表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/1104

家を訪ねて指名手配 キャンプと言えば山とか川、後は海辺

『先日午後2時半ごろ、突如繁華街に現れた男性と思わしき人物による傷害事件が発生。

現場に駆け付けた警官が呼び止める物のこれを無視、呼び止めた警官二人の腕の骨を折りその場を逃走。

犯人は逃走を続け、警官隊の包囲を掻い潜り、道を塞いだパトカーを破壊。

その後特殊部隊による鎮圧を試みるもこれも失敗、昼間から住宅街に発砲音が響く参事となりましたが、犯人には一発も当たらず取り逃がし。

犯人が突如その場から消え去り、その後警官隊や特殊部隊が全滅したとの事です。

死者の数はまだ…はい…

今はいった情報によりますと警官隊たちは全員気絶させられて頂けで生きているようです。

また、離れていた所から狙撃していた者が死亡していたとの事ですが、現場からはかなり離れており、逃走している犯人の手によるものかどうかは断定できない、協力者の可能性もあると、協力者がいる事を視野に入れて捜査しているそうです。

では次のニュースです。

先日突如現れた男性を生放送で追っていたヘリが墜落、死者11名、重傷者1名の大参事となりました。

映像を見ていますと男性が見上げた直後、破壊音が響き、照らしていたライトが突如きえ、パイロットが混乱したのが操作を誤り墜落していく様子が映し出されています。

現在事故の詳細を調べるために、墜落した機体の回収、検分が行われています。

まだ、今の段階ではこの男性の手によるものか、整備不良による事故かは分かっていません。』


「どう見てもあの人ですよね…」

「そうですね…」

「連絡は付きましたか?」

「いえ、それはまだ…何度もかけ直しているのですが、電波が届かないとか電源が切れているとか…」

「そう…」

「どうしますか?」

「どう…とは?」

「このまま見捨てて無関係を貫くか、最後の映像を頼りに近辺を捜索して連れ帰るか。

あの様子ですと完全に道に迷っていますので、まず帰ってこれないと思います。

道を聞こうにも全国で放送されてますので、ニュースを見た人たちは間違いなく逃げるので何も聞けません」

「そうね…拾った以上は最後まで面倒を見るのが拾ったものとしての責任ですし…

一応最後の映像を頼りにその周辺を捜索、見つからなければ次の情報が出るまで待ちましょう…」

「わかりました、早速手配いたします」


 んー…お腹は減ってるけど今日も良い天気。

 時計は…借りてないから時間が分かんないや。

 結局借りた物には連絡は来なかったし、壊れてるのかはたまた近い場所でないと駄目だったのか…

 まあ、頼りにはならなさそうだし、このまま仕舞って置くか…服はもう諦めたけどこれまで壊されるとどう謝ればいいか分からん…

「ふわぁ…っ…んー、朝日が目に染みる…」

 テントから這いだし、大きく伸びて目を覚ます。

 テントは片づけ、机と椅子を取り出し朝ごはん代わりにお湯を飲む。

 空腹が少し紛れるまでゆっくり飲み、空腹が紛れた所で全て片付け、家を目指し移動開始。

 昨日周囲を囲んでいた人達は居ないようだし、これよりさらにボロボロにならなくて済むな。

 空から照らしていた物も飛んでないし、人の気配は全くない。

 これならのんびり歩行けそうだ。


 しかし、建物はあれど誰も住んでないってのも珍しいなぁ…廃村か何かだろうか?

 2日程前に見た限りでは建物の大きさの割に人が一杯いたから…移り住んだとかそんな感じかな?

 空いたなら空いたで活用しないともったいない気がするが、何か考えが有ってやっているのだろう、開いている土地は出来るだけ開墾して畑にするか、此処みたいに建物を建てて置くかの違いかもしれないな。

 誰もいない建物よりは畑の方が良いと思うけど…

 暫く道を歩き続け、二股に別れているので少々考える。

 どちらに進めば目的地に近づけるのか、もしかしたら別れているだけで最終的には同じ所に出るのかもしれない。

 こういう時は…枝だね。

 周囲を見渡し、枝が落ちてないかと探してみるが…木はあれど枝は落ちていない。

 まだまだ枯れる気配のない木を折るのはあれだし、直感を信じて行ってみよう。

 と言うわけで向かって左手側、なだらかな上り坂になっているし、ひょっとしたら上り切った所から見渡せるかもしれない。

 ではいざ出発。


 坂を上り始める事暫し、見渡すどころか木や石壁に囲まれた景色になり、同じような景色がずーっと続いている。

 位置的にも続いている道的にも頂上っぽくは有るのだが、道か、木か、石壁かの3つしか見えない。

 頂上から下を見渡して位置を確認するという計画は駄目になってしまった、しかし此処で悩んでも何も解決しないので今度は下り坂になっている道を進む。

 上りと同じく程々の時間と言う事は無く、半分くらいの時間で景色が変わってきた。

 見える範囲でも建物が有り、人が行きかっている、車も走っている。

 ただ此方へ続く道は封鎖されており人が来れない様になっている。

 んー…やっぱりちょっと前に居た所は何かの事情が有って捨てた廃村かね?汚染とかされているのだろうか?

 そんな感じはしなかったし、やっぱりよく分からんね。

 人が立ち入れない様に塞いでいる柵を避けて人里に到着、此方をチラチラ見てくる人が多いな。

 やはり服がぼろぼろだからだろうか…

 後何かを頻りに確認しては足早に去っていている、人の顔を見て逃げるとは、そこまで怪しいのかね…

 少し離れた所に大きな看板が有り、遠目に見えるだけでも車が多く出入りしている。

 とりあえず看板のある所に行けば何かあるだろうと、看板の出ている大き目の建物へと向かい、その間も人の顔を見て逃げる人、顔を赤くする人、不思議な物を見る目の人とすれ違い、赤くした人や変な目で見てきた人は逃げはじめた人に引っ張られていった。

 なんなんだろうね…


 車が多く出入りしている建物に到着、建物を観察してみると中では野菜や服、何か色のついた液体の入ったボトル?などが売られている。

 以前行った所と似たような配置だし、間違いなくスーパーだな、これで第一目標は完了。

 お店の中に入り、以前と同じように籠を持つ、後は欲しい物をこれに入れてお金を払えばいいだけ、実に簡単だね。

 ようやく目的地の一つに辿り着いたので意気揚々と物色、その間も遠ざかっていく人や、何やら慌ただしくなるスーパー内部、何かあったのだろうか…?

 少なくとも周囲には誰も居なくなり、肉や魚を品定めしている頃にはレジ?に居た人もいなくなっている、お会計どうしたらいいんかねこれ…

 まあお金を置いていけばいいか、ついでにボロボロになった服の替えも買っておこう、サイズは…よくわからんね、自分に近い大きさでいいや。

 適当に上下合わせて3着づつ、ついでに帽子の替えも、合計額は…いくらだ…

 店内には誰も残っておらず、計算してくれる人が居ない、全部が全部値札が付いているわけでもないので…

「…よし、もう適当でいいや」

 適当に1万円札を20枚ほどレジの上に乗せ、もし風などが吹いたに飛ばない様に重石をしておく。

 書置きは…言葉は通じても文字がそもそも違うから読めんね、無しで。

 支払い?を済ませ、買った物は鮮度などを保つために収納、服を着替えたい所だが、試着室なる所は…無いな…

 何やら入り口とは違う方向に扉が有るしそっちかね?

 少し変わったスイングドアを抜け奥へ、すると少し広くは有るが、脱ぎっぱなしの衣類が有るのでたぶんここで着替えればいいのだろう。

 ボロボロにされたズボンや服を脱ぎ、買ったばかりの服を着用、が…肌触りが微妙だなぁこれ…

 帽子も交換して大事に仕舞って置く、鏡は無いが先程よりは見れるましな格好になっているだろう。

 よし、次は家に帰るだけだな。


 まいった…ドアが開かない…おかしいなぁ…入って来た時は勝手に開いたし、以前帰るときも勝手に開いたんだが…

 ふぅむ…手で開ければいいのか、それとも別の所から出ればいいのか…

 一度スイングドアのあった所に戻り、また奥へ入る。

 いくつかドアが有ったからどこかから出られるかもしれない、入れる所は入って確かめる。

 しかし窓は鍵が閉まっており開かない、鍵を開けて出ると此処から入ってくる人が居るかもしれないので開けて出るわけにはいかない…

 んー…何所かない物か…そう言えば上に行ける階段も有ったな、上に行けば開いているかも知れない。

 階段を上がっていくと扉が有ったので開けようとしてみると、鍵はかかっておらず開いた。

 ここは…屋上…かな?

 特に何かを置いているわけではないが、転落しないようにか柵が置いてある位…

 ここから降りればいいな、遠くから声が響いていたり、昨日ずーっと付きまとってきた白黒の車も何時の間にか停まっている。

 また服を穴だらけにされたらやだなぁ…狩りの練習の的にされる位なら先に潰しておくか…

 屋上から降りた後はささっと近づいて何もできない様、昨日的にしてきた人たちと同じ服を着ている人を気絶させておく。

 周囲を確認した限りではこれで全員…かな?

 流石に昨日ほどは居なかったし、遠くからこっちを狙ってるやつもいない。

 うん、これで服を穴だらけにされずに済むな、よし、家を目指そう。


「あの人は見つかりましたか?」

「いえ、それはまだ」

「そう…」

「最後の映像を頼りに操作した所、最後に映し出されていた場所近辺は現在封鎖、警察などが捜査中で立ち入り禁止になっていました」

「足取りは?」

「掴めていません、見た限りではもうすでに何処かへ行ったようでした、警察も現在足取りを追っているようですね」

「何所へ行ったんでしょうかねぇ…」

『臨時ニュースです、先ほど入った情報によりますと、先日現れた謎の男が今度は隣の県の大型スーパーに現れ…』

「昨日最後に確認されたのが此処の隣の県、で、今日はまた更にその隣の県…」

「遠いですねぇ…それに移動速度が速すぎませんか?確か歩きで出て行ったはずなのですが…」

『はい、映像替わりました、こちら現場の大型スーパー前となります。

現在犯人は立て籠もっており、人質などは今のところ確認されておりません。

逃げてきた人の話によりますと、犯人は買い物籠を持って何かを物色していたそうです。

現在は警官隊が出入り口を固めており、突入するタイミングをうかがっているようです。

あ!誰かが屋上に出てきました!犯人でしょうか?下を除きこんで何かを確認しています。

遠いので私の眼では良く見えませんが、銀色の長い髪と言う犯人の特徴を聞く限り、あれが犯人だと思われます、カメラさんどうですか?

…はい、服装は違う物の特徴と一致、ほぼ間違いないそうです。

一体犯人は何をする気なので…きゃぁ!飛び降りた!?

…落ちたと思われるところに警官隊が走って行っています!犯人は生きているのでしょうか!?

あーっと!何が有ったのでしょうか!駆け付けた警官隊がパニックに陥っています!

此方にも何やら悲鳴が届いております!一体何が有ったのでしょうか!』


 んーむ、今何時くらいだろ、スーパーの中には時計も有ったし、確認して置けば良かった。

 後また何か上空から此方を見ている人が居るし、見られているだけで害はないからいいけど。

 太陽の位置は…大体真上…?多分お昼時くらいかな?

 人通りもまた無くなってるし、ちょうど建物の前に広い場所があるからちょっと場所を借りよう。

 家で作る昼食と夕食用に買った食材だけど…まあとりあえず昼食用をいくらか使えばいいか。

 野菜は適当に水洗い、お米も洗って飯盒で…って薪は落ちて無いからバーベキューコンロで炊くか…

 これならもうお肉も軽く香辛料をつけて焼くだけでいいな。

 お米が炊ける手前位で野菜とお肉を焼き始め、炊き上がったばかりのご飯と一緒に頂く。

 んー…まともと言えるような料理ではない、ではないが…満足感によりちょっと涙が出てきた…

 ゆっくりと味わい、食べ終えたら後片付け、飯盒やお皿は洗って…そういや川は無いんだった、その辺で流してもまあ大丈夫か、水だし。

 洗い終わったら水気を切り、軽くふいて乾かしたら収納、コンロもそのまま仕舞えば移動再開。

 スーパーが有ったという事は多分家も近いはず、徒歩で…1時間くらいだっけ?

 スーパーからはもうだいぶ離れてるからそれよりは速いかな?


『現在犯人は駐車場で何かをしているようです、何やらどこかからバーベキュー用のコンロなどを取り出し…

何かを料理しているみたいですね、スーパーから略奪した物でしょうか?

白昼堂々と略奪したと思わしきものを駐車場で料理、そして食べているようですね。

一体犯人の目的は何なのでしょうか?私達はこのまま犯人の追跡を続けたいと思います、映像をスタジオにお返しします』

『はい、ありがとうございました。

現在、犯人と思わしき男性を通報した方から送られてきた写真を元に、指名手配が行われているようです。

この顔を見たら迷わず即110番してください、罪状は定かではありませんが、傷害・器物損壊・公務執行妨害・窃盗・詐欺など、分かっているだけでもこれだけの罪に問われています。

このおとこを見つけたら決して近寄らず、直ぐに110番をお願いします』

「はぁ…普通に食事をとっていますね…」

「ですね…一応集まってきた情報によると、死んでいた特殊部隊にせよ、墜落したヘリにせよ、今のところ因果関係は認められていませんね、全てただの何らかの事故によるもの、の可能性が高いですね」

「墜落したヘリは兎も角、死んでいた特殊部隊は?」

「頭が砕けており、何らかの攻撃を受けた…って事にしたいのでしょうが…」

「でしょうが?」

「何かが爆発した形跡もなく、撃たれたにしては銃弾も無く、周囲にいた者も気絶はしていた物の、何故気絶していたかが分かっていません、突然頭部が砕け散った仲間を見て錯乱して気絶、と言う線が濃厚らしいですが」

「そう…それで他には?」

「あの方が歩いて行ったと思わしき所には千切れた布の破片ですね、何度も撃たれていましたのでその時に落ちた物でしょう、回収忘れの銃弾も落ちていましたが、血液などは一切付着しておらず、銃弾は全て潰れていました、ゴム弾などではなく実弾ですね、殺しにかかっています」

「はぁ…実弾で撃たれていてぴんぴんしてるとか何者なんですかねぇ…」

「麻酔と思われる針も折れた状態で落ちてましたね。

それとこうなった経緯ですが、どうも最初に1人の警官が彼に絡んだのが原因のようです。

目撃者によると、まずバスから降りてきた彼をナンパしようと話しかけ、無視されたのでその後少々つけ回し、少しボロボロのお店に入った後、怒鳴り声などが聞こえ、彼が肩を掴まれた状態で出てきて、その後掴まれていた肩を振り払ったそうです。

その時に骨が折れたと騒ぎ、彼は適当に聞き流し、近くに有った別のお店に入ったようですね。

付け回していた女性は怖くなってその場から逃げたそうです。

その後同じ店で食事をしていた客によりますと、普通に食事をとり、支払いを済ませた後、店の前で待ち伏せていた警官に呼び止められこれを無視、その後体当たりをされ服を掴まれたので振り払い…」

「それで?」

「警官の骨が折れたようですね、綺麗にポッキリと、それで喚いて応援を頼んだようです」

「此処までの情報だと全部彼が悪いように思えますね…」

「ですが、最初に入ったお店の方に話しを聞くと、どうも彼の方を掴んでいたのは詐欺集団だったようで、折られたのはその集団の2人ですね、何やら無理やり連れ去ろうとしていたみたいです」

「ただ抵抗しただけですね…」

「そして、通報を受けて駆け付けた警官はただの被害者としてしか見ておらず、話しも碌に聞かず、食事をとっていた彼が出てくるのを待っていた、と言う事ですね。

その時に相手をよく観察して、詳しい話を聞けばただの正当防衛で済んだんですけどね…」

「はぁ…頭が痛くなりますね…」

「それと詐欺集団ですが、昨夜海から引き上げられたそうです、ブレーキ痕も無く車で海に落ちて全員死亡、上がった死体の身元を確認してようやく警察がマークしていた詐欺集団だったと気づいたそうですよ。

引くに引けなくなった今の彼らは、自分のメンツを守るためだけに彼を指名手配、どうにか捕まえるかその場で始末するつもりでしょう。

捕まえた後は自殺したとか、捕まえる前に始末した場合は事故死した、とでも情報を流すつもりでしょう」

「弱い者を守る為ではなく、自分たちのメンツも守るためだけにねぇ…嫌になるわね…」

「どうします?手を引きますか?」

「一応情報は集め続けて置いてちょうだい、後で使えるから」

「わかりました」


 んー?飛んでいた物が何処かへ行ったな、代わりに新しいのが来たけど。

 手に持ってるのは…昨日お気に入りのカップを割ったやつと同じだなぁ…

 こっちを向いてるしまた服とかに穴を空けられたらたまらんね、隠れとこ…

 とはいえ相手からの視界をちょっと誤魔化すだけで普通に歩き続けるけども、これで見つからないってホント酷いな…

 何か見当違いの所探してるし、まあいいや、ちょうどいい感じの枝が落ちてるし、これの差し締める方向へ行ってみよう。

 さて、何所を挿すかなー…こっちか。

 では、またしてもいざゆかん、棒の指し示す方角へ…


「おー…海だー…」

 棒の指し示す方向を目指し続け、暫く進むと海に辿り着いた。

 船らしき物も停泊しているし、潮の香りもしているので海で間違いないだろう。

 海の匂いは何所でもあまり変わりはないか…

 港らしきところを離れ浜辺へ、しかし…浜辺に人はほぼいないな、散歩している人位か。

 ぼちぼち薄暗くなってきてるし、家には結局辿り着かなかったし、今日はこの浜辺でキャンプだな。

 そうと決めればテントを取り出し、薪はやっぱりないのでバーベキューコンロでお湯を沸かす。

 沸いたお湯はそのまま放置して置き、釣り竿を取り出し投げ釣り、餌は無いので少々高かった疑似餌で…

 しかし釣れない、やっぱり生き餌じゃないと駄目かなぁ…

 その後も何度か投げるか辺りすらなかったので諦め、昼に使った食材を跨いくらか使い夕食。

 今日は空から照らされていなし、ゆっくり眠れるかな。

 沸かしておいたお湯に水を足し、温度を調整しタオルを浸す、タオルを絞り身体を拭いたら2日ぶりに髪を洗う。

 本当はしっかり洗いたい所だけど結構お湯が必要になるからなぁ、ほどほどに…

 少しくすんでいた髪は輝きを取り戻し、とまではいかないが、すすが付いていた髪は見違えるほどは綺麗になった。

 よし、明日に備えて寝よう。


『再び突如姿を消した犯人の足取りは未だ掴めず、警官隊などが周囲の捜索を続けています。

空から追いかけていた警察の物によりますと、突如姿を消した、何所を探しても見つからなかったとコメント、市民や各方面から非難の声が上がっています。

また、先日ヘリで追跡をしていた他局のカメラマンが最後に映した映像を解析した所、犯人に向かってライフル銃で発砲、しかし鎮圧用のゴム弾ではなく実弾、放たれた弾が民家の外壁を砕いているのが分かります。

他にも流れ弾が周辺の民家の窓などを割っている映像も見つかりました、このことを警察に問いますとノーコメント、事情を聞きに行った記者は追い返されたそうです。

また独自に集めた情報によりますと、最初はゴム弾を使って鎮圧しようとしていたそうですが、特殊部隊を投入した辺りから実弾に変わっているようです。

警察の対応と良い、特殊部隊の投入、さらに実弾の使用、一体犯人は何者なのか、また警察は何を隠しているのか、甚だ、疑問が残ります』

「何か新しい情報は有りましたか?」

「足取りは分かりませんが、死体が上がってから間もなくして特殊部隊の投入、実弾の使用許可が下りたようですね。

2人の警官のミスから始まり、追いかけている間に被害が拡大、死体が上がって相手は加害者ではなく被害者だったと発覚、しかしここまで被害が広がった状態で2人の警官による勘違いでした、と言うわけにはいかず、また骨が折れた警官の内1人はお偉方の身内、被害者を加害者として葬る気なのは間違いないようですね」

「頭痛止めを下さるかしら…」

「こちらに」

「ありがとう…」

「それでどうします?集まった情報を全て公開しますか?

公開すれば少なくとも彼の指名手配は取り消されますし、ミスを犯した警官2人は責任を取らされるでしょうし、芋づる式で何人かの首が間違いなく飛ぶでしょうね。

あちらも嘘だ、でっち上げだと、こちらを潰しにかかるでしょうが」

「そうね…息のかかっていない所に情報を全部流してちょうだい、それからゆっくりと彼を探せばいいわ…」

「では早速…」


『速報です、何やら今はいった情報によりますと、警察が追っているのは詐欺師集団から拉致されそうになっていた被害者であり、また警官はその詐欺集団をマークしていたにもかかわらず、取り押さえもせず見送っていたそうです。

また、警官たちは付近の住民から聞き込みも行わず、詐欺師が押し入っていたと思われるお店も放置、被害者を犯人と勝手に断定して取り押さえようとしていたようです。

また、周辺にいた人によりますと、店の中から怒鳴り声が聞こえてきた、無理やり車に乗せられそうになっていた、男の人はそれを振り払っていただけ、と証言しており、拉致、誘拐されそうになっていた所から逃げただけのようです。

その後詐欺集団の1人が被害者を装い通報、まんまと騙された警官は事情も聞かず被害者を取り押さえようとし、被害者に抵抗され怪我を負ったとの事です。

その後警官は応援を要請、その間に詐欺集団は逃走、守るべき被害者を犯人とし、捕まえるべき加害者をそのまま見逃したようです。

追加で入ってきた情報では、昨夜未明、詐欺集団の車が海から引き上げられ全員死亡が確認、また、特殊部隊の投入や実弾の使用許可が下りたタイミングが詐欺集団の身元確認時刻一致、警察は隠蔽するために被害者を亡き者にしようとした可能性が出てきています。

また、最初に取り押さえようとした警官は官僚の息子であり、使用許可を出したのもこの官僚のようです。

現在多くの報道カメラマンたちが警察署で話しを聞くため現地へ向かっているようです』

「官僚たちの息のかかっていない局すべてに流して置きました」

「ご苦労様です、これで彼を追っている警察は手を引くでしょう、一部の方は追い続けるかもしれませんが…」

「その時はその時ですね、個別に対処すればよろしいでしょう」

「はぁ…明日は忙しくなるわねぇ…」

「暫く警察は機能しないでしょうし、官僚にはカメラマンが押しかけ、暫くはズタボロになりそうですね」

「痛い出費ではあるけど膿が出せたと思えば…」

「まずは何からしましょうかね…」

「残った膿を出し切って、警察や特殊部隊は再教育、後は開いた官僚の穴埋め…めんどいですねぇ…」

「再教育は無理ですね」

「それは何故?」

「現場復帰できそうなのは特殊部隊に居た1人だけ、それも奇跡的な状態で保っているだけなので何時壊れるか…

それ以外、目を覚ました人は全員狂っていて病院に押し込められています」

「はぁ…一体気絶した時に何を見たんでしょうか…」

「言葉が通じない状態になっているので何とも…自傷行為なども行っていないので死ぬことは有りませんが…」

「元には?」

「医者の見立てではもう二度と戻らないかと、死なせてやるのが一番の救いですね…」

「では殉職…は無理ですね、大々的に放送されていますし、被害者を追いかけ回している内に事故死、と言う事にしましょうか。

ヘリが落ちていますし、それに巻き込まれたことにしましょう、それも警察が隠していたことにすればいいですね」

「ではそのように」


「んー、良く寝た」

 しっかりと睡眠をとったのでお肌はツヤツヤ、髪も…とはいかないか…

 テントの周囲に人の気配が有り、こちらを窺っているようだが、何だろうかね?

 手早く着替えてテントを出て屈伸、今日も身体は良く伸びるー…

 周囲にいた人は散っていったが…何だったんだろうか…?

 朝食代わりにお湯を飲み、テントを片付けたらさっさと出発。

 また白黒の車などに付き回されたらたまったもんじゃない、家に帰りたいだけなのに…

 さて、海…の先は無いと思うけど、取りあえず流れ着いている枝を拾い方角を決める。

 今日進むべき方向はー…どちらかなっ!

 下は砂地なので跳ねる事は無く、刺さる事も無く、枝先が進むべき方向を指し示す。

「海…海か…さすがにこれはやり直しだな…少なくとも海を渡ってきてはいない…」

 もう一度広い今度は少し強めに投げる、が…

「海だね、行くか…」

 よくよく見れば遠くに橋が掛かってるし、付け回されてるうちにあの橋を渡っていた可能性も無きにしも非ず、少々遠いがまあ歩いて行けない範囲でも無し。

 いざゆかん、お向かいに見える陸地。


「おかーさんおかーさん!」

「どうしたの?そんなに慌てて」

「あそこ!あそこみて!人が海の上を歩いてる!」

「何かの見間違いじゃ…っ!」

「すごーい!どうやって歩いてるんだろー!

あれ、おかーさんなにやってるの?」

「ちょっと撮影をね、これを投稿したら面白い事になるかも…」


「お嬢様、あの方を見つけました」

「そうですか、それで今何所に?」

「北です」

「北?」

「北の大地ですね、動画サイトに海を歩いている姿がアップされていました」

「船などで渡ったのではなく?」

「歩いてますね、合成だ何だと言われていますが、あの髪の色は間違いないかと」

「では捜索範囲をその地域全体に、それと撮影した人との連絡は?」

「すでに、朝の散歩中に見かけたそうです、最初は見間違いか何かだろうと思ってズームしてみたら人だったので録画したと、浜辺からはだいぶ離れていますね」

「ここ3日での彼の移動距離は?」

「どういったルートを辿ったかはわかりませんが、直線距離にしておよそ1500キロ、すさまじい移動速度ですね」

「どうにか居場所が大雑把に出も分かっている内に見つけて取り押さえないとまずいですね…」

「それと…」

「それと?」

「情報を集めている内に分かった事ですが、どうやら声をかけても無視されるそうです、後話しかける事もないとか」

「つまり人に一切道などは聞いていないと?」

「そうなりますね…多分私が声をかけられても碌な事にならないから無視してください、と言ったのを律儀に守っている可能性もありますが…」

「流石にそこまで純粋では…」

「無いと言えますかね…?」

「…否定できませんねぇ…」

「多分見知った方じゃないと、話しかけても無視して何処かへ行くのは…多分間違いないですね。

1日とは言えお嬢様、私、それと詰めている2人であれば顔は覚えているでしょうし、反応はしてくれるかと」

「であれば…行くしかないですね」

「二手に分かれます?それとも単独?」

「単独で四方に散らばりましょう、そして得た情報から一番近い人がそこへ向かう、と言う事で」

「では手配してまいります」

「あなたは今一体北の何所で何をしているんでしょうねぇ…」

 海を歩いている映像を再生してため息をつく葵だった。


「蟹、美味しい、もっと食べる」

「おおそうか、一杯あるからどんどん食ってけ」

 辿り着いた先を少々歩き、港らしきところが有ったので立ち寄った所、何やら折れた脚や、売り物にならないからと安く処分しようとしていた積み上げられた蟹が有ったので全部購入。

 ちょっと出費しすぎたかなぁ、とは思うがまだ紙幣は100枚は残っているので多分大丈夫。

「はぁー…久々に美味しい海産物に有りつけた…」

「兄ちゃんが食べたのそんなに不味かったのか?」

「お腹が空いてお店に入って海鮮丼を頼んだのはいいけど、なんか変な味がして…

やたらと冷えてるし水っぽいし、噛むと旨みと言うよりただの生臭い水分が溢れ出てくるし…」

「あぁ…なるほどなぁ…輸入の加工品の中でも悪いのに当たっちまったか?

輸入の冷凍とはいえ美味いやつは美味いし、普通なのは普通、不味いのは不味いと当たり外れが大きいからな」

「此処に有る処分予定?のお魚の方が遥かに美味しい…」

「そりゃあ今朝揚がったばかりだからな、ただ傷物で売りに出せないだけで味は変わらんよ」

 蟹の他に買い取った海産物もその場で調理、うーん、贅沢ぅ…

「兄ちゃん綺麗な顔と手の割に包丁捌き美味いな、何処かで料理とかやってるんかね?」

「屋敷でほぼ毎日料理を」

「なるほどねぇ、屋敷勤めかい、今は休暇中か何かかい?」

「ちょっと追い出されて…」

「悪いこと聞いちまったな…こいつは俺の奢りだ、遠慮せず食え」

「わーい」

 奢りとは言え余っているのは安い傷物しかないが、少し得した気分。

「はぁー…満足、お土産も一杯できたし、そろそろ行くかぁ」

「どこかあては有るのかい?」

「居候している家が有るのでそこへ帰ろうかと」

「一応場所は聞くがどの辺だい?良ければ送っていくぞ?」

「んー、どこだろうね…最初はただスーパーを目指してたはずなんだけど…変な人たちに付きまとわれて逃げている内に何所が何所だか?」

「ありゃぁ…迷子か…居候している家の人の名前は?」

「んー、確か…西野葵…?だったかな?」

「ありふれた苗字と名前だと特定できんなぁ…」

「まあ歩いていればいつか辿り着けるかと」

「そうか、まあ元気でな、道に迷ったら近くの交番で聞くといいぞー」

 よし、お腹も膨れたし、お土産も沢山、次こそは家に帰るぞ。


 でも歩いている内に薄暗くなってきたので、山中の適当に開けている場所でテントを張って寝た。

 途中でお腹が大きな熊が寄ってきたので一緒に寝る事にした、獣臭いけど、まあたまには…


「むむ…」

「どしたん狐?」

「今ご主人様が何やら雌の匂いを発した者と寝ている気配がします」

「そう、突撃時?」

「まだですね、寝ているだけでくっ付いた気配はないです」

「ならまだまだ様子見だね」

「現場を押さえないといけませんからね」

「それに行くなら全員で、か…」

「ですね」

 呑気にお茶を飲みながらタイミングを窺う2人だった…

文字が読めない

形態を渡されここからと説明されたときも記号として覚えているだけで読めてない

お値段もその都度葵さんに聞いてた


指名手配中

色々巻き込んで自滅、メンツを守るために指名手配した

最初に突っかかって行った警官が全ての原因、その警官は見送った骨を折られた相手が詐欺集団と気づかなかったし、詐欺集団の死体が上がってからマークしていた詐欺集団だったと気づいた

たぶんご主人様をこの場で捕まえたら出世できるかもと頭が一杯だった、なお通報したのは一般人を装った詐欺集団の仲間


傷害やら色々

主人様の罪は元々無いに等しい、精々過剰防衛が付くかどうかくらい、無理やり連れ去られそうになったのを振りほどいただけである

器物損壊も道を塞いだ白黒の車が通行人の邪魔になるからと退かして積み上げたくらい、塞がなかったらそもそも壊れてない

公務執行、先走りからの自滅の積み重なり

窃盗、レジの人が逃げてお金が払えなかった、合計4000円くらいの買い物に20万置いてきたけど取引は成立してないので一応窃盗、悲しみ

殺人?、狙撃していた1人が死亡、頭部が粉々に砕けていた、お気に入りのカップを2つほどざまあ見ろと笑いながら打ち抜いて壊したやつ、割ったカップと同じ目にあわされた

詐欺?、でっち上げ、死んだ詐欺集団もご主人様が事故を装って、という筋書きにしようとしてる


官僚

自分の立場が大事、息子のミスがばれるもろに響くので消そうとした

全国で放送されたよやったね!これで有名人だ!


狂った

直葬、頭が砕けた奴は兎も角として

自分の意志で死ぬことも生きる事も許されていないので、ただただ病院で喚き続けてる

死にたくても死ねない、生きたくても生きれない、狂っているのでもうどうにもならない

元に戻る可能性はあるにはある、ただ死ぬその瞬間だけはっきりと意思を持ち正気に戻る


ただ山間を通ってるだけのつり橋、別に海の向こうまでは繋がってない


船が無い場合水の上を歩いて渡るのは屋敷では常識、ただ船の方が何かと便利

ご主人様の常識は非常識


港に居たおっちゃん

漁港で働いている人の元締め

傷物などを安く卸しに行こうとしたところにお腹を鳴らしたご主人様が現れたで売り物にならない、けど食べるには問題のない蟹を1匹上げた、そしたら傷物の蟹全部買ってくれた、後他の海産物も少々

人相は凶悪だし普段の口も悪いが多分いい人、忙しくてニュースなんて見てない

見る頃にはやらかした警察や官僚などの話題埋もれきっているので気づかない


雌の羆

本能で手を出さなければ此処で安全に出産できると悟った、翌日テントの中は大参事、ちょっと怒られた

とくに山を下りたことも人を襲ったこともない個体、でも一般人からしたら危険には変わりないし、恐怖で立ちすくむ位大きい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ