寝る子は育った あこがれの新車
「お手」
「がうっ」
「起立」
「がう」
「礼」
「がふ」
「お座り」
「がうっ」
「良く出来ました、たんとお飲み」
「がふがふ」
居候先に帰ってきた翌日、軽く芸を仕込んでみる。
こちらの言う事はちゃんと聞いてくれるし、特に暴れたりもしない、中々良い子だ。
「熊と言うより犬ですね、それも良く躾けられた」
「私達の言う事は聞くんでしょうかね…?」
「んー?話してる内容も理解してるし、言う事もちゃんと聞くよー、無理な物じゃなければ」
「がふがふがふ」
「今は何と?」
「お腹いっぱいになったから寝る」
「なるほど」
「さっぱりわかりませんね」
「まあ、こちらの言う事はちゃんとわかってるから、変なこと言ったりしなければ大丈夫だよ」
「それならいいのですが、器用に寝ていますね」
今日も変わらず咥えたまま寝ると…
口を開けて外す時に嫌がったりはしないからいいんだけどね。
ロザリアを部屋に連れて帰り、用意した小さいベッドに寝かせてからまた戻る。
「で、今日の予定ですが」
「ふんふん」
「私は午前中は用事が有りますので、ロザリアの許可を取りに行くのは午後からですね」
「じゃあその間にお買物にでも行こうかな」
「行くのは構いません、構いませんが…必ず誰かに連れて行ってもらう事…
1人にすると何所へ行って何をするか分かりませんので…」
「心配性だなぁ」
「あなたは無傷で無事でも、迷子になった挙句、周りの被害がとんでもない事になりますので…」
「前後左右何所を向いても似たような景色ばかりなのが悪いと思う」
「それは…何とも言えませんね…整備された、と言えば聞こえはいいですが、建物の形などが違うだけで、全国どこへ行っても似たような所がありますからね…」
「だから私が迷ったのは悪くない」
「ならせめて地図を持って行くか、誰かと一緒に行くくらいはしてください…
私はもう出ますので、後は恵里香にでも連れて行ってもらってください、それと帰りにでも以前行った服屋に行って服を受け取ってくださいね、代金はもう払っていますので」
「はいはい」
「それと」
「それと?」
「今の姿でもう一度採寸して何着か注文しておいてください、デザインなどは恵里香にお任せしておけば間違いはないので」
「はいはい」
「いざゆかん、お買物の旅」
「ストップストップ」
「ほえ?」
「ほえ?じゃなくて、1人で外出禁止って言われたばかりでしょう」
「あ、そうね」
首根っこを掴まれて制止されたのでおとなしくついていく。
「さ、乗って下さい」
「はいはい」
「それと帽子、忘れずに被ってくださいね」
帽子をかぶって耳を隠して準備完了。
「お嬢様は帰りにとでも言ってましたが、先に服屋の方に行きましょう」
車に乗り込みいざ出発、まずは…服屋か。
「御兄妹か何かですか?」
「まあ似たようなものです、これと…後此処から此処までお願いします」
「採寸しますので此方へどうぞ」
「はいはい」
「それにしても兄弟そろって綺麗な髪ですねぇ、何か特別な手入れでも?」
「髪や肌とかに合わせた自家製の洗髪剤とか香油使ってるくらいかな?」
「あー、なるほど、市販品ではないと」
適当に会話しつつ採寸開始、以前と同じように首回りや胸囲などを計測。
「んん?この感触は…ノーブラですか?」
「あー、そうだね、今は付けてないね、授乳するときにいちいち外すのも面倒だから昨日からつけてないや」
「お子さんがいらっしゃるので?」
「そうだねー、今は家で寝てるよー」
「お母さんに似て可愛い子なんでしょうねぇ」
「だねー、あれは美人さんに育つよ」
話しながらも手は止まらず採寸完了。
「採寸終わりました、此方になります」
「では、以前と同じく3日位で出来ると思いますので、出来上がり次第ご連絡させて頂きますね」
「はい、よろしくお願いしますね」
「ありがとう御座いました、またの御来店お待ちしております」
「さ、以前頼んでいた服も受け取りましたし、次行きますよ」
「はいはい」
スーパーは確実に行くとして、次は何所じゃろな。
「この数値本当ですか…?」
「ですね」
「コルセットとか絞めつけてるでもなく?」
「そのままですね、後子供がいるそうです」
「経産婦でこれって反則すぎない?」
「身長175、股下87、バスト93、ウェスト56、ヒップ87。
何所のモデルですか?って数字ですね、あ、胸もまったく垂れていませんでしたよ」
「なぜ垂れていないと?」
「授乳するときにいちいち外すのが面倒だからって、ノーブラのまま来てました。
上着を脱いだ時目の前にドーン!って。
歩いてる時にやたらと揺れてるからおかしいなとは思ったんですよねー。
あ、パンツは中々可愛いのを履いてました、デフォルメされた狐さんプリントでした」
「それはまた…」
「ばっちり脳内に焼き付けておきました、ですので上書きされない様、今後あの方以外の採寸などは一切しませんのでよろしく」
「いや、ちゃんと働いでくださいよ」
「他にも一杯若い子がいるじゃないですかー」
「ここに来る人は大体どこかの企業の社長とかそう言った方ですからね。
流石に不備が有ってはいけませんので、例え脂ぎった人が来てもちゃんと今ま通りにちゃんとする事。
雇ったばかりの娘達ではあしらい方がまだまだですので、どうしてもというのであれば早く1人前にする事ですね」
「はーい」
服屋を出て移動すること暫し、次は何所へ行くのやら。
「時間はまだまだ余裕が有るので、小物を買いに行きましょう」
「小物…なにかあるっけ?」
「まずは時計ですね、帰ったら少々お勉強しますので、その時に最低でも数時だけでも覚えてください。
そうすればデジタルの方でも時刻が分かりますので」
「まずどれがアナログでどれがデジタルなのか」
「まあそれは追々、少しづつ勉強していきましょう、看板に書いている物が読めるだけでも、少なくとも現在地がある程度は分かりますので」
「はいはい」
先程の服屋とは違い少々小さめのお店に到着。
車も…2台くらいしか止まってないな…
「さ、中に入りますよ」
服屋ともスーパーとも違う店の中へ。
「んー、時計が一杯だ」
「時計は分かるんですね…」
「これと似たようなのは有るから」
秒針分針時針の付いたやつを指さす。
「そうですね…これ、今何時何分か分かります?」
「10時13分位?」
「ですね、掛かれている数字は?」
「なんて書いてあるのかさっぱり」
「んー、あなたの所で1から12はどう書きます?この紙にお願いします」
「こうだね」
1から12までの文字を書いた紙を渡す。
「左から1で一番右が12で宜しいですか?」
「だね」
「では少々交渉してまいりますので、暫しお待ちください」
交渉に行ってしまったので店内を少々物色。
円形ではなく四角の物やら、箱みたいなもの、筒みたいなものも結構種類がある。
針の位置で辛うじてわかるものが半分、分からない物が半分。
宝石をこれでもかと使った物まで有るな…
「やあそこの美しい御嬢さん、何かお探しかな?」
「うん?」
ショーケースの中を覗いていると後ろから声をかけられる。
「特に何かを探しているわけではないけど?」
「そう、ならこの時計なんかどうです?
もっとも、この宝石の輝きも貴女の美しさの前では霞んでしまうかも知れませんが。
貴女の美しさをさらに引き立てる事でしょう」
「あ、そう」
「よろしければ私がプレゼントいたしましょうか?
かわりと言っては何ですが、1日ほどおつきあいをして頂ければ、と思いますが」
んー、どうしたものか…?
「何をしているのですか?」
「いやー、いろんなものがあるなーって見てた」
「そうですか、文字盤を作って取り替えるだけなので明日にはできるそうですが、受け取りに来るのは何時でも良いと言う事なので、今度服を受け取るときにまたここに寄りますよ」
「はいはい」
「ちょっとすまないねそこの御嬢さん、今私が彼女と話をしているのだよ」
「あ、そうですか、次に行く所が有るのでお帰りさい。
さ、次に行きますよ」
「次は何所に?」
「バッグとかお財布ですかね、あなたのその不思議空間は便利ですが、流石に堂々と目の前でやられると…」
「なるほど?」
「ちょっとー!」おーい!」
店を出て車に乗り込み、次の場所へ向けて出発。
「くそっ、何だあの女は、もう少しで口説けそうだったのに…」
「いやー、最初から無関心だし、興味なんて全く無かったようだけど」
「そんな事は無いだろう?この身に着けている物を見れば女は誰だった興味を抱くさ」
「まあ、宝石類が大好きな女性が多いのは認めるさ、ただ興味が無い女性もいるにはいる、そういう事だな」
「せめて名前と住んでいる場所さえわかれば…そう言えばまた来るとか言っていたな。
つまりは何か注文をして行ったという事、おい店主、先ほどの方達の連絡先を教えてくれ」
「いや、無理」
「なぜだ!」
「守秘義務とか普通にあるし、知らん男から電話がかかってくるとか普通に怖いわ」
「すでに顔は合わせている、知らない仲ではあるまい」
「はぁ…社会的に死ぬのと物理的に死ぬのどちらが良い?」
「なんだそれは?一体どういう脅しだ?」
「一応お得意様だから連絡先も知ってるし住所も知ってる、知ってるからこそ言って置く、やめておけ」
「来ていた服も身につけていた物も安物、車だってボロい軽自動車じゃないか」
「あれは御買物用だ、スーパーで食材を買うのに数千から億もする車に乗ったりドレスを着たりするか?」
「する人はするんじゃないか?」
「まあ一定数居なくもないだろうが、自分から襲ってください盗んでくださいと言ってるようなものだな。
治安は良い方とは言え盗難が無いわけではないからな」
「つまりはその対策だと?」
「みたいなものだな、まああの軽に関しては運転していた嬢ちゃんの愛車だが」
「ならやはり普通の一般人では?それなら臆する事は無いな、興信所に頼んで早速探して貰おう」
「だからやめて置けと…まあこれも社会勉強か…」
「何か言ったか?」
「まあ程々にな、断られたら大人しく諦めて置け、そうすれば何も起こらず今まで通りに暮らせる。
興信所が引き受けたら…」
「引き受けたら?」
「今度あの嬢ちゃんたちが来た時に全力で土下座して置け、そうすれば恥をかくだけですむ」
「よくわからんな、まあいい、下の者に連絡した所5件中1件の所が引き受けてくれたようだ、後は底があの御嬢さんの居所を突き止めてくれるだろう」
「そうか…まあ何かあれば全力で土下座、ちゃんと謝れば社会的に死ぬだけで済むから無駄な抵抗はしない事だな…」
「それにしてもこの車揺れが凄いね、家を出た時から思ってたけど」
「型落ちも型落ち、中古価格10万とか言うかなり古い代物ですからね」
「へー…」
「サスが硬ければエンジンもおんぼろ、シートもガチガチ、騙し騙しで使ってますからねぇ」
「葵さんの乗ってるようなやつでいいんじゃない?」
「あれは新車でしか買えませんし、1台3000万からはしますよ」
「ほーん…乗ってみたいとは?」
「何度か乗っては居ますし、運転もしていますよ、ただ買い物には不向きなので…」
「ふーん」
「まああなたがいれば問題は無いでしょうが、荷台は狭いですし2人乗りで後部座席何か有りませんので、後部座席にちょっとした荷物を置くこともできませんし…」
「確かに、あの車はこんなに広くは無かったね、ゆったりと座る事は出来たけど」
「そう言ったわけでお買物にはこういった車が最適です、もっと適した物も有りますがね」
「たとえば?」
「今前方を走っているアレですね、軽トラック。
あれも2人乗りですが、後ろが全て荷台です、広々としているので大きなものも積めますし、積載量もそこそこですね」
「ならあれでいいのでは?」
「お嬢様に怒られたんですよねぇ…軽トラは止めろと。
それ以来これが私の愛車です、中古で買ってからもう7年は乗っていますので何時お迎えが来るかはわかりませんが」
「ほーん…」
「さ、着きましたよ、ここはそれほど時間はかからないでしょう」
車を降りて次の店へ、しかし腰に来るなこの車…
「どうしました?そんなに腰を曲げて?」
「いや…腰が…」
「シートとか硬いですからねぇ、まあ慣れますよ」
「慣れる慣れない以前にもっと楽なのが良い…」
「まあ、この子が壊れたら考えましょうかね」
「よし、じゃあ壊そう、今すぐ壊そう」
「ストップ」
「なに?」
「壊しちゃ駄目、というか人の物を壊そうとしない」
「?」
「そんな不思議そうな顔をしない、あなた所は人の物を壊してもいいのですか?」
「普通は駄目だね」
「なら壊さないでください、こんなのでも私の愛車なんですから、それに今壊れると歩いて帰る事になります」
「ぐぬぬ…」
「はいはい、中に入りますよ」
まだ暫くこの苦痛が続くのかと思うと…どうにかならんものか…
「好みの物は有りましたか?」
「んー、どれも今一ピンとこないなぁ…」
柄の入った革製のものが多いが、どれもこれもてかてかしてるし…
「革も何か安いっポイし…あまり丈夫ではなさそうだし…これなら自分で作った方が?」
「これブランド物なんですけどね…それも偽物じゃなくてちゃんとした本物の…」
「有名な所の製品であろうがなかろうが、それは値段とは関係ないんじゃないかなぁ…」
「何か有名な人が作ったから高い、とかはないんですか?」
「無いんじゃないかな?あー、そう言えば…」
「何かありました?」
「王族御用達になったからって変な理論持ち出して1年で工房潰した人ならいる」
「一体何やったんですか…」
「本来紙で作るハリセンを竹で作った、後雑誌の記者を買収して大人気とか嘘書かせてた」
「それで潰れたんですか…というかハリセンあるんですね…」
「あるよー、紙製品で誰にでも作れるから参入しやすいし、良い物であればちゃんと無名でも売れる、有名になっても質が悪ければ売れない」
「そうですか、まあこちらでのブランドは基本、その質を保ち続けている、または向上させている保障でもありますので」
「そんなものか」
「そういう物です、それでどうします?」
「買わない方向で、事後承諾になるだろうけど手持ちに有る素材で作る」
「わかりました、では買わないとして、形などで一番好みの物を教えてください」
「んー、これとこれ?」
「これとこれなら…家に似たようなのが有りましたね、では次に行きましょうか」
「はーい」
「さっきの綺麗な人なんだったんでしょうね、革がどうのとか言ってましたけど」
「どこかのお嬢様か何かかな?」
「それにしては何か服とかは安っぽかったけど、後手作りとか言ってたし」
「初めてのブランド品を見て質が分からなかったんじゃない?」
「あー、それは有るかも、なんか世間知らずっぽい雰囲気も有ったし」
「店長には報告しておきます?質がどうのーって」
「そうね、まあこんな客がいましたよって序ででいいでしょう」
「ん?何かあった?」
「あ、店長、さっき綺麗な人が居たんだけど、けなすだけけなして何も買わずに帰って行きまして」
「それはまた…随分失礼な…」
「質が悪いとか安っぽいとか、自分で作った方がマシとか言ってましたよ」
「マシとまでは言って無かったような…後安っぽいとは言っても質が悪いとも…」
「似たようなものでしょ」
「なるほどねぇ…どれを見ていってたか覚えてる?」
「この辺りのバッグですね」
「どれどれ…あー…」
「何かありましたか?」
「此処の品物は今後一切仕入れないように、これなら作れる人は自分で作った方がましだわ」
「そんなにひどいですか?」
「革の質をワックスやら何やらでごまかして、後よーく見るとひび割れとかがね」
「なるほど」
「それでこの値段はちょっとねぇ…まだ偽物の方が出来が良いわ…」
「ブランドってだけで飛びつく人は居ますからねぇ…」
「まあここの製品は全部下げて、ちょっと隙間だらけになるけど並べ直しだね」
「はーい」
「そういえば」
「まだ何か?」
「王族御用達がどうのーとも言ってたような、あまり良く聴いてないから細かい所までは覚えてないけど」
「なら見る目は確かだったって事じゃない…?」
「おおぅ…念の為に全部の品物をチェック、一旦店は締めるよ、終わり次第再開で」
「しかし、そんなに安っぽかったですか?」
「そうだねぇ…これを見てさっきのと比べるとどう思う?」
「何の革ですかこれ?」
「うちのメイドが脱皮した革の残り」
「…あなたの所は爬虫類がメイドになるのですか?」
「うーん…本人の前では言わない様にね?塵一つ残らないから…」
「そうですか…」
「まあ、本人達が否定しているだけで本来の姿はまあ爬虫類っぽいね、何年かに一度脱皮するし」
「やはり爬虫類では…」
「取り敢えずその革は加工した物の余りだね、丈夫さや質もばっちり、うちで流通させようものなら全力で止められるし。
もし市場に流れたらその大きさなら…一般の人なら10年は遊んで暮らせる?」
「完全に切れ端ですよねこれ…」
「切れ端だね、後はゴミ箱に捨てて処分するしかない様な位の」
「一体何の革で…」
「龍人…今は龍神だっけ?まあかわんないか」
「りゅーじん、リュージン?」
「鱗もちょこちょことれるし、年一位でボロボロっと一気に剥がれる、脱皮は滅多にしないからちょっと貴重」
「んー…理解したいようなしたくないような…」
「まあ大きな爬虫類の革と思えば」
「今はそう思っておくことにします、深く考えると事故を起こしそうなので」
「午前中最後のお買物は此処ですね」
「おー、ここはきたことがある」
「はい、スーパーですね、お嬢様と来たことが有るはずです」
「今日は何か良いものあるかなぁ?」
「あまり変わり映えはしないかと、品質などはほぼ一定していますし、魚も養殖ものならほぼ変わりませんね。
後は店の仕入れ担当の目利き次第です」
「ほーん」
まあ自分の目で見てみないとよく分からん、買い物籠を手に取り店内へ。
「今日のお昼と夕食はどうしましょうかねぇ…」
「昨日の夕食は皆結構食べたよね」
「北直送の生きてる蟹とかホタテとか、水揚げされて下したばかりの新鮮な魚とか…
スーパーじゃ早々買えませんからね、特に蟹」
「この辺りじゃ捕れないのか」
「北が一番の産地ですね、この近辺も…居なくはないですが、それでも1匹2万から。
あんなに大量にとはいきませんね」
「そうかぁ…」
「それにスーパーじゃそんな蟹はまず仕入れません、大抵冷凍物です。
年末や何かある時くらいですね」
「あれは?」
「…ごくたまにある奴ですね」
魚が置いてある一角に鮃が一匹、まだ生きているのでちょっと跳ねてる。
「たまにあるんですよね、大きなのが捕れたら客寄せにと競り落として持ち帰ってくるのが」
「なるほど」
確かに人は集まっている、誰も買わないけど。
「誰も買う気配ないけど買う人いるの?」
「此処で売れなければ、他の店舗の客寄せに使われたりしますね。
ほら、今横にトラックが止まったでしょ?
あれに乗せて他の店舗に運ばれていくのです、売れるまではたらいまわしですね。
この店個人で仕入れたのであれば、他の店舗に行くことはあまりありませんが、多分本社が競り落として各店舗で客寄せにしてるんじゃないですかね?」
「ふむふむ」
「今ならまだ買えると思いますがどうします?3万円もしますけど」
「要らないかな?あれ大きいだけで水っぽくて美味しくないよ、運動せずに食べるだけ食べてブクブクに太った感じ?」
「なるほど…」
「身も締まってないからぼろぼろに崩れるかと、それよりはこっちだね」
生きてる小エビの入っている箱を指さす。
「この量で298円ですか」
「これは良いね、焼いても素揚げにしても美味しい、ただ…」
「ただ?」
「お酒飲む人が居るとあっと言う間になくなる…」
「買いましょう、これお願いします」
「いいのに目をつけるね嬢ちゃんたち」
「他には何かありますか?」
「んー…」
周囲に並んでいる物を観察、何か良いやつ何か良いやつ…
「これだね」
「ではこれもお願いします」
「それも持って行くかぁ…」
悔しそうにはいうが笑っている、これに目をつける人が居なかったのだろう。
「おまけしてこれもつけとくよ、今度来た時また何か買っとくれ」
「うん、これは良いね」
「おまけして貰った物は…貝?」
「名前は知らんけどこれきっと美味しいよ」
「ハマグリに似た奴ですね、なるほど」
小エビにちゃんと血抜きのされたハマチ、貝をおまけして貰い、魚介は終了。
「肉はどうします?」
「良いのが無いから無しで」
「なら野菜ですね」
「キノコーキノコー大きく立派なキノコー」
「その見た目でその発言はちょっと…」
「なにが?」
「周りの目が…」
「うん?」
何やら男の人が顔を赤くして軽く前傾姿勢、または出していた箱の中身が空っぽになってもしゃがんだまま動かない。
「ふむ…」
エリンギの入った物を手に取り、エリンギを見つめつつ唇の周りを舌でぺろりと。
「やめなさい…」
「ちょっとしたお茶目じゃないか」
「いいから、買う物を籠に入れたらさっさとお会計に行きますよ」
「まだ買う物が…」
「なら遊んでないで早く必要な物を取ってきなさい…」
「はーい」
周りにいた男の人はほぼ全滅、前屈みかしゃがみ込んでいる、後一部隣にいた女性に叩かれている。
浮気はいかんよ、浮気は、ちゃんと最後まで皆の面倒を見なきゃ駄目だよ。
「もうないですね?」
「ないねー、袋に入って中が見えないから分からないのも多いし」
「あー、小麦粉などですね、以前天ぷらなどに使ったのは…こちらですね」
「これ全部そう?」
「いえ、これが中力、これが薄力、これが強力粉ですね」
「袋の違いがよく分からない…」
「袋の柄などは同じでも書いてる字が違うのでそこで見分けます」
「なるほど」
「欲しいのはどの粉ですか?」
「麺類に使える奴」
「なら中力粉が有ればいいですね、いくつ必要ですか?」
「1キロもあれば?」
「500入りですので2袋ですね、他には?」
「無いかな?」
「ではお会計に行きましょうか」
買う物は選んだので後は支払いのみ。
『お客様の御呼び出しをいたします、ナンバー…』
言われたお金より多い額を渡しておつりを貰って、後は貰った袋につめれば終り。
「ん?私の車ですね、何かあったんでしょうか?ちょっと行ってきますね」
「はいはい、先に車まで戻ってるよ」
「鍵渡しておきますね」
鍵を受取ったので先に車の中で待っていよう。
「なるほどなぁ」
一足先に車に戻ろうと外に出てみれば。
「た…たすけて…」
「誰か…救急車…」
乗ってきた車には2人の知らない男が2人乗っており、窓は割れている、後エンジン?もかかっているね、変な音出してるけど。
ただ、車はへしゃげて壊れているし、乗っている男は圧迫されている、頭から血も流れている。
前後に少しへこんだ大きな車が2台、はて?
「んー、あんたたち誰?」
「い…いいから…きゅ…救急車…」
「いや、助ける義理は無いし、知らない人だし?」
一回店に戻るか。
荷物を持ったまま一度店内へ戻り、恵里香さんを探す。
「あ、いた、おーい」
「ああ、大丈夫でしたか?」
「大丈夫じゃないんじゃないかな?」
「怪我などは無いようですが?」
「あれは大怪我なんてものじゃないと思うな」
「んー、何を言っているのかさっぱり。
此方も呼び出された物の、まだ詳しい説明を受けてないんですよね」
「ほーん」
「えーと、車の所有者はどちら?」
「あ、私です」
「えーとですね、駐車の際にお客様の車に当ててしまったという方がおりまして。
弁償などの話し合いがしたいから呼び出してくれませんかと言われまして」
「あー、はいはい」
「つきましてはお客様同士でお話を…」
「店長!」
「どうしました?」
「たった今駐車場で軽自動車がトラックとトラックに挟まれる事故が!」
「警察と救急は?」
「今呼んでます」
「わかりました、事故に有った方は?」
「現在車の中に閉じ込められています、何分古い車の様なので衝撃が吸収できず、またエアバッグも作動しなかったようで…」
「周囲の車にはその場を離れる様に連絡を、またぶつかったトラックの方も留めて置くように」
「わかりました」
「事故ですか、大変ですねぇ、こちらは当てられただけみたいですけど」
「そういや車がペチャンコになってたね、2人ほど閉じ込められてたし」
「現場を見たので?」
「うん」
「大変ですねー、あ、あの方がぶつけた方でしょうか?」
「話し合い中すみません、ちょっとよろしいですか?」
「はいはい、どうしました?」
「このナンバーはあなたの車でいいんですよね?」
「ええ、はい」
「少し来ていただけますか?」
「んー?なんでしょうか?」
特にやる事も無いのでついていく。
店から出て潰れた車の前へ。
「これは…」
「あなたの車で間違いないですか?」
「ええ…こんな形ではありませんでしたが…」
「乗っている方と面識は?」
「まったく、何所の誰ですか?」
「と言う事は車両の盗難と…」
「鍵はしていましたか?」
「それは勿論」
「鍵は今どこに?」
「此処に有るよ」
「わかりました」
「綺麗に潰れてるよね」
「私の愛車が…」
潰れている車を何かで切断、中にいた男達が引きずり出される。
「鍵は刺さっていないね」
「鍵なくてもエンジン掛かるの?」
「古い型ですからねぇ…プラグをちょちょいと弄れば簡単に」
「なるほど」
「取り敢えず、窃盗犯は病院へ搬送しますので」
「あ、はい」
「車両保険などは?」
「それもちゃんと」
「わかりました…
では、私はこれで、何かあれば警察署の方までお願いします」
「はい、ご苦労様です?」
潰れた車を見つめてボーっとする恵里香さん。
「壊すまでも無く壊れたね」
「…はぁー…どうしましょ…」
「新しいの買えばいいんじゃない?」
「そうじゃなくて…はぁ…当てられたと思ったら、その間に盗難、そして事故からの廃車…
一度に色々起りすぎじゃないですかね…」
「そういう日だったんじゃない?」
「だとしたら厄日ですねぇ…」
「ま、やる事ないのなら帰ろう」
「いえ、色々と山積みですよ…潰れた車を引き取りに来てもらわないといけませんし、廃車手続きも有りますし、台車も用意して貰わないといけませんし、保険も…あぁ…ぶつけた人もいましたねぇ…
お昼までには帰れそうにありませんし…家に残っている2人には先にお昼を食べて貰わないといけませんね…ちょっと連絡してきます…」
「行ってらっしゃい」
と言う事はお昼には帰れないと、ロザリアお腹すかせてるだろうなぁ…
何やら色々と手続きを済ませ、台車とやらを用意してもらい帰宅開始。
「はぁ…もう5時ですか…」
「ロザリアが暴れてなければいいけど」
「そうでしたね…あなただけでも迎えに来てもらえばよかったですね…」
色々とありすぎて思いつかなかったようだ。
「ロザリアの手続きも有りましたし…ほんと…もう…」
「今から行けばいいんじゃない?」
「無理です、時間的にもう締切りです…お役所ってそう言う所です…」
「ふむ」
「取り敢えず家に帰ったらお嬢様に報告…それから保険屋と話し合い…
あぁ…新しい車も決めないといけませんね…」
「軽トラックでも買うの?」
「それも良いかも知れませんね、はははははははは。
はぁ…」
何はともあれ帰宅。
「お帰り、遅かったわね?」
「色々とありまして…」
「まあ報告は受けているけど、後で話してね」
「わかりました…」
特に怒ってはいないようだ、心配もしてなさそうだけど。
「ところで」
「どうしたの?」
「うちに毛皮張りのソファーなんてありましたっけ?」
「無いわね」
「じゃあ今もたれ掛っているそれは?」
「ロザリアね」
「…大きすぎません?今朝見た時はまだこれ位でしたよ?」
「寝る子は育つと言うし?」
「育ちすぎじゃないですかね…」
「まあ私も見た時は驚いたわ、帰ってきたら大きな熊が家の中を歩いているし」
「それは誰でも驚きますね」
「器用に料理を作っていたし、掃除もしてたし、あれは驚いたわ」
「そっちですか、それに料理とかできるんですか?」
「冷蔵庫に有ったお肉を叩いたり、果物は搾ったりしてたわ」
「あ、流石に包丁や火は使わないんですね」
「肉は果汁に付けて柔らかくして食べてたわね、掃除は自分の毛皮で埃を拭き取っていたわ」
「それは綺麗にならないんじゃ…」
「まあ手の形が手の形だから道具はもてないね」
「まあそれでも掃除をしていたのは確かね」
「で」
「で?」
「その大きくなったロザリア?どうしましょうか、そこまで大きいと家の中では流石に…」
「ロザリア、小さくなって?」
「ぐるっ」
葵さんの言葉で小さくなるロザリア、今朝別れた時と同じ大きさまで戻った。
「縮むんですか」
「縮むわね、先ほどまでは大きくなってもらっていただけよ」
「なんでまた…」
「座り心地の良い大きいソファーが欲しいわねって言ったらロザリアがね?」
「なるほど…それでどうでしたか?」
「獣臭い匂いもしないしフカフカだったわ」
まあ話している2人は置いておいて。
「ロザリアー、ご飯だよー」
「がう」
お昼は自分で取ったようだけど、まだまだ乳離れには早い。
たくさん飲んで大きくなぁれ?
ロザリアは食事後すぐにおねむ、葵さんに渡しておいて夕食作り。
海老は水洗いして汚れを落として、お酒で絞める。
大人しくなったら擦り下したにんにく、オリーブオイル、刻んだ鷹の爪と混ぜ合わせオーブンで。
ハマチは鱗を丁寧に取り除き、切り身にしたらスパイスと小麦粉をつけバター焼き、エリンギも一緒にバターで焼く。
貝はしっかり茹でて出汁を取る、出汁が取れたら調味料を合わせ、刻んだ油揚げとニンジンも入れてご飯を炊く。
出汁を取った後の身は醤油を塗って表面だけを焼き、炊き上がったご飯に乗せれば完成。
「できたよー」
「では早速いただきましょう」
「品数はそれほどじゃないけどね」
「その代り量は多いと…」
「だね」
小エビは山盛り、ガーリックオイル焼きだけじゃなく素揚げもある。
ハマチもバター焼きだけでなく一番いい所はお刺身。
貝も味噌汁にお一人様5個も入っている。
「和洋ごちゃまぜですね」
「美味しければいいんじゃない?堅苦しい物より何も考えず、美味しい物を美味しく食べるのが一番かと」
「それもそうですね」
「たんとお食べ」
ご飯は大盛り、バター焼きは流石にお一人様2切れまでだが…
「はぁー…それにしてもほっとする味ですねぇ」
「なんか安心感有りますよね」
「外食ではこうはいきませんからね…」
「家でこんな安っぽい物を食べてるってばれたらどうなる事やら」
「別に、何も起こらないんじゃないですか?高くてまずい物より安くて美味しい物を食べている方が幸せですし。
高ければ高い程美味しいというわけではないんですよ」
「以前1パック2980円の肉を買いませんでしたっけ?」
「買いましたね、それほど美味しくは有りませんでしたが」
「お嬢様値段に拘る割にはたまに高い物を買いますよね」
「あの時はあれが美味しいんじゃないかなーって思っただけです、翌日にアレを選ばなかった理由は分かりましたが…」
「見事に変色していましたよね、1日でここまで来るか?ってくらいに」
「何となく目利きをしてみましたが今後二度と食材には手を出しません」
「そうしなさいそうしなさい、お嬢様は出される料理を食べていれば良いのです。
食材の目利きにせよ料理にせよ出来る人がやればいいのです」
「料理できないの?」
「ちゃんと煮たり焼いたり位は出来ます、ちょっと火を通しすぎたりするくらいですかね」
「微調整とか余熱の問題ね」
「まあ焼きすぎたのか元が悪かったのか、買ったお肉はそんなに美味しく無かったです」
「あれねぇ…そう言えばお肉とか作る奴出かける前に部屋に置いてなかったっけ?」
「あの宝石か何かで作られた箱ですか?」
「そう、それ」
「使い方が分かりません」
「あ、そうだね、教えてないし」
「ですので明日にでもお願いします」
「はいはい」
「あー…エビがパリパリサクサクして美味しい…」
「ガーリックオイル焼きも中々」
ただいまエビを肴に酒宴中、エビに手を付けなかったのはお酒のためか。
「私は先にお風呂入るね」
「どうぞどうぞ」
「ロザリアちゃんもちゃんとお風呂に入れるんだよー」
すでに出来上がりつつあるようだが、放っておこう、飲まされる前に退避。
「お風呂の中でも飲むんだなぁ…」
お風呂で目を覚ましたロザリアは迷うことなく吸い付いて食事中。
「一体どれだけ飲めばお前はお腹いっぱいになるんだろうねー」
体の大きさの割にかなりの量を飲んでいるし、1日10回くらいは飲むし、寝ている間も飲んでいたようだし。
「はふぅ…ま、乳離れするまでの我慢かね」
いまだに吸い付いて離れないロザリアを抱いたまま湯船につかりつつ、乳離れは何時かなーと考えていた。
「ではちょっとディーラーの方まで行って参ります」
「そう、もう車を決めたのね?」
「今回で吹っ切れました」
「何を買うのかは知らないけど、足りなかったら言いなさい」
「多分余裕で足りると思いますので」
「そう、気を付けてね」
「はい、では行ってきます」
恵里香さんは何やら朝早くから車に乗ってお出かけ、何が吹っ切れたのだろうか?
「さて、ロザリア、こっちへいらっしゃい」
「ぐる」
「またソファーになって頂戴、前倒しでやる事やったからちょっと疲れてて…」
「がう」
ロザリアは体を大きく、葵さんは大きくなったロザリアの上で寝そべっている。
「ふわぁ…恵里香が帰ってきたら起こしてちょうだい…」
「はいはい」
そのまま寝る様だ…
「ただいま戻りました」
それほど時間がかかる事も無く帰ってきた。
「おかえり、それで、新しい車は何所に?」
「今までと同じ所に停めてますよ」
「じゃあ何を買ったか見に行きましょうか」
「どうぞどうぞ」
新車と言う事で皆で見に行くことに、新しい物って何か見たくなったり見せたくなったりするよね。
「これが私の新車です!」
車庫?の中に有ったのは…
「軽トラック…だっけ?」
「はい、軽トラの新車です、無理を言って卸して貰いました」
「恵里香…あなたって人は…はぁ…」
念願の車を手に入れて満足そうな恵里香さんに、頭を抱えている葵さん、他の使用人さん2人は苦笑い。
まあ本人が満足してるならいいんじゃないかな?
「あそこ外車しか取り扱ってないはずなんですけどね…」
「そこは頑張って交渉しましたから、後お得意様と言う事で特別にと」
「まあいいですけどね…」
「これならロザリアちゃんが大きくなっても連れて移動するのが楽ですよ、乗用車などでは乗りませんし」
「それもそうですね」
「まだ幌が届いていませんが、今の大きさならまだ助手席で抱えていれば十分なので、荷台に乗せるのはまだまだ先ですね」
ロザリアは…あれに乗るんかねぇ…?
「そう言えばちょっと前にニュースがどうのとか言ってたような?」
「放送されるのはお昼、その次は夕方ですね、見ますか?一応あなたに関係のある事ですし」
「特に興味はないかなぁ…」
「そうですか、まあ簡単に言えば。
無実で被害者だったあなたを殺そうとした官僚とその息子、それと癒着していた警察署署長などが裁かれる、と言ったくらいですね。
他にも色々ありますが…まあ無能で腐っていた者が排除された、と言うくらいですね」
「ほーん」
「官僚やその息子はあなたを逆恨みすると思いますが、塀の中からは出てくることはないと思いますので安心を」
「さくっと始末したりはしないんだねぇ」
「出来ればいいんですけどね、うるさい人たちがいますので」
「大変だねえ」
「ええ、面倒ですし大変です、あなたの所はこう言った事が起きた場合は?」
「地域によって違うかな?」
「国別…と考えれば似たようなものですか」
「だねぇ、まあ重さによっては確実に首が飛ぶけど」
「どれくらいから飛びます?」
「故意の殺人未遂から強姦の未遂、人身売買と詐欺とか窃盗の常習犯なら?」
「結構バッサリ行きますね」
「時と場合によるものもあるけどね、そこはその国で一番偉い人が判断する」
「裁判官も兼ねているのですね」
「北だと処刑人も兼ねてるね、王様自らが首を飛ばしに行くよー」
「それ大丈夫なんですか?」
「被害者達の手を血で汚させない為、だったかな?
殺したという罪は全部王様が背負うの、だから結構支持されてるよ」
「そういうのも有るんですねぇ」
「ちなみに刑の執行はその町や村の広場で目立つところ、被害者達は満足するまで投石だね、加害者はその間死なない様に治療が続けられるよー」
「なかなか…凄惨な現場になりますね…」
「抑止力も兼ねてるしそんなものじゃない?関係ない人もああいう目には絶対あいたくないって思うだろうし」
「ですね…晒し者にされた挙句、首を落とされるまで死ぬことも許されないとかかなり辛いです」
「もっと凄いのもあるけど、まあ最終的には首が飛んで終りだね」
「それはまた今度で…考えさせられることも少々ありましたし、幾つか取り入れても良いかも知れませんね」
「まあ頑張って?」
結局ニュースは見ないままお昼ご飯。
実演も兼ねて使い方を説明しつつ作った物を料理。
「タンをあと20枚ほど、それと…カルビを100グラムは」
「こっちはホルモンにカルビ、それとロースを追加で」
「ランプを150グラムお願いします」
「サーロインを200で」
「はいはい、ちょっと待ってね」
まだ捨てていなかった蟹の殻や魚の骨を投入してお肉を製造。
途中足りなくなったので昨日かった小麦粉も追加で…
「これが有るならお肉は買わなくていいかもしれませんね」
「ですねぇ、有名所のお肉でもここまで良くは有りませんよ」
「あぁー…蕩けるのにしっかりとした旨みが…」
「表面だけ軽く炙って食べるの美味しい」
「そろそろ材料無くなるから次が最後だね」
「サーロイン」
「ハンバーグ」
「ホルモン」
「サーロイン」
「レート的に…ホルモンだね」
「よし!よし!」
「雇用主を前にしてそれですか」
「こればかりは譲れません」
「ハンバーグぅ…」
「サーロインまだ食べたかった…」
「まあ材料があればいつでも出せるから、なぜか変換レートは毎日変わるけど…」
こればかりはどうしようもない、何故かどう調整してもこうなる。
「まあいいでしょう、恵里香、使い方は分かりましたか?」
「使い方だけなら、ただし文字は読めません!」
「午後はお勉強会ですね…」
食後は文字と数字を教えられ、こちらも数字と文字を教える事になった。
「こちらの文字と数字を教えてその文字に直してもらえばよかったのでは?」
「それもそうだね、ははは」
なおロザリアはどちらの文字も読めるようになっていた、この子が一番頭いいのでは?
「きーつーねー」
「どうしました?」
「一緒に寝よ」
「構いませんが…どうしてまた?」
「何となく?」
「ご主人様がいなくて寂しくなりましたか?」
「かもねぇ、と言うわけで、とうっ!」
「もっと静かに入りなさい」
「ごめん」
ご主人様が旅立ち約1週間、ルシフは若干寂しくなっていた。
でも狐さん精分を摂取したので翌日には戻った。
軽自動車
始めて買った車、軽トラが良かったけど当時は止められた
窃盗犯が起こした事故により殉職、に見せかけて実は最初に軽く当てられた時に駆動系が逝ってた
ガラスのミッション
窃盗犯は戸惑っている内にぶつけてカマ掘られてサンドイッチ
軽トラック
便利で凄いやつ
問題は基本2人乗りと言う事か…
間違ってもこれでお嬢様を送り迎えしてはいけない
時計
文字盤だけを変えた物を注文
これで現在時刻が正確にわかるぞ!
何処かのお金持ち
高級外車を乗り回し、特に意味も無く立ち寄ってみた時計店で運命の出会いを果たす
たぶん2日後位にストーカー規制法辺りでしょっ引かれる、引き受けた興信所は潰れた
ブランド物のバッグ
名前だけで売れるので粗悪品を使った
偽物の方がまだ良い材料使ってるし出来が良い
王族御用達
アレキサンダーはもう居ないんだ…そして特にプレミアもついてない
それ以前に王族1人が一つ買っただけで、それ以降勝手に名乗っていただけ
革
ニールがちょっと前に脱皮した時の革
金ぴかで軽くて頑丈、後よく伸びる、ちょっとやそっとじゃ燃えない、水着の素材にもってこい
でも水着にすると怒られる
エリンギ
歯ごたえの良い使い勝っての良いやつ
バター醤油で焼いても美味しいし、出汁でじっくり炊いても美味しい
御立派
ディーラー
お嬢様ご用達
なぜか軽トラを仕入れる事になった、現在軽トラ用幌の取り寄せ中
ソファー
大きくなったロザリア
毛並みはふわふわもこもこ、獣臭い匂いも無い
寝心地も抱き心地も抜群、最大2人までなら乗れる
狐さん精分
狐さんから滲み出るエッセンス
寂しくなっても一緒に寝て摂取すれば全て解決
用法用量を守り正しくお使いください
 




