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一応製薬会社です シンプルだけど美味しい鍋

「あー…こんなのんびりとした時間を過ごすのはいつぶりですかねぇ…」

「約1年ぶりかなぁ?今年は釣り旅行に行けなかったし、お盆に実家に帰って3日4日休んだくらいで」

「卒業してからしばらくは釣り三昧で遊び放題だったのが懐かしいなぁ…家事手伝いと書類整理はあったけど」

「今は皆会社を起ち上げていろいろやってますからこうやって揃う事もめっきり減りましたね、それこそ年末年始と釣りの祭典くらいというか…」

「私は研究室に籠って研究するだけだから割りと楽、ただ数字とかグラフとか見つつ人体実験してたら2日くらい経ってるだけ」

「アリスの会社はもう製薬会社の看板を下ろしてスパイス研究所に改名したらどうです?」

「ちゃんと製薬もしてるからそれは出来ない、最近の研究はもう製薬3スパイス7になってるけど」

「アリスの会社の名前を知ってる人の9割は間違いなくスパイスを売ってるところだってなりますよ、むしろ薬作ってたの?って思う人の方が多いんじゃないですか?」

「最近はもうその辺のスーパーとかコンビニにも並んでるもんね、出先で何を食べるか困った時はもうアリスのところのスパイスを買って唐揚げ弁当とかステーキ弁当に掛けて食べてるし」

「アキラはもうちょっと飲食店を利用したらどうです?」

「弁当なら車の中で食べれるからなぁ…自動運転にしておけば移動中もゆっくり食事が出来るし」

「こうして運送業界がブラックを超えて深淵に飲み込まれていくんですね」

「失礼な、自動運転で運転時の疲労を軽減、荷物の積み下ろしもほぼ自動化で負担を軽減、最後に届け先まで持っていくのは人力だけど、最終的に人は事務所でミスがないかの確認をするだけにしたいね」

「そして訪れるドライバー失職の危機」

「どうないせと…でもまあ、防犯の都合上完全に無人ってのは出来ないかなぁ?昔みたいに荒れてるって事は無いけど、完全に無人にすると盗みに来るやつがねぇ…」

「そういえば昔ありましたね、飲食やコンビニが使ってた無人の自動配送機を破壊して商品を持っていくってのが」

「だから完全に無人にするのは無理だね、ドローンによる配送も重量制限があるし、距離制限もあるし、結局は人の手で運ぶのが確実なんだよね、集積所での作業は全部機械任せには出来てもそれを人に届けに行くのはねー」

「国内でも昔の首都は治安が相当酷かったみたいですしねぇ、遷都して逃げて首都を変えるくらいには」

「歴史の教科書に載ってるくらいだしねぇ、世界一発展したスラム街として」

「そりゃ昔の首都丸々全部スラムになってたらねぇ…今は綺麗に掃除されて何も残ってないけど、ちょっと調べるだけでも隔離壁を建造しようとか、道は全部封鎖されてたとか流通も止めてた出てくるくらい荒れてたみたいだし」

「今じゃ信じられないような時代だったのは確かだよねぇ…っと、5匹同時ー、お兄さんこれも天ぷらにしてー」

「シシャモモドキも天ぷら?」

「シシャモも天ぷらで」

「私の釣ったシシャモは炭火焼でお願いしまーす」

「はいはい」


「そんな感じで湖で釣ってきたのがこのワカサギモドキとシシャモモドキ」

「シシャモって淡水にいるんですか…?」

「普通のシシャモは海に出て産卵の時に川に戻ってくる、けどこのモドキは最初から最後まで淡水、普通のシシャモとの違いはそのくらいかな?身の質は同じで味もほぼ変わらず、最初から最後まで淡水だからちょっと川魚特有の泥臭い臭いもあるけど、そこまで長生きするやつじゃないから気になるほど臭いはつかない、焼いたり揚げたりしたら魚を焼いた時に出る香りとかそういうので上書きされる」

「なるほど…んー…このぎっしり詰まった卵がプチプチしてて美味しい…」

「昔このシシャモの卵だけを食べたいと思った事もあったなぁ…行儀が悪いのは分かっていても身と卵を分けて、卵は卵、身は身で別にして卵の方を大量に食べたいというか…」

「まあ、そういう事もあるよね、気持ちはわかる」

「あ、店長もわかるんだ」

「美味しいところって沢山食べたくなるじゃない?好みにもよるけどいくらとかハラミとか」

「そうそれ、美味しいところだけを食べたいんだけどそういう部分は量が少なくてねー…」

「シシャモモドキの卵は無理だけど、数の子とか普通のいくらと黄金いくら、たらこに明太子はいくらでもあるからそっちで我慢してね?」

「そういえばたらこと明太子の違いってなんなんです?同じタラの卵ですよね?」

「唐辛子を使った塩漬けが明太子、使ってない塩漬けがたらこ、塩漬けにせず煮付けにしたのが真子煮、で…あまりやる人は居ないけど、真子を塩焼きとか天ぷらにしても美味しいのよ?小粒じゃなく大粒でプチプチしてるやつをね」

「焼きたらこではなく漬ける前の物をですか」

「そう、卵の美味しさ自体を味わう感じ、最初はじっくり熱を入れないとパチパチ弾けるけどね」

「いいなぁ…食べてみたい…」

「でもそれはまた今度だね、今日はお待ちかねの牡蠣とハマグリの鍋がメインなわけだし、今出してあるワカサギモドキとシシャモモドキは前菜みたいな物だからね」

「塩焼きと漬け焼き、天ぷらも2種、さらに唐揚げもあって待ち時間に摘まむにはいいですよね」

「ところでこっちの瓶に入ってるのはなんですか?」

「ただの揚げ物用スパイス、天ぷらにかけてもいいし唐揚げにかけてもいいし使わなくてもいい」

「んー…んー…?これは…何の香りと言ったらいいんでしょうね?いい香りではあるんですが…」

「いろいろ入ってるからねぇ、このスパイスはこの香りなんだ程度に考えておくのがいいね」

「ハーブやスパイスの調合は化学と医学の集合体、人がいい香りだと感じ味覚で美味しいと感じる数値に調整すれば、どんなに臭い物でもいい香りと感じる事が出来るし、身体に良くて不味い物でも調整してしまえば美味しいとしか感じなくなる、さらにスパイスには漢方やメディカルハーブと呼ばれる薬草を使っているので使って食べるだけで健康になれる、可能性がある」

「これって漢方なんです?」

「今年の新作、研究室に籠ってモニターと睨めっこしつつ数々の人体実験を得て出来上がったのがこれ」

「人体実験をしてるんですか…」

「別名試食会、今年の新作は揚げ物をいくら食べても大丈夫を目指して作った、データ上なら揚げ物を毎日摂取してもこのスパイスを適量使っていれば上がっちゃいけない数値の上昇がかなり緩やかになる、週に3回程度の揚げ物ならむしろ健康的になるくらい、当然スパイスだけを単体で摂取しても健康面に影響はなし」

「私達のところだと漢方なんかは全部タブレットになって食事と一緒に…ってのは無かったですねぇ」

「食事は食事、薬は薬って分けられてたからなぁ…」

「生薬も使い方によっては食事を美味しく出来る、美味しく食べるだけで健康になれるとなれば皆挙って買い求めるから常に品薄」

「そーなんだよなー…味と香りを変える目的もあるけど、弁当買って食べる時に使おうと思って棚を見たら空になってる事が多いんだよなー…だから常に2本か3本はストックしてるわ」

「そんなに売れてるんですかこれ?」

「ここにあるスパイスは社長権限で確保して送った物だけど、全国のスーパーコンビニ等で入荷待ち状態なのは確か、でも生産量には限界があるからどうしようもない、諦めて入荷を待って」

「さて、そろそろお鍋の蓋を開けるよー、味付けはしてないからポン酢でもゆずポン酢でもごまダレでも好きなのをつけて食べてね」

「おおぉー…すっげぇこれ…牡蠣しか見えない…」

「こっちもハマグリしか見えませんね、殻はありませんけど」

「殻はある方が見た目はいいんだけど食べた後がね?だからハマグリの方も殻から外してある」

「ここの鍋って毎回こんなに豪華なんですか店長?」

「毎回ではない、白菜しいたけ豆腐鶏肉ネギなんかの方が多いかな?テレビなんかでちょろっと見てあれいいなーって思ったらアレンジして作る事もある」

「これもアレンジした結果なんですかね?」

「そうだね、牡蠣鍋の方は白菜だけじゃなくてしいたけとかネギとか彩ににんじんとか入れてたりするけど、これはそんな物はなし、白菜と牡蠣と昆布出汁のみ、ハマグリはそのアレンジで牡蠣をハマグリに置き換えただけ」

「うわ…この出汁すご…牡蠣の出汁ってここまで真っ白になるの?」

「ハマグリも凄いですね、豆乳を入れました?ってくらい濁ってて底が見えませんし」

「ここまで出汁が濃いと味覚がおかしくなりそう…」

「出汁を口の中に直接含んだらそうなるだろうけど、絞り出されたのが煮詰まってこうなってるだけだから、本体の方はほどほどよ?それでも出汁に使ってるから濃いのは確かだけど」

「怖いもの見たさで出汁を一口…んぉ…これはすっごい…なんというかすっごいという言葉しか出てこないくらいに濃いし美味しい…」

「まあ、最初は牡蠣とハマグリを食べ進めて空きスペースを作って、空きスペースが出来たらこれ、えのきと寒ブリ、牡蠣とホタテの貝柱にカニとエビでしゃぶしゃぶ、さらに湯葉」

「そういえば湯葉って高級品のイメージがありますけどどうなんですかね?」

「破らず綺麗に取るのが面倒なだけで高級って事はないかな?豆乳とホットプレートがあれば簡単に作れるし、大きさを変えれば一回で取れる大きさも変わるから使い方いろいろ、包み上げとか蒸し物とか生春巻き風とか。

高級な様に感じるけどそれはお店の場合取り扱う際に保存の問題とか、乾燥させてから売るからその手間とかいろいろで値段が上がるというのもある」

「なるほど、んーむ…出汁に潜らせただけの湯葉が美味しい…」

「お兄さーん、こっちも湯葉頂戴ー」

「はいはーい」


「いやー…出汁も残さず綺麗に食べ尽くしてしまった…」

「締めは雑炊かと思ったらそうでもないんですね」

「まさかの茶碗蒸しならぬ大鍋蒸し、というより鍋で出来るんですね」

「要は温度を保つ事が出来れば卵は固まるわけだから、火加減に気を付けて蓋をして焦げないよう沸騰しないよう温度を80度にして10分待てば出来ちゃう。

温度が高すぎると沸騰してすが大量に出来るし、お鍋という都合上直接火にかけてるから卵を入れて混ぜて下がった温度は極々弱火で沸騰しない様にじっくり上げるのがコツ、強火で一気に上げちゃうとそこが焦げ付くしすが出来る、これもまあ慣れだね」

「普通の茶碗蒸しは砂糖とか醤油とか味醂が入ってますけど、ここまで濃いと塩だけでも十分ですねぇ」

「余ってた牡蠣とカニとエビの一部が入ってるだけでも贅沢だよね、待ってる間は残ってた寒ブリとか貝柱をそのまま刺身として…次にこれほどまで贅沢なお鍋が食べれるのはいつになるのか…」

「ニンニク鍋はニンニク鍋でインパクトと最初に一口は躊躇いましたけど普通に美味しかった上に結構豪華でしたよね」

「アレ食後のケアが無かったら体臭とか口臭どうなってたんだろ…」

「間違いなく問答無用で風呂場に叩き込まれて後からでもすぐ効くハーブティーを飲まされてただろうね」

「そこまで酷くなるのかー…あれだけ食べてて臭わない方がおかしいとは思うけど…締めでラーメンにしてさらに追いニンニクもしたし…食べてる時は不思議と何も気にならないんだけどなぁ…」

「そして気にならなくなっていってケアをしなくなった愛好家は仲間内からもちょっと煙たがられるし最終的仲間はずれにもさせる、自分の体臭とか口臭は気が付かなくても他人の体臭には敏感な物で、近くに来るだけでもうっ…と来るからねぇ…なんならちょっと喋ると口臭も撒き散らされるから近寄りたくないって感じになる。

食べる前の臭いと食べた後に体や口から発せられる臭いは別物ってのもあるけどね、生のにんにくは少量とか調理中ならまあいい匂いだなーってなるけど、口臭とか体臭はいろいろ混ざって出てくるから悪臭にしかならない、だから食後のケアは大事」

「半分引き籠りで男嫌いにはなれど女を捨てたわけではないので生物兵器化するのは避けたいですねぇ…あー…食後のバナナソフトが美味しい…でも焼肉屋だと裏メニューなのがちょっと残念ですね」

「作ってるのは焼肉屋だけど売ってるのはお店の中じゃなくて外の屋台だからね、売り子さんもお休みで暇を持て余してる花街の嬢を採用しているから男性客も釣れて売り上げはなかなかいい感じよ?休みの嬢を雇うという都合上日替わりになってるのと、屋台の大きさの都合上2人までしか入れないから割りと競争が激しく争いが発生するのが難点。

争いもまあ…花街らしく屋台の開店時間までに起きれたら勝ちって状態になってるけど」

「花街の人って大体何時起きなんです?結構バラバラな気はしますが」

「大体は10時とか11時まで、休みとなると用がない日は15時まで起きないとかもある、だから早く起きて焼肉屋まで来て屋台の準備をしたら勝ち、みたいな状態に出来るわけだね」

「なるほど、結構平和的な解決方法ですね」

「でもなんでそんなに屋台で働くのが人気なんですかね?買う方ならわからなくもないんだけど、甘いし冷たいし美味しいし」

「それはちょっとした特典があるからだね、朝昼夕と食事が付いてくるし、1人前の並盛と冷麺が無料で食べれてお小遣いも出ますよってなれば飛びついてくるよねって」

「あ、なるほど、無料で3食出てきてお金も貰えるなら競争も激しくなりますか」

「お金に余裕があるのと無料で食べれるのは別だからねー、特典は他にもいろいろあったりするけど」

「マンゴーソフトうまーい…で、他の特典ってなんなんですか?」

「単純にソフトクリーム食べ放題なのと、王女様達が利用してる最上階の部屋で食事が取れる、というより1階は常にほぼ満員だし、そうなると落ち着いて食事を取る事が出来ないからどうしてもね?場所が場所だから王女様と一緒に食べる事になる時もあるだろうけど、毎日利用しているわけではないからちょっとした王様気分を味わいつつ見晴らしのいい最上階を貸切状態で街並みを眺めながらね?」

「その特典はいいですね」

「カジノも地味に住居を兼ねてるから5階建てでちょっと高さも出してたりするけど、焼肉屋はそれ以上だからね、カジノの屋上で栽培してるカクテル用の花なんかを眺めつつってのも出来るね」

「花を見ながら肉をがっつくってのもなんだか…うーん…そういう物なんですかね?」

「まあ、何を見ながら食べるかは嬢次第かな?それじゃ私は空いたお鍋を片付けてくるから、何かあったら厨房までー」

「はーい」

葵さん家の牡蠣鍋

鍋の底に白菜の葉の白い部分を薄く敷き、焦げ付き防止と蒸すための水分として昆布出汁を少々、そして牡蠣を蓋が閉まる程度に山盛りにして蒸すだけ

ある程度食べ進めて隙間が出来たら生牡蠣やら白菜のとっておいた緑の部分、ほかに用意しておいた食材などをしゃぶしゃぶして食べる材料自体は超シンプルな鍋

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