ファンキーな屋台 動きは鈍い
んー…今日の屋台もいい感じかな…暖簾や旗に書かれてる名前は相変わらず毎日変わるけど、お品書きの方は手書きで変わらないから多分問題なし、何も知らない初めての人が来たら混乱するのがちょっとアレだけど…
とりあえずちゃちゃっと下処理を済ませた魚を料理しまして、後はテレビスタッフと店長さんが来るのを待つだけ、でもまだ時間に余裕はあるのでその間に今日使う釣り道具の用意もしておきましょ。
「大将やってるかい?」
「いらっしゃい、注文はこちらのお品書きから選んでね」
「じゃあこのふわふわフライとかば焼きのおにぎらずを頂こうか…と!いったところで今日のターゲットはこれだぁー!ドン!加工済みでこれもう何を釣るのかわからんね、暖簾と旗も焼きおにぎり爆裂軒とかわけわかんないよ…
まあ今日のターゲットはこれです、ズーナマとかナマジーとか言われてるやつの外来種、アメイジングチャネルキャットことアメナマちゃんです、昔食用として輸入して養殖したのはいいんだけど、増水したり生簀が壊れたりして野生化した結果繁殖、野生化して特定指定喰らっちゃったやつだね。
で、今も昔も生きたままの持ち運びは禁止、釣ってその場でリリースする分には問題なし、食べる場合は2日か3日ほどウナギみたいに流しっぱなしの水で泳がせて糞やら泥やら全部出させた方が美味しいんですが…一般人はそれは出来ないのが辛いところ…
ですが!ちょっと抜け道というか裏技があります、一般人は生きたままの持ち運びは出来ないけど例外として生きたまま持ち運べる人が存在します、それは漁師!または漁業組合の人ですね、その人達であればそもそも他所の川や池や湖に放流せず市場へ直行という形になるので生きたまま持ち運ぶ事が出来ます、逆に言えば市場以外に持っていく事は出来ないんですけどね。
それが何の関係があるの?といえば…こういう事です、漁業組合の出張の買取所、今はまだここにしかありませんけど、こちらの生簀にはこの川で釣られて綺麗な水を流しっぱなしにして泥抜きをしているアメナマちゃんが沢山います。
はい、もうお分かりですね?今までは食べるにしてもその場で絞めて泥抜きをしないまま持ち帰らないとダメでしたが、スカリに入れるなどして生かしておいて帰る時にこちらに持ち込めば買い取ってくれるんですねー。
そして買い取って貰ったお金で泥抜き済みのアメナマを買ってその場で絞めて貰えば美味しいアメナマを持ち帰る事が出来る、追加料金は掛かりますけど3枚卸にして貰って身だけを持ち帰る事も出来ますよ?」
「特別に隣で屋台を出させて貰って売ってるこれらのナマズ料理は全てこちらの出張買取所兼直売所で買ったナマズになります、1キロ個体で大体1000円、3枚下しにして貰う場合は追加で1匹辺り50円、これは生ごみ処分の値段も含まれています」
「針を飲んでるやつもたまにいるけど、それもこういうやつ、ワカサギでおなじみの針を飲んだやつがいると反応するやつね、それのちょっと強力なので探知するので針を飲んだ個体を売りつけられるってことはないから安心してね?
で、釣り人が気になるであろうアメナマちゃんの買い取り価格がこちら100グラム30円!売る時はこちらの籠に入れて検量、2キロジャストなら600円で買い取ってくれるよー?買い取り価格が低すぎるという意見は聞きません、売る時はグラム100円くらいになってるけど流しっぱなしにしてる水道代やら電気代やら人件費やら色々あるからね?
後直売所にもなっているだけはあって市場を経由するよりは安いんよこれ?市場を通してスーパーなんかに流れると人件費輸送費等がさらに追加されてグラム200円とかになるし、そこも考えてあげてね?
そんな感じで買取所を紹介したところで屋台で朝食です、ちょっと変わった導入にしてみようぜーってなって屋台を出して貰いました、ついでにターゲットの魚を料理して云々以下略みたいな?」
「ウナギも低コストで完全養殖出来る様になったからウナギの代用でっていうのは無くなっちゃったけど、鰻と比べて脂が少なくさっぱりしてるからこれはこれでフライとか天ぷら、ムニエルにと油を追加する料理に向いてるのよね。
それに脂が少ないからって蒲焼きに向いてないって事もないのよ?ちょっと淡白になって染み出てくるような脂が無いってだけで、蒸してから焼けばふわっと、蒸さずに炭火だけで火を通せば香ばしく弾力が少々あるかば焼きに。
今揚げてるふわふわフライはすり身にして山芋を少々、たっぷり空気を含ませて蒸して固めた物をカット、衣をつけてフライにとちょっと手間はかかるけどはんぺんっぽい感じになって美味しいね」
「このフライはサンドにしてもいいしバーガーにしてもいいよね、タルタルでもとんかつソースでもどっちでも合う感じ、衣はサクサク中はふわふわ…というわけでちょっと衣がへにゃっとするけどお昼用にアメナマのふわふわフライサンドのお弁当を作って貰いましたとさ」
「出来立ての方が美味しいけど屋台をまた出すわけにはいかないしねぇ、どこかその辺のお店に食べに行ってもいいけど」
「出来立ては今食べればいいだけだぁね、だからスタッフも出来たては今しか食べれないから今のうちに注文しろよー?お弁当はサンドかバーガーかおにぎらずの3種しかないけど」
「パックに詰めるとなるとまあその3つよね、幕の内弁当みたいに色々詰めてもいいけどきんぴらとか煮物とかないしねぇ…その3種で我慢して貰うという事で」
「海苔があるからギリギリふわふわフライと蒲焼きを乗せたアメナマ海苔弁当が作れるくらいだね」
「はい、朝食を終えて買取所から離れてやってまいりました、こちら毎度おなじみお店の裏にある川!裏とはいっても裏手方向にあるだけでまあぼちぼち離れてますけどね、歩いてこれますけど、後妹ちゃんは屋台を片付けているのでまた後で合流します。
この川では汽水域近くから整備で上流側に作られている段差近辺まで、まあほぼ全域ですね、どこでもアメナマが釣れる様になっています、なので支流の細いところでも簡単に釣れるので何でもいいから釣りたーいって人はこの水系のどこかで餌釣りをやってみてください、面白いくらい簡単に釣れますよー?餌はチキンナゲットでも唐揚げでもレバーでもなんでも、ナマズ用の練餌を買う方が安上がりで日持ちはしますけどね。
では本日の道具紹介、アメナマに使う道具はこちら、ロッドはMLからMH、スピニングはC3000、ラインはスピニングが4号でベイトが5号です、仕掛けも超シンプル、中通しの重りにサルカン、それにちょい投げなんかでよくあるスナップ付きの仕掛け、これですね、今回はトリトンから出ているちょい投げナマズ仕掛けを使います。
スナップをサルカンにつけたら仕掛けを引っ張り出しまして、ちょっと型がついてるので軽く引っ張って伸ばします、ある程度まっすぐになったらナマズ用の練り餌で針を包み込んで後はもう投げるだけ、簡単でしょう?
量が釣りたい場合は2セットか3セット用意して竿立ても用意するといいですね、今回はスピニングとベイト合わせて3本持ってきているのでもう2セット用意して投げておきたいと思います。
でーですね、こちらのナマズ仕掛け、普通のチョイ投げと違ってスナップ付きスイベルから針までが近い、何なら10センチくらいしかなかったりしますが、これは餌がすぐ底に沈む様にするためですね、アメナマは底に沈んでる物を好んで食べるのでゆっくり沈ませるよりはすぐ底に沈んでべたーっと張り付いてるくらいが丁度良いんですよね。
生きて泳いでるワカサギなんかも食べたりしますがそこまで積極的ではないです、どちらかといえば死んで底に沈んだやつとか、ほとんど逃げない動かないやつだったりとか、そういうのを好んで食べる魚です、力はありますけど泳ぐ速度はそれほど速くないですからね。
よく生きた魚を追いかけて食い荒らすって昔テレビで放送されていかにも獰猛で危険なってイメージを植え付けようとしてましたけど、ナマズって大体通常時で秒速10センチ、暴れてもまあ20センチとかそこいらなんですよ、時速にすると0.36から0.72キロ、食い荒らされるぞとか言ってた魚って遊泳、まあ通常時ですね、大体時速2キロからは出せるんですよ、瞬間となるともっと早いです、なのでナマズって積極的に魚を追いかけて食べるって事は出来ないんですね、そもそも追いつけないから。
個体によって差はあるから全部がそうだとは言いませんけど、基本的に泳いで追いかけてってのは得意ではないです、待ち構えているところに通りかかったらばくっとくるくらいです、トップで普通のナマズを釣る時もバズの場合ナマズのいるところに投げてその上を引いてくる、フロッグの場合頻繁に止める、ノイジーは動かす速度が非常にスロー、たとえばナマズがいる川でもナマズの隠れてるところとは違うところにバズを投げて引いても寄ってこない、フロッグを止めずにチョンチョンチョンと動かし続けても来ない、ノイジーも速度を上げると来ない、基本は待ちのスタイルなんですよ、食べれる位置に来るまでじーっと身をひそめる、そして通りがかって食べれるぞってなったらバコーンって奇襲をかけてくるんですよ。
アメナマやオオナマズも同じ、基本は待ちで動かなくて臭いのあるものが沈んでたら寄って行って食べる、動いてる物は近くに来なければスルー、バスを釣る人はアメナマはそれほど釣れないけどヘラを釣ってる人は頻繁にアメナマを釣ってたりするじゃない?あれって臭いに寄せられてるのもあるけど動いてなくて食べやすいから釣れるのよ、バスは程々に早く動かしても追いついて食ってくるけどアメナマは追いつけないから食ってこないし釣れない。
私がちょこちょこルアーでアメナマを釣ってたりするけど、クランクやミノーで釣るって事はほぼなくて、基本はラバージグとかジグヘッド、それとテキサスで底で物凄くスローに動かしてやってるのね、クランクやミノーで釣れた時はちょうど真下にアメナマがいたって時くらい、サスペンドで物凄くゆっくり誘えば釣れない事もないけど、バスの誘い方とは違う事をお忘れなく。
それと、ルアーで釣る時はこういう臭いのある集魚剤、これに浸してあげるとよく釣れます、その時の誘い方はほぼ放置、あまり動かさない、動かしたとしても底をゆっくりずる引き、頻繁にこうやってリフトアンドフォールをやっても追いつけないから諦めちゃう、バスはすっとんでくるけどナマズはねー…
そんな感じで、獰猛だなんだといわれて特定を食らったアメイジングチャネルキャットはワカサギやらオイカワやらは食べれど基本は死骸、生きて泳いでるのは上に通りがかったやつくらいしか食べれてないのでしたとさ。
あ、ちなみに泳がせも基本的にはちょっと引っ張られたりして泳ぎが阻害されて、それで襲いやすく食いやすくなってるから積極的に食ってきてるのよ?人間でいうと服を引っ張られてる状態で走ってる様な物、簡単に追いつけるから優先的に狙ってくるってやつだね、群れから離れて孤立してるから襲ってきてるわけじゃないのよー?むしろ普通に追いつける青物なんかは群れに突っ込んでいく方が捕食確率は高いしね、突っ込めば何匹かは食えるって感じで。
でも本能的に食べやすいのを襲うから泳がせが成立するのよね、肉食獣が弱ってたり弱いのから優先して狙う様に魚も動きが変な、鈍ってるやつから優先して食ってくる、群れから離れたところにいて動きが遅いぞ?ってなるともうすっ飛んでくる、孤立してるだけで普通に動けるならすっとんでは来ない、放っておけばまた群れに合流してきて纏めて食えるチャンスが出来るから。
アメナマも泳がせで釣ろうと思えば釣れるから、その時はハヤとかフナとかを泳がせてみるといいよー?でも泳ぐのは遅いから重めの重りを付けて一定の範囲から逃げれないようにするとか工夫は必要だね、泳がせなくてもちょっと脳を潰して絞めてやって、腹をちょっと裂いて臭いが出る状態にして打ち込みにする方が釣れるけども。
でー、まあ見ての通り基本アメナマは待ちの釣りです、簡単に釣れるといえば釣れるんですけど臭いに釣られて寄って来るまで時間が来るので、最初は投げたらロッドをガッとシャクって練り餌を針から外す、また付けて投げて針から外すというヘラブナで餌を底に溜めて寄せて釣るっていうアレを真似をするといいです、やらなくてもいいですけどね、水に溶けだす臭いの量が増えるってだけでこれ一個でも放っておけば寄ってきます。
とりあえず試しにその辺に生えてる茎の長い雑草、これに練り餌を付けてちょっと足元に浮かべておいてみましょう、そのうちこの雑草がバフッという音と共に川に引き込まれていくと思います…って言ってたら出ましたね、足元に潜んでたんかお前…
ま、カメラにばっちり映ってたと思いますが、こんな感じで吸い込んで食べるので動きが早く見えますけど基本動きはゆっくりです、戻って行く時ゆーったり泳いでたでしょ?臭いに釣られて泳いでいく時もゆーっくりゆーったり泳いでくるのでのんびり待ちましょう。
それじゃ掛かるまで待ちでーす、待っている間に妹ちゃんも来るでしょう、多分、そして今から掛かるまでのシーンはバッサリカットされる事でしょう、喋る事ももうあまり無いですけどね」
ファンキーな屋台
ご主人様の使っている屋台は毎日暖簾の形や旗の形、そして名前も変わって安定しない
焼きおにぎりと暖簾に書いてあれど焼いてないおにぎりしか取り扱ってなかったり、拉麺と書いてあってもうどんしか置いてなかったりするわけのわからない屋台、お品書きだけは毎回手書きなのでお品書きを見れば何を売っているかはわかる




