しない社会人生活を送って欲しいから教えているつもりだ」

「後先、後悔しない社会人生活? それって、一体どういうこと?」

 と言って、首を傾げて疑問に思って久晴に質問する新楽。

 すると、久晴は悪友の一人である瀬浪の事を思い出し話す。

「悪友の一人で、大学を出ていきなり海外に渡ってビジネスマンとして働いた男がいた。しかし、業績不振と違いすぎるギャップに苦しめられ結局は即帰国のドロップアウト」

 その話を聞いて、英会話以外に何も無いことに気づき不貞腐れた自分が今になって恥ずかしく思ってきた新楽。

 さらに、久晴の経験談を続け弱音を吐くように話を続ける。

「俺の場合、CGクリエイターの夢を叶えるために社会人に……。しかし、入社した会社がブラック化した挙げ句に入社したかったプロダクションが財政難で解散……。幸い、転籍した会社が運良く自分のキャリアを生かしてくれる部署だけど……」

 弱音を吐く久晴を見た新楽は、心配そうな表情で固唾を呑んで伺う。

 すると、久晴は自分の本音を若者である新楽に打ち明ける。

「出来れば、CGクリエイターの夢を叶えたいけど……。後、五年もすれば四十代アラフォーを迎える俺では無理かな……」

 久晴の本音を聞いた新楽は、誰だって夢を見て悩みを抱えているのだと知って励ますように言い返す。

「多田野さん、四十代でも五十代でもチャンスはありますよ。僕の父や母、還暦越えなのに陶芸家の夢を叶えて二科展の作品や普段使いの陶器制作に没頭中。昔は物静かだったのに、共通の趣味で今は良きライバル関係で活き活きしていますよ」

 新楽の言葉に久晴は、まさか自分が励まされるとは思いもよらず水を飲んで、

「とっちが、励まされているのか分かんないな……。これって……」

 と言って苦笑いして、店員を呼んで決めていた注文を伝える。

「俺、チャーシュー麺の醤油で」

 すると、新楽は同じ物を注文してきたので驚く久晴。

「こういうのって、お得意さんの同じ物を頼んだら間違いないでしょう。多田野さん」

 と言って新楽は、暗い顔から一変して明るさを取り戻す。

 それを見た久晴は、自分の思っていた心配は無用と察し、

「全く、調子いいというか……。それとも、抜け目ないというか……」

 と言って心配の糸が切れたように疲れた表情を見せる。

 そこへ、真理香と英美里に加え咲良が久晴の知らない間にテーブル席に座ってきた。

「へーっ、こんな面白い店が駅前に。水臭いなー、タダノッチ」

 と言って英美里は、何かを企む笑みを浮かべている。

「タダノッチ、隠し事した罰として咲良達にも奢って」

 と言って咲良は、笑顔で女性店員に注文の追加を要求する。

 まさか、真理香達三人が知らないように尾行していたなんて想定すらしていなかった久晴はオロオロした表情を見せ額から謎の汗が流れる。

 真理香は、オロオロしている久晴の肩をポンッと肩を叩いて、

「男同士の相談もいいけど、こういうことは仲間同士で話し合うことも大事。ここは、久晴さんの奢りで新人君の相談会始めましょう」

 と言って、笑顔を見せ女性店員に注文を追加する。

 男同士の身の上相談のつもりが、いつの間にか真理香達が加わっての夕食会へと変更となり、真理香達三人のアドバイスを聞いた新楽の表情は悩みが解消されたのか何処となく垢抜けていた。

 当然、代償は大きく真理香達三人にもラーメンを奢らせた久晴は財布の中身がガス欠寸前でトホホと肩を落とす。

(これって、安い買い物……? それとも、高い代償……?)

 と思い悩む久晴は、店を後にすると重い足取りで社員寮へ帰宅するのであった。


 この日と境に、新楽は久晴の講習を真面目に受け上達の兆しを見せる。

 新楽の上達振りに久晴は目を細め安堵したのか、これまでの遅れを挽回するように出来るだけ分かり易く指導をする。

 週が明けると、今度は宣伝一課での実践を交えた講習を受けることになる新楽。

 そこで、久晴のテキパキと業務を熟す姿を見て呆然と狼狽える新楽。

「新楽さん、今すぐ俺のようなれとは言わない。今は、ここで経験を積んで自分の物にして欲しい。そして、自分の夢の足掛かりにすればいい」

 と言う久晴が伝えたいことを理解した新楽は、自ら動きだしメンバーに何をすればいいのか聞き出し手伝い自分の体験をノートに記録する。

 新楽の学ぶ姿勢を見た久晴は、海外で活躍できる日が来ることを願いながら業務に戻るのであった。




 こうして、二週間に及ぶ宣伝一課での講習を終えた新楽は赴任先の中日本支社へと異動。

 当然、新楽の座っていたデスクは再び空席となり物寂しく感じる。

 一週間後、久晴のメールボックスに新楽からのメールが送られている。

 中日本支社では、新人講習の続きを受けているがいち早く戦力になるよう日々精進中。

「多田野さん、いや師匠と呼ばせてください。絶対、この部署の戦力になって夢である海外進出の足掛かりにして見せます」

 とメールで締め括る新楽に、心の底で「がんばれ」とエールを送る久晴。

 そんな新楽のために、久晴は上司の高光に自ら提案してオンラインでのCAD講習を定期的に開催する。

 講習が定期的に開催することを聞きつけた同僚が受講するようになり、いつの間にか講師役である久晴のことを「教授」と呼ぶようになったのは後の話。

 結果的に、会社全体の戦力アップに貢献し久晴の評価が上がることになる。

 そんな中、人事部の高畑部長が宣伝一課に訪問してきた。

「多田野君は? 多田野君は今いるかね?」

 と言う高畑部長の声は、先日の荒々しい怒りに満ちた怒鳴り声とは打って変わって何処か余所余所しく申し訳なさそうに聞こえる。

 高畑部長の声を聞いた瞬間、警戒してデスクから動かず赤の他人の振りをする久晴。

 その久晴を見た真理香は、笑顔で強引に振り向かせていることをアピール。

 仕方なく、高畑部長のところへ歩み寄る久晴の姿は警戒する猫のようである。

「多田野君、そんなに怖がらなくていいぞ。今回は、お詫び行脚で来たから」

 と言う高畑部長の穏やかな顔を見て、少なくても警戒する必要がないと少し安堵する久晴だが警戒を緩めることはない。

「今回、馬鹿な甥達の悪巧みを見抜けず騒動を引き起こす要因を生んでしまった。すまなかった、全ては本当か否か調査をしなかった私の責任だ」

 と言って深々と誤る高畑部長に、慌てふためく久晴は首を横に振って必死に説得する。

「こっ、今回っ、元凶は里中と瀬波と望月の三人。だっ、だから、部長が誤る必要は!」

 だが、高畑部長は謝罪だけとは考えてはおらず、

「これは、お詫びの印と思って受け取ってくれ。京都嵐山観光、二泊三日の旅行券だ」

 と言って旅行券を久晴に差し出した。

 旅行券を見た久晴は、必死に首を横に振り両手でブロックして受け取ろうとしない。

 それを見た真理香は、全力拒否する久晴のワイシャツの袖を掴んで笑顔を見せ、

「高畑部長の好意、受け取ってあげたら。これまで、仕事やトラブルばかりでストレス貯まっているじゃない? せっかくだから、気分転換したら?」

 と言って受け取るよう促した。

 久晴は、真理香の笑顔で完全に心が揺れてしまい、

「……あっ、ありがたく受け取ります……」

 と言って、申し訳なさそうに旅行券を受け取った。

 すると、高畑部長は目を細めご機嫌で宣伝一課を後にする。

 その一方、旅行券を受け取った久晴は「これ、どうしよう」と言わんばかりの困った表情を見せ立ち尽くす。

 真理香は、困った表情の久晴を見て穏やかな笑顔を見せて話し掛ける。

「ゴールデンウィーク、部屋に籠もってばっかりは勿体ないわよ」

 真理香の笑顔と説得で京都に行くことを頷いて決める久晴は、様々な人達に振り回された疲れを抜く一人旅と思い京都に着いたら何処へ行こうか楽しみに想像を膨らませる。

 そんな中、真理香は何かを企んでいる不敵な笑みを浮かべている。

 まさか、一人旅と思っていたら真理香が同行するなんて思いもしなかった久晴が今知る由もなかった。

 この日、淡いピンクの花が満開だった桜の木は完全に散って、青々とした葉が生い茂り春の終わりを告げようとしていた頃であった。


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