生きてるから被害は軽微 遠慮はしない
んー、今日の乳牛は落ち着いているので乳搾りも比較的安全、ただちょっとでも荒くすると暴れ始める事には変わりないので様子を見ながら少しずつ、いろいろ難はあるけど1頭から毎日200リットルとかなりの量が取れるし、特に餌に気を使わなくても牧草だけでかなり質の良い生乳が取れるのがいいところよね。
うちでは農場で採れた果物も餌として与えているので質はさらに良くなってるし、味もかなり濃い物になってるからこれを味わったらもう…でもナディから取れる生乳に比べるとまだまだか…ナディは元々雌の肉牛だったけど狐さんの度重なる改良…というか肉体改造の末に極上の生乳が取れる牛になってそこからさらに牛人族に変化?したわけだし、それに追いつけるのは後どのくらいだろうかねぇ…?
まあだからと言ってこれがまずいって事はなく、むしろ今の状態でも若干生クリームに近いくらいの濃さはあるし、極上も極上よね、普通に飲む場合ちょっと分離して飲料に適した状態にしてあげないとダメだけど。
とりあえずキュッキュッキューのジュッジュッジューと今日の分を全部搾り取ってあげて、乳房炎を防ぐためにお乳回りを拭いてあげて清潔にしつつ張りすぎないように全体を軽くマッサージ、ストレスを与えないために自由に出歩けるようにしまして…
乳牛が身軽になって気分よく散歩に出かけたところで牛舎内のお掃除、普段の気性は荒くちょっとした事で角で突き上げたり蹴飛ばしたり踏み潰してくるけど、牛舎内で用を足したりはしないので掃除はちょっと楽、その分乳牛がトイレと決めているところは凄い事になるけど…
寝床用の藁を全部掻き出してちょっと日干し、その間に床を掃いて土を全部外に出して、壁に付いた汚れは拭き取りましてー、日干しして乾燥させた藁は乳牛のトイレに運んで糞と混ぜて堆積場へ、新しい藁を寝床に敷いたら適度な感想を保つために除湿機も設定しまして…よし、乳牛と乳牛用の牛舎はこんな物かな?
次は搾り取った生乳の処理をする必要がありまして、搾り取った生乳は全部加工場へと運び込み終わってるので…まずはゴミや異物を取り除く作業から、まあ基本機械任せだから放っておけば全部終わるけど。
とりあえず身体を洗って着替えたら加工場に行きましょ、妊娠した乳牛が増えて取れる生乳の量も激増中だし、貯乳用のタンクを増やしたりバターの生産なんかにも手を出さないとなぁ…飲料用の牛乳と生クリームだけじゃちょっと消費が追い付かない…
バターを作る過程でバターミルクが出来るけどそれはそれで飲料用に出来るし、市場でもバターミルクは取り扱ってるから第三牧場産バターミルクとしてちょっと高級路線で取り扱って貰うのもありか…?
まあこの辺りは市場の人と話し合う必要もあるし、サンプルを持ち込んで試飲して貰わない事には何ともだし、うちのお店で使う…分は余裕で確保できるか、今日だけで3.5トンの生乳が取れたわけだし、妊娠してないのがさらに後20頭も居るわけだし、それを考えると…これから追加する貯乳タンクはちょいと空間を弄って1つで10トンは保管可能にして、5年くらいは余裕で腐敗せず鮮度を保つ様タンクの素材にクリスタルとミスリル銀の合金を使って、さらにダメ押しで腐敗にカビと言った物を徹底的に排除するまじないを付与すればいいかな?
さて、ちゃちゃっとお風呂に入って汚れを落としてきましょ、タンクの作成はそれから。
「今日搾った生乳はー?」
「まだ半分以上が異物とゴミの除去中です、何せ量が一気に10倍以上になりましたのでなかなか…」
「元々数頭だったところに第一では飼育出来ないってなったのが全部こっちに来たからねぇ」
「乳牛が全てベルセホーンになったのも痛いですね、出産も終わって落ち着いて生乳が取れなくなった時点でベルセホーン以外の種は全部他の牧場に売ってしまいましたし」
「でもああしないとねぇ、ベルセホーンの角で突き上げられたり蹴られたりして死んじゃうし、少し前に大暴れして死人は出てないとは聞いたけどお腹に大きな風穴が空いてる娘とか骨が砕けてる娘とか結構居たし」
「そこはまあ薬などのおかげで即死さえしなければどうとでもなりますので」
「死ななければいいってものじゃないのよ?危ないと思ったら逃げる、第三牧場は広いし、ベルセホーンが暴れて走り回っても脱走の心配はないから落ち着くまで遠くから様子見しなきゃ、警備担当の娘みたいに鍛えてて完全に押さえつけられるなら別だけど…」
「複数暴れだしたので手が足りずつい」
「ま、いいんだけどね、終わった事だし、とりあえず生乳用の貯乳タンクだけじゃなく分離機なんかも大型化しないといけないねぇ、一度に処理出来る量を増やさないと生乳用に貯まっていく一方だし、全部大型化しないとダメそうね」
「冷却タンクも現在満タン状態ですし、だからと言って処理をしないと生乳用タンクが空かず一時保存出来ない状態なので冷却タンクからお願いします」
「はいはい、それじゃあ牛乳の冷却用から大型化していきましょうかね、それから生乳用を作って余裕を持たせて、バター用クリーム用と下から大型化を図ってキャパを増やす感じで」
「交換した後の古い機材はどうします?というより大型化した機材がここに入ります?」
「まあ無理だろうね、だから入る程度に大型化しつつ、空間をちょっと弄って内容量を増やそうかなと、今のタンクや機材はそういう処理をしてないから見たままの量しか入らないけど」
「なんで最初から大容量にしなかったんですかね?」
「最初はベルセホーン5頭くらいの予定だったんだもん…大型は第一牧場の方に作る予定だったってのもあるし…それをちょっと忘れていただけともいう」
「溢れて無駄になるという事にはなってないからいいんですが、覚えているうちに作って欲しかったですね」
「超速で作るから許して?」
「キングバナナを20本くれたら許します」
「じゃあ後で農場から採ってくるね?」
「ありがとうございます、最近手作りバナナアイスに凝ってるんですよね、冷やし固めただけの生クリームアイスに裏ごししたバナナを混ぜるだけのシンプルな物に。
問題は1日経たずに全部無くなるということでしょうか…皆甘い物が好きですし…」
「キングバナナ自体が結構甘くて香りがいいってのもあるし、それで作るバナナソフトとか不味いわけがないもんね」
「そう、なので出来る前から行列が出来てるんですよ、そして自分の食べる量が雀の涙程度しか残らない事もしばしば…こちらからアイスを作りたいからキングバナナを10本も20本も下さいと農場にいうわけにもいきませんし…」
「1日の生産量は大体決まってる…というより無駄にならないように調整してるからねぇ、でもいえば普通に出てくるよ?普段使わないだけでそれ用の促成栽培肥料もあるし、毎日10本とか20本、それ以上欲しいってなったら育てる本数を増やせばいいだけだしね」
「でも毎日作るわけでもないので増やすとそれはそれであとで困りそうな…」
「うちのお店で売るって手もあるけど…かき氷と違って作る手間とか洗い物が増えたりとかであまりよろしくないのよねぇ…」
「お店はお店でただ増やせばいいってわけじゃないんですねぇ」
「片付ける時間に洗い物の時間にと考えて追加しないといけないからね、かき氷なら氷を削るだけでいいし、氷自体は冷麺やドリンクに使ってるから機材とか洗い物が増えるって事は無いのよね。
ソフトは手作りだと作るのに時間がかかるから手作りはまず無理で、出したら出したで結構注文が入るのはわかってるからそれ用の機材を作る事になるんだけど、そうなると分解整備してまた組み立てるっていう手間がねー?
生クリームも大量生産できるようになったのは確かだから売りに出せるなら売りに出したいところ、でも焼肉屋だと割とキャパオーバー気味で無理、カジノはそういう店じゃない、おしゃれなシャーベットは出すようにはなったけど。
でもまあそうだねぇ…バターを作るのは確定なんだけど、それでも生クリームはまだなお余るから、花街で働く嬢の人達向けにお店を出そうかな?」
「結構なお値段になりそうですけど大丈夫なんです?」
「意外と小金持ちだから大丈夫、それじゃちゃちゃっとタンクを作ってくるから引き続き分離作業なんかをよろしくー」
「わかりました」
「という事で今日からソフトクリーム始めました、手入れの手間が増えるけど生クリームがだだ余りするのがちょっとなーって事でこちら、キングバナナソフト、赤マンゴーソフト、黄マンゴーソフト、そして砂糖だけのソフト、バニラは栽培してないし買うと高いので入れてません」
「バニラが無いとかある意味嫌がらせじゃないですかそれ?」
「バニラ高いのよ…輸入品になるってのもあるけど1キロで大銀貨5枚するのよ…加えるのは少量でいいけどキングバナナもびっくりな値段になるよ?」
「あー…私達の給料1ヶ月分がふっ飛ぶんですね…」
「そう、だから香り付けは無し、濃厚なミルクの香りでお楽しみくださいって感じ、これはこれで美味しいのよ?砂糖の量も出来るだけ減らして濃厚なクリームが味わえるようにしてるし、バナナとマンゴー入りは砂糖使ってないし、それだけ自信ありなソフトクリームよ?」
「休憩に中に裏からお邪魔して貰ってきましょうかね?」
「ちなみに、バナナジュースにマンゴージュース2種、この上にソフトクリーム4種のどれかを載せて注文する事も出来る様になりました、バナナにバナナでもいいし何もないプレーンソフトでもマンゴーでも。
でも柚子とかレモンとかライムのドリンクには付ける事は出来ません、牛乳に水を混ぜるような物だしね」
「あー…アイスミルクを飲みきった後に氷がちょっと溶けて牛乳と混ざってるあれですね…」
「あれよりは濃いからマシだけど美味しくない事には変わりなく…後柑橘類との相性はよろしくないからお腹を下しちゃう、だからソフトクリーム始めましたーの貼紙とともに柑橘類と一緒に摂取するとこうなっちゃうかもよー?とも書いてある」
「あれ何でなんですかね?」
「牛乳の成分が柑橘類なんかの果汁と混ざると凝固するのよ、その凝固がちょっと問題で、普通に牛乳を飲んでもお腹を下す事が無い人が下す様になっちゃうの。
胃酸も酸性だからお腹の中で固まるよー、だから無害だよーっていう人もいるけど、その組み合わせだとダメになるって人が少なからずいるのね?大丈夫な人は大丈夫だけどダメな人はなぜかダメ、片方ずつなら大丈夫だけど両方一緒に摂取するとダメになっちゃうっていう、それもあるから一応注意書きとしてこうなるかもしれないのでこの組み合わせではお出ししません、ってしてあるの。
かなり昔に相性が良くないって言われていたのはその組み合わせでお腹を下す人がいたから、それで良くないって言われてた感じかな?
乳糖不耐症とかそういう小難しい物があったりもするけど、そっちは柑橘と牛乳単体で頻繁に腹下し、でもそれとは明らかに別症状なんだよね、単体は大丈夫で多く摂取してもケロッとしてる、なのに柑橘類と牛乳を合わせたらコップ一杯で下しちゃうっていう。
でも牛乳寒天にみかんは大丈夫だったり、ミルクアイスにみかんも大丈夫だったりと、まあ個人差もあるけど一応体調を崩さないようにするためにって事かな?」
「なるほど、特定の組み合わせのみに反応して体調を崩す人はいますし、科学的に悪くないよと言ってもそれで証明が出来ない事も多々ありますよね」
「そう、確率的には低いけど、いろんな種族が住む世界だとなおさら気を付けた方がいいのは確かだからね、なので柑橘類にソフトは付けない、単体で単体注文する人には一応注意書きをしっかり読ませて念押し、それでも買うならまあ後は自己責任…だけど…
嬢の人達の場合はねー…お仕事に差し支えるから出来るだけ控えて欲しいんだけど…まあお腹を下した嬢が誰かわかれば次回からお腹を下してたからダメって釘をさせるからいいといえばいいんだけどね、その間はお薬を持って下して倒れてる嬢の居るお店を梯子しないとダメだけど…」
「私は柑橘類と牛乳で下した事が無いので何ともですけど、症状的にはどんなものなんです?腹痛で動けないとか?」
「動けないって事はない、ただ下っ腹がかなり痛むみたいだね、まず胃の中にある状態はまだ問題ない、胃を抜けて…ちょっとお腹触るね、この辺りからこうお腹の中を移動して、この辺りに差し掛かると猛烈な腹痛に襲われる、それから痛んだり少々治まったりを繰り返しつつこうお腹を中を移動していって、終着点に全部辿り着いて空っぽになれば治る。
腹痛が発生するまで時間はかかるけど、発生してから治るまでの時間も結構早い、要は空っぽにさえしてしまえばもうそこで終わりだからね。
でもお腹に時限爆弾を抱えてるような物なので…接客仕事の嬢はできれば控えてほしいなーって…すぐ治るけど急に来るしその間はトイレにこもりっぱなしだし…」
「なるほど…まあ死活問題ですよね、接客中に耐えがたい痛みが来てトイレに行く必要があるとなると…」
「すぐ治すお薬もあるけどそれはそれでちょっと荒療治というか、原因となる物を無理やり押し流してお腹の中の環境を正常化させるから、短時間ですぐ治るけどやっぱりその日はもうダメって感じ、お腹がまたぐるぐるする事は無いけどお風呂に入って綺麗になったらお部屋でゆっくり食事をとって休みましょうねって感じ」
「食事は必要ですかね?」
「原因となる物、つまりお腹の中に入ってる物全部押し流しだから物凄くお腹が減る、大体夜から長くて明け方まで持つ様に調整して食べてるんだけど、その調整してる分もぜーんぶ流れていくから、もう強制的に休みにして食事を取らせて休ませるのが一番、後最悪店も閉める事になるし」
「店を閉めるのは…あー…なんとなく予想できました…」
「そう、嬢も接客のプロだからついつい我慢して続けちゃうのね?それで早々にお客さんが帰れば何事もなく、帰らなければそのうち限界がきて…まあ、周りもフォローして引っ込めるから大丈夫だとは思うけど、常連気取りのどういうお店かわかってない人は手とか腕とか掴んで引き止めるからね、そういう時に限界が来るともう店を閉めるしかないね」
「掃除に消臭にケアにといろいろ大変な事になりますね、手とか腕を掴んで止めた人はもっと大変なことになりそうですけど」
「それはもう間違いなくスラムに拠点を置く自警団の皆さんに引き渡しは確定、お店の損失分を埋めるのは勿論の事、最悪もう人前に出てこれないかもしれない嬢への慰謝料はきっちり貰うよねって」
「もしそうなったら大体いくら払えば許して貰えるんでしょうねぇ?」
「時間にもよるけど、開店して1時間くらいならそこから閉店までに稼げるはずだった額、まあ日によって変わるしお店によるから真ん中くらいのお店の平均で出すけど、大体小金貨2枚くらい、それに加えて嬢への慰謝料が大銀貨7枚から、もう二度と店には出ないってなったら辞めるまでに稼いでくれたであろう中金貨2枚が詫びとして妥当な額かな?」
「腹痛という名の客の人生を終わらせる爆弾を抱えてるって考えると怖いですねぇ…」
「相手に気を使える人ならそんな事にはならないけど、自分本位の独り善がりだとやっちゃうだろうね。
よし、ペースト作りは中断して1時間休憩ー、今日のお昼はあまり物の特上を使った焼肉丼ー、アイスが食べたい人はそのあとでー」
「よっしゃー!特上焼肉丼だー!ハラミとホルモン大盛りで!」
「タカミヤちゃんは相変わらず遠慮という物が無いね」
「私もロースとタン大盛りでお願いします」
「うーんこっちもだった」
「特上は滅多に食べれませんし、その特上が無調で食べれるなら当然大盛りでおかわりもしますよね」
「ごもっともで、タレは自分で好きなのをかけてねー」
「はーい」
牛乳と柑橘類
牛乳に含まれる成分が酸性に反応すると固まる、レモンを絞ってよく混ぜて漉すとカッテージチーズが作れる
一緒に摂取する場合科学的には無害とされている、が…人によっては特定の条件が重なったときのみダメになってお腹を下すとかもあるので気を付けよう




