流れ星だよ

　身体が引っぱられる。

　はじめはゆっくりだったけど、だんだんジェットコースターのようなスピードで落ちていく。

　ぼくは名もない流れ星。

　今真っ青な球体の中へ落ちている途中だ。

　生まれた時から１人のぼく。

　落ちた先にぼくの仲間はいるのかな？

　さっそく光る２つの星を発見だ。

　２つの星はとっても仲良しみたいで、同じ動きをしているよ。ふたごなのかしら？

　でも、こんなに仲良しなのになぜかふたごの星が寄りそうことはない。

　ふたごの星が進んだ先には外灯が地面からはえていて、そこからさらに強い光が降り注いでいた。

　あ！　黒猫さんだ。

　双子の星の正体は、猫さんのお顔についている２つの瞳だったんだ。

　猫さんは尻尾を揺らして、また暗闇の中に消えていってしまった。

　うーん。ぼくの仲間はどこにいるんだろう？

　おや？　どこからか楽しそうな声が聞こえてきたよ。

「ミワちゃん、お誕生日おめでとう！」

　この家の中から聞こえるね。

　どうやら今日はミワちゃんという女の子のお誕生日会が開かれているみたい。

　薄暗いお部屋の中、ミワちゃんの目の前に７つの星を見つけたよ。

　もしかしてミワちゃんをお祝いにきたのかしら？

　ぼくもあの星たちの輪の中に入れてもらおうかな？

　その時、ミワちゃんが「ふーーっ」っと星たちに向かってたくさん息を吹きかけた。

　大変！　星たちがどこかへ飛んでいっちゃった！

　輝く星たちがいなくなって部屋の中は真っ暗だ。

　ぱちり。

　ミワちゃんのママがスイッチを押すと、部屋の中がぱっと明るくなる。

　あ！　ミワちゃんの前にいたのは星じゃなくて、誕生日ケーキに刺さったロウソクだ！

　星じゃなくてロウソクの火だったみたい。ミワちゃんは今日で７歳になったんだね。

　また星とは違ったみたい。

　あーあ。ぼくの仲間はどこにいるんだろう？

　しくしく、しくしく。

　なんの音かな？

　あのアパートの中みたい。

　薄暗い部屋。また誰かのお誕生日会をやっているのかしら？

　あら？　星が絶え間なく落ちていくよ！

　もしかして、ぼくと同じ流れ星？

　もう少し近くで確認してみよう。

　しくしく、しくしく。

　うわああん。

　流れ星の真ん中で爆発したように泣き声があがった。

　流れ星の正体は、涙だったんだ。

　またぼくの仲間じゃなかったな。

　うわああん。うわああああん。

　悲しそうな声。寂しそうな声。

　涙はどんどんこぼれていく。

　どうしたの？　なにがあったの？

　君に話しかけられなくて、ぼくもなんだか悲しくなってきた。

　優しい闇に包まれて、いっぱい泣こう。

　そして明日太陽さんに会いに行こう。

　ぼくはついてはいけないけれど、太陽さんからあたたかいハグをもらってね。

　明るい光に照らされて、猫のように伸びをしよう。

　ぼくはもう行かないといけないけれど。

　いつでも君のことを思っているよ。

　いつかまた会おうね。

　結局ぼくの仲間は見つからなかった。

　このあとぼくはどうなるんだろう？　

　もしかして、海の中の星になるのかな？　

　もしかしたら、お洋服の模様になるのかな？

「あ！　お母さん、お星さまだよ！」

　あれ？　またミワちゃんの声が聞こえてきた。

　どうやら星を見つけたみたい。

　スプーンですくって捕まえたみたい。

　ぱくり。

　わぁ！　大変、ミワちゃんがぼくの仲間を食べちゃった！

「うわあ、このお星さまおいしい！　あ、こっちにもあった！」

　お皿の中にはカレーライスが乗っていて、そのカレーライスの中にぼくの仲間が隠れているようだ。

　ミワちゃんがスプーンをさしこんですくい上げた。

　どうしよう！　ぼくの仲間がまた食べられちゃう！　

　はらはらしながらミワちゃんがすくい上げたスプーンの中を覗き込む。

　あれ？　星じゃなくて星型のニンジンだ！

　あー、良かった！　

---

お読みいただきありがとうございました。