別格です 恨みはしないけど代わりは必須
予備道具よし、タグの確認よし、血抜きをするための道具が置いてある場所の確認よし、結び直す時間はほぼないだろうけど念のためのリーダーよし、メタルジグの確認もよし、ライフジャケットの装着よし、んむ、忘れ物はないな。
「結構大きめの船だな、10人乗ってまだなお余裕があるというか、船長の他に4人の船員でサポート体制もばっちりというか」
「それだけ釣れるという事だし、船長一人じゃ手が足りないとも言えるね、必要分釣った後ならともかく釣ってないならリーダーを結び直すのは船員に丸投げして予備の道具で釣れ、って感じで最低でも予備1本持ってくるが基本だから、その置き場所も考えるとちょっと大きめの船にね?
移動中の今はのんびりとした物だけど到着してからは忙しいよー?常に群れを追い続けるから基本的には全部抜きあげてネットによる取り込みはできない初心者だけ、船員さんの手が空いているうちは血抜きなんかも全部やってくれるけど、そのうち初心者の人に付きっ切りで手が回らなくなってくるくらい釣れるから、そうなったら出来る人はもう自分で全部やれって感じになるよー?」
「今は皆のんびりしてるのにねぇ…あ、ジグはどれがいいの?」
「こっちの白とピンクの130グラムから初めて、ダメだったらこっちのブルーホロ、深いところにいるってなったら200グラムとかに変える感じだけど、予備の竿に最初からつけておくと交換する手間が省けていいね」
「しっかし…130とか200っておもに深海用だよな?こんなのが必要になんの?」
「ここだとなる、底まで落とすわけではないけど落としてる途中にこれに食ってきたり、このくらい大きいベイトだらけだしそれを食べてるから40とか50グラムの小さいのじゃ見向きもされない、40とか50グラムでも釣れないって事は無いんだけど今年はこれだね」
「サンマでも食ってんのか?」
「食べてるだろうね、今年はサンマが豊漁で去年はイワシ、それに合わせるとこうなるってわけだね」
「マッチザベイトとかそういうあれね」
「そそ、ジギングが基本だからまあどうしても重くなるよねってだけ、薄く伸ばしたアルミ板でもいいけどそれだと流されるしね」
「貸切なら兎も角ここだと邪魔にしかならんか」
「私抜き上げれるかなぁ…ちゃんとトレーニングはしてきたけど…」
「たまに10キロ個体が混ざるけど基本的には3キロから5キロだから意外と大丈夫よ、針もしっかり貫通して外れにくくなるようにダイヤモンドスムースにしてきたし、掛かったらもう完全に貫通してばれる事はほぼないはずだから、手前まで寄せて来たら引っこ抜くかリーダーを掴んで抜き上げるかのどちらか」
「船員の手が空いているうちは釣ったやつの処理は全部任せておけばいいんだな?」
「そだね、手間が回らなくなってきたら自分で処理、1人で20本も30本も釣って帰るって事は無いし、慣れてる人は欲しいだけ釣ったら早々に納竿して船員と同じようにサポートに回るけどね」
「ポイントについたら戦場になりそうだなぁ」
「なるだろうね」
「そしててんやわんやになりつつ釣ってきたのがこちらの戻りカツオ、今年も美味しいスマを狙い撃ちしてきました、普通のカツオも美味しいけどスマは別格だからね」
「今年も丸々として脂も凄いですね、これなら刺身にたたきに漬けにと何でも出来そうですし、今日の夕食はカツオ尽くしですかねぇ?」
「そうだね、漬けは今から漬けて中まで味を入れて、たたきと刺身は塩水に漬けてちょっと残ってる臭いと余分な水分を抜きつつ塩味を少々、玉ねぎも沢山用意して辛みを抜いておかないといけないねぇ」
「で、これを釣ったのは誰です?」
「これはリオだね、残りのスマは去年と同じ様に各家庭にお裾分け」
「苦労したでしょうねぇこれを上げるのは、パッと見で20キロは越えてますし遠目に見たらほぼマグロですよこれ」
「ちゃんとカツオなんだけどね、今年は大きめの個体が多めで最低でも5キロからって感じだったよ」
「一番美味しいくらいの大きさをちょっとすぎたって感じですね、何をどれだけ食べてて身がどうなってるかで変わるので重さは当てになりませんけど」
「今年はサンマを主食にイワシを少々って感じだね、内臓を抜いた時に胃を開いてみたけどサンマがぎっしり詰まってたよ」
「今年はその日獲れたばかりのサンマが1匹70円になるくらいには豊漁ですしねぇ、カツオや青物からしたらサンマ食べ放題パーティーみたいな状態でしょうね」
「だね、今年はキャスティングでヒラマサとかブリを狙うならサンマっぽいカラーとか、30センチからはあるんじゃないかっていう長い物がいいかもしれないね」
「サンマっぽいプラグありましたかねぇ…?30超えてるジャイアントベイトは結構ありますけど」
「まあシルバーに青が入ったのなら何でもいいと思うけどね、一応食べれる内臓も去年と同じ様に置いてあるけどどうする?」
「心臓と肝は焼いて胃袋は食べれそうな硬さならチャンジャにでもしますか」
「大きくなるとゴムかっていう状態になって噛み切れないもんね、そういう時は細切りにすればいけないこともないけど」
「ミンチ状にして肉みそみたいにする手もありますしね、それじゃあ私は仕事に戻りますので後はよろしくー」
「はいはい、お昼はざるうどんだからねー」
「はいよー」
んーむ…向こうで処理した時もちょっと怪しい感じはしてたけど…火を通すとさらに硬く…これでもかと細く薄く切るか噛み切る必要がないくらいに細かく砕くしかないなぁ…もしくはホルモンと同じように切れ込みを入れて噛み切りやすくするかだけど…そうがつがつ食べるものでもないから細切りでいいか。
次は本体をバッサリ5枚おろしにして、背の部分はたたきにするので骨が残ってないかを確認したら塩水にちょっと漬けて臭い抜き、腹の部分は腹骨を全部取り除いたらこれも一旦塩水処理をして、中ほどから尾にかけての部分は玉ねぎと一緒に漬けにしたら夕食の下拵えはほぼ終わり。
藁にたたき用の玉ねぎ等は直前でいいので…お昼の準備を進めていきましょうかね、具も何もない薬味だけのざるもいいけどそれだとちょっと寂しいので何か一品、揚げ物で天ざるにするのが一番手っ取り早いんだけど…うーん…
「ちょっと山の方行ってくるからうどんの方お願いねー」
「はーい」
よし、こういう時は山で何かを探そう、灰汁抜き済みの物もいくらかストックはあるからさっと火を通すだけで大丈夫な物…となればノビルか、時期はちょっとすぎてるけど無いって事はないし、ちょこちょこっと収穫して酢味噌和えにしましょ。
それと一緒に夏に仕込んでおいたキノコをいくつか採取して焼いて醤油とスダチで…うーん、何とも贅沢なざるうどんになりそう…
まあまずはちょっと季節外れのノビルを見つけるところから始めないとね、あったらあったで熊とかイノシシが食べてそうな気がしないでもないけど、家の近くまでは早々来ないから大丈夫でしょう、多分。
「ざるうどんについてくるのが松茸というのが何とも、うちらしいといえばらしいんですかねぇ?」
「赤松林に行けばいくらでも採れるからね、味なら裏で育ててる夏に仕込んだしいたけの方がいいけど」
「あれもボチボチ収穫ですかねぇ?1ヶ月じっくり育てた超肉厚のしいたけ、ちょっと食べるのが惜しい気もしますけど」
「普通に育てたのと何か違うのか?」
「物自体は変わらない、でも肉厚になると食べた時の旨みがかなり変わる、炭火でそのままじっくり焼いても美味しいし、フライでも天ぷらでも普通の物よりかなり美味しくなる、何より厚さが厚さだから食感がかなりいい」
「ほー…」
「昔というか少し前にちょっと流行ったんですけど、収穫までに1ヶ月以上かかるというのもあって値段が1つ1万ついたりしてですねぇ、美味しいんですけどだったら自分で育てるわってなって今一売れなかったって言う。
料亭とかお高いところには今も卸されているのでそういうところに行けば食べれますけど、一般にはほぼ流通しなくなりましたね、しいたけは安くて美味しいのが売りなのに高くて買えない値段も松茸並ってなるとどうしてもですねぇ…」
「1ヶ月じっくり育ててる間にどんどん収穫して出荷した方が儲かるといえば儲かるのよね、私が育ててるのはもう放っておいても出来る様に環境も整えてあるし、形が変になっても個人での消費だから問題はないけど」
「商品として扱うなら形も大事、なので崩れたりしないように手入れも必要なら間引きも必要、形が崩れたら価値が落ちるのでその分は無駄になる、なのでもう一部でしか作られてないですよね、食べる分には何も変わらないんですけど」
「食べたいなら今日の夕食の前にでも収穫しておくよ」
「今日の夕食はリオが釣ったカツオだろ?なら無理をして食べる必要もないんじゃないか?」
「他に何か用意しないとカツオだけになっちゃうけどね、漬けとかたたきの玉ねぎとにんにくはあるけど」
「他は用意してねぇのかよ」
「カツオの下拵えしかしてない、それ以外の物は買い物に行って買ってきたり、裏で栽培してるキノコでも採取しないと何もない、自動販売機で買えばまあ色々出てくるけど」
「まあ、カツオだけでもたたきと漬けと刺身で3種類の予定ですし、何か買い足す必要があるかどうかでいえばなかったりもしますけどね、それこそしいたけを採取してきて焼くか揚げるかくらいなものです」
「最初から選択肢がほぼねぇじゃん…」
「買い物に行って何かを足すっていう選択肢はあるけど、このままだとカツオと玉ねぎくらいしかないのも事実といえば事実」
「灰汁抜きが終わった山菜の水煮とかならあるんですけどね、肉類は一切残ってないですし、家庭菜園の野菜もまだ育ってないので収穫はまだまだ先ですし、欲しい物があったら今頼んでおかないと夕食までに間に合わないですよ」
「何もない場合は明日の朝昼分だけ買ってくる事になるね」
「んー…そうは言われてもパッと思いつくわけでもなし…まあ買い物に行くまでには何か考えとく」
「俺はサンマと大根おろしが欲しい」
「夜にカツオを食べるってのにサンマがいるのか?」
「焼きと生は別だろ?」
「まあ、いいんだけどね、どうせ外でバーベキューみたいな感じでたたきを作りながら食べることになるし、お肉もちょっとは買ってくるだろうし、その中の一品としてサンマを焼いてつつくのも悪くはないね」
「しかし釣った本人が食べれないというのがまた何とも…だよなぁ」
「お仕事に行っちゃったから仕方がないね、釣ったのを食べれないだけで同じ物であれば魚屋さん経由で用意出来るから、帰ってきた時にそれで我慢してもらうしかないね」
下拵えをしていた背中側の身に串を打ちまして、ドラム缶に種火となる薪を入れて火をつけたら小分けして縛ってある藁を投入して一気に燃やして、表面が香ばしく焼けたら氷水に浸けて一気に冷やして熱を取る。
熱を取っている間にまだ残っているたたき用のブロックとどんどん焼いては氷水に放り込んでを繰り返して、焼き終わったら最初に焼いたものから順番に表面の水分を取り、切ってお皿に盛りつけたら粗塩を少々ふりかけてから玉ねぎににんにく、細ねぎを散らしてスマカツオのたたきの出来上がり。
好み次第だけど昼に使った残りすだちも添えたら次はお刺身、厚すぎず薄すぎず程よい大きさで切って盛り付け、半身は残しておいた皮を炙ってたたきとは違う炙りにして、千切りしょうがを上から散らせば刺身は完成と。
漬けは盛り付けるような物でもないのでつけるのに使っているボウルごとドンっと、後は残ってる火で炭に火をつけて…燃え始めたらバーベキューコンロに移して風を送って炭全体に火を移して準備完了。
まだ飲み物やらなんやらを持ってくる必要はあるけど…まあ各自好きな物を持ってくるか、とりあえずヒルダご要望のサンマを焼きつつ皆が出てくるのを待ちましょうかね。
しかし…リオはこれを食べたかっただろうなぁ…アザミとボタンに仕事で拉致されていったから次に帰ってくるのが約2週間後、冷凍すれば持たないって事はないけど味は落ちるし、食べるなら味が落ちない美味しいうちに…が基本だしねぇ…
とりあえずリオが帰ってきた時に食べたいというのであれば同じ魚を用意してまた作ればいいだけだし、それで納得してくれるでしょう、多分、きっと…おそらくね…それでもダメだーって時は長期休暇が終わってすっかり寂しくなった海の方に行ってスマを釣りましょ。
戻りカツオ
読んで字の如くたっぷり食いだめをして戻ってきているカツオ、初ガツオより脂が乗っているので食べるならこっち
初が4月5月、戻りが8月9月と大雑把に区切られているが地域によってシーズンは変わるので早いところもあれば遅いところもある




