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第四章 それでも新たな謎はやってくる







 白繚高校二年B組、賀上大和の現所属はサッカー部だ。

 長身の彼方より背が高く、引き締められた体躯にはスポーツマン特有のほどよい筋肉がついている。アーモンド型の二重の瞳、筋の通った鼻梁。天然だという茶髪の中にはうっすらと赤みが混じっていて、日に透けると華やかさが増す。全体的に日本人離れしているが京都生まれの京都育ち。生粋の日本人だ。そして、彼は彼方の母方の従兄だった。

「従兄が白繚にいるなんて聞いてなかったぞ」

 低い声で涼が呟く。彼方は困ったように眉を寄せた。

「えっと、それは別に黙ってたわけじゃなくてさ……お前は他人に興味がないから、言ってもスルーされるだけだろうと思って……あえて言う必要がないかなと」

 ここは広隆寺からほど近い和風カフェだ。京都らしい町家づくりで、畳や格子細工の椅子や和紙のランプなど、和のテイストがたっぷり入った装飾が美しい。

 とりあえず重たい空気を払拭したくて落ち着いた店に入ったが、彼方の横に座った涼は何も注文しなかった。どうにか引きずってここまで連れてきたものの、同行してくれたからといって怒りを収めてくれたわけではないのだろう。

「先輩の父親が俺の母親の兄さんなんだ」

 実は彼方自身も賀上が白繚の生徒であることを知ったのは、入学してしばらくしてからだった。初めて会ったのは母親の葬儀だが、そこで込み入った話はほとんどしなかったので、学校で彼を見かけたときは本当に驚いた。

 そんな賀上が旅行部への入部を考えていると言って声を掛けてきたのは、ほんの一週間前だった。

 最初、彼方はその話を信じなかった。一年生が学校の特別扱いで立ち上げた部を二、三年がよく思っていないことは知っていたし、月曜日の亡霊の噂は学校中に知れ渡っている。そんないわくつきの部に入部したい上級生がいるはずがないと思っていたからだ。

 しかし、予想に反して賀上は本気だった。何度も何度も部に入れろと声を掛けてくるので、半ば根負けする形で彼を受け入れた。彼方にとってもサッカー部のエースが入部してくれるのはありがたかった。上級生の風当たりが弱くなるかもしれないし、入部希望者も増えるだろう。断る理由は元々こちらにはないのだが、問題は涼だった。あの人嫌いが新たな部員をすんなりと認めるはずがないのだ。

 そこで彼方は一計を案じ、賀上には仮入部という形で京都に同行してもらうことにした。この旅を通し、涼との距離を徐々に縮めてもらおうとしたのだ。――が

(こんなことになるなら、余計な気を回さなきゃよかった……)

 自分の不手際のせいで事態がややこしくなってしまった。

 彼方は気落ちしたまま抹茶ゼリーに口をつける。ほろ苦い渋みが自分の心を象徴しているみたいだ。

「なぁ、涼ちゃん。そろそろ機嫌なおしたらどうや」

 二人の向かいに座る賀上が、涼の代わりに同じ抹茶ゼリーを注文してくれたのだが、やはり涼は手を付けなかった。

「うまいで、涼ちゃん。ここは俺のおごりやから、はよ食べや」

 両腕を組んで賀上を見据えている涼を、賀上は笑顔で跳ね返す。涼の顔は研ぎ澄まされた美麗さがあるだけに凄むと迫力が増すのだが、彼は意に介していないようだ。

「――せ、先輩は白繚では寮に入ってるんだよ。中学を出てすぐに親元離れるなんて凄いよな」

 どうにか話を弾ませたくて彼方が話しかけるが、涼はうんともすんとも言わない。

「まぁ、一度京都から出てみたかったからな。せやけど、まさか従弟のお前と同じ学校とは思わへんかったわ」

「それは俺も驚きました……」

 京都の賀上家にはいつか足を運んでみたいと思うが、まだその決心はついていない。血が繋がっているとはいえ、今まで他人も同然の付き合いだったのだ。今さら親戚面はしにくい。

 どうでもいい話で場を繋いでいると、店員が点てた抹茶を持って来た。賀上が三人分追加注文してくれたのだが、やはり涼は手をつけようとしない。

「……やれやれ。涼ちゃんは、よっぽど俺が同行すんのが気にいらんのやな」

 肩を落とす賀上に、彼方は申し訳ない気持ちになる。これも全て自分の責任だ。謝ろうとすると、涼がおもむろに机の上を人差し指で叩いた。

「お前の魂胆はなんだ?」

「――え?」

 唐突に話しだした涼に、二人は呆気にとられた。魂胆とはなんだ。さすがに失礼だろう。

 涼は厳しい表情のまま再びテーブルを叩く。

「茶番はもういい。さっさとさっきの封筒を出せ」

「――おっ、さすが月曜の亡霊。……なんでもお見通しやな」

 ハラハラする彼方とは反対に、賀上はようやく話が進展したので嬉しそうだ。弾ける笑顔でいそいそと例の古びた封筒を取り出した。

 受け取った涼は丁寧に封筒を開ける。中に入っていたのはこれまた古びた半紙だった。四重に折られた半紙に、つらつらと墨で文字が綴られている。彼方にはミミズがのたくっているように見えるが、これは俗にいう達筆というやつなのだろう。

「……あんた、本気で旅行部に入る気はなかったんだろう」

「え? あー、バレた?」

 半紙に目を落としながら言う涼に、賀上が表情を緩めた。意味がわからず、彼方は二人の顔を見比べる。

「――? どういうことだ?」

「お前は賀上に利用されたんだよ」

「――はぁっ?」

 賀上は面目なさそうに両手を合わせた。

「すまん。旅行部が京都に行くっちゅう話を聞いたもんやから。つい……」

「ついって……」

「月曜の亡霊とお近づきになれるチャンスかな~思うて」

「なに言ってんですか、あんた!」

「かんにんしてや! 涼ちゃんの頭の良さは白繚では有名やろ? せやから、ちょっと謎解きに協力してもらおうかな思うて。涼ちゃんがお前以外の人の話をまともに聞くとも思えんしな」

確かに、それはそうかもしれない。

 切れ者である涼に救いを求めようとする人間は多いが、涼自身が分厚い壁を作って人を拒絶しているので、ダイレクトに近づいてくる者はほとんどいない。皆、必ず彼方を通してくる。だが、だからといって旅行部を利用するなんて姑息すぎるではないか。

「ひどいじゃないですか! 涼と知り合いたいなら、なにも京都まで来なくても……」

「京都やないとダメやったんや」

 キッパリと言われ、彼方は眉間に皺を寄せる。

「なんでですか」

「これや」

 賀上は涼の手にある半紙を指さした。脳裏に『京都に隠された巨大な謎』という言葉がよぎる。

 彼方は脱力して背もたれに身体を預けた。油断したらそのまま椅子からずり落ちてしまいそうだ。

「冗談じゃないですよ。先輩が回りくどいことするから、俺、涼を……」

 引っぱたくはめになってしまったではないか。

「せやから、かんにんって。――けど、俺もサッカー部のエースやしな。ちょっと考えたらわかるもんやろ?」

「――わかるな。故障でもしてないかぎり、わざわざ厄介者扱いされている旅行部に入ろうなんて思うはずがない」

 涼の冷淡な一言が彼方に突き刺さる。

「けど、大丈夫や! 一応今回はほんまに仮入部のつもりでおるし! 気に入ったら、サッカー部との掛け持ちも考えて……」

「断る。邪魔だ」

 これまた冷酷な言葉が賀上を突き刺す。

「涼ちゃん、先輩に向かってそれはないやろ。それに、さっきさりげなく呼び捨てにしたやろ、センパイを付けんかい! センパイを!」

「自分が尊敬していない人物を先輩とは思えない」

 涼があまりにも辛辣すぎて彼方は気をもんだ。さすがに同じ高校に通う先輩にその言いぐさはないだろう。

「すみません。こいつ、正直すぎて……」

「いや、お前も正直すぎるってなんやねん。さすがに傷つくわ。――彼方、おまえ涼ちゃんを甘やかしすぎとちゃうか」

「――その呼び方はやめろ」

「ほな、涼ちゃんがもう少し優しゅうしてくれたら考えるわ」

「あんたに優しくして俺にどんなメリットがあるんだ」

 涼の毒舌はよどみがない。余計なものが増えた怒りがまだ消えてないせいだろうが、賀上の忍耐もたいしたものだ。先輩なのだからもっと怒ってもいいが、なんでもないことのように流している。度量が大きいのだろう。

「――で、これがなんだって?」

 涼は手にしていた半紙をテーブルの上に広げて賀上に話しかけた。

「お? 興味を持ってくれたんか?」

「あんたには興味ないが、このおかしな詩には興味がある。なにかの暗号か」

「――暗号?」

 彼方は初めて真剣に半紙の内容に目を落とした。

 墨でつらつらと書かれていて読みにくい古風な文字だが、文言はどうにか理解できた。

『 鬼が来て 結界破りし暴れ龍 天に昇りて 雄風睨む


  三尊の阿弥陀が見つめし大日如来 仁王を越える


極楽舞いし四羽の神鳥 水天降りて二羽の使いを阿弥陀へ放つ


朱の回廊登りし狐 守りなき日本国臨み 龍の来訪を待つ


初鳴きの鈴虫違えし朱の門 落陽背負いし祖 我が科睨む 』

「なんだ、これ……?」

 さっぱり意味がわからない。遠回しな文言のせいか、脳が理解するのを拒んでいる。詩だとは思うが、これが暗号だというのか。

 賀上を見ると目が嬉しそうに輝いていた。どうやら、暗号に間違いないらしい。

「さすが涼ちゃん。よう一発で暗号やと見抜いたな! 俺が見込んだとおりや」

 賀上はテーブルの上に身を乗り出し、周囲を気にしながら声を潜めた。

「これはな。京都に隠されたお宝の在処が記された暗号やねん」

「なに漫画みたいなことを言ってるんですか」

 子供みたいな発想に呆れて、彼方は即ツッコみを入れる。いくらなんでも宝の暗号はないだろう。

「ほんまやっちゅうねん。億越えはくだらんお宝やで」

「億越え」

 さすがにギョッとすると、声がデカいと賀上に叱られた。

「いや、先輩。億越えって……ないでしょ」

「ええから、お前は黙って話を聞け。一から説明するから」

 賀上は抹茶を口に含んで一息つくと、詩について語りだした。

「この暗号はな、俺の実家の蔵から出てきたもんなんや」

「……はぁ」

「彼方、うちの実家は京都で代々続く宮大工の家系でな。結構、有名な寺社の建築にも関わってんねん」

「へー。それは初めて聞きました」

 母からは何も教えてもらってないので、そんなに歴史のある家だとは知らなかった。

「それでや」

 賀上の声がますます小さくなる。涼はじっと黙って聞いていた。バカバカしい話だと席を立つ気はないようだ。

「四百年近く前のご先祖さま……二代目賀上伝左衛門っちゅうのが、それは腕のええ宮大工やってな。謂れはようわからんけど、あるとき徳川家から褒美として高価な茶碗を賜ったらしいねん」

「徳川家……?」

 歴史上の有名な家名が出てきただけで、話のうさん臭さが増すのはなぜだろう。なんとなく妙な詐欺投資の勧誘を受けている気分だ。

「お前、信じてへんやろ」

「ええ、まぁ。全然……。で、その茶碗が億越えなんですか?」

「そうや。なんでも曜変なんちゃらっちゅう国宝級の茶碗で、今現存しとるのは四つか五つかちゅう、超貴重な茶碗や」

「――曜変天目茶碗。現存するのは三つ。いずれもすべて国宝だ」

「そう、それやそれ!」

 適当過ぎる賀上の説明に、涼が注釈を加える。これではどちらが暗号の持ち主かわからないではないか。

「もし本当に新たな曜変天目が存在するのなら、世紀の大発見だ」

「へぇ……」

「――これや、これ」

 賀上がスマホで現存する曜変天目茶碗の写真を見せてくれた。

 漆黒の器の内側に散らばっているのは大小の斑文だ。青や青紫の斑文が玉虫色に光って見える。まるで茶碗の中に宇宙が凝縮されているみたいだった。

 茶碗のことはよくわからないが、素人目にも凄いものであることは理解できた。

「でな。ここからが本題なんやけど。――まぁ、そのお宝は文字通り賀上家にとってはお宝であり、宮大工としての誇りでもあったんや。物が物だけに門外不出。先祖代々それはもう大事に大事にしてきたらしい。ところがや――!」

 賀上はいいところで切って、再び抹茶を口に含んだ。もったいぶりたいのだろうか。

「――ある時期を境に、そのお宝が忽然と賀上家から消えてしもたんや」

「ある時期?」

「死んだ曾ばあちゃんの話によると、江戸後期あたりまでは賀上家にあったのは確認されとるらしい。せやけど、曾ばあちゃんが子供の頃にはもう宝はなかった。時期的に考えて茶碗が消えたんは明治期頃やないかっちゅう話や」

「盗まれでもしたんですか?」

「う~ん。そこやねん。長い間、盗まれたと思うてたんやけどな。最近になって先祖がどこかに隠した可能性が出てきたんや」

「先祖が隠した? なんで」

「……賀上家はな。明治期に宮大工を廃業しとんねん。代々続く家業を廃業すんのはそれなりの覚悟が必要やったんやないかな。当時の当主……七代目賀上伝左右衛門やけどな。七代目には、情けない思いがあったんかもしれん。ほんで、けじめとして家系の象徴であり誇りでもあるお宝を手放したんやないやろか」

「その在処が、この暗号に隠されてるって言うんですか?」

「そうや」

 賀上は深く頷いた。

「でも、なんで暗号を先輩が持ってるんですか? 実家の人は関わってないんですか?」

「そこやねん。実家には俺の両親とばあちゃんがおるけど、みんなこの暗号に興味がないねん。ただの下手な詩で宝の在処なわけないってな」

「まぁ、そうでしょうね」

 それが普通の反応だろう。

「先輩はこの封筒をどこで見つけたんですか?」

「うちの蔵や。家を取り仕切っとった曾ばあちゃんが亡くなったあと、一度蔵の中を整理しようちゅうことになったんや。それで男手である俺にも声がかかってな。……その時、蔵の中でこの暗号を見つけったちゅうわけや」

 賀上は涼から封筒を受け取る。裏返すと、そこには明治三十年正月の日にちが記されていた。

「明治三十年っちゅうたら、ちょうど七代目が宮大工を廃業した頃と重なんねん。その時期に書かれた妙な詩文が茶碗の空の箱書きと共に出てきたんやで? これはお宝の在処を七代目が書き記したに違いない思うやろ」 

「――お宝ね」

 涼がポツリと呟いて、スマホでなにやら調べ始めた。

「やはりな。……これは、いびつすぎる……」

 なんの情報を得たのか、涼は一人でブツブツ呟いている。

「どうしたんだ、涼」

「いいや?」

 そう言いつつも、涼の口角はわずかに上がっていた。これは何かに気づいている顔だ。

「どうや、涼ちゃん。無理やり旅行に割り込んでしもうたんは謝る! せやけど、俺は本気やねん! お宝探しに付き合うてくれへんか?」

 賀上はテーブルに額を擦りつけた。

 彼方は黙って成り行きを見守るしかない。こればっかりは口を挟むわけにはいかなかった。京都に来たのはあくまで観光目的だ。突如として転がり込んできた謎解きに涼の自由を邪魔されたくはない。

「……」

 しばらく沈黙していた涼は、ゆっくりと彼方に顔を向けた。

「――お前は?」

 不意に問われ、彼方は目を見開く。

「え? 俺?」

「……お前は、この話をどう思う?」

「俺……は……」

 なぜ、涼が彼方に聞いたのかわからず戸惑った。彼方の答えは最初から決まっている。涼の好きにさせるつもりだ。とは言え、必死に懇願する賀上も邪険にはできない。

「お前が付き合ってもいいなら、俺はかまわないけど。……でも」

「だったら、そうしよう」

「はっ?」

 あっさりと涼が了承したので、彼方は唖然とした。

「ほんまか、涼ちゃん! ありがとう!」

 顔を上げて歓喜する賀上に向けた涼の視線は相変わらず冷ややかだ。それでも、おごられた抹茶に口を付けているので、賀上の願いを受け入れるのに迷いはないのだろう。

「涼、いやなら断ってもいいんだぞ」

 自分で好きにしていいと言っておいてなんだが、こんなお遊びに時間を割いてもいいものだろうか。涼にも彼方にも行きたいところはまだたくさんある。

「いやだとは思ってない。このいびつな暗号の謎を解いてみるのもおもしろそうだ」

「えっ」

 まさか、涼がこの眉唾話を本気にするとは。

 つい暗号文に目を落とすと、賀上がはしゃいだ様子でテーブルの上の皿を全て横にどけた。そして、指で半紙の文字を指す。

「さっそくやけど、この一文目や『鬼が来て 結界破りし暴れ龍 天に昇りて 雄風睨む』のことやけど、涼ちゃんはどう思う? 俺は嵐山にある天龍寺やないかと思うてんねんけど」

「天龍寺?」

「ほら、天に龍って文字があるし。あそこは法堂の天井に龍の絵が描かれとんや」

「雲龍図か」

「そうや。その雲龍図にヒントが隠れとるかもしれへん」

 なんてそのままの答えだと彼方は呆れたが、意外にも涼はバカにしたりしなかった。

「……単純すぎる考え方に問題はあるが、宛てもないことだし……天龍寺に行ってみてもいいかもな」

「そうなのか?」

 なぜ、涼がそう思うのかわからない。京都には龍が描かれた寺社なんかたくさんあるはずだ。天龍寺にこだわって嵐山まで足を運び、間違っていたら時間と労力の無駄になる。

「……大丈夫なのか?」

 彼方は賀上に同情して余計なことを言ってしまったと後悔した。

 心中で手を合わせ、涼の天性の才能がいかんなく発揮されるのを願う。早く普通の旅行に戻ってまともなレポートをあげなければ、顧問の北橋になんと言って責められるかわからない。旅の行程の脱線は部活としては好ましくなかった。

「彼方、源氏物語の本の件を賀上に聞いてみたのか?」

 思い出したように涼に問われ、彼方は頷いた。本が送られてきてすぐに賀上に尋ねてみたが、彼はまったく知らないと言っていた。曾祖母が源氏物語を好きだった記憶もない上に、亡くなったときも京都から遠く離れた東京にいたので、曾祖母の行動やその意味もわからないらしい。

「そう言えば、曾ばあさんは花が好きでいろいろと詳しかったって言ってたな……。ですよね、先輩」

「ああ、せやな。実家の庭は曾ばあちゃんが育てた花だらけや。植物図鑑もぎょうさんあるで」

 彼方の後を取った賀上に、涼は「そうか」とだけ言って暗号文に目を落とした。



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