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お面

作者: モモモタ

 夏休み。祖父母の家に帰ると、いつも私は怖がっているものがある。それは、玄関から入った正面の壁に飾られているお面だ。この辺りでは魔よけの意味を込めてお面を飾る風習があるそうで、家によって飾るお面が違っており、祖父母の家はおかめの面を飾っていた。あの笑っている顔が妙に怖く、近寄りたくないけど……



「………」



 深夜。水分を取り過ぎたのか、目が覚めてしまう。仕方なくトイレへ向かうため、廊下に出る。廊下は玄関に通じており、トイレに向かうには玄関を横切らなくてはならない。という事は、あのお面の前を通らなくてはならない。当時小学4年生だった私は一人で行くのが怖くて仕方なかったが、このままでは寝られないので、勇気を出して廊下の電気を点け、薄目でお面が視界に入らない様に、なるべく速足でお面の前を通過し、トイレに入る。



「はぁ……」



 あとは部屋に戻るだけだ。トイレを出て、廊下に戻った瞬間。



「え!?」



 廊下の電気が突然消える。スイッチを押しても反応がない。



「何で何で!?」



 トイレの電気も点かない。停電したんだろうか。でも、雨は降ってないし、雷なんて鳴ってない。ともかく、電気を点けずにあのお面の前を通過しなくてはならなくなってしまった。



「………」



 玄関のガラス戸から差す月明かりが、廊下を照らす。お面まで月明かりは届いておらず、壁にかかっているお面は暗がりの中からこちらを見ているようにも思ってしまう。走り抜けようと思い、駆けだしたが。



「うわ!?」



 お面の前を通過しようとしたその時。玄関からの月明かりに、影が現れる。現れたと言ってもほんの一瞬で、影はお面の方へ吸い込まれるように通過していき……直後、カタカタとお面が少し揺れる。音に驚き、見ない様にしていたのに、思わずそちらを見てしまう。そこには……あのほほ笑んでいるおかめの面はグニャグニャと溶けたように変形しており、残った左目だけがこちらを見ている。



「ひっ……!」



 体が硬直し、動かない。そのままじっとお面を見ていると……やがてお面は元のおかめに戻る。そして、突然廊下の電気が点く。



「!」



 体が動くようになり、すぐにその場を離れ、部屋に駆け込む。そして、翌朝。昨夜の出来事を祖父母に話したが……



「お面が守ってくれたんだろ。魔よけの面なんだから」



 あのお面が守ってくれたのかはわからない。でも……魔よけであろうとなかろうと、あの溶けたお面は今でも鮮明に思い出せるほどで、お面が苦手なものになった体験だった。



                          完 

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