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11,新たな展開があるなんて

 事件解決後、会長である遼太郎の好意に甘え高級ホテルに一泊することになった久晴。

 日は沈み夜を迎えようとしている頃、会社用のスマホからDMの着信音が聞こえる。

 久晴は、スマホを取り出しDMを開くと顔色が突然青ざめる。

「業務命令、話があるからプライベートプールに来なさい。もし、来なかったら一生口を利きません! 真理香」

 真理香からのDMを見た久晴は、事件とは別の緊張感に襲われ自分の宿泊セットを自室に預け指定されたプライベートプールへ向かう。

(確か、プライベートプールって昼間の事件現場のところじゃ……)

 と思い出し、昼間の疲れもあるにも拘わらず再び走り出す。

 夜中に女の子一人待たせたら、見知らぬ男に襲われるのではと不安な気持ちが脳裏に浮かぶ。

 その際、宣伝一課の女子メンバー全員と菜摘を含む東北支社時代の同僚と鉢合わせ。

 久晴が、髪を赤く染めた英美里を見て去年の年末で自分の胸ぐらを掴んだ女性が彼女だと確信し怯え思わず身構える。

「年末のことはゴメン。MCバトルのとき、髪を赤く染めるのはあたしのお決まり」

 と言って笑顔で謝る英美里に、少し安堵し警戒を解く久晴。

 久晴は、露出度の高めな英美里の衣装に思わずドキッとしてしまう久晴。

「それより、早く言った方がいいんじゃない?」

 と言い残し、白い布を振り回して去って行く英美里。

 その時、最初は白い布のような物がタオルのように見えた久晴。

 その後から、琴音達がMCバトルの会場である特設会場へ向かう。

 その際、琴音から笑顔で謎めいたことを言い残す。

「早く行って。真理香さん、首を長くして待っているから。しかも、女の武器を最大限で」

 そのとき、琴音が手にしているグレーのパーカーを目にした久晴は何かを思い出す。

(あのパーカーって、朝川さんが着ていたヤツじゃ……)

 一体、真理香の身に何があったのか分からずじまいの久晴。

 だが、怒ったときの真理香が怖くて急いで向かう久晴であった……。




 こうして、真理香が待合で指定されたプライベートプールへやって来た久晴。

 息を整え、真理香が何処にいるか周囲を見渡す。

 南国をイメージした貸し切りのプライベートプールは、すっかり日が沈み昼間とは違った幻想的な光景が目の前に広がっている。

 まるで、まだ旅行に行ったこともないのに写真で見た海外へ来た気分になる。

 だが、夜の光景を楽しむ暇はなく真理香が何処にいるのか必死に探す久晴。

 しかし、日が沈んだプライベートプールは暗くて中々見つけ出すことが出来ない。

 もしかしたら、違うところではと不安な気持ちが募ってくる。

 それでも、諦めず血眼になって真理香を必死に探す久晴。

 心の中で、真理香が無事である事を心の奥底で祈りながら……。


 三十分後、長時間探して疲れと諦めが募り別のプライベートプールへ向かう久晴。

 そこへ、真理香の声が聞こえてくる。

「見つけるのが下手、多田野さんっ! 私っ、ここで待っていたのにっ!」

 久晴は、幻聴ではと疑いながらも声が聞こえる方へ振り向く。

 すると、真理香は壁のない藁葺き小屋のビーチソファーにリラックスするように足を伸ばして座っていた。

 どうやら、真理香は建物を上手く利用して身を隠していたのだ。

 久晴は、藁葺き小屋へ歩み寄ると昼間とは違って縁がピンクの純白なビキニ姿。

 しかも、意外と際どく女性に奥手な久晴には刺激が強く思わず手で目を覆い隠すくらい目のやり場に困ってしまう。

 だが、目を逸らしたら怒られると思い真理香の顔だけを見るようにした久晴。

 そんな中、恥ずかしいのか真理香は少し耳を赤く染めて、

「女の子の水着姿、一目見て褒めるのはマナーよ」

 と言って、久晴に文句を付ける。

 その時、久晴は英美里の白い布と英美里のパーカーを思い出し真理香のビキニ姿が二人の仕業だと確信した。

 それでも、真理香の水着姿を見てドキッとした驚きで顔が赤くなるが、

「にっ、似合っているよ。本当に、似合っている……」

 とテンプレな台詞で、純白なビキニ姿の真理香を見て褒める久晴。

 真理香は、感情を込めて欲しく怒りたかったが奥手な久晴のことを理解して、

「今の貴方にしては精一杯ね……。それより、もう少しマシな服用意できないの?」

 と言って、久晴の服装にいちゃもんを付ける。

 久晴はというと、真理香の一大事と知って服を選ぶ余裕もなければ日帰りを想定していたので大した準備が出来なかった。

 それに加え、長きに渡る社畜生活による貧乏性が染みつき衣服に費用を掛ける勇気を出せない。

「取りあえず、隣の席に座りなさい。多田野さん」

 と言って、隣のビーチソファーを指さす真理香。

 すると、久晴はいつでも自室に戻れるようベンチに座るような感覚でビーチソファーの真ん中に腰を下ろす。

 真理香は、久晴の座り方に不満を持ちながらも自分の事について質問してきた。

「私のこと、知って驚いたっ?」

 真理香の質問に、これまでの行動で隠しても無駄だと悟った久晴は正直に返答する。

「まさか、副社長の娘で会長の孫娘だなんて思いもしなかった。しかも、素性を隠すために母方の旧姓を名乗っていると知って……」

 久晴の返答に、何も隠していないことを察した真理香は少し安心する。

 そんな中、久晴は自分の思っている疑問を真理香にぶつける。

「朝川さんで、呼んでいいかな? 今度は、こっちの質問に正直に答えてくれる?」

 すると、真理香は身構えるように上体を起こし久晴の質問に応じる。

 久晴は、真剣な表情で真理香に質問する。

「なんで、母方の旧姓を名乗って会社に……? しかも、履歴を誤魔化してまで……?」

 真理香は、久晴の直球的な質問に予想をしていたが真顔で質問してきたことに驚く。

 だが、真理香は久晴なら答えても大丈夫と思い正直に返答する。

「一つの理由として、自分が何処まで出来るか試したかったの」

「『試したい』って、どういうこと?」

「私の育った環境って結構閉鎖的。何かをやるにしても、周りの人に助けられたり親がダメって言われたら必死に説得したりと何かと大変」

 その時、久晴は聞き逃さないよう質問に答える真理香の話に耳を傾ける。

「中学まで送り迎えの時、車の窓から楽しそうに会話する同世代の女の子達を見て凄く羨ましかった。同時に、なんで私だけ閉じ込められているのだろうと思うように……」

 と話す真理香の寂しそうな表情を見て、家族総出でダメ出しされた専門学校時代の自分と重ね合わせる久晴。

 誰かの干渉しながらの生活は、明るく振る舞う真理香にとって窮屈だったに違いない。

 しかも、後から話を聞いて分かったが三人兄妹の末っ子の女の子であれば、親が尚更心配して箱入りにするのは間違いないと言わなくても理解できた。

「御祖父様に相談したとき、私の親に『そんなに真理香を締め付けすぎたら、一般的な人の感覚を無くすから止めときなさい』って釘を刺してくれた」

 真理香の言う『御祖父様』は、会社の会長である事を言わなくても分かる久晴。

「兄達も、御祖父様に賛同して説得してくれたけど両親は中々聞き入れて貰えず……」

 真理香の話を聞いて、新たな疑問が生まれ質問する久晴。

「もしかして、イギリス留学は親からの拘束された生活から抜け出すためっ?」

 すると、真理香は何故か首を横に振って理由を話す。

「確かに、両親からの拘束から抜け出すためも理由の一つだけど他にあって……」

「もしかして、戸渡建也っていうしつこい男から振り切るためにっ?」

 話し出す真理香に対して、申し訳なさそうに割って入る久晴。

 すると、真理香は頷いて話を続ける。

「どうも、小学の頃から私を狙っていたらしく学年が違うから助かったけど……。身の危険を感じて、読者モデルを辞めて進学率の高い女子校に入学した上にイギリスに留学をしたのも、全ては戸渡建也が諦めてくれることを願って……」

 その話を聞いて、納得する久晴は真理香の苦労を察することが出来た。

「その御陰で、イギリス留学でバイトも出来たから一般の感覚を養うことが出来た。これに関して、御祖父様や別の意味でアイツに感謝しなきゃ」

 と言って、寂しそうな表情で少し笑顔の真理香に複雑な気分になる久晴。

 確かに、建也がいなかったらイギリス留学はなかったことは間違いない。

「会社で母方の姓を名乗ったのも、履歴を誤魔化したのも一般の考えを学ぶため?」

「察しがいいわね。もし、私が近衛の姓を名乗ったら誰だって遠慮していたと思ったから母方の姓を……。学歴も、御祖父様に頼んで誤魔化してくれた」

 と真理香は、隠すことなく久晴に話してくれた。

 そこで、真理香が男子寮に来ることが出来たのも自分の特権を利用したことが言わなくても分かってきた久晴。

 だが、久晴の疑問は他にもあった。

「なんで、コスプレ始めたのっ? 俺みたいな、ヲタクに対する偏見とか……?」

 と言って、自分を否定するように真理香に質問する久晴。

「切っ掛けは、イギリス留学のハロウィーンかな。みんな仮装して、ホームステイ先で仮装したとき新しい自分を発見して楽しくなっちゃって」

「じゃあ、ビックサイトのコミケのことを知って始めたと……?」

「ご名答、多田野さん。コミケでもコスプレがあると聞いて、参加したら楽しくなって違う価値を受け入れてくれる人達が嬉しくて毎年参加するように……」

 と嬉しそうに答える真理香を見て、言わなくても理解できる久晴。

 それは、ご令嬢でない真理香を受け入れてくれる人が嬉しかったに違いないと推測。

 その核心に触れようと、自分が思うコンプレックスを真理香に質問を投げかける。

「じゃあ、ヲタクに対する偏見は……? 周囲は、アニメやゲームのイメージが……?」

「そもそも、ヲタクの定義ってマニアと同様に拘りを持っている人のことでしょ? それなのに、アニメやゲームだけでヲタクで決めつけるのはどうなのって」

 笑顔で答える真理香に、自分でも言いにくいネガティブな質問をする久晴。

「自分でも言いにくいけど、ヲタクの中には犯罪に走る人も……?」

「それは、育った環境が悪かっただけ。もし、社会的な常識を学んでいれば理性が働き犯罪に走ることなんてあり得ないと私は思っている」

 と受け止めて答える真理香に、如何に自分の考えが狭いか痛感させられた久晴。

 同時に、真理香は『お嬢様』ではなく『普通の女の子』として見て貰いたい。

 そのことは、質問しなくても十分に理解することの出来た久晴。

 当然、建也を嫌う理由も『お嬢様』としか見ていないと何となく分かってきた。

 その後、久晴は受け止めて答える真理香に自分の持っている疑問を投げかける。

 例え、自分の中に疑惑が残ったとしても思い残さないように……。


 こうして、久晴の疑問に答えた真理香は自分のターンと言わんばかりに自分に関する質問を仕掛けてくる。

「多田野さん、今度は私の質問に答えて……。もし、答えにくかったら無理しなくていいから……」

 久晴は、自分が答える番だと悟り緊張した面持ちで身構える。

「本当の私を知って幻滅したっ? 例えば、母方の姓の名乗ったりとか学歴を誤魔化したりとか……」

 と質問してきた真理香の表情は、どこか不安な表情を隠していると察することが出来た久晴は本来の目的は何か探るように質問する。

「朝川さん、本来の目的って社会勉強でしょう?」

 すると、真理香はゆっくりと首を縦に振って当たっていることを告げる。

 久晴は、真理香のアクションを見て話を続ける。

「だったら、気にしていないし問題ないよ。本当の学歴だって、努力して手に入れた実力と才能だから逆に誇っていいと思うのに」

「でも、頭がいい女って男はみんな敬遠するのじゃ……?」

「戸渡建也って男は、学歴を誤魔化してまでマウントを取る陽キャなタイプ。メッキが剥がれれば、周りに迷惑掛ける問題児に比べたら全然気にならない」

 真理香は、久晴の言いたいことを察しようと耳を傾ける。

「朝川さんの場合は、ラッピングは質素に見せかけ箱を開けたら中身は豪華なタイプ。しかも、それを鼻に掛けないところが羨ましい」

「羨ましいって、私の家庭環境のことっ?」

「違う、全然違う。自分自身で努力したり、夢を実現しようと模索しようとしたりするところだよ。俺の場合は、家族総出の猛反対や周囲に理解されない人ばかり……。その上、俺って意気地無しだから結果的に到底近づくことが出来ない遠回り……」

 と言って、遠い目で自分を見詰める久晴。

 それは、自分にないものへの憧れが強かったことを出頭する久晴。

 例え、伝えることが下手でも真理香に心に届かなくても。

 真理香は、何を考えたのか久晴には難題と思った直球な質問を投げかけた。

「多田野さん、私のことを嫌いになった? その原因が、私が嘘つきの女だから? それとも、私がお嬢様だから?」

 すると、久晴は首を横に振って自分の体験談を真理香に話した。

「確か、五年ほど前だったと思うけど……。電車で秋葉原へ向かうとき、スーツを着た背が高く体格のいい坊主頭の黒人の男性が隣の座席に座ってきた。最初は、怖かった」

「黒人が電車に……? その話と私の質問と何の関係が……?」

 と真理香は、話が逸れていることを主張する。

 それでも、久晴は真理香を説得するように話を続ける。

「だけど、黒人の白い手の平を偶然に見たとき嘘のように怖くなくなった」

 久晴の一言で、目が丸くなり真理香は大人しくなり話を聞き入れるようになった。

「その時、髪や肌の色が違うだけで、男と女の違いだけで、同じ人間だと痛感して分かるようになった。確かに、中には日焼けしたような手の平はあるけど手相もあれば指紋などもあると思えば不思議と気にならなくなった」

 と久晴の一言で、真理香は感動して言葉では言い表せない何かが込み上げる。

 それは、一人の人間として見てくれる久晴に言葉が思いがけない引き金。

 そんな中、何を思ったのかビーチソファーから立ち上がった久晴は、

「さて、明日は早いから部屋に戻るよ。俺……」

 と言い残し、その場からさり気なく立ち去ろうとする。

 ところが、真理香が久晴の手首を掴んで阻むように立ち上がる。

 久晴は逃げようとするが、真理香に掴まれた手首で自由を奪われ逃げられない。

 真理香は、確保した久晴をビーチソファーへ仰向けに押し倒し馬乗りになる。

 久晴は、自分の意思とは無関係のように真理香に為すがままにされ何も出来ない。

「あの、退いてくれません……? この状況、不味いんじゃ……」

 と言って、馬乗りの真理香に懇願する久晴は顔が引き攣るほど苦笑いを見せる。

 だが、馬乗りになって主導権を握る真理香は首を横に振って笑顔で、

「まだ、私の質問に答えてない。答えて、多田野さん」

 と言って、久晴を逃がそうとしない。

 マウントを取られた久晴は、どんな質問が来るのか戦々恐々で額から冷や汗が流れる。

 すると、真理香は笑顔で久晴が予想できない事を言い出す。

 しかも、苗字ではなく名前である。

「久晴さん、私と付き合ってっ」

「あっ、あの……、『付き合って』ってどういう意味……?」

 と久晴は、緊張した面持ちで真理香に問い掛ける。

 すると、真理香は少しため息を吐いてストレートな質問を久晴に投げつける。

「鈍いっ、シンプルな質問なのに。私の恋人になってと言っているの、久晴さんっ!」

 当然、マウントを取られながらも久晴は反論する。

「そっ、その言葉は、男から言う台詞では……」

「もうっ、頭固いわね。そう言うのって、男と女も関係ないっ!」

 と主張した真理香は、久晴の主張を即座に否定する。

 久晴は、自分のデメリットを言って真理香を諦めさせようと必死になる。

「俺、意気地無しの陰キャだよ。それに、私服のセンスもゼロの上にヲタクだし……」

 それでも、真理香は笑顔で首を横に振って諦めようとはしない。

 それどころか、真理香はとどめを刺すように愛嬌たっぷりの笑顔で言い出す。

「貴方の責任よ、私をこうしたのは。もし、私の告白を振ったらレイプ魔に襲われるより何十倍ショックだから。だから、久晴さん責任取ってっ」

 真理香の強烈な一言で、久晴は頷いて仕方なく告白を受け入れるしかなかった。

 すると、真理香は嬉しさを体で表すように久晴に抱きつく。

 久晴は、困った表情で真理香を受け止めることしか出来ない。

「結局、行けなかったね。夏コミ……」

 と言って、話題を変えようとする久晴。

 すると、真理香は少し拗ねた顔で刺激を与えるような一言を話す。

「もし、夏コミ行けたら露出度高いコスプレするから」

「すいません、お手柔らかにお願いします……」

「うーん、どうしようかな。私って、意外とモテる方だから」

 と久晴の注文に、意地悪なことを言って嬉しそうな真理香。

 多田野久晴、三十四歳にして生まれて初めて彼女が出来た夏。

 元の関係に戻ればと思っていたが、まさか恋人に発展するとは想定外。

 その後、時間が許す限り同じビーチソファーで冗談交じりに語り合う二人だったが、MCバトルが終わって合流してきた英美里達に邪魔される形でナイトプールで遊び回る羽目になるであった……。


 翌朝、欠伸をしながらチェックアウトする久晴の目に去って行く梨乃が入る。

 同じく、久晴の元同僚三人と宣伝一課のメンバー達は去って行く梨乃を見送る。

 その時、真理香は去って行く梨乃を引き留めようとする。

 いくら命じられたとは故、建也を裏切った彼女の身を察した引き留めである。

 すると、梨乃は首を横に振って笑顔を見せると、

「わたくしは、戸渡家の使用人。そして、帰る場所はあの場所しかありません」

 と言い残し、梨乃は何事もなかったようにその場を後にした。

 久晴や真理香、会社の同僚達は、去って行く梨乃を見守ることしか出来なかった。

 チェックアウト後、久晴は事件が解決して一段落したのかヲタクのホームグランドである秋葉原へ足を運びたい気分だった。

 そこへ、真理香が急に腕を組んで違う方向へ連れて行かれる。

「多田野さん、いくら抵抗しても無駄だから諦めて。真理香お嬢様、会長から帝王学の一環で合気道を習っているから」

 と琴音に説明され、抵抗できない理由が何も言わずとも分かってきた久晴。

「久晴さん、夏コミは後一日残っている! 私達の夏、まだ終わっていないわよーっ!」

 と言って、久晴を強引に連れてタクシー乗り場へ向かう真理香は子供に戻ったように目を輝かせる。

 どうやら、真理香は破談を想定して密かに計画していたようだ。

「あっ、あのっ、俺、一般参加専門ですよっ! それに、無理と諦めて準備も何もーっ!」

 と叫びながら主張するが、為す術なく連れて行かれる久晴であった。

 その後、一日だけの夏コミで真理香に付き合わされる久晴。

 当然、真理香に一日中付き合わされた久晴は異様な疲れでゾンビ状態。

 唯一の救いは、夏期休暇の真っ最中であったことだった……。




 翌日、真理香と付き合って疲れが抜けたのは正午を迎えようとしていた頃。

 だが、夏コミの疲れが未だに残っており完全回復とは言えずベッドから起き上がっても体は重く感じる久晴。

 まさか、お見合いの騒動後だというのに真理香が夏コミ参加は想定外。

 しかも、某ゲームの露出度の高めなくノ一のコスプレ姿で久晴の心配をよそに夏コミを楽しむ真理香。

 それに対して、再び誰かに襲われるのではないかと心配する久晴はヲタクだというのに楽しむ余裕は全くなかった。

 そのため、様々な疲れが蓄積し夏コミが終わる頃にはゾンビ状態。

 唯一の救いは、真理香が社員寮までタクシーを走らせてくれたこと。

 その後、社宅寮へ帰宅した後は何もせずベッドへ直行し泥のように眠る久晴。

 もし、明日が仕事だったら何も出来ず机の上でダウンしていたに違いない。

 久晴は、未だに疲れが残る体で机に向かい昨日の真理香の姿を思い浮かべる。

(完全に、北欧まりんになりきっていたよな……。それにしても、何を着ても似合うのは元読者モデルをやっていたからなのか……。綺麗だった、朝川さん……)

 そのとき、童顔にも拘わらずモデル体型の真理香を思い出し心の中で、

(ダメだ、ダメだ! そんな、疾しいことを考えたら嫌われるって!)

 と思って、何度も首を横に振って邪念を振り払う久晴であった。


 それから、三十分が過ぎようとしていた頃に何を思ったのかスマホを取り出す東北支社の向井に電話を掛ける。

 昨日のことを振り返る中、向井の謎の言葉が思い浮かぶ。

(お嬢様とは何処で知り合ったのか知らないが、女を心配させるなんて中々罪深い男だ)

 電話を掛ける中、向井が真理香の正体を知っている素振りが気になって仕方なかった。

 電話が繋がると、年配の女性の声が聞こえ談笑や近状報告をすると向井本人を呼ぶ。

 どうやら、最初に電話に出た声の主は向井の奥さんのようだ。

 数分後、電話の声の主は向井本人に変わる。

「おう、久しぶり。頑張っているようだな、新しい部署で活躍していると聞いている」

 と言って、久晴の声を聞いて懐かしむ向井。

 元気そうな向井の声に、久晴は胸を撫で下ろしながらも真理香の件で問い掛ける。

「もしかして、朝川さんの正体を知っている……?」

「出向前は、近衛さんの部下として働いていた頃に幾度か家に招待されて。そこで、小さかった真理香お嬢様に何度かあったことがある。眼鏡を掛けて変装していたが、ワシには一目見ただけでお嬢様だとすぐに分かった」

 と言って、真理香の正体を見抜いていたことを久晴に告げる。

 何故話さなかったのかと問い質すと、やはり遼太郎の口から秘密にするよう頼まれていたことを証言する。

 その上で、向井は久晴の痛いところを突くように笑いながら話し掛ける。

「ところで、新しい部署の女子達との関わりに馴れたか? ひょっとして、若い子相手に喋ることすら出来ず机に座ったまま固まっていると思っていたよ」

 向井の言葉に、図星のように当たり反論することが出来ない久晴。

 向井は、追い打ちを掛けるように久晴に冗談交じりのアドバイスを送る。

「夢を追い掛けるのも大事だが、女の子達と付き合うのも勉強の内。でも、大人の火遊びのし過ぎは程々だぞ。ガッハハハ!」

 久晴は、冗談交じりの向井のアドバイスに顔が真っ赤になり邪念を振り払うように首を横に振って我を取り戻すと、

「むっ、向井さん、いくら冗談でも言って良いことと悪いことが!」

 と言って、動揺しながらも抗議する。

 そんな中、向井は一月の監査の件で話し出す。

「ところで、お嬢様にお礼を言いなさい。何せ、過労で倒れたお前達四人を病院に搬送したとき、付き添ったのはお嬢様だったからな」

 向井の証言で、久晴は驚きながらも一月中頃の記憶を思い出す。

(あの時、意識を失う俺に声を掛けたのも……。カーテン越しで見たシルエットは、医者に訴える朝川さん……?)

 驚きの事実に言葉を失う久晴に、当時の出来事を向井は事細かに話してくれた。

「確かに、過労で倒れた多田野君達四人を病院へ搬送の指示を出したのは近衛さん本人。お嬢様は、近衛さんに志願して病院へ搬送される久晴達四人の付き添ったからな」

 久晴は、自分の中で謎に思った事実を知り向井から当時の話を聞き出そうとする。

「向井さん、教えてください。俺達が仕事中、職場に何が起きたのか?」

 すると、向井は一月中頃の抜き打ち監査について久晴に話した。

 向井の話では、始業中にKONOEホールディングスの本社の面々が予定なく東北支社を訪れ会長である遼太郎が様々な不備を葛谷や畠田に指摘。

 当然、久晴達が閉じ込められた元書庫室を遼太郎が扉を開けて葛谷と畠田に質問攻め。

 久晴達四人の容態が危険と判断し、偶然に居合わせた向井が遼太郎の指示を受け部下を呼び病院へ搬送。

 その際、真理香が年末に助けた久晴の容態を気に掛け付添を志願。

「お嬢様は、病院の医師に『彼らは、御祖父様の恩人です。そして、前髪の長い彼は私を助けた恩人です』と言って助けて欲しいと懇願した」

 と言った向井の証言で、カーテン越しのシルエットが真理香だと確信する久晴。

 その際、入院の費用が労災認定で負担せずに済んだのも真理香と遼太郎が裏で動いたことが向井の証言で明かされる。

「その後、前任の支社長の葛谷と元上司の畠田がどうなったかは以前話した通りだ」

 向井の話を聞いた久晴は、真理香や会長の遼太郎に知らない間に恩返しされたことを知りどのようにお礼を言えばいいのか分からなくなる。

「近衛さん、『これで、大きな借りは返した』と言って満足していた。でも、簡単でもいいから会った際はお礼を言いなさい」

 と言われた向井の一言で、何処かで会った際はお礼をしなければと思う久晴。

「話は変わるが、以前に事務員で働いた松江さん。今は、近くの遊園地で着ぐるみの仕事をしている。その際、スタッフに凄く怒られて不貞腐れながら煙草休憩するところを見掛けた。この調子じゃ、再び事務職の仕事は当分来ないだろう」

 と言って、解雇された松江の近状報告を向井は話してくれた。

 まさか、あの無愛想な松江が遊園地で子供達に愛嬌を振りまいているなんて想像が出来ない久晴。

「では、これから畑仕事があるから切らせて貰うぞ。もし、何か報告などがあったら連絡してくれよ」

 と言い残し電話を切る向井に、何処か支えていたのもが解けたと同時に新たな何かを背負った気になった久晴。

(朝川さんに、会ったら何を言えばいいのか……。でも、今は大人しくしたい気分)

 と思って、椅子に座って何かを思い巡らす久晴だった。


 こうして、なにかと思い巡らすこと十数分後。

 久晴の耳に、ガラスサッシからノックする音が聞こえる。

(もしかして、カラスの悪戯? まさか、カラスがガラスサッシをノックするとは……)

 と思い、カーテンを開ける久晴の目に真理香達四人が横並びに立っていた。

 その光景に驚き、目を疑ってカーテンを勢いよく閉めて椅子に腰を下ろし無視する。

 無視をすれば当然、ガラスサッシから今にも壊れそうなほどの激しいノックする音が聞こえ久晴はため息を吐いて再びカーテンを開ける。

 すると、今度は英美里が小さなバールを振り上げガラスサッシを割ろうとしていた。

 さすがに、英美里の行動を見て危険を感じた久晴は急いでガラスサッシを開けて真理香達四人を自分の部屋に入れる。

「今日は、暑いというのに……。早く中へ入れてくれたら、強硬手段を使わなかったのに」

 と言って笑顔を見せる真理香に、困った表情を見せる久晴は謎に思ったことがある。

「一体、どうやってベランダに? ベランダに人がいたら、誰だって怪しみますって!」

 と言って、驚きの余りに真理香達に質問する久晴。

「気にしない、気にしない。それより、私達と楽しくお話ししましょう。タダノッチ」

 と言って、空気を読むことなく終始笑顔の咲良。

 咲良だけじゃなく、英美里や優菜も何故か笑顔を見せる。

 それに対し、真理香はと言うと申し訳なさそうな表情で久晴を見ている。

 真理香の表情を見て、自分が年頃の女性が苦手なことが彼女達に発覚されたことを察しショックを受ける久晴。

「とにかく、座って話しましょう。久晴さん」

 と言って、神妙な面持ちの真理香。

 久晴は、戦々恐々の面持ちで真理香達四人と共にテーブルを囲んで座る。

 その際、条件反射で離れ気味に座ろうとすると、

「はいはい、近くで座って楽しく話しましょう。タダノッチ」

 と言って、逃がさないと久晴の肩を掴んでテーブルに誘導する咲良。

 こうして、テーブルを囲んで宣伝一課のメンバーが座ると真っ先に英美里が、

「なるほど、あたしが制服の着熟しに顔を赤くしたのも、目を逸らして見ようとしなかったのも全てあたし達みたいな若い女の子が苦手だったのかー。納得したーっ、これで」

 と言ってニコニコしていたので、一番知られたくない人に知られてしまったと思い気まずい久晴。

 さらに、追い打ちを掛けるように咲良が猫口の笑顔で久晴に詰め寄る。

「仕事中、私達の顔を見ずディスプレイに顔を向けたのも意識を逸らすため。そんな面白いこと、なんで早く言わなかったの。水臭いねー」

 優菜は、久晴が女性に苦手なことが安心したようで、

「これなら、安心して話し掛けられます。多田野さん、私の男性恐怖症のリハビリ相手にピッタリ。お互い、異性に対する苦手意識を克服しましょう」

 と言って、笑顔で項垂れて肩を落とす久晴を励ます。

 隣に座っている咲良が「良かったね」と笑顔で話し掛けると、優菜は「うん」と言って首を縦に振って満面の笑みを浮かべる。

 久晴は、隣に座っている真理香に目を向け何かを訴えるように無言で睨んでいる。

 久晴の訴えに、申し訳なさそうな表情で謝る真理香は言い訳のように説明する。

「言っとくけど、私は喋っていなのよ。あなたの元同僚が、英美里達に話したのよ!」

 どうやら、高級ホテルの一件で菜摘や元同僚二人が思わず暴露したようだ。

 真理香の証言に、言葉を失いため息を吐いて肩を落とす久晴。

 この後、どうすればいいのか先行きが見えないと言わんばかりに。

 それに対して、英美里や宣伝一課の面々は楽しそうな笑顔を見せる。

「大丈夫、心配しないで。あたし達が、タダノッチの苦手克服できるよう体張るから」

 と言った英美里の言葉に、この先どうなるのかと不安になる久晴。

 そんな中、向井の言葉を思い出すように真理香にお礼を言う。

「朝川さん、東北支社時代の同僚を代表してお礼が言いたい。ありがとう、俺達四人が病院に搬送されるのを付き添ってくれて」

 すると、真理香は一ヶ月早めた抜き打ち監査の件の思い出話をした。

「私が監査の仲間と共に黒井製作所の本社へ訪問したとき、阿久井って男が未使用のロッカー全てに自分の資料を詰め込んで隠していたことを思い出した」

 真理香の証言で、久晴は驚きの余りに思わず「えっ」と言って耳を疑う。

 しかも、監査員の一人が野太い悲鳴を上げて駆けつけて発覚したと聞いて驚くのも無理はないと思った久晴。

 さらに、黒井製作所の本社の監査で何もしない阿久井の仕事ぶりに想像できても驚くこと以外に言い表すことが出来なかった。

「仕事ぶり他の人から聞いたけど、東北支社へ転勤した久晴さんに仕事を押しつけて自分は机の上で資料を見ているだけだって聞いてビックリしたわ。阿久井って男」

 と言って証言する真理香の口から、久晴を東北支社へ転勤に追い込んだのは自分の手柄にするのに都合が良かったことを聞いて抑えきれない怒りを何処かへぶつけたかった。

 同時に、仕事を押しつけるときに電話や口伝えだけで説明すらしなかったのも証拠を残さないためと聞かなくても分かり更なる怒りがこみ上げる。

 久晴の怒りを察した真理香は、怒りを静めるように言い聞かせる。

「久晴さん、監査が終わるまで本社からの電話を禁止したのも、スマホに録音機能のアプリを入れたのも私の指示。今の阿久井は、十分な罰を受けたから怒らないで。ねっ」

 真理香の説得に、終わったことに怒るのは大人気がないと思い自分の怒りを心の鞘に収め平常心を取り戻す久晴。

 同時に、自分の知られぬ間に守られていることを痛感する。

 久晴の怒りを収めたことに、自分の意思が伝わったことに安堵する真理香。

 その後は、久晴の部屋で宣伝一課の女子社員達が今後のことでパーティー感覚のように楽しく話し合っていた。

 それに対して、久晴本人はというと今まで体験したことのない自分の部屋で女子達に囲まれ逃げ場はなく蛇に睨まれた蛙のように冷や汗を流し完全に固まっていた。

 しかも、女子達の無茶振りを押しつけられ対応に苦労するばかりで話の内容が耳に入ることはなく……。


 数十分後、パーティー感覚な女子達の話し合いが終わろうとした頃の久晴は一人の時間が戻ってくると思うと胸を撫で下ろしていた。

 そんな中、真理香は真顔で久晴の顔を見る。

 そのとき、久晴は真理香達四人の服装を見て気になっていた。

 真理香だけは外出するような服装に対して、英美里と咲良はラフな部屋着姿で久晴の目に刺激を与える。

 恥ずかしいのか、優菜は今にも外出できそうな私服姿は久晴にとっては唯一の救い。

 真理香は、真顔で久晴に近づいてくる。

 この後、何が起こるのか不安で仕方ない久晴は後退りするように体を反らす。

 真理香は、真剣な表情で久晴に話し掛ける。

「ところで、久晴さん……。貴方の私服、ダサいっ!」

「えっ、なっ、何……っ?」

 と言って、何が起きるのか想像できない久晴。

 すると、久晴の手首を掴み外出しそうな勢いで引っ張る真理香は、

「それに、髪型も近くの激安床屋で済ませたでしょ。前髪、目を隠そうとして伸ばしているじゃない! 貴方がヨシでも、私が許さないのっ!」

「えっ、まさか、美容院に? 先週、散髪したばかりなのに?」

 と言って、逃れようと抵抗する久晴。

「当たり前! 私服も選び直し!」

 と言って真理香は、容赦なく久晴を強引に連れ出す。

 優菜も、真理香に同行する形で外出する。

 久晴は、準備する暇もなく真理香と優菜に連れて行かれることしか出来なかった。

 三人の行動を見て、行ってらっしゃいと言わんばかりに笑顔で見送る英美里と咲良。

 当然、真理香と優菜に散々振り回され疲れ切った久晴は社宅寮に帰宅してから再びベッドの上で泥のように眠りに就いた。




 翌日、夏休みだというのに真理香に付き合わされる久晴。

 真理香から、大事な用事があると言われ何も分からず同行する久晴はスーツ姿。

 同行先は、夏期休業で誰もいないはずの本社フロアーの応接室の一室。

 既に、応接室内は会長である遼太郎と神妙な面持ちの真理香の両親。

 そして、応接テーブルを挟んで遼太郎達の向かい側の席には戸渡家の当主である修蔵の妻が和服姿で座っている。

 もちろん、間を挟んで座っている人は遼太郎が雇った弁護士。

 用件はと言うと、今回のお見合い騒動で建也が問題を起こした謝罪と今後についての関係についてだった。

 今回の件で建也との縁談は破談が決定となり、真理香への接近禁止のペナルティーを条件に事件は水に流すことになった。

 これで、法的に建也は真理香へ近寄ることは出来なくなった。

 さらに、久晴に用事があったのは戸渡家側の謝罪。

「この度、主人と愚息が貴方に行った愚行に関し当主の立場として謝罪いたします」

 と言って、深々と頭を下げる修蔵の妻。

 謝られた久晴は、何も言えばいいのか分からず慌てふためくことしか出来ない。

 さらに、口止め料の形で慰謝料が振り込まれると聞いて最初は拒否する久晴。

 すると、真理香は久晴の肩を軽く叩いて説得する。

「久晴さんは身を挺して私を二度も助けた。それに、これまで貴方の受けた仕打ちを考えたら権利は十分。ここは、素直に受け取りなさい」

 真理香の説得に加え弁護士の説明を受け、戸渡家側の好意に甘える形で慰謝料を受け取ることにした久晴。

 しかし、久晴は問題を引き起こした修蔵本人が来ていないことに気がつく。

 当主である修蔵の妻の口から、入り婿の身でありながら多数の浮気や誰にも知られない裏取引など様々な悪事が発覚し家で隔離していると聞かされ驚く久晴と真理香。

 何とか離婚は免れたが現在の修蔵は、完全に発言力を失い周囲に監視された生活を強いられている。

 どうやら、妻の言いつけで修蔵は留守番を押しつけられ飼い殺し状態のようだ。

 こうして、周囲を巻き込んだ真理香のお見合い騒動は幕を下ろした。

 同時に、過去に受けた仕打ちに関して清算したと自分に言い聞かせると何故か胸の支えていたものが解けたような気がした久晴であった。

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