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同じ材料で3つのチーズ 楽しいのは駄犬だけ

 ふーんむ…ソフトクリームを作って売りに出してはいるが消費は間に合わずの…バターとバターミルクも市場に引き取って貰っているけどまだまだ余ってて…タンクは少し前に大容量で長期保存が出来る物に交換はしたので大丈夫…ではあるんだけど…それでも限界というものはあるわけで…

 アレだなぁ…バターとバターミルクだけじゃなくフレッシュチーズも作って消費量を増やした方がいいかもしれないなぁ…その過程で出来るホエーもバターミルクほどではないけど屋台で売られてる飲み物の材料としては一般的な物だし…

 ふむ、チーズ用の機械も一応追加はしてあるし、フル稼働させてフレッシュチーズを3種、それから出来上がったチーズ3種とホエーを市場に持って行って値段交渉、後は市場がどれだけ引き取ってくれるかが問題か…

 とりあえず農場に行ってレモンを取ってきて作ってみるか、使う酢とか柑橘類の果汁によって風味とか硬さとかが変わってくるけど、そうあまり遠く離れた物にはならないので気にしなくてよし、というより酢よりレモンの方が簡単かつ大量に用意出来てお金がかからないし、まあレモンになるよね。

 さて、それじゃあ農場の方に行きましょうかね、ついでに他の果物もいくつか取ってきましょ。


「これだけで3つのチーズが作れるんですか?」

「これだけで3つのチーズが作れるのよ?途中まで工程も同じで使う牛乳と最後がちょっと違うだけ、まずはモッツァレラから作ります、まずこちらに用意してあるフレッシュチーズ用の機械の中に均一化する前の牛乳を100リットルほど入れて60から65度、まあ63度まで温めます。

63度まで温度が上がったらレモン汁を6リットル入れてこの大きなへらを使ってゆっくり撹拌、するとこんな感じで纏まってくるので少し混ぜ続けまして、纏まらなくなったら栓を抜いてこっちのタンクにホエーを移す、このホエーも売り物になるから捨てちゃダメよ?」

「何かに使えるんですかこれ?」

「そのまま飲んでもいいし料理に使ってもいい、屋台なんかでよくある1杯中銅貨2枚なんかの飲物によく使われてるね。

ホエーを全部抜いてタンクに移したらこの塊、これがモッツァレラだね、これを隣に用意してあるお湯を張ってるチーズ用の浴槽に移して練ります、この作業は90度のお湯を使う都合上火傷する可能性があるので、こういう腕まで覆う長い耐熱手袋をつけるかさっき使ってたへら、もしくは熱湯でも大丈夫な種族の娘にやって貰うといいね」

「そういいながらもご主人様は普通に熱湯に手を突っ込んでますよね」

「沸騰してないとはいえ本当に熱いので大丈夫な娘以外は手を入れてないでください」

「誰も手を入れませんよ…」

「最後は手袋をはめての手作業になるから、遅かれ早かれ熱湯の中に手を突っ込む事になるけどね、そしてこうやって練っていって余分な物を抜いて、形を整えたら隣の氷水を張っている浴槽に放り込む、地域によっては塩水だったり砂糖水だったりただの水だったり、この辺りだと作ったその日のうちに使い切りだからただの水ってのが多いかな?」

「塩が利いた薄切りの生ハムに甘みを付けた薄切りのチーズにオイルを垂らして刻んだバジルを散らした物は食べた事がありますね、奴隷としてこの国に連れてこられる前ですけど」

「生ハムは果物と合わせたりもするから果物の代わりに甘いチーズって感じだろうね、ケーキなんかにもスライスした甘いモッツァレラを挟んだりのせたりとかもある、こっちだとただの水で冷やして固めるだけ、塩味をつけるか甘味をつけるかは各自で好きにって感じ。

モッツァレラを全部氷水に放り込んだら次はカッテージ、こっちは均一化した牛乳を使います、でも材料は同じ」

「何が変わるんです?材料は同じなのでモッツァレラと同じ様になる気がしますが」

「固まり方が違う、まあ実際にやってみせるとして、温度はさっきと同じ63度で今度は200リットルでレモン汁も倍で12リットル入れて拡販します、するとモッツァレラの時は一塊になっていたのが…こんな感じでそぼろ状になります。

これは脂肪球と呼ばれるものの大きさの違いによるもの、要は均一化して小さくしてると小さい塊にしかならないって考えておけばいいね、そしてこれも拡販してホエーとチーズに分かれるまで混ぜます。

そしたらさっきと同じで栓を抜いてタンクの中にホエーを移して、こっちのチーズはガーゼで包んで水分を抜きます、本当は1日冷暗所でに放り込んで自然に抜けるのを待つのがいいんだけど、ちょっと時短でこうやって重石を載せて一気に抜きます。

で、待っている間に3つ目のフレッシュチーズ、これはガーゼに包んでない残りのチーズを使います、これもそう難しいものではなくて、まずこっちの生地なんかを捏ねたりするのによく使う機械、台所にこれのちょっと小さいのがあるはず、パスタとかパン生地なんかを捏ねるのに使ってるやつ、中身はちょっと違ったりするけど。

これに出来たばかりのカッテージチーズを入れて、さらに先ほど分離させたホエーを少々、これは少しずつ様子を見ながら注ぎいれてしっかり混ぜる、するとだんだんきめ細かく滑らかになってきて、最終的にはこんな感じで硬いバターの様な見た目になります。

混ぜ終わったら機械を止めてへらでこそぎ落として、こういう四角か丸い入れ物に詰めて形を整える、今回はがっつり混ぜて一塊、つまり一つに纏まってるからこのままモッツァレラと同じ氷水に放り込んで冷やし固めればクリームチーズの出来上がり。

こんな感じで作るの自体は簡単だから、明日からぼちぼちチーズの生産をよろしく、市場が要らないって言ったらモッツァレラを使ったハードチーズに切り替えかなぁ…そっちなら保存が利くし…でもベルセホーンのチーズは結構貴重だから…

とりあえず出来たばかりの3種とホエーを持って市場に行ってくるから、カッテージは水分を抜き終わったらこっちの容器に、クリームチーズとモッツァレラもそこに用意してある容器に適当に放り込んでおいてねー?売る時はどうせ量り売りだから多少形が崩れたり割れたりしても気にせずに」

「はーい」


「へー…これは第三牧場の新製品のフレッシュチーズかー…んー…ほんのりレモンの香りと酸味がついてる以外はほぼ素材そのままでこっちでよくあるチーズだね」

「素材そのままだからこそ後からどうとでも出来ちゃうのがいいところでもあり、保存が利かないから基本その日のうちか持って2日か3日というところなのが問題、その分美味しいんだけどね、雑味がほぼないし、扱い方次第でメインにもデザートにもなる」

「私はシンプルにチーズをのせた香草焼きが好きですね、熱で程よく溶けたチーズが旨味をさらに足してくれますし、チーズについているわずかな酸味がさらにお肉の味を引き立ててくれますし、ただお酢をかけるだけとはまた違っていいんですよね」

「それで主様が今作ってるのは?」

「牧場で働いている娘が奴隷落ちする前に食べた事があるって言ってた生ハムとチーズのサラダ、砂糖を練りこんで甘味を付けたチーズを薄切りにして、塩が利いた生ハムと交互に並べていくだけの簡単サラダ、仕上げに生のパセリやバジルを刻んで散らしてオリーブオイルを少々、これだけ」

「トマトの代わりに生ハムを使ったカプレーゼみたいな物ですかね?薄切りなのでどちらかといえば前菜とかそういう感じでしょうか?」

「あーんむ…んー…なるほど、ちょっと塩辛いくらいの生ハムにチーズのほんのりとした甘みと酸味が程よい感じでこれはお酒が欲しくなってくるね」

「これなら前菜だけでなく冷製パスタに載せて食べても美味しいかもしれないね、塩味も利いてて酸味とほんのりとした甘みもあるし」

「で、これ今度からカジノの軽食に並ぶの?」

「多分並ぶかな?臭いがきつい物じゃないし、量を食べるものでもなく2枚か3枚軽く摘まんでって程度の物だし、カジノで出す時はこんな感じでチーズが見えるように半分に畳んで半月状にしてちょっと見た目のボリュームを出す感じかな?トマトをチーズとハムで挟んで生ハム包みのカプレーゼでもいいけど」

「トマトが入っている方が軽食やサラダとしてはいいでしょうけど、お摘みとして食べるならトマトが入ってない方がいいですね、トマトの味や香りが薄切りのハムやチーズの邪魔をしますし、かといってチーズを厚切りにしてしまうと今度は生ハムが負けてしまいますし、これはもう手を加える必要がないくらいには完成されているかと」

「シンプルだからこそ言ってやつだね、オパールとオニキスお座り、口をあけーい…ほれ」

「がふがふ」

「ヴォフ」

「しかしベルセホーンのフレッシュチーズですか、王城の方にもいくつか降ろしたりは?」

「市場にしか持ち込んでないから王城の方は知らない、料理長が見つけたら勝手に買っていくんじゃない?育てるのが大変だから貴重ではあるけどゼロってわけじゃないし、1日に1頭から200リットルからは採れるからそれほど高くはならないっていう、それでも普通の乳牛の4倍以上の値は付くけども。

後アイス用の生クリームだとかジュース用の牛乳だとかはずーっと卸してるし、料理長が自分で作ってたりするんじゃない?均一化してるからモッツァレラは無理だけどカッテージとクリームチーズは作れるし」

「王城での食事も美味しいのは確かなんですけど、使っている物はカジノで出されている軽食の方が上等で美味しいんですよね、こちらは生産者から直接一番良いものを仕入れてるような物ですし。

料理長の目利きが悪いとは言いませんけど、あちらは予算も決まっている中で出来るだけ良いものをとなっているので、採算度外視に近いこちらに比べると今一つなんですよね」

「つまりは王城の方で仕事をしている時にもっと美味しい物を食べたいからそっちに安値で卸してほ欲しい、って事かな?」

「そうですね、あちらで働いている時はあまりゆっくり出来ませんし、ゆっくり出来る時と言えば食事かお風呂の時くらいですので」

「ボクはそっちに行く事がないからわかんなーい、オパールもオニキスもここでお留守番だし、エステルが不在の時は食べたいものを食べるだけだし、焼肉屋がそろそろ長い休みに入るから今日は焼肉屋で食べ放題だもんねー」

「がう」

「ヴォフ」

「リサにやって貰う事が出来れば引きずってでも行くんですが、今は特にないですからねぇ」

「ボクの国と友好をーって言っても親同士がマブダチといってもいい状態だしねー、ボクは何もせずここで国から届くあれ頂戴これ頂戴っていうお願いを聞いたり聞かなかったりするだけー、これ頂戴ってこっちからお願いをする事もあるけど」

「そういえば焼肉屋は今日が今年最後の営業日だったね、後で応援に行かないとなぁ」

「とりあえず今はこちら、カッテージとクリームチーズもあればいいのですが、モッツァレラの方を往生に卸すとしたらいくらになります?」

「市場への卸しがこれくらいで…餌代とかそういうのもあるからいろいろおまけしてこれくらい?」

「結構高いですね、もう少し安くなりませんか?」

「レモンも結構使うからねぇ、これ以上安くすると赤字になっちゃうから無理ー」

「リサを好きにしていいのでこのくらいになりません?」

「ボクを人に売って値下げ交渉するとかどこのダメ亭主だよ」

「まあ、無理な物は無理だからこれで買ってねとしか」

「仕方ありませんね、この価格で行きましょう」

「市場に卸すよりさらに4割安い時点でもう下げようがないしねぇ、一応王城に卸すチーズは牛乳とか生クリーム、バナナやマンゴーと一緒に纏めておくね」

「お願いしますね、ところでリサ」

「なーにー?」

「オパールとオニキスにあまり食べさせすぎるとまたプクプク太っちゃいますよ?チーズは美味しいですけど太りやすいですからね」

「その時はまたダイエットだね、以前のようにコロコロプクプクし始めたらディアナとミネルヴァに預けて駄犬と一緒に追いかけっこかな?」

「がうぅ…」

「ヴォフゥ…」

「あ、食べるの止めた」

「散歩のときにしっかり走ってれば大丈夫だとは思うけどね、焼き肉食べ放題しても体重は増えてないし、食べて動かないのは問題だけど」

「太りすぎてダイエットに出て以降以前より動くようになったよねー、何が怖いのかは知らないけど」

「一応駄犬の方が格が上だからねぇ、普段は小っちゃい豆柴みたいな姿をしてるけど、オパールとオニキスからしたらその場で仰向けになって降伏、苦しむ前に死なせてくれるのを祈るような存在だからね、駄犬にそんな事をする気はないけど」

「がう…」

「ヴォフ…」

「できれば追いかけっこはもう勘弁して欲しいらしい」

「海だと一緒に並んでたりするのにねぇ」

「がうがう…」

「ヴォッフ…」

「楽しいのはじゃれてくる向こうだけでこっちは必至でそれどころじゃないってさ、まあ本能が働いてる証拠だね、それじゃ私は焼肉屋の手伝いに行ってくるからまた後で」

「はいはーい、今やってる仕事が終わったら食べ放題に行きまーす」

「今日は特上の食べ放題コースでお願いします」

「はいはい」

フレッシュチーズ

牛乳と酢、またはレモンやスダチ等の柑橘類の果汁があれば簡単に作れる、クエン酸でも可

たまにカッテージチーズを作ってモッツァレラチーズと言ってる人がいるが、材料も作り方も同じなので完全な間違いとも言い難い、使う牛乳が均一化してあるとそぼろ状のカッテージ、してないものだと纏まってモッツァレラになるという違いはあるけど…

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