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ぶらり1人旅 大事に仕舞ってある

「ふぅ…お洗濯終りっと…つぎはー…」

 葵さんの家に転がり込んで3日目、道具の使い方も覚えたので家事手伝いのお仕事中。

 選択が終わった衣類を脱水、後は干すだけ、この時注意すべきは下着を見えないようにすること…らしいのだが。

「何所からどうやって下着が有るかを確認するのだろうか…」

 門から家まではそこそこ距離が有り、木も植えてあるので少なくとも家の周辺から干している所は見えない。

 住み込みの使用人さんは全員女性なので盗んだりは…いや、屋敷ではよくあったから間違いではないのか…?

 下着を隠すように干したら次は芝刈り、伸びすぎた芝を芝刈り機で一気に刈り取り、刈った部分を纏めて捨てるだけ。

 他にも庭木の刈り込みやら剪定やら。

 洗濯や食事の用意、お風呂の掃除や準備は兎も角、そこそこ広い…らしいので1日でできるだけの掃除や刈込などの範囲を決めて置き、その範囲内の作業が終われば1日のお仕事はお終い、らしい。

 結構大雑把な決め方ではあるが、葵さんは朝食を取ったら何処かへ働きに行って夜まで帰ってこないし、使用人も3人しか居ないので3人だけで毎日全ての部屋等の掃除や清掃は無理。

 それでも3人もいれば十分なのか、3人しか居なかったのか、そこは分からないがずっと3人のままなので十分という事なのだろう。

 前日に決めて置いた芝刈りと剪定を終わらせたので今日のお仕事は終わり。

 後は昼食と夕食の買い出しもあるけど…まあ自由時間みたいなものだからいいか。


「え?もう終わったの?」

「洗濯物は乾くまで待つだけ、庭も芝刈りやら剪定やらは終わらせたよー」

「朝食を取って別れたのが1時間くらい前だった気がするのですが…」

「庭の範囲はここから…ここまでかな?」

「大体1週間かけてやるくらいの範囲ですね…」

「と言うわけで昨日行ったスーパーとやらに行ってきます、後ちょっとぶらついてくるかも?」

「待った待った待った、ストップストップ」

「ほえ?」

「まだ朝の8時です」

「そうだね?」

「まだお店は開いていません」

「え?」

「ですから、まだお店は開いてません。

地域差も有りますが、大体早くて9時、ここ一帯は10時開店ですので、車で移動したとして後1時間半はお店に行っても入れません」

「おおぅ…」

 なんという…今までお買い物した事が有る所は5時くらいから開いてたんだけどなぁ…

 そうかぁ、ここは10時にならないとお買い物ができないんだな…

「それに、車で片道20分、徒歩だと片道1時間くらいですね。

歩きで今から行ったとしても1時間程待つことになります」

「ふんふん」

「ですので徒歩で行くのであれば9時過ぎ辺りから、車で行くのであれば9時半に出ればいいでしょう」

「なら辺り一帯を散策しながら行こうかなぁ」

「それでしたら此方をお持ち下さい、使い方は…教えてませんでしたね…」

 板っぽい物を渡されるが使い方は、うん、教えて貰ってないからわからんね。

「此処をこうして、こうしますと…このように、此方に連絡が来るようになっています。

此方からかけた場合は此処の名前とこの番号が表示されますので、此方を押してください、それでこちらと繋がります。

それと、この番号以外からの物は絶対に出ないでください、詐欺の可能性が有りますので」

「はいはい」

「後お金は大丈夫ですか?お財布などは持っていないようですが」

「んー、お金は…ざっとこの位」

 仕舞って置いたお金を全額取り出す。

「っちょ!小銭が散らばって!」

「あぁ…」

 お金の種類が多いから一纏めにしておいたんだった…

 散らばった小銭を全部回収して机の上に纏める。

「取り敢えずお財布はこちらをお使いください、小銭と千円札4枚、それと1万円札を1枚も入れておけば食材の買い物は少々高い物でも十分に事足ります。

何所でもお札を全部ポンと出すようなことはしない様に、窃盗や強盗がほぼ間違いなく来ますので…」

「はいはい、あ、もし泥棒とか捕まえたりした場合は?」

「無いとは思いますが…近くにいる人に110番して、とでも言えばいいんじゃないですかね?」

「その場での処罰は?」

「もちろんダメです、ダメですが…まあバレなければいいんじゃないですか?」

「やっぱ場所が違うといろいろ変わるなぁ…」

「あなたの住んでいた所がどうだったかはしりませんが…自分に被害が無いようであれば関わらないのが一番です」

「なるほどねぇ…」

「まあこの辺りは治安も良いので、知らない番号にさえ出なければ問題は無いでしょう」

「はいはい、じゃあそろそろ行ってくるね」

「お待ちください、流石にそのまま行くと人目を引きますので。

尻尾はズボンの中に隠す、耳も帽子か何かで隠してください。

髪は下しておけば人の耳に当たる部分が隠れますのでそれで誤魔化せるでしょう」

「こんな感じかな…?」

「それで結構です、後は欲を言えばもっと目立たず地味な方が良いのですが…

お嬢様が用意した服は全部顔から髪の色から何までは映える様になってますし…

知らない人から声をかけられても無視してくださいね、多分碌なことにならないので」

「心配性だなぁ使用人さんは…」

「お嬢様が初めて連れ込んだ男性?ですよ、それはもう気を使うに決ってるじゃないですか。

後使用人さんじゃなくて、恵里香と言うちゃんとした名前が有りますから。

何時まで滞在するかはわかりませんが、一緒に暮らしている人の名前くらいは覚えておいてくださいね?」

「はいはい、恵里香さんね」

「よろしい、では行ってらっしゃいませ」

「行ってきます」

 いざゆかん、未知の土地へ。

 後何だかんだ話したりしている内に30分ほどたっているので、寄り道できる時間はそんなになさそうだなぁ…


「ふぅ…」

 家を出てから歩くこと暫し、未だにスーパーに辿り着かない。

 昨日は車とやらに乗せて貰って移動していたので、何所をどう移動したかあまり見てないんだよなぁ…

 服を注文した所とか、靴を買ったお店とか、下着を買ったお店とか…

 何所をどう行けばいいんだっけ…?

 こういう時は慌てず騒がず、来た道を戻る、これだな。


「んー、来た道を戻ったはずなんだが…さっきとも違う景色だなぁ…」

 確かに来た道を戻った、戻ったはずなのだが、見たことも無い景色の場所に辿り着いた。

 今の時刻は…何時だ?

 太陽は真上にあるからお昼手前か丁度お昼位…?

 人通りはほぼ無し、車はたまに通る、周辺に建物は無し。

 何所だろうなぁここ…

 何やら看板らしき物と長椅子が有るので長椅子に座ってちょっと休憩。

 ちょっと途方に暮れかけていた頃、大きな車が止まりドアを開ける、何やら乗るのを待っている様なので乗り込む。

 240円と書いていたので240円渡して開いている椅子に適当に座ってボーっと過ごす。

 歩いてきた道とは違う方向に走って行っているが、動き出した以上停めるわけにはいかないので、流れていく景色を眺める。

 暫く眺めていると建物現れ始め、もう少したつと建物が並び立つ中心で車は止まり、ドアが開いた。

 降りろ、という事かな…?

 乗っていた人も降りているし、降りるので正解っぽい。

 降りた後はずっと座っていたので身体をグーッと伸ばし軽く解す、チラチラとこちらを見ている人が居るが気にしない。

 何か顔を赤くして声をかけてくる人もいるが無視、碌な事にならないって言われてるしね。


 何度か声をかけられはしたが、全て無視して人の歩いている所を歩く。

 スーパー…何所にあるんだろうか…

 暫く歩いていると時計が置いてある建物が有ったので時刻を確認。

「えーと…今は2時か…昼食すっぽかしちゃったなぁ…」

 受け取った物は仕舞ったままにして有るけど、今のところ連絡も来ないし、特に心配はされていない…のかな?

 まあ連絡が来たらどうにかして貰えばいいや、取りあえず如何にかすっぽかしたお昼を如何にかしよう。

 朝食はパン1枚に目玉焼き1個、ベーコン2枚と流石に足らなさすぎた、前日の夕食の塩おにぎり1個も中々に…

 屋台でもあればねぇ…適当に買い食いできるんだけど…ちょっと高くても良いから食堂みたいな所は無い物か。

 当てもなく歩き続け、人が3.4人いる程度のなんか少しぼろい…いや趣や味がある…?食堂みたいなところを見つけたので適当に中に入る。


「そろそろ払って頂けませんかねぇ?」

「断る!」

「此処にお宅の家族が自分の手でサインした書類も有るんですよ?

払って頂けないのであれば出るとこに出て貰わなきゃいかんのですよ」

「やれるものならやってみろ、あんたら有名な詐欺の集団だそうじゃないか。

あの手この手で騙し、恐喝などをして無理やりサインさせて物を売りつけるって言う。

あんたらがその気なら警察を呼ぶぞ」

「どうぞご自由に、こちらは正式な書類ですので、訴えられた所で負けるのはあなたですよ?

此方が恐喝した、という証拠は一切ありませんし」

「醤油ラーメン一つ」

「兎に角、こちらはびた一文払う気はない!」

「そうですか…ではこちらも強硬手段に出るしかないようですね…」

「何をする気だ?」

「それを教える義理は有りませんね、ただ…知り合いか親族が不幸に見舞われる…かも知れませんね?」

「どうせハッタリだろう、手を出せば警察だって動くだろうからな!」

「おっちゃん、醤油ラーメン一つ」

「今取り込み中だ!」

「じゃいいや」

 何か食べれるかなーって思って入ったのに、取り込み中だからってなにも出てこないとは…

 他の店探すかぁ…

「おっと、そこのお兄さん?

今の会話内容をもし録音していたりタレこもうものなら…わかりますね?」

 んー、何かいい店あるかなぁ…

「おい、きいてんのか!?」

 何か叫んでるけど…まあ関係ないや、次いこ。

 自分に被害が無ければ関わらないのが一番、とも言われてるし…

「すましてんじゃねえ!こっち向けこの野郎!」

「落ち着け、こっちから手を出したらこっちの立場が危うくなる、少しは頭使え」

「そうは言ってもよぉ…なんかむかつくぜコイツ…さっきから俺らの事なんか眼中にないみたいだし」

「やるならもっとスマートに、弱い所からせめて締め上げていけばいいのですよ」

 何やらありがたいようなそうでないような御高説を述べているが…どいてくれませんかね…出られないんですが…

「はぁ…どうでもいいからどいてくれない?

昼ご飯食べに来たのにおっちゃんは何も作ってくれないし、次の店を探そうにも扉の前を塞がれて出れないし…」

「自分の立場分かってんのか?こいつ」

「此処で見たこと、聞いた事、全て誰にも話さないという約束、後は身分を証明する物やカードが有れば出して頂きましょうか、それでここから出してあげましょう」

 身分を証明する物…無いんだよなぁ…後カードは何のカードだ…?これでもいいんかな…

「カードね、はいはい、どうぞ」

「ふざけてんのか?誰がトランプのカード出せっつったよ」

「カードはそれしか持ってないし、身分を証明する物も無いしなぁ…」

「では住所と氏名を教えて貰いましょうか、後で取り立てに向かいますので」

「住所…何所なんだろうね…?屋敷ではあるんだけど…後名前は無いな」

「わけのわからねぇ奴だな、もうとっとと絞めて貰うもん貰った方が早くねぇか?」

 何が欲しいと言うのか…上げる様なものなんて持ってないぞ…

「屋敷と言いましたか、という事はかなりのお金持ち、着ている服も上等な物のようですし…

これは久しぶりに美味しい獲物が舞い込んできたかもしれませんねぇ?」

「つまり?」

「数千、いや、ひょっとしたら奥は搾り取れるかもしれませんね」

「まじかよ…」

「ですがやるならスマートに、訴えられても勝てる様に、証拠も残さないようにしなければいけません」

 お腹がなかなかに可愛い音で鳴いてるなぁ…此処に時計は…もう3時か、おやつの時間だなぁ…

「さて、何所のどなたかは存じませんが、あなたを御家に帰すわけにはいかなくなりました、いまから少し散歩をしましょうか。

終わるころにはあなたはハッピー、私もハッピー間違いなしですよ」

 散歩はもうかれこれ6時間くらいしてるからもういいかなぁ…

「取り敢えずどいてくれない?」

「駄目ですね、おい、そこの男を車に放り込んでおけ、私は此処の店主ともう少し話を続ける」

「わかりました。

おい!いくぞ!」

 肩を掴まれ、塞がれていた出口の戸が開かれる。

 やっとほかの店に行けるのか…おやつでお腹を満たすか…それとも普通にご飯を食べるか…悩み所だな。

「おい!何所に行く!…っ!おい手伝え!」

「そんな優男1人に何てこずって…!」

「ぐぎぎぎぎ…!」

「ーーーっ…!」

 このままだと借りた服が伸びるな…適当に振り払えばいいか。

「がっ!」

「いっ!」

 よし、次に行こう。

「う…腕が…!」

「どうしました?騒がしい、それより車に放り込めましたか?」

「あ…兄貴…腕が…腕がおられた…」

「何?」

「あ…あいつも折られたっぽいです…」

「え?折れたの?ほんとに?」

 振り払ったら骨が折れたらしい…いかんな…怪我をさせてしまった…

「これはこれは…治療費を請求しないといけませんねぇ…って何をして?」

「いででで!」

「があぁぁ!」

「あー…ほんとに折れてるね…」

 倒れ込んでいる男2人の腕を掴んで振ってみると確かに折れている、骨…弱くない?栄養足りてる?

「あー、ごめんね?振り払っただけで折れるほど骨が弱いとは…

骨が丈夫になる料理教えようか?」

「ふざけているのですか?

まあどちらにせよこれであなたは傷害罪で訴えることができますね。

訴えられたり警察に突き出されたくなければ…そうですね、まずは3000万くらい頂きましょうか?」

「あ…兄貴…俺達の取り分は…」

「そうですね、今回は身体を張ってくれたので7:3でいいしょう」

「そ…そうですか…」

「ああ、これからどんどん搾り取れると思いますので、3だけでも数千万は硬いと思いますよ」

「それはありがてぇ…」

 何やらお話しているので放置してお店探し。

 人も集まってきてはいるが、直ぐに顔を逸らしては去っていく。

 なるほど、関わらないのが一番と、恵里香さんのいう事は正しかったという事だね。

 話しかけられた今も碌な事になってないみたいだし…あ、あそこに良さげなお店があるな、行って見よ。

「ちょっと、何所へ行くのですか?」

「?」

「怪我させた2人を置いて逃亡ですか、これでは益々罪が重くなりますねぇ…」

「はぁ…そうですか?

まあ私はもう行くのでそっちはそっちでご自由に?」

「はい、自由にさせていただきますね、動画に取ったり録音もしていますので、また後日に何らかの形で人がそちらに行く事になるかと」

「好きにすればいいんじゃないかなぁ…?」


 ようやく面倒な人が何処かへ行ったので良さげなお店に入り、お品書きを見て注文。

「この…海鮮丼大盛りと味噌汁、それと蛸のから揚げ」

「海鮮丼の大盛りが一つと味噌汁が一つ、それと蛸のから揚げが一つですね、では少々お待ちくださいませ」

 2日ぶりのまともな食事だ…出てくるのであれば2時間でもまとう…

 それにしても昨日買った海老が4尾で1200円だったのに、ここの海鮮丼大盛りに御味噌汁、蛸のから揚げをつけても1500円くらいとは…高いのか安いのかよく分からないね…

「お待たせしました、こちらご注文の海鮮丼大盛り、味噌汁、蛸のから揚げになります、追加の注文があればお手元のボタンを押してください。

ではごゆっくりどうぞー」

「では早速、いただきます…」

 見た目はまあ普通、量は大盛り…の割には少ない気がする…まあ食べよう…

 味も…やや不味い…刺身は新鮮でもなく、かといって鮮度が落ちてるわけでもなく…不思議な感じ。

 味噌汁も蛸のから揚げも何かと不思議な感じ、初めての味と言えば初めての味…かな?

 食べ終わった後は手元に置かれた紙を持ってお会計、先に支払いに行った人がこうやってたから間違いないはず。

 まあいえる事は、ここで食べる事はもう無いだろう、という事だな…


「そこの君、ちょっといいかな?」

 初めての味で舌がちょっと混乱している、何かで口直ししないと…

「そこの君ー、ちょっとー?」

 何やら帽子をかぶった2人組の人が駆け寄ってくるけどやはり無視、碌な事にならんからね…

 それより何か口直しに何処かでお茶でも飲まないと…

「そこの君!止まれ!」

 この辺り一帯は色んな匂いが入り混じっていて何所に行けばお茶にありつけるのやら…

「ちょっと!取り押さえるの手伝って!」

「了解!」

「で、あなた達はさっきから何なの?

借りた服が痛むから引っ張らないでほしいんだけど…」

 服が傷む前に振りほどいておく。

「ぐあっ!」

「ぎゃっ!」

 あーあー…服がちょっと伸びちゃった…どうしようかなこれ…謝ったら許してくれるかな…

 埃をはたきおとし、ちょっと途方に暮れる…帰りたいけど此処が何所だかわかんないし…

 もう一度あの大きい車にでも乗れば元の場所に戻れるかなぁ…?

「だ…!誰か!誰か警察に連絡を…!」

「腕が…!」

 あれだね、やっぱり話しかけられたからって反応しちゃだめだね。


 今度こそ元来た道を戻り、大きな車を降りた場所まで戻ってきた。

 その間も何やら叫んでいたり、体当たりしてきた人が居たので、叫んだだけの人は放置、体当たりをしてきた人は叩いておいた、服もしっかり握られていたおかげでさっきより服が伸びてしまった…借り物とは言え大事な物だったらどうするんだろうか…

 弁償してくれるのだろうか…

 話しかけたとしても碌な事にならないだろうし…でも弁償してくれる可能性も無くはない…

「あー、そこで叫んでいる人。

借りた服が伸びちゃたんだけど、これ弁償してくれる?」

「何をわけの言っているんだ!無駄な抵抗は止めておとなしくしろ!」

 言葉が通じてないらしいね、後何やら2日前に見た白黒の車が大量に止まってるし、何やらぞろぞろ出てきて囲んできてるし…

 この先に有る大きな車に乗りたいからどいてくれないかなぁ…あ、一歩進んだら後ずさった、ならこのまま歩いていけばいいや。

 止まっている大きな車の所まで行ったがドアは開いていない、乗っちゃ駄目って事か…そもそも誰ものってないな…

 人通りもほぼ無いし車も走ってないし…これはあれだな、ここから歩いて帰れ、という事だな。

「よし」

 では覚悟を決めていざゆかん、どうにかこうにか歩いて居候している家まで!


 一応車道と歩道に別れており、車道は歩いてはいけないと教えられているので、歩道をてくてくと歩く。

 まあ馬車が通る道を歩くのは…まあたまにいなくはなかったが、それと同じだろう。

 後ろからずーっと白黒の車が追いかけてきては道を塞ぐので、それを交して道を逸れては道に迷い。

 行き止まりにぶつかっては引き返して通行の邪魔をしている車をどかし、邪魔にならない様に隅の方に動かし、積み重ねて置く。

 2度3度と繰り返していると今度は別の四角い、黒い車に何かを持った人?黒色に何やらゴテゴテしていて特定できん…

 後これも歩道まで突っ込んできて通行人の邪魔をするのか…しょうがないなぁ…

 歩道から車を動かしている間も何か破裂音とチクチクした感じがしているが、何か針が刺さっていたり、服に穴が開いていたりと…もう修繕できないじゃんこれ…

 途中で昨日行った服屋さんにつかないかなぁ…同じ服を仕立てて貰って返すしかないや…

 なおも破裂音は続き、その度服やズボンに穴が増えていく。

 狐さん何でこんな面倒なところに飛ばしたん…

 若干屋敷が恋しくなりつつ、トボトボと居候している家目指し、再び歩きはじめた。

 こんなに破裂音させて近所迷惑にならないのかねぇ?


 その後もあっちへフラフラ、こっちへフラフラと道に迷いに迷い、建物はあれど人の居る気配は無し。

 歩道は…黒い車や白黒の車から降りてきた人が遠巻きに囲んでついて来ているくらい。

 しかしずーっと歩きっぱなしだったので、流石に喉が渇いてきたのでちょっと一服。

 椅子と机、茶葉は無いのでお湯が出るポットとティーカップを取り出し休憩。

 日は落ちかけて暗いけど、ほんと何時になったら帰れるんだろうか…

 温かいお湯を飲みほっと一息、身体もぐぐーっと伸ばしてちょっと解す。

 お湯のおかわりをして飲もうとしたところで、破裂音が響き、カップが割れた…

 …あー…あーあー…どうするのこれ…音からして先程から破裂音を響かせてる人たちだろうけど…

 お気に入りのカップだったのになぁ…やっぱ壊れないように作っておくべきだったか…

 でも壊れないと新しいの作った時に壊れないカップがたまっていくしなぁ…

 うん、壊れるのは正しい、ただ壊した奴が悪い。

「ふぅむ…」

 とりあえずもう一つカップを出してお湯を注いでもう一息、もう一度飲んで落ち着く。

 少し温まり、落ち着いてきたところでポットを仕舞い、カップを仕舞おうとするが、またカップが割られた…おちょくられているのかな?

 割れた破片を全て片付け、机と椅子も片づける。

 足や胴体、腕だけだったチクチクとした感覚や軽い衝撃も頭部にまで及び始めた。

 おかげでもう帽子も穴だらけ…これはあれかなぁ…弓矢の的やかかし的な扱いを受けているのかな?

 私はちょうどいい動く的だと…なるほどね?確かに動いている獲物などは確実に仕留めないと、自分の命が危うくなる。

 ただしそれは素早い野兎や、かかしを動かしてやる事であって人に対してやる事ではないねぇ…

 つまるところ私はただの道具、もしくは玩具で、カップを割られたり、頭部にペチペチと追加された感覚もさっさと動けという事…なのかね…

 ふんふん、なるほどね…

 歩きはじめると頭部に何か当たる感覚は減り、胴体や足へ何かが当たる感覚が増す。

「なるほどなー…あれらにとって私は玩具であり道具でしかないと…

ならこちらもやる事は一つ…いや二つは有るか…

まあいいや、服も帽子もボロボロだし…このまま帰るわけにはいかないし…

ちゃんと弁償して貰おう…」

 獲物をしとめる練習の的や玩具として扱われるのであればやる事は…

「見失いました!」

「さっきまでそこに居たはずだろ!探せ!」

 まずは隠れる。

「おい応答しろ!おい!」

 確実に一人づつ仕留める。

「何なんだこれは!我々は一体何を相手にしているのだ!」

 はぁ…最初から隠れていればよかったなぁ…かなり前にメイド達とやったごっこ遊びより簡単だし…

 あぁー、遠くにもいるなぁ、カップを割ったのはあいつか。

 足元に転がっている小石を拾い、カップを割った物に対して投擲、ついでに周りにいるお仲間?にも投擲、これでもうカップが割られることはないだろう。

 後は最後に残しておいた1人と交渉するだけ、いやー、実に楽な作業であった。


「そこの君」

「だ、誰だ!何所にいる!」

「あー、目の前にいるのに気づかないとか…今まで良く生きてこれたね…」

 視覚をごまかしている状態を解いて再度話しかける。

「ひぃぃぃっ!」

「あーあー…もうお腹の部分とか布地残ってないし…

取りあえず君のお仲間?に穴だらけにされた服を弁償してほしいんだけど?

この服がいくらするかはわからないけど、結構良い物だったからそこそこお高いとは思うんだけど」

「ひっ、ひっ…ひやぁぁぁぁっ!!!」

 奇声を上げ、何かをガチャガチャと詰め替え、再度連続した破裂音が響き、音がしなくなった後も指でカチカチと引き続け、失禁した後倒れていった。

「倒れたいのはこっちだよ…おへそ丸出し、ズボンも帽子も穴だらけ、しかも借り物だし…

はぁ…皆気絶してるし、弁償代いくらになるか分からないし、貰えるだけ貰っておこう」

 気絶している人の服を漁るが、お金になりそうな物や、お金は所持してなかった。

 破裂音をさせていた物は…うん?

「あぁ、なるほどね」

 以前南で流通していた物の発展形かな…?けどこんなんじゃ野兎一匹狩れないと思うけど…

 南の軍船も大きなの積んでたけど、あれ船にダメージは与えれてものってる人にはダメージのない欠陥品だしなぁ…

 弁償もして貰えないようだし、やっぱり家を目指して歩き続けるしかないね。


 お湯を飲んだ辺りで薄暗くなっており、また家を目指し歩き始めた頃には完全に陽が落ちていた。

 ただ上空から何やら光が当てられているので、少し眩しい位だけど…

 光を当ててくるだけで無害なので無視しておいても良いだろう、それに白黒の車や黒い車、迷彩っぽい柄の車や人もこなくなったし、ペチペチチクチクとした感覚も来ない。

 明かりのついている建物は無いし、それ以外の車も通らず、人の気配も上空に居る10数名分しかない。

 色々と邪魔をされた結果というかなんと言うか、もはや来た道すらわからないので引き返すことも出来ない。

 どうしたもんかなぁ…後お腹すいたなぁ…

 くきゅうぅ…となるお腹を押さえて何か食べ物が売っている所が無いか見渡せど、明かりのついた建物はやはりない、食べ物を並べている所も無い。

 人通りも無し、そこそこ開けた場所有り、食料は無いけどキャンプセットは有り、近くに海や川は無し。

 此処で寝てまた夜が明けたら歩くか…


 開けた場所にテントを張り、お湯を沸かし、すすなどが付いている肌を拭き、空から照らされている明かりを頼りに穴の開いた帽子の修繕、服はもうどうにもならない位破れているので服の布を流用、ついでにズボンも脱いでパッチワーク、水玉模様みたいになってしまったが、まあこれはこれで。

 パッチワークが終わった後は服を改造、肌着と上着と繋ぎ合わせて一着の服に、流石に材質とかが違うので変な感じになるが、おへそが隠せるのでこれで良し。

 沸かしたお湯で髪を軽く洗い、水気を切ってか沸かし、櫛で軽く梳いたら火を消し、お湯も捨ててテントに潜り込む。

 後は寝袋を取り出し、就寝…したいけど、光がテントを貫通し、眩しすぎて眠れないので一度テントから出る。

 適度な小石を拾い、光を出している物に向かって投げて消灯、うん、これで月明りだけで寝やすい。

 再びテントに入り、寝袋に潜り込み今度こそお休み…

 …明日こそ家に帰れるといいなぁ…

 くきゅうぅぅ…

 それとスーパーは何所にあるんだろうなぁ…何か食材を買わないと…後は…

 明日は家に辿り着けるか、スーパーは見つかるか、それと何か食べれるところが無いかなぁと…

 どうするかを考えつつ眠りについた。


「ご主人様今頃何をしているんだろうねぇ」

「さぁ…?

チラッと見た時は少々広めの家に御世話になっていましたよ、洗濯などをしていましたが」

「ほーん…まあ居候なら家事手伝い位は…」

「その後は直ぐこちらに戻ってきましたので今は何をしているかはわかりませんね。

お風呂に入っているか寝ているかじゃないですか?」

「あー、時間的にはご主人様が入浴する時間だね、何もすることが無ければ入浴後は直ぐ就寝か」

「お世話になっている家の女性は4人、男性は居ませんでしたし、このまま放っておけば…」

「仲良く…なるんかねぇ?」

「なるんじゃないですか?パッと見ただけでも家主ともう一人の方は気にかけていましたよ?」

「まあ、突撃するときのお楽しみだねぇ」

「ですね、それでは私ももう寝ますので」

「はいはい、おやすみー。

私も寝るかー」

 ご主人様は1人寂しくテントの中で寝ていることは全く予想してない2人であった…

 新しい管理人さんはご主人様の寝顔を独占できて興奮してた。

借りた携帯

流石に収納してあるところまで電波が届くほど優秀ではない

多分恵里香さんは軽く100回以上はかけてる、でも受信できない

GPSも当然機能しない、迎えに行くにも行けない


大きな車

バス、乗った時点ですでにとなりの県、さらにそこから都市部行き

バスに揺られて付いた先は隣の県の都市部、もう帰れないぞ

居候先が県境だったが敗因か…


骨が弱い

壊れ物注意

ご主人様は屋敷の中では最下層に位置するくらい弱いだけで、管理している所の住人よりは遥かに強い、そして今いる所はその住民より遥かに弱い、取扱注意


通行の邪魔をしている車

違法駐車…ではなく退路を断つように塞いで停めているだけ

効果は無いようだ


覚悟を決めた

ニュースを見た恵里香さん超ビックリ、どうにか連絡を取ろうと連打中、でも繋がらない

ニュースを見た葵さん超ビックリ、超特急で家に帰り状況確認中

リアルタイムで生放送を視聴中


かなり前にやったごっこ遊び

冒険者ごっこ

光・熱・音に反応する物を全て躱して最奥へ辿り着け、暗闇の中僅かに目に反射する光とか、周囲と温度が0.1度違ったりとか、心音でも現在地がばれて奇襲される

なおメイド達が欲張ったので全滅エンド

ご主人様を的にしていた人達は心音ダダ漏れ、体温そのまま、後騒々しいので常に位置がもろばれ

獲物にしていたご主人様に逆に狩られて退場、3桁の人数を導入して現場復帰は2名、後は多分皆病院で狂ってる


野兎

焼いても良いしシチューにしても良い、子供から老人まで幅広い層に狩られている

手軽に狩れて毛皮も人気が高いのでお小遣い稼ぎになる

見た目は真っ白で前歯が非常に発達している、後口元がいつも真っ赤に染まってたり、大型の熊などの骨や首が転がってる


照らされる明かりを頼りに裁縫

ヘリから照射されてるやつ、カメラマンとかものってる

ご主人様のセミヌードを全国に生放送でお届け!

尻尾は髪で隠れているし、耳も髪の色でよくわからないのでバレてない

派遣した特殊部隊や軍が壊滅する所まで生放送されていたのでたぶん偉い人は胃痛で苦しんでる

更に何らかの手段により照明を潰され墜落、さらに胃痛が酷くなった

こっちは流石に1名を残し文字通り全滅、ご主人様の睡眠妨害はダメ、仲のいいメイド以外は


詐欺集団

海の底でひっそりと生涯の幕を下した

ブレーキ痕などは無かったのでたぶんブレーキが急に壊れた、という鑑識結果

事件性は無いと処理されかつ詐欺集団としてマークされていたので死体蹴りが始まった程度


海鮮丼大盛り

工場生産の寿司飯、冷握り寿司用の冷凍刺身、冷凍茹でエビ

初めての味なのであまり美味しく感じなかった


味噌汁

出汁入り味噌をふんだんに使用、乾燥ワカメ入り

やたらと塩辛い


蛸のから揚げ

揚げるだけで出来上がりの冷凍物

蛸3衣7の割合、なんか粉っぽい


新しい管理人さん

新しい任地でお仕事中、管理する人数が多すぎるので半分以下に減らす計画を立ててる

今ちょうどご主人様と遊んでるところだから見張っておいてね、と言付けを受けたので熱心に見張ってる

職権を使い四六時中録画、撮影中、今は寝顔を1人で独占中

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