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幽霊のセミと少年  作者: なおちか
2/9

成仏しないセミと少年たち

お読みいただきありがとうございます。

第2話です。少年たちがセミ取りにやってきます。


なんで俺は成仏せずにセミの幽霊としてあの世に行かずに留まっているんだろうか。


何か後悔した事なんて…。と思った時、生きて土の中から出られなかった事を悔しく感じたのを思い出した。


いやいやいや。そんなセミたくさんいるでしょ。羽化できなかったセミなんていっぱいいるって。


そんな事で後悔してたら世の中セミの幽霊だらけになる。生き物の幽霊だらけになる。


だから、そんなのは幽霊協会がOK出さないと思うんだ。


自分が幽霊になって成仏出来ない理由を考えていると、人間のガキ共が楽しそうに騒ぎながらやってきた。


3人いる。全員虫取り網とカゴを持ってるからセミ取りに来たんだなってわかった。


確かに多くのセミが鳴いてる。アブラゼミとクマゼミがほとんどで、なんか知らないセミもいる。


どこの国籍かわからない人を街で見る感覚だ。ここのセミはみんな日本生まれだけど。


3人の子供たちは一緒に来たのに、はしゃいでセミを捕まえようとしてるのは2人だけだった。


1人は少し後ろで黙って見てる。セミ苦手なのに友達と一緒にいたくて付いて来たパターンだな。


セミの裏側とか結構グロテスクだったりするし、苦手なのは仕方ない。


慣れるか、友達が飽きるのを祈るしかねぇよ。人はそうやって成長していくもんだ。頑張れ少年。


幽霊のセミが捕まるなんて事はないし俺は懐かしい気持ちになってのんびりと子供たちを見てた。


そしたら、2人のうちの1人がセミを捕まえるのをミスっておしっこかけられてキャッキャした。


1人の方の子を見るといい顔で笑ってた。あー良かったなぁって思って。


無理して笑ってる感じじゃなくて、ちゃんとそこの輪に入って笑ってる感じがあって鳴きそうに、いや泣きそうになったよ。


子供たちの声を聞きながら空を見ると、雲が高くて夏って感じがして、麦茶飲みてぇなって思った。


セミが鳴いてる時点でもうこれ以上ないくらい夏なんだけどな。ゆっくり流れていく雲を見ながらしばらく夏を感じてた。


で、飽きてきたから、どれくらい捕まえたかな?と思って下を見た。


そしたら、1人だった少年が2人の後ろから移動してきて俺のいる木の下に来た。


ゆっくりと網を構えてからブワッと俺のすぐ下に網を振ってきた。


あれ?そこにはセミはいないぞ?横を見ても上だってセミとかカブトムシどころか何もいない。


まさかと思ってすぐ隣の木に移ってみたら、見てる見てる。俺を見てんのよ。


幽霊の俺もセミ取りの対象になるわけか。と思ってびっくりした。


でもまぁ、セミとして産まれたんだから人の子供に捕まるのもセミらしくていいかなと思ったからさ、捕まえやすい高さの位置にとまってやったんだ。


そしたら、すげー目をキラキラさせてゆっくり近付いてくんのよ。可愛くて仕方なかった。


捕まって虫カゴに入っても、頃合いを見つけて通り抜ければいいわけだし、雑に扱おうとしたって死んでるんだから大丈夫。


俺は少年の網に入った。


一応抵抗する感じでバタバタ騒ぐ演出はするよ。これが醍醐味みたいな部分あるからね。


そして俺は虫カゴに入った。すごい嬉しそうに俺の事を少年は見てくる。満足そうで何よりだ。


すると少年は歩き出した。まだ2人はセミ取りをしているのに。


なんでかな?と思ったけど、やっぱりセミ取りは苦手なのかもしれない。


しばらく歩いていると少年がちょっとよろけた。その時虫カゴが揺れて俺は頭を打った。


痛っと思って、もう少し気を付けて歩いてくれよと思った時、気付いた。


この虫カゴ抜けれないやつだって。


前足で壁に触れてみるとちゃんと感触があって触れられた。


成仏できないし、俺はこの中で何年も何十年ももしかしたら永遠に閉じ込められるのかもしれない。そう思うとすげぇ怖くなった。


俺が慌ててビクビクしてると、少年はある家の前で足を止めて、その家を少しだけ見つめた後、門の中に入った。


俺はヤバいと思いながらも、ここが少年の家なのかなって思ったりしてた。


そしたら、何も植えられてない花壇の淵に少年は腰かけて、虫カゴを膝の上に置いた。

読んで頂きありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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