表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

17,思い出したくない同窓生《アイツ》

 仕事始め前日の夜、久晴は明日に備え社員寮で早めに就寝していた。

 だが、眠りに就いているというのに苦悶の表情を見せている。

 眠りに就く久晴、何故か小中学の三人の同級生を否応なく思い出してしまう。

 一人は、クラスにいるリーダー格で小学の頃に大人気プロレスラーが大好きで久晴にプロレス技を仕掛けて面白半分に痛めつけただけでなく、中学では久晴の一つ上の姪に手を出して自分の彼女と宣言してた男。

 その結果、親友と呼べるクラスメイトは殆どいなく隣町の工業高校へ逃げるように進路を選んだ原因の一因となった。

 もう一人は、小中学の頃はクラスのマドンナ的な存在だが久晴に対して冷遇し訴えても見向きもせずクラスの女子達にも冷遇させた女性。

 これが原因で、女性に対して近寄れなくなるトラウマの元凶を植え付けられた。

 そして、恵まれた環境の上に頭脳明晰だが他人を貶し見下す傾向があり、久晴に「犯罪者」や「変質者」と仇名をつけ精神的な嫌がらせを仕掛けただけでなく、身に覚えのない罪を擦り付けた男。

 これが原因で、久晴は前髪でキツイ目付きを隠す切っ掛けとなった。

 繰り返される悪夢、忘れようとしても鮮明に蘇る記憶、三人の意地悪な笑い声。

そして、逃れようとしても追い掛けてくる三人の悪友。

「来るな、お前達来るな……」

 と言って久晴は、手で払い除け悪夢にうなされる。

 そして、久晴は突然ベッドから飛び起きて悪夢から解放される。

「ゆっ、夢……? なんで、彼奴らが……?」

 と言って、タオルで寝汗を拭く久晴の顔は青ざめていた。

 いつもは、思い出すことのない過去の記憶が悪夢として蘇り動揺を隠せない久晴。

 自問自答を繰り返すが、答えが出ず恐怖を感じる久晴。

 この悪夢が、悪友三人との再会を果たすなんて想定すらしていない久晴。

 同じ頃、遼太郎は自室で真理香を呼んでいた。

 真理香は、寝間着姿で寝ぼけ眼を擦っている。

 その真理香に、遼太郎は険しい表情で三枚の履歴書を机の上に出して重い口を開く。

「実は、真理香に頼みたいことがある。人事部が中途採用した人材について、気になったところがあり身辺調査をして貰いたい」

 その一言で、寝ぼけ眼が一瞬にして冷めてしまう真理香は履歴書に目を通す。

 すると、気になる部分が見つかり、

「この履歴書、どこかおかしいところが……。それに、履歴書にウソの記載もありそうですね。分かりました、私の仲間達に調査を依頼しましょう」

 と言って、目付きが険しくなる真理香。

 新たに動き出す脅威、風紀を乱す存在、幸せや平穏を奪おうとする者達。

 波乱に満ち溢れた仕事始めは、静かに幕を開けようとしている。




 仕事始め、早朝の広い会議室では社員を集めて全体朝礼が開かれた。

 会長の遼太郎が中央の壇上に力強く上がり、集まった社員達に熱の籠もった演説。

 その全体朝礼の中、寝不足なのか思わず欠伸をしてしまう久晴。

 久晴の欠伸を見た真理香は、腕に軽く肘鉄をして小言で注意をしてくる。

「会長の演説、欠伸するのは失礼ですわよ」

 すると、久晴は寝ぼけ眼を擦って小言で真理香に謝る。

「ゴメン……。言い訳になるけど、嫌な小中学の夢にうなされてしまって……」

 それでも、自分で言い訳を認める久晴に容赦なく説教をする。

「いくら寝不足でも、全体朝礼で欠伸はやる気がないと思われてしまいますわ。他の人は、会長の演説を聞き逃さないようにみんなシャキッとしているというのに」

 それを見かねた琴音は、必要以上に説教する真理香を制止する。

「今、会長の演説中。真理香さん、久晴さんも反省しているからその辺で止めてあげて」

 琴音の忠告で、冷静を取り戻した真理香は遼太郎の演説に耳を傾ける。

 久晴も眠気に負けぬよう、壇上に立つ遼太郎の演説に耳を傾ける。

 こうして、会長である遼太郎の演説が終わったのは三十分ほどだろう。

 今度は、人事部の部長が壇上に上がって話し始める。

「皆様、おはようございます。人事部の高畑です。今日は、中途採用をした新人を紹介したいと思います。まだ本採用ではございませんが、温かい目で見守ってください」

 と言って、三人の新入社員を呼び出す。

 その顔を見た瞬間、久晴の必死に耐えてる眠気が何処かへ消え、

(あっ、彼奴ら……、中学卒業してから顔すら一度も……。なんで、一体どうやってこの会社に……?)

 と心の中で疑い、背筋が凍り付きそうな恐怖に襲われたような顔色が真っ青になる。

 人事部長の高畑は、三人に変わって紹介を始める。

 右手の一人目は、体付きがしっかりして如何にも体育会系の明るい男性。

「右手から一人目は、里中さとなか征敏ゆきとし君。彼は、中学からラグビーをやっていて高校では国体に出場した経験があるそうだ」

 中央の二人目は、黒髪のショートヘアで大人びいた雰囲気があり少女漫画のような目が大きい女性。

「中央の女性は、望月もちづき佳緒里かおりさん。前の職業は、コンサルティング会社の事務員をやっていたとのこと」

 最後の三人目は、背が高く女性が好みそうな細マッチョでインテリな雰囲気がある若く見える男性。

「最後の彼が、瀬浪せなみ義昭よしあき君。彼は、大学卒で海外で営業の仕事をしていた経験がある」

 と言って高畑の紹介が終わると、三人は無言で集まった社員に会釈する。

 三人を見た瞬間、自分達の課に誰一人配属されないことを必死に願う久晴。

 だが、その願いは脆くも崩れ去る。

「使用期間の配属先は、里中君は宣伝企画部の宣伝一課、望月さんは人事部直属の受付、瀬浪君は営業推進部に配属になります。尚、使用期間中は研修を並行いたしますので皆様には面倒を見てください」

 と言って高畑が頭を下げると、久晴の頭の中に過去の記憶が否応なく蘇り肩を落とす。

(また、里中に散々いじめられるのか……)

 その様子を見た真理香は、三人のことに関して何か知っていると察し久晴の肩を軽く叩いて励ました。


 全体朝礼が終わり肩を落とす久晴は職場に戻ろうとすると、真理香が腕を組んで強引にミーティングルームに連行する。

 琴音以外の女子社員も、真理香に同行する形でミーティングルームに入ってくる。

 ミーティングルームに集合すると、真理香が久晴に尋問してきた。

「あの三人、何か知っているような顔をしていたけど? 教えて、私達に」

 真理香の鋭い質問に、ビクッと肩が震える久晴。

 恐らく、言っただけで今まで封印してきた過去の記憶が蘇ると思ったに違いない。

 真理香の尋問に追い打ちを掛けるように、咲良が情報を久晴に話してくる。

「確か、あの三人とは同じ小中学だったよね。嫌かもしれないけど、喋った方が楽になるから咲良達に話して。だって、同じチームだもん」

 その一言で、久晴は今まで封印してきた過去の記憶を真理香達に隠すことなく話す。

「里中征敏、彼はガキ大将を絵に描いた男。小学の当時はプロレスブームで、人気絶頂のレスラーになりきって俺や弱そうなクラスメイトを捕まえてはプロレス技を仕掛けて楽しんでいた。先生や親に訴えたけど、子供と遊びとしか思っておらず全然相手にされなくて……」

 と話す久晴の顔は辛そうで、思い出すだけでも手の震えが止まらない状態。

 本来なら休憩を挟みたいが、話を続ける久晴の表情は硬く恐怖で青ざめている。

「説明通り、中学からラグビーを中心にスポーツに没頭。恐らく、女子に好かれたい下心が切っ掛けに違いない。とにかく、彼とは関わらないよう避けてい。だが、里中が強引にナンパして一つ上の姪を自分の彼女と自慢されたときショックで……」

「それで、高校を隣町に選んだ訳ね……」

 と言って真理香は、その後を言い当てるように久晴に尋ねる。

 すると、ゆっくりと頷いて自分の思いを話す久晴。

「もし、高校が同じだったら全て里中に奪われそうで……」

 久晴の悲惨な過去を聞いた真理香達は、数分くらい言葉を失い時間が止まるような錯覚を感じる。

 その思い雰囲気を壊したのは、宣伝一課の切り込み隊長の英美里が何かを思い出すように話し出す。

「アイツのこと、何処かで耳に入ったことが……。そうだ、あたしの仲間で筋肉バカのことを知っている奴らがいたな。あたし、今度コンタクトを取って聞いてみるよ。真理香」

「そうね、なるべく重要な情報をお願い。英美里」

 と言って、英美里に指示を出す真理香の表情は険しかった。

 当然、残り二人のことについて話し出す久晴。

「望月佳緒里、クラスに一人いるマドンナ的な存在の女性。美人で明るいけど、俺のような立場の弱い男子には塩対応で……。さらに、クラスの女子にも圧力を命じて……」

「それって、陰湿なイジメじゃ……。あの女が原因で、年頃の女子に近づくことが?」

 と言って真理香は、不安そうな表情で久晴に質問してきた。

「それだけではない。彼女、立場の強い人には媚びを売る腹黒さが……。例えば、瀬浪の彼女を自称したり教師達に愛嬌を振り撒いたりして立場を高めようと……」

 と言って久晴は、悔しさを滲ませるように拳を握る。

 その一言で、久晴の辛さや受けてきた仕打ちが言わなくても理解できる。

「瀬浪義昭、クラスの中では成績優秀で裕福な家庭と親戚に恵まれている。だが、鼻に掛ける嫌なタイプ。他人を見下し、俺に「犯罪者」や「変質者」など嫌な仇名をつけた張本人。それが嫌で、前髪で目付きを隠した。髪を切られた理由は、みんなも知っての通り……」

 と言って、目に涙を溜め必死に堪える久晴。

 その様子に、どんなに悔しかったのか、どんなに惨めな思いを受けたのか、誰一人として質問しなくても十分伝わる。

 そんなしんみりする中、瀬浪の事に関して重要な情報を話し出す久晴。

「そう言えば、瀬浪の親戚の中に会社の役員をしている人がいるとか聞いた事が……。恐らく、人事部の高畑部長が瀬浪の親戚だと思うけど確たる証拠が……」

「要は、中途採用の三人は瀬浪の親戚のコネって……。なるほど、残る二人の身辺調査をする必要があるわね。咲良、残る二人の身辺調査お願いできる?」

 と言って、普段は明るい笑顔を見せる真理香は深刻な表情を見せる。

 そんな重たい空気の中、真理香の要望に応じる咲良は場の空気を一変するような事を言い出してやる笑顔でウインクをしてやる気に満ち溢れる。

「だったら、三人が会社に来られないようなディープな情報を集めるって」

 その一言で、安心した笑顔を見せる咲良を見て安堵した真理香。

 そのとき、琴音が顔を出しミーティングルームのメンバーに話し掛ける。

「みんな、ミーティングルームで何やっているの? 中途採用の新人が来ているというのに、菜摘さんだけ留守番させて!」

 その一言で、宣伝一課のメンバーが慌てるようにミーティングルームから出てくる。

 そんな中、真理香は身の危険を感じたのか仲間達に指示を出す。

「とにかく、里中という男は調査が終わるまで必要以上に接するのは避けましょう」

 すると、英美里が自信満々に約束する。

「もし、あの筋肉バカが近寄ってくるのなら追っ払ってやるよ。あたし」

「出来れば、問題を起こさないレベルでお願い! 英美里」

 と言って、少し不安そうな表情を見せる真理香。

 久晴も同様に、何か問題に巻き込まれないことを心から願うこと以外出来ることは何もなかった。


 こうして、中途社員の里中との初対面することなった宣伝一課のメンバー全員。

(久晴に関しては、二度と会いたくない同窓生と約二十年ぶりの再会……)

 宣伝一課のメンバーは、課長の高光の前で横並びになる。

「皆さん、使用期間中ですけど多田野さん以降の男子社員ですよ」

 と言って高光は困った表情を見せ、琴音は少し呆れた表情をする。

 それでも、久晴以外の女子メンバーは至って冷静。

 高光は何時ものことだと気持ちを切り替え、里中に自己紹介をさせる。

 すると、張り切って里中は笑いを狙ったのか独特な自己紹介する。

「俺、里中征敏! 俺のこと、ユートンと呼んでくれ!」

 誰でも笑いそうな自己紹介だが、女子メンバーは冷ややかな目で里中を見て一切笑わない。

 まさかの総スカンに、久晴はオロオロすることしか出来ない。

(俺の自己紹介とは違い、何で冷たく遇うことが……?)

 と思う久晴は、女子達のチームワークに驚かされるばかり。

 そんな中、里中は久晴を見つけて握手を求めるように笑顔で近づいてくる。

「誰かと思えば、多田野じゃないか。まさか、イメチェンしてるとは思わなかった」

 すると、久晴は過去の記憶がフラッシュバックで蘇り怯えて後退りをしてしまう。

 真理香は、二人の中を割って入るように入ってきて里中に注意する。

「里中さん、クラスメイトでも親しくないのに握手を求めるのは逆に失礼では」

 すると、里中は少しムッとした表情で真理香の顔を見る。

 おそらく、里中は真理香の事を生意気な女性だと思ったに違いない。

 その様子を見た琴音は、何か訳ありと悟りメンバーの自己紹介に移る。

「では、多田野さんは知り合いのようだから他のメンバーを紹介しましょう」

 里中は、気を取り直すように笑顔で女子メンバーに握手を求める。

 ところが、菜摘以外の女子メンバーは塩対応で握手に応じない。

 特に警戒する真理香は冷たい目で里中を見ると、

「まだ親しくない人に、握手を求めるのは失礼と言いましたよね? それに、ここは日本なのに欧米みたいな握手は逆に嫌がりますよ。特に、異性を相手にするときは」

 と言って論じながら握手を拒否する。

 ゴム手袋を装着した咲良は、謎の潔癖症をアピールして握手に応じる。

 ゴム手袋の手を見たら、握手を拒否していると察し無言で次に移る里中。

 英美里の場合は、元不良らしくケンカを売るような目付きで里中を威圧。

 里中は、英美里のことを知っているのか身の危険を察して次の優菜に握手を求める。

 当然、男性恐怖症の優菜は久晴と同様に怯えて条件反射で後退り。

 怯える優菜を見た里中は、動物園の新人飼育員みたいに必要以上に歩み寄る。

 琴音は、今にも泣き出しそうな優菜を見て不味いと思い里中の肩を掴んで停止する。

「怒らないで、里中さん。彼女、男性恐怖症だから」

 と言って琴音が説明すると、強要するのは無理だと察し諦める里中。

 唯一、握手に応じたのは菜摘だけで嫌がる様子を見せなかった。

 だが、菜摘が席に着くと自分のデスクに置いているウエットティッシュで手を拭く。

「私、仕事を始めるとき必ず自分の手を消毒するのが日課で」

 と言って無邪気な笑顔の菜摘を見て、ショックで何を言えばいいのか言葉を失う里中。

 思わぬ形で洗礼を受けたが、それ以上に仕事中の久晴との温度差にショックを受ける里中は呆然とすることしか出来ない。

 なんと、女子に囲まれた状態だというのに普段のように仕事を熟す久晴に驚く里中。

「久晴さん、このラフ図面の製図をお願い」

 と言って注文する真理香に、提出されたラフ図面を要望通りに得意のCADで製図を三十分程度で完成させる久晴。

「久晴さん、今度の社内プレゼン資料に間違いない?」

 と言って添削依頼する菜摘の資料に目を通すと、文面の間違いや専門的な説明の追加を指摘して修正を指示する久晴。

「優菜さん、資料室から前々回のプレゼンで使用した資料を持ってこれる? もし、重そうだったら手伝うよ」

 と言って久晴が指示を出すと、何かを思い出したように資料室に向かう優菜。

 まるで、部署のブレインのように機能している久晴の仕事姿にショックを受ける。

 さらに、追い打ちを掛けるように英美里や咲良が久晴のことを「タダノッチ」と呼んで仕事上の依頼や相談してくる姿に何を言えばいいのか分からなくなる里中。

 あの女子に奥手だった久晴が、美女に囲まれた状況で仕事を熟しているなんて想像すら出来なかった里中。

 そこで、久晴に冗談を仕掛けるように気安く話し掛け挑発する里中。

「多田野って、ここの部署では「タダノッチ」って呼ばれいるの?」

 普段なら、多田野が先に手を出すして徹底的に反撃して力を見せつけると脳内でシミュレーションする里中。

 ところが、隣の席にいた英美里が久晴に変わって立ち上がり里中を威圧する。

「アンタ、ここ会社だというのに何子供染みているの? もしかして、このあたしにケンカ売ってるわけ?」

 まさか、英美里に睨まれるなんて想定外の里中は大人しくすることしか出来ない。

 こうして、波乱に満ちた仕事始めは久晴との温度差で身をもって知った里中。

 その後は久晴との接触することなく、孤独という屈辱を味わう里中であった。


 こうして、仕事始めの一日目が終わり真理香達に助けられた久晴。

「よく堪えたわね、久晴さん。エライエライっ!」

 と言って真理香は、自慢の我が子を褒める母親のように久晴の頭を撫でる。

 頭を撫でられた久晴は、少し恥ずかしそうに顔を赤くしながらも分析して、

「やはり、里中は中学を卒業してから性格は変わっていないと思う……。一体何を考えているか分からないけど、油断は出来ないと思うから注意しないと……」

 と言って、身の危険を感じながらも疲れた顔を見せる。

 久晴の言ったことは、真理香達も同様に感じて気を引き締める。

 咲良は、自分の後輩達にスマホで悪友三人組の追跡を行うよう指示を出す。

 英美里も同様に、自分のスマホのアドレスから知り合いに電話してアポを取る。

 その姿を見て、改めて彼女達の存在が心強く思う久晴であった。

 その裏で、里中の欲望を満ちた野望が動き始めていることを知る由もなく……。




 一週間後、中途で入社した三人の嫌な噂が耳に入ってくる久晴。

 それでも、下手に耳を突っ込めば何らかの事件に巻き込まれるから、出来るだけ他人の振りをして出来るだけ避けるようにしている。

 かつて、スクールカースト最上位に君臨していた三人とは二度と関わりたくなかったからだ。

 当然、同じ部署の里中とは距離を置いて様子を見ている状態が今も続いている。

 真理香達も久晴の気持ちに同意したのか、それとも自分達の身の危険を察知したのかは定かではないが、里中とは最低限の受け答え以外は距離を取っている状態。

 陽キャの里中にとっては面白くないと思うが、これまでの仕打ちを考えれば誰だって離れるのは自業自得としか言い様がない。

 そんな、トイレを済ませた久晴は職場に戻る最中だった。

 談話室で電話をする里中を偶然に目撃してしまい、思わず誰にも気づかれないように遠回りで職場に戻る久晴。

 ところが、里中は久晴を見つけてしまい肩を掴んで、

「多田野、相談に乗って欲しいから顔貸せ。簡単な話、俺の身の上相談だから」

 と言って久晴を強引に談話室に連れ込む。

 里中に捕まってしまった久晴は、恐怖で急所のお腹を隠す猫のように身構える。

 里中は、警戒心MAXの久晴に何か企んでいる不敵な笑みを浮かべて話し掛ける。

「宣伝一課の女子達、美人揃いと思わねーか? 一体、誰が一番か教えろ?」

 その一言で、里中が何を考えているのか想像できた久晴は気まずい顔で忠告する。

「真理香さん達にナンパ、止めた方が身のためだぞ……。現に、俺の来る前の男子が何らかの問題で飛ばされたって……。同僚から、「長く所属しているお前が奇跡だ」って言われているのに……」

「おい、俺の言うことが聞けないというのか? 多田野っ!」

 と言って里中は、今にも殴りそうな勢いで久晴に脅してくる。

 それでも、里中に話そうとしない久晴は殴られることを覚悟していた。

「二人とも、談話室で何たむろっているの? 今、社内プレゼン資料の制作で人手が足りないから早く席に戻って!」

 と言って、談話室に突然姿を現したのは真理香である。

 隣には、英美里が怖い顔で泥棒猫を捕まえるように里中の首根っこを掴んで引き摺るように職場に連れ戻す。

「久晴さんも一緒に来る!」

 と言って怒る真理香は、久晴の腕を組んで職場に連れ戻す。

 連れ戻される久晴は、怒られているというのに何故か助かったような安堵の表情。

 真理香は、久晴の顔を見て頭にハテナマークをつけるような顔で職場に連れ戻すのであった……。


 昼休み、誰もいない談話室で里中はコンビニ弁当で一人昼食を取りながら宣伝一課の女子メンバー全員の写真を並べて品定め。

 同じ頃、久晴はというと真理香や宣伝一課の女子メンバー達と昼食会に参加中。

 そのとき、何故か久晴は悪寒を感じていた。

「どうしたの? 今日の久晴さん、何かおかしいわよ?」

 と言って、心配そうな表情で尋ねる真理香。

 すると、談話室での出来事を事細かく正直に真理香達に話す久晴。

「やっぱり、クソ筋肉バカの狙いはあたし達へのナンパね」

 と言って英美里は、険しい表情を見せ警戒する。

 そんな中、咲良は自分のスマホを使って里中一人いる談話室の様子を伺っている。

 談話室の里中は、三枚の写真を並べて渋い顔をしている。

「まず、この三人はナンパしない方が良さそうだ」

 と言って里中は、英美里と咲良と琴音の三人の社員を並べる。

「まず、西堂英美里はスタイル抜群だが名の知れた元不良で一番危険。なにせ、力自慢の男達を一人で殴り倒したって噂が……。もし、手を出したら何されるか……」

 と言って里中は、英美里の写真を見て恐怖に震え隣の写真を見る。

「花守咲良、一目見たとき女の魅力ゼロ。なにせ、胸が絶壁でJKみたいな黒ギャルに、生意気で何考えているか分からないUFO女だ。ハッキリ言って、問題外だからパス」

 と言って里中は、咲良に興味を示すことなく最後の琴音を写真に品定め。

「最後に、主任の難波琴音はスタイルも性格も文句なし。ただ、人妻だから手を出さない方が身のためだな。確か、人妻に手を出して会社辞めた先輩がいたっけ……」

 と言って過去を振り返り、三人をナンパのターゲットから外す里中。

 そんな中、菜摘と優菜と真理香の三人の写真を並べ不気味な笑みを浮かべる里中。

「まず、加納菜摘は田舎っぽいが小柄なのに豊満で隙がなさそうだ。植松優菜はお淑やかで俺好みだが名家の出身と聞いているけど、押し通せば確実に落とせるっ!」

 と言って菜摘と優菜の写真を見て、ヨダレを垂らして自信に満ち溢れる笑みの里中。

 もし、誰かに見られたら寄りつかなくなるのは間違いない。

「そして、朝川真理香はどれを取っても一級品。少々、生意気だけど問題ない。確か多田野の彼女と噂があるけど、アイツには勿体ないから俺が奪ってやるぜ。アッハハハッ!」

 と言って、誰もいない談話室で高笑いする里中。

 だが、スマホから一部終始見ていた女子メンバーは悪寒のような恐怖に震える。

 そんな中、咲良だけは不貞腐れた表情を見せ思わず喋り出す。

「ガッデム……! どうせ、生意気で胸が絶壁のUFO黒ギャルですよ……」

 どうやら、咲良が一番気にしているところを言われてカチンと来ていた。

 それを見た他の仲間達が、咲良を宥めようと必死に説得をする。

 さすがに、昔に比べたら今の咲良は理性があるため暴走することはない。

「真理香ちん、あの脳筋の歓迎会の幹事任せてくれるっ? 大丈夫、怒らせた女の恐ろしさを脳筋の体にタップリと教え込んでやるだけだから」

 と言って咲良は、恐怖に満ちた笑みで真理香に志願する。

 真理香は、咲良が何を考えているのか分からないが黙って頷いて了承する。

 久晴も、咲良が何を考えているのか想像すら出来ず恐怖に震えるしかなかった……。

 こうして、里中が宣伝一課に配属されて二週間を迎えようとした頃に歓迎会。

 ところが、咲良のミスでプレゼン資料を緊急で作成することになった宣伝一課。

 咲良からは菜摘に里中と一緒に歓迎会で予約を取った居酒屋に行かせていると聞いてはいるが、菜摘が里中に襲われないか久晴の不安が募る。

「大丈夫、「もし、遅いと思ったら二人で盛り上がって」って伝えているから」

 と言って、何故か笑みを浮かべる咲良。

 そのとき、久晴は不吉な予感がしながらも目の前にプレゼン資料の作成に徹した。

 三十分後、プレゼン資料の制作が一段落した宣伝一課のメンバーは予約した居酒屋へ姿を現す。

 そこで、一室の惨状を見た久晴は想像していた不吉な予感が的中する。

「たっ、たらのー。たっ、たふへれくれー!」

 と言って訴える里中は、相当の酒を飲まされ呂律が回らないほど酔い潰れる寸前。

 それに対して、菜摘は相当な酒を飲んでいるというのに上機嫌。

「里中さんの勧めてくれたお酒、とっても美味しいですよーっ! 先輩っ!」

 と言って、何本か開けた空き瓶の一本を久晴に渡して見せる上機嫌の菜摘。

 久晴は、菜摘から受け取った空き瓶のラベルを見て目を疑うような驚きを見せ、

「スっ、スピリタス……、ギネスブックに載っているアルコール度数が高い酒……。と言っても、百%アルコールと全く変わらないけど……。何て最悪な物を菜摘さんに……」

 と思わず喋って、別の意味で手遅れである事を悟る。

 里中は菜摘を泥酔させ何処かへ連れ出す作戦のようだが、もし事細かく書いたら青少年の育成に悪影響を与えるのであえて控える。

(注意:よい子は絶対に想像しないで下さい! 例え大人になっても、このような行為は確実に社会から追放されますので絶対にやらないで下さい!)

 まさか、菜摘が相当飲める口は計算外で里中自身が酔い潰れ策士策に溺れ誤爆する。

 よく見たら、ビールの空き瓶や見知らぬ酒の空き瓶が散乱していることに気がつく。

 前回の一件でトラウマになったのか、身の危険を感じて各々の理由を言って菜摘と里中を残して居酒屋を去る久晴と真理香と宣伝一課のメンバー達。

 その際、咲良は笑顔で菜摘と里中に言い伝えて居酒屋を後にする。

「二人とも、先にお代払っておくからタップリと楽しんでねー!」

 里中は助けを求めるが、久晴達に置き去りにされた上に酒で上機嫌の菜摘に捕まり飲み放題終了まで付き合う羽目に。

 その後、タクシーで社員寮に戻る頃には里中は泥酔して完全にノックアウト状態。

 それに対して、菜摘は相当の酒を飲んでいるというのに何事もなくウキウキ気分で自室に戻り誰もが目を丸くして驚いていた。

 当然、翌日は二日酔いで満足に仕事が出来ず顔が真っ青で今にも吐きそうな里中。

 それに対して、普段通りに業務を熟す菜摘を見て誰もが驚愕する。

「彼女、「居酒屋の大魔女」の異名を持つ超酒豪。東北の同じ部署の頃は、並み居る酒豪を酔い潰しただけでなく全ての酒が翌日休業に追い込むくらい一晩で飲み干して……」

 と話して青ざめる久晴を見た里中は、脳裏にトラウマ級の恐怖を植え付けられた。

(第一ターゲット加納菜摘、玉砕……。底知れぬ酒豪により超危険……)

 そのとき、久晴は咲良の仕業である事を薄々と気づいたが里中には絶対に喋らなかった。


 週明けの月曜、久晴はトイレを済ませて急ぎ足で職場に戻る最中。

(先日、里中に捕まって真理香さんに怒られたから早く戻らないと……)

 と思って焦りながらも、周囲を見渡し警戒する久晴。

 そのとき、談話室から何故か声が聞こえてくる。

「……やっ、やめてください! ここは会社ですよ!」

 と言って注意する声の主は、間違いなく普段はお淑やかな優菜が珍しく怒っている。

 一体、何が起きているのか気になった久晴は談話室近くの角に隠れて覗いてみる。

すると、偶然見えたのは里中が談話室に優菜を連れ込み口説き落とそうとしている。

 菜摘が無理と判断した里中は、ターゲットを優菜に切り替えナンパしているようだ。

(確か、優菜さん里中と一緒に使った資料を戻しに行っている最中だったっけ……)

 と思い出した久晴は、不味いと思って反射的に真理香に電話を掛け誰にも聞こえないように状況を簡潔に説明する。

「真理香さん、里中が談話室で優菜さんをナンパしている!」

「分かった、準備するから待って。その間、隠れてビデオチャットで私達に送信。勿論、証拠として録画しておいて」

 と言って真理香との電話が切れると、言われた通りに久晴はスマホのビデオチャットで談話室の様子を女子メンバーに配信と録画しながら固唾を呑んで見守る。

 久晴に覗かれていることに気づかない里中は、怯える優菜を積極的に口説いている。

「植松さん、今彼氏がいるの? もし、彼氏がいなかったら俺とお茶に行かない? 勿論、会社が終わってからだよ」

 まるで、ナンパのテンプレートのような口説き文句で優菜に迫っている里中。

 それに対して、猛獣に追い詰められ後退りするか弱い小動物のように、里中の魔の手から何とかして逃れようとする優菜。

「何で、変な質問に答える必要があるのですか? 大体、プライベートに関してはノーコメント! それに、私には家庭の都合で寄り道は出来ません!」

 と訴え断固拒否の優菜は、自分を抱き締め防御し怯え逃げようと後退り。

 それでも、優菜を追い詰める里中は獲物を追い詰める野獣そのもの。

「チョットくらい、息抜きと思って俺と一緒に遊んでもいいじゃない? みんな、俺を避けているじゃん。俺だって、みんなと仲良くなりたいというのに」

 と優しく話し掛けて迫る里中の背中に、異様なオーラを放ち何かが宿っている。

 優菜は異様なオーラを放つ里中から逃れようとするが、後ろが自販機で逃げ場を失いホラー映画のモンスターに追い詰められたヒロインみたいに恐怖で頭が混乱し言葉が出ない。

 その光景を目の当たりにした久晴は、自分が力では敵わないと知りながらも優菜を助けようと今撮影を止めて動き出したい気分。

 そんな久晴に、肩を掴んで制止する者がいた。

「撮影続けて、久晴さん。後は、私に任せてくれない?」

 なんと、声の主は真理香だった。

 声を聞いた久晴は、真理香の容姿を見て目を丸くして驚きを隠すことが出来ない。

 それでも、真理香の指示に従い撮影を続ける久晴は見守ることしか出来ない。

 談話室では、優菜を追い込んだ里中は勝ち誇った表情で手を伸ばしてくる。

 逃げ場を失った優菜は、恐怖で悲鳴を上げることが出来ずパニック状態。

 里中の手が優菜の肩に触れようとした瞬間、誰かが肩を掴んで強引に引き離された。

 その後、側頭部に強烈な衝撃を受け床に雪崩れ込むように倒れた里中は肩を掴まれた方角に思わず目を向ける。

 なんと、里中の目に映ったのは束ねた髪を下ろしてお嬢様に戻った真理香が仁王立ち。

 真理香は、里中の側頭部に強烈な平手打ちをお見舞いしたのだ。

 お嬢様に戻った真理香は、鋭い眼光で床に崩れる里中を睨み付けて、

「いくら仲良くしたいと言っても、嫌がっている女の子に強引なアプローチは強姦と全く変わりありません! 里中さん、社内でナンパとはいい度胸ですね!」

 と言い放ち怒りを露わにする。

 久晴は、咲良が以前に「怒った女の怖さ」と言ったことを思い出し体中の震えが止まらない恐怖に襲われる。

 それでも、里中は怖がることなく立ち上がり鬼の形相で、

「あっ、朝川ーっ! てめーっ、何様だーっ!」

 と怒鳴り散らし、低姿勢で猛牛のようなタックルを仕掛けてくる。

 これは不味いと思った久晴は、駆けつけて真理香を助けたい気分だった。

 ところが、真理香は冷静に里中の低姿勢なタックルをあっさりと避けポンッと軽いローキックを叩き込む。

 軽いローキックなのに、里中は姿勢を崩し談話室の椅子やテーブルを豪快に薙ぎ倒し埋もれるように再び倒れ込んでしまった。

 その光景を目の当たりにした久晴は、何が起きたのか分からず呆然と立っている。

 さすがラガーマンの里中の体は頑丈で、埋もれる椅子とテーブルの中から立ち上がる。

 同時に、力尽くでは真理香に勝てる見込みがないと悟った里中は、

「ちっ、ちくしょーっ! あっ、朝川ーっ、覚えてろよーっ!」

 と捨て台詞を吐いて、獲物を取り逃がし危険を感じた猛獣のように立ち去っていった。

 里中の背が消えるのを見届けた真理香は、角隅に隠れて撮影した久晴を呼び出す。

「久晴さん、撮影を止めていいわよ。ここに来て」

 すると、撮影を止めてキョロキョロと見渡し真理香達のいるところへ歩み寄る久晴。

 真理香の顔は、里中に見せた怖い顔から優しい顔に戻り安堵する久晴。

「優菜、久晴さんが私に教えてくれたの。助けたい気持ちを抑えて撮影係に徹して」

 と事情を話す真理香は、笑顔で優菜に謝った。

 すると、優菜は恐怖から解放されたのか久晴と真理香の二人に抱きつき両親に助けられた子供のように泣きじゃくる。

 久晴と真理香の二人は、泣きじゃくる優菜の頭を優しく撫でることしか出来なかった。

 その後、久晴はスマホで撮影した証拠映像を真理香や咲良に転送したのは言うまでもなかった。


 同じ頃、里中は電話で課長の高光に連絡して「体調が悪い」の名目で早退を希望する。

 事情を知らない高光は、困った表情で里中の早退を了解する。

 そんな中、里中はスマホの留守電で久晴に命令口調で頼んできた。

「おいっ、俺の仕事を代わりにやってくれ! お前、俺とは親友だろう」

 留守電を聞いた久晴は、散乱する里中のデスクを見てため息交じりで頭を抱える。

(里中のヤツ、課長に何頼まれているのやら……)

 一方、早退した里中はカフェに立ち寄って誰かに電話を掛けていた。

 早い話、里中は体調が悪いとウソを言ってサボっていたのだ。

「頼む、明日にカフェに来てくれ。勿論、望月も呼ぶよ瀬浪」

 どうやら、電話の相手は友人の瀬浪のようだ。

 その後、悔しさを噛み締めながらカフェを後にする里中であった……。

 同時に、咲良のスマホからDMで連絡が入り即答で返信する。

(了解。明日も尾行ヨロっ!)




 翌日も、体調不良を理由に会社を休む里中に頭を悩ます久晴。

 何故かというと、里中は課長から任せられた仕事を久晴に押し付けたからだ。

 しかも、里中は課長の高光から指示を受けた仕事に全然手を出していない。

 これには、宣伝一課の誰もが怒りを通り越して呆れて里中への不信感を募らせる。

(仕事、何故早く手を出さないのか理解が……)

 と思って、散乱する里中のデスクを整理しながら資料を探す久晴は溜息を吐く。

 そんな久晴を見かねた真理香は、メンバーと共に助け船を出す。

「一人より二人、二人より大勢。こんな、簡単な仕事はサッサと片付けましょう」

 と言って笑顔で協力する真理香を見て、改めて宣伝一課に来て感謝する久晴。

 その一方、里中は友人である瀬浪と望月を呼んでカフェに集まっている。

 里中は手で首を押さえて昨日のダメージを気にしていたが、外見を見ただけで傷一つなく体へのダメージは全くないようだ。

 それより、自分より細くか弱い女性である真理香に倒された精神的ショックが大きかった。

「次は、朝川真理香を狙っている。しかし、宣伝一課の女子達が邪魔してくる上に彼氏が多田野の噂があり狙いづらい。何とかして、生意気な朝川に仕返しを……!」

 と言って里中は、苦虫を噛み潰したような屈辱を味わっている。

 その里中を見た望月は、不貞腐れた表情で不満を口に出す。

「一応、夜の仕事を経験しているけど平社員の男は下品でガッツガツ。スケベな目であたしを見て、友達感覚で気楽に話し掛けてくるのよ。ホント、ヤになっちゃう」

 どうやら、望月は入社した会社の平社員の男を下僕のように見下している。

 そんな中、瀬浪は何か企んでいるような不敵な笑みを浮かべ二人に提案を持ち掛ける。

「それなら、高畑の叔父さんに話してみようか? 勿論、ウソの情報を流して追い出してやろうぜ。大体、多田野みたいな弱者は地方で細々と働けばいいんだよ」

 それを聞いた里中と望月は、昔のことを思い出し高笑いして盛大に盛り上がる。

 その様子をバイト中の咲良の後輩の一人が、物陰に隠れスマホで撮影している。

 これが、集まった三人の人生を大きく変えることを知る由もなく……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ