表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

調停者と忘却者のパラドクス・トランクス ー断片たちの追憶ー

悪食狼の童話集(あくじきおおかみのどうわしゅう) ~これは嘘(うそ)をついた狼(おおかみ)から始まった...~

作者: 桜兎の梅花

お久しぶりです。更新が遅れてしまい申し訳ございません。

梅花の桜兎です...。


物語が考えられず、筆を書き込んでない時期が多くなり、すみません。

不定期更新ではございますが、見ていただける皆さん、誠にありがとうございます。

これはお手すきに暇がある際に物語とつながっていない部分の話となっておりますので、気分を変えたいときにご覧ください...。


では、始まります...。

...夜明(よあ)けが(ちか)い。私はふと目を()ましてそう(おも)った。どうにも野宿(のじゅく)()()ることとは(ちが)い、(ねむ)ってもこうも(はや)()()めるらしい...。


...というか、おちおち(ねむ)っている(ひま)などない。交代交代(こうたいこうたい)()ずの(ばん)をしながら、()ごさなければならない。自分やパーティーメンバー、家族(かぞく)依頼人(いらいにん)と共に野宿(のじゅく)する(さい)には、これが()まり(ごと)....、らしい...。


“...じいちゃんに感謝(かんしゃ)しないといけないな...”、私はそう思い、じいちゃんが旅のお(とも)に持ってきてくれた籠手(こて)と“赤魔道具(あかまどうぐ)罠作成(わなさくせい)(はこ)”の手入れをする...。


...7年前(ねんまえ)、私たち姉妹(しまい)は私たちを拾ってくれたおじいさんがいる村で記憶(きおく)を失った状態(じょうたい)発見(はっけん)された...。何も身に着けていない状態で衰弱していた私たちは、ここの村に来る前の自分たちの国、生活、言葉を忘れていたが、互いが姉妹であることを理解していた...。


そのためか、最初の2日間は自分たちがいた洞窟から一歩も出ず、互いに抱きしめて、暖をとっていた...。そうすれば、死なないだろうということがなんとなくわかったからだ...。根拠もないが、暖を取っている間、このようなことが前にも一回あったな、という実感があった...。そして、何か自分たちにとって大切なことを忘れてしまっている、という記憶に関する明確な喪失感(そうしつかん)があることも認識することが出来た...。


そんな中、一筋の明かりが私たちを照らした...。その明かりを持っていたのが、痩身(そうしん)寡黙(かもく)なおじいさんだった...。おじいさんは驚きはしたものの、見つけた瞬間に警戒していた私たちに“怪しいものじゃない、信じられないだろうが..."と一言言って距離を取りつつ、カバンの中からパンと肉切れ2つずつ取り出して、私たちに与えてくれた...。



...私たちはそこから、乾燥した肉の切れはしと干されたパンを受け取り、(むさぼ)るように泣きながら食べた...。


渡されたパンと肉は乾燥し、どちら固かったが、それでも食べる手を止めることは出来ず、涙を流しながら、ただひたすらに黙々(もくもく)と食べ続けた...。


食事が終わった後、おじいさんは私たちに身体を包み込めるような布切れを渡され、一夜を共に過ごしたのちに見知らぬ私たちを自身が住んでいる家に招き入れてくれた...。


...今でもあの暖かな暖炉で初めて眠った夜が忘れられない...。しかし、同時に私たちは違和感を感じていた。本当に私たちはここに居ていいのか、というなぜか浮かんできた不安感ともう一つ、大事なものをどこかに置いてきた、または、何か重大なことを忘れているような言い表すことができない漠然とした不安感があった...。


...それから月日は流れ、私たちはおじいさんから様々なことを学んだ。狩人としての獲物を狩る術や罠士としての知恵に野草に関する知識等々、一人で生きていくには十分過ぎるほどの技術を継承した。


今ではおじいさんの村にいる狩人の中でも上位に食い込むほどの実力が付いた、と狩人仲間から持てはやされることも多くなった...。


そんなある日のことだった...。いつも通り、日課となっていた狩りから帰省したあと、おじいさんが突然、旅の準備物である食料が入ったリュックサックと狩猟銃の弾丸、罠作成グッズが入っている大き目なポーチ等々を手渡され、旅に出ろ、と言ってきたのだ...。


急にそう言われて戸惑いはしたが、この状況がおじいさんの目が冗談で言っているのではない張り詰めた雰囲気を匂わせており、私たちは、いや私はすぐさま、おじいさんの意図を察して、別れを嫌がる自身の妹の手をすぐさま引き、その場から逃げ去るように荷物を抱えて慣れ親しんだ住処を飛び出した...。


数分後、逃げ出した住処のある村から一発の銃声が響いた...。

そのあとのことは私たちは何も知らないし、私はその答えを知りたくなかった...。


「...さてと、これからどう動こうかね...。」


...過去から逃げた狩人は冷ややかな空気を持つ季節であまたの星が見える夜空に向けて溜息を吐く...。


これからの未来の不安に押しつぶされそうになりながら、その後ろから追ってくる逃れらぬ過去の悪意から唯一の身内を守るために....。


「...むにゃみゅ...、もう野菜辞めて...。まず過ぎる...。」


「...。こいつは...。」


姉である狼女はこんな状況にどうでもいい寝言を吐く自慢の妹に苦々しいながらも微笑を浮かべ、幸せそうな寝顔に溜息をまた溜息を吐いた...。


あのときに食べた干し肉の味はとても塩辛く、私たち姉妹が咳き込むような酷い味ではあったが、今思えば懐かしい味で平穏な日々の象徴であった私たちの大切な記憶のかけらである...。


...現状、得ている平穏とも呼べる状況がいつまで続くかなど分からないのに、彼女は満たされた笑顔でだらしがない表情を浮かべながら寝ている...。正直、どうでもいい状況なのにふとした笑みがこぼれる...。


そして、彼女はまだ明るく燃えている焚火を見ながら夜の番を務めて、沸かしたお湯で作ったお茶を飲みながら、一息をついた...。


夜空は数多の星々が生まれ、光り輝いている...。その中にはいつも通りギルドで見た別の仲間との光景も思い出せる...。もう会っても現在会うのが難しい相手ではあるが、それでもこの記憶があるのでこの世界でやっていけた部分はある...。

彼らの思い出も彼女の大切な記憶であり、彼女を形作るものでもある...。


...しかしながら、彼女たちの旅はまだ始まったばかりだ...。その道は数多の苦難があることだろう。彼女たち、まだ若く誇り高き狼狩人たちに祝福が旅の導きになるように....。







"ブッーー"と映画の上映が終わるような音がすると同時に私は意識が現実に浮上する感覚がした...。

気が付いたら、そこは映画館でスクリーンには映画の終了のエンディングロールが流れていた...。そこで私はいつも通り着ているはずの学生服を着ている...。


しかしながら、これを現実とは言えないような違和感があった...。最新のVR映画を見たからだろうか...。それとも...?


「...なにやっているのお姉ちゃん?そろそろ起きてよ...。起きろ~~~~!!!」


愛しき妹の声が頭の中からして私は今度こそ夢から覚めた...。そこには昨日夜見ていた焚火の跡が残っている...。いつの間にか寝ていたようだ...。


私は先ほど見た光景を思い出しながら、それを深く考えないようにした....。

私にとってはどうでもいいことだからだ...。妹さえいれば私はそれでいい...。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ