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意外と変わらない体感時間 見た目だけで伝わる情報

「あー…やっと終わった…後はこれを濾してペーストになるまで水分を飛ばすだけ…終わる気がしないぜ!」

「終わったと言ったり終わる気がしないと言ったり忙しいねぇ、とりあえず下の蛇口から出す前に骨は全部回収ね」

「へーい、しかし…洋食レストランの料理人はいつもこんな事をしてるんだよね?」

「毎日ではないけど拘ってるところとかお高いところは自家製だね、でもこうやって火を絶やさず…というか三日間煮込み続けるのはまあほぼないね、こっちの場合は量が量なのと2回に分けて1番出汁2番出汁って取る工程を省いてるし、色々違うから一緒にされたら洋食屋さんが包丁を投げてくるだろうね」

「ただただ煮込むだけでも単純作業で辛いのに工程を増やされたら間違いなく倒れるわ」

「時間がかかるだけでやる事自体は単純なんだけどね、骨髄の入った骨と牛筋と香味野菜を焼いて煮込む、煮込み終わったら出汁を他の鍋に保管してさらに香味野菜を炒めて残骸と一緒にまた煮込む、煮込み終わったら1番と2番を併せて沸騰させて灰汁を取って濾したら出来上がり。

今回のこれは香味野菜は玉ねぎのみかつトン単位で入れてるから全然別物、フォンドヴォーを作るだけなら1番と2番で玉ねぎは2個あれば十分」

「牛骨もブロック状にカットした肉もトン単位でありましたよねぇ…」

「身体が資本の表立って前線に立つ軍人の1人前って軽くキロ行くからね、それと種族によっては5キロとか10キロは食べるし、多少食べなくても大丈夫な訓練もしてはいるけど、3000人分ってなると材料だけで6トンとか8トンにはなるよねって、ペーストにするから水分が飛んで軽くはなるけど」

「軍人の胃袋恐るべし、そしてこれを高級品と気づかずに食べると思うと…100倍くらいに薄めてもいいんじゃないっすかね?」

「お祝い事とかそういうのを兼ねてるやつだからそれはダメでしょ、代金もしっかり払って貰ってるし、一応王様とか王妃様も食べるからね?」

「カレーを食べる王族…想像出来ませんね」

「カレーを作ると辺り中がカレー一色の匂いになるから王城で作る事は無いに等しいね、だからと言って食べないというわけではないけど、前にここに来た時は普通に食べてたしね」

「余り物の肉で作ってるやつ?」

「端材とか余り物で作ってるやつ、端材とか余り物だからよくない物って事はないけどね、使ってるお肉は全部同じだし」

「ならいい…のかなぁ?」

「王族だからって常に贅沢をしているわけではないし、食べれるだけでもありがたやって時代も経験してるからね」

「私達がこっちに来た時くらいですかね?」

「その少し前辺りからかな?今は農地とかも広げて食料は安定してるけど、以前は広げても襲撃で踏み荒らされるわ外壁から離れれば離れるほど死亡率も上がるわでね、食糧事情はそれなりに逼迫していたとも言える。

自分が良ければそれで良しの独裁国家ならまあ有事であろうと贅沢をして肥え太るし、食べれるだけでもとはならないからあーだこーだと文句を言ってくるだろうけどね」

「この世界でそんな事をやったら次の日には首と胴体が分かれてそうな気がしないでもない」

「王政が基本だから一歩間違えたらそうなるだろうけど、基本的にはそうならないように皆頑張ってるからね、平和ボケしすぎたところ以外は」

「魔物に危険な野生動物にと色々居るし、よほどの事がない限りは無い…と言いたいけどしたところが少し前にやらかしたんだよねぇ…」

「実際に魔物に襲われた事が一度もない、危険な野生動物の心配もない、そういう立地に住んでいるとねー、色々極まって魔物も動物も生きてるんだから殺すなとか、家畜を解放しろとか、最終的には抗議じゃなくて暴力で訴え始める」

「何がどうしてああなるんですかねぇ?」

「単純に必要な栄養が枯渇して常にイライラして自分の思い通りにならないとすぐに癇癪を起こすようになる、伊達に必須なんたらってついてるわけじゃないってやつだね、こっちにそういう概念はないけど、美味しいから食べるとかそんなのだし」

「でもそれが正解ってやつですよね、そもそも植物だけで生きていけるならマンモスやらイノシシやらを命懸けで狩ってませんって。

これで多分骨は最後ー、隅の方にかけらが残ってるかもしれないけど濾すから多分大丈夫!」

「取り切れないのはまた後だね、それじゃ腰布を用意して寸胴に入れていこうか」

「そしてここからまた長い長ーい作業の始まりと…ペーストになるまで焦がさない様にゆっくり混ぜて水分を飛ばして…それをこの巨大鍋が空になるまで…この鍋でペーストのしちゃいかんのですか?」

「出来なくはないけど、どのみち1回濾す必要があるからその労力は変わらないね、後この量をまとめてペーストにしたら水分が飛んでいけば飛んでいくほど重くなるから混ぜるのが大変、ゼラチンたっぷりでかなり粘度があるから普段のカレーよりさらに重いよー?」

「じゃあ寸胴で、でもその前にちょっと味見ー…んおぉー…これは色々とダメな気がする、少量の味見だけでもねっとりずっしり強烈な旨味が…こんな物をがっつり食べた日にはもう…」

「お肉がまだ入ってないだけでカレーとしてはもう完成してるからね、お値段はそうだねぇ…普通の1人前で中銀貨2枚くらい?」

「たっけぇ…でも納得出来る手間と美味しさ」

「テールも大量に使ってるし、骨も大量お肉も大量玉ねぎとスパイスも言わずもがな、どうしてもそのくらいの値段にはなっちゃうよね」

「兵士達が何も考えずにこれを食べると思うと…鍋に1杯中銀貨2万からって張り紙をしてやろうか…」

「兵士や騎士団の人達からお金は取らないけどまあびっくりするだろうね」


「煮ー込んで煮ー込んでひたすら煮込んでー…終わりが見えません店長!」

「まだ後4日残ってるから大丈夫大丈夫、ペーストになったら熱いうちに冷蔵庫で冷やしてた大量のお肉をまあ大体寸胴の8割くらいまで、どの部位がどのくらいかは気にせず適当入れたらしっかり混ぜる、出汁を取ったお肉は崩れるほど柔らかくはなってないから混ぜてる時に多少押したり潰したりしても大丈夫。

しっかり混ざったら各小隊の鍋に移していくんだけど…これは鍋に半分くらいかな?水を足して煮込んだら丁度良いくらいの量に、半分くらいまで入れたら蓋をして冷蔵馬車に積んで、荷台が満杯になったら王城に持って行ってそっちで保管、それを積んである鍋が全部なくなるまで。

一応は多めに作ってるから余る事はあっても足りなくなるって事はないはずだから、あまりケチらずにちょっと多めに入れる感じでね」

「余った分は食べてもいいですか?」

「いいけど、そのためには積んである鍋を全部お城にもっていかないとね」

「まだまだ先は長いなぁ…そして交代はまだかー」

「後2時間くらいじゃない?」

「長いー…2時間は地味に長いー…12時間交代じゃなくて6時間交代にすべきだったか…」

「12時間でも6時間でも大して変わらないと思うけどね」

「2倍も違うと変わるでしょー」

「終わりが近づくと時間が気になってくる場合は6時間でも12時間でも大して変わらない、終わりが近づくまでは気になってないわけだし、その場合は6時間でも残り1時間かそこいらになると気になって気になって仕方がなくなる。

気にならない人の場合も同じで時間が来たらあー時間かってなるし、常に時計を見てる人は1時間でも12時間でも体感時間は同じ、1時間だと時計を見る頻度が上がってそれこそ2分とか5分間隔で見て時間を長く感じるし、12時間だとみる頻度は下がるものの定期的に時計を見るから長く感じる、経過時間は違えど体感時間はさほど変わらないっていう」

「そんなものですかねー?」

「そんなものよ、それじゃあ後はよろしく」

「えー…」

「えーと言われましてもやる事はまだまだあるわけで、往生に納品するのはカレーだけじゃないのよ?農場で育ててるキングバナナとかレッドとイエローのマンゴーも納品しないといけないし、ジュースに使う牛乳も用意しないといけないし、まだそれなりに気温も高いからアイスを作るための機材も用意しないとでしょー?」

「アイスは何を作るんですか?」

「ちょっと前に話した南印のチーズグレーターで削るミルクアイス、王女様経由で伝わったみたいでそれが欲しいっていうからその機材を作るところからね?

本来なら砕いた氷に塩を混ぜて冷やして回すんだけど、こっちは氷の魔石っていう冷蔵や冷房なんかにも使ってる便利な物があるからそれを使って、筒を回すための動力も作って、ミルクをかけたときに垂れ流しにならないようにする受け皿…はまあバットでいいけど、そういうのを作ったりとか色々あるのよ」

「地味に大変ですねー」

「そうなのよー?なので私はカジノの自室に帰って開発に勤しみます、なので何かあったらそっちのほうまで」

「へーい、頑張りまーす」


 えーと、冷却回路はこれで良しの回転もこれで良し、手で擦り付けるのはまあ色々とアレというか、怪我をする可能性もなくはないのでそれ用のヘラというか金属をつけて軽くおさえる感じにして、凍って厚くなるたびに少しずつ開いて…

 ある程度形になったら試運転、冷却装置を起動したら筒を回転させてミルクアイス用のミルクを上から上からかけて、凍らなかった分は下のバットで回収…んー…ちょっとここはちょっと弄るか、手作り感は消えるけど注ぎ口を作ってそこにミルクを入れて、少量ずつ程よい感じで筒にかける部分も作って…

 いやダメだなぁ…これじゃあちょっと物々しくなりすぎるし、それ用のへらを作るだけにしておこう、なので追加した物を取り外してシンプルに冷えて回るだけの筒に戻して、それ用のヘラを作ってミルクを上からかけつつヘラで均して…うん、これでいいや、果肉もソースにして同じ様に上からかければ安全…かな?

 一番シンプルな形状に戻したところで再度試運転、上からミルクを注ぎつつヘラで均しつつ凍らせて、バットに溜まったミルクは再び上からかけて凍らせる、ある程度厚みが出来たらミキサーで砕いて作ったバナナソースを刷毛で塗って凍らせて、削る時は普通にチーズグレーターで…これでいいかな?かき氷みたいに削る刃を付けてもいいけどそれはそれで手入れに時間が掛かるようになるし、刃物だからちょっと危ないしね。

 とりあえずアイスを作るための機材はこれで良しとして、試運転で作ったアイスを持ってカレーの方の様子を見に行きましょうかね、それから農場に行ってバナナとマンゴーの調整をして、それが終わったら牧場に行って乳牛の様子を見て…カレーの様子を見てー…焼肉屋もちょっと覗いてーのでやる事が地味に多いね…


「うおー…ウメー…アイスウメー…鍋をかき回し続けて疲れた腕に効くー…気がする」

「まあ、疲れた時に甘い物は基本よね、お酢なんかもいいけど酢の入ったアイスは受け付けないでしょ?」

「多分どころか間違いなくなんじゃこりゃってなりますね、それと同じで塩が入ったしょっぱいジュースもちょっと無理」

「食べなれていたり飲みなれているとこういうものって認識してるから大丈夫なんだけどね、慣れてない人は甘い物という認識になってるからちょっと違うと脳がね、それと同じで唐辛子入りのアイスなんかも受け付けないだろうね」

「そんなのがあるんです?」

「ある、バニラアイスに唐辛子を入れてて、唐辛子自体の味はないから甘いんだけど唐辛子の刺激で口の中が刺激でカーってなってくるやつがある、珍しい物かといえば別にそうでもなくていくつかの国では普通に作られてるし一般的だったりもするのよ?

他所から見たら珍しいってなるだけで、そこの地域と周辺ではごくごく普通、塩とお酢が入った飲み物やアイスなんかもそれと同じ感じでねー、入ってたりするのは味付けの意味もあるけど摂取しないと体が持たない地域だったりもするのよー?」

「あー…食文化はその地域で暮らしていくのに適した物を摂取する様に出来ていくとかそういう感じの」

「そんな感じ、慣れ親しんでいるというのもあるけど塩を入れてある地域はそれだけ汗をかくという事でもある、逆に新感覚ー…ってなる地域だと過剰摂取になりかねないから頻繁に摂取するのは控えた方がいいね」

「こっちでもそういう物を取り扱ってるところはあるんですかねー?」

「西の国だと夏場に凍った氷に醤油をかけて齧るという間違った情報がある」

「間違った情報て…」

「正しくは黒糖を使った蜜だね、色が似てるのとみたらしも作ってるから醤油の匂いが混じって勘違いされたと思われる」

「なんとも…ですねー…」

「さて、それじゃあ私は王城に行ったり牧場に行ったり農場に行ったりとまだまだする事があるから、追加のアイスが欲しい場合は自分で作ってね?材料は置いていくから」

「へーい」

氷に醤油

西の国では夏になると氷に醤油をかけて齧って食べるという間違った情報が出回っているが、正しくは黒糖を溶かして作った蜜なので醤油ではない

醤油の匂いと醤油製品を見ているが故に醤油をかけて食べているという勘違いが発生…のはずが本当にたまに醤油をかけて食べる人もいる、けどそれはめんつゆで砕いた氷を乗せたうどんやそうめんやそばだったりするのでやっぱり間違った情報が出回る

薄めためんつゆと麦茶を間違えてめんつゆを日常的に飲んでいるという勘違いをすることもあるとかなんとか

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