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経験のなせる技 変だけど可愛い

「ぴー…ぴぴぴぴぴぴぴっ!」

「ほー…短い足と短い嘴でよくそこまで綺麗に形を整えられるな、着色や模様付けも迷いがないし」

「下塗りもちゃんとしてるし、乾いた物はちゃんとコーティングもしてるし、光沢を出してるのもあれば艶消し処理とかしてるのもあるし、凄い拘りだよな、素材そのままの物もあるが」

「ぴっ!ぴよっ!ぴー!」

「卵の殻帽子は今までに何億と作ってきてるからねぇ、迷いもなければ丁度良い大きさに割ったり削り取ったりするのもお手の物ってやつだね」

「それだけ作ってきてるなら綺麗に形を整えるのもわかるし、迷いなく色と模様を決められるってのもわかるな」

「そういや卵を買ってきてからちょーっと経つけど、今日まで加工しなかった理由は何かあるのか?割った後の殻もずーっと置きっぱなしだったし」

「中の薄皮を剥いで洗浄して乾燥、下塗りをしてまた乾かして、ってしてたからまあそれなりに時間がね?下塗りも卵の殻に合わせて薄くしたり濃くしたりで変えてるし」

「そこまで拘るか…どれも同じ様に見えるけどなぁ…」

「卵も1個1個微妙に厚さが違ったり目に見えないひびが入ってたりするからそれでね、早く乾かしすぎると割れるのもあるし、それでじっくりゆっくり乾燥させて強度も出たところで形を整えたり、色を付けたり模様をつけたり」

「強度を上げた場合どのくらい強くなるんだ?」

「気持ち強めに叩かないと割れないくらい、コンコンって感じじゃなくてカンカンってちょっと強めに叩くと割れる」

「ほぼ誤差だな…」

「だってどうあがいても鶏の卵の殻だし、割れない様に強化しない限りはそんな物よ」

「強化しておけば割れずに済むんじゃないのか?出来るんだろ?」

「出来るけどしない、お洒落だけど芸術みたいな物だから壊れないのはちょっと違うらしい、それで毎回家ごと壊されて拗ねて家出するんだけどね」

「ぴょー!ぴぴぴっ!ぴーよー!」

「どこの芸術の大先生だってくらい激しい動きをしてるなぁ、飛んだり跳ねたり蹴ったり突いたり、それで失敗しないんだから凄いわ、編集と合成ですって言われてもしっくりくるくらい」

「毎回こうやって作ってんのか?」

「毎回ではない、普通にクチバシて爪楊枝の先端をほぐした筆を使う時もあれば塗料を何重にも重ねて爪で引っ掻いてマーブル模様ってする時もある、まあその時の気分だね」

「今日は激しく大胆に、なれど繊細にって感じか、動画を撮りながらこのひよこに絵を描かせたら地味に売れそうだな」

「ひよこちゃんは卵の殻専門、描けないって事は無いだろうけど紙とかそういうのに描いたとしてもスケールはひよこサイズよ?」

「あー、それもそうか、でも動画に撮って投稿するのは面白そうだよな、何の宣伝にもならんけど」

「再生数はちょこっと伸びるだろうけど、今でもたまに動画に出る度に今何代目?とかいうコメントが来るからねぇ」

「普通ならひよこでいる期間は短いしな、姿も変わらずこのままだと何代目ですかってなるのもわからんでもない」

「そんなことより今日はどうすんの主様?またリーフの方に行くの?」

「大きいのを釣りたいか小さいのを釣りたいかによる、小さいのならまたリーフで軽く投げる程度でもいいしカヤックで真下に落とすだけでもいいし、大きいのがいいなら船でちょっと沖に出てジギングとかキャスティング。

まあ堤防に行ってフカセでもいいけど、外側は兎も角内側ならオヤビッチャとかニザダイとか結構いるしね」

「フカセの餌後どれくらい残ってたっけ?」

「コマセが後2袋でオキアミが4ブロック、イワシとキビナゴが2ブロックずつ、ガンガゼは使い切った」

「外側もボチボチ戻ってきてはいるんだよな?」

「戻ってきてるね、サメに食い荒らされる前ほどではないけど、メーターのアオチビキとかも入ってきてるし、食われたのからすればかなり小さい方だけど20キロクラスのイソマグロもいる、サメ除けも設置してあるからサメが釣れる事もない。

後なぜか20キロクラスのクブシミが大量発生中だからエギングも有りと言えば有り、なんだかんだでグルクンとかも結構集まってるからそれを食べに寄って来てるんだろうし、底には伊勢海老とか団扇海老とかも結構いるから海老釣りなんかも出来るね」

「伊勢海老も居るなら海老釣りもいいな」

「俺はクブシミを釣りてぇな、あのイカ美味いし」

「じゃあ今日はその2種を対象にしましょうかね、コマセは残り少ないけど伊勢海老を寄せるための団子作りに1つ使って、餌はクブシミの触腕でも使えばいいでしょ」

「掛かり釣りとかそういう感じにするのか?」

「そうだね、小さめの団子にイカを包んで底まで、だからまずはエギングをして餌を確保するところからだね」

「ぴぴぴぴぴぴぴーっ!」

「このひよこはどうするよ主様?」

「終わったら堤防の方まで自分で歩いてくるでしょ、もしくは滑空しながら落ちてくるはず」

「滑空してるのか落ちてるのかどっちだよ」

「ほぼほぼ自由落下?」

「ぴっぴぴぴぴょー!」

「ま、当分終わらないだろうし、放っておくか」


 まずはピンポン玉くらいのちょっとばらけ難い硬めの団子を作りまして、適当に5個くらい投げたら餌にするためのイカ釣りを開始、アオリの仲間であるクワイカもいるのでそれを狙うのも有りと言えば有だけど…そっちはクブシミの反応が今一渋かったらにしておくか。

 餌木は何号にしようかねぇ…入ってきてるクブシミは最低でも10キロからはあるから4号とか5号でもいいんだけど…んー…4号でいいか、色はグルクン寄りのハイフラッシュ系で、これでダメならピンクとかライトグリーンのフラッシュ加工なし、それと浮力調整用のシンカーも用意して…

 よし、それじゃあ適当に投げてクブシミを狙いましょうかね、心配事があるとすれば…ファイト中に横からGTがすっ飛んできて食われる可能性がなくもないということか…メーター後半になると20キロくらいのクブシミも丸呑みにするからなぁ…

 エギの針だと口に引っかかったとしてもまず耐えれないし、丸呑みにしてきたらいっそ完全に飲ませるのもあり…かねぇ?でもリーダーが20lbだから歯に擦れた時点で一発で切れるだろうし…うぅむ…丸呑みにされたら口に掛けて針が伸ばされて外れるまでは粘ってみるか。

 というわけでペッと軽く投げてゆーっくり沈めて…ちょっとしゃくったら長めに待って…根掛かりしない様に底までは沈めず中層辺りをふよふよと…これをイカが釣れるまで繰り返すだけ、伊勢海老もそうすぐには寄ってこないだろうし、まあどっちものんびりだね。


「重いなー…たまにギュンって持って行かれるけど兎に角重い…重さだけで糸が持って行かれるから巻いても巻いても全然寄ってこねぇ…」

「10キロは軽く超えてそうだな、ドラグを締めて糸が出るのを止めない限り切れる事はねぇし針も伸びねぇからゆっくり寄せてくりゃいいさ、少し締めたら今より寄せやすくはなるが一発で針が伸びるからお勧めはしない、伸びきって外れる前に取り込める位置なら締めても大丈夫だが」

「まだ後30メーターくらいあるし、勝負に出るのは止めた方がいいね、兎に角走り回るっていうような生き物じゃないし、ちょーっとずつ寄せてくればいいのよ」

「くそー…クワイカに狙いを変えた瞬間だったから餌木が小さければ針も細くて弱いというのが辛いわ…」

「クワイカは大きくても400とか500グラムにしかならないし、大きいのも抱きついてくるには来るけど、小さめの方が掛かりやすいからねぇ」

「触腕を伊勢海老の餌にする予定なんだから絶対にばらすなよー?ドラグは締めず竿も引っ張らなくていい、足元近くに来るまでその速さを保って巻き続けるだけ、イカがグイッと引っ張った時だけ巻くのを止めて負荷を減らしてやれば針も伸びなければ糸が切れる事もバレる事もない」

「まあ頑丈で伸びない切れない状態にしても締めすぎると身切れするから、イカはドラグ気持ち緩めが基本で引っ張らない事だね、掛かったらもうただ巻くだけ、2キロとか3キロのほぼほぼ伸びる心配もない糸が切れる心配もない、身切れするほど重くないやつは引っ張ってもいいけど」

「イカは見えるまでどこに掛かってるかわからんってのが辛いな、触腕1本だけってのもあるし、それだとなおさら無理はできねぇし」

「そもそもこれ浮いてくるのか?」

「巻き続ければそのうち浮いてくるだろ、ずーっと同じテンションを保ってるから少しずつ少しずつ上に引っ張られてはいるわけだし、焦らずじっくりやり取りするこったな」

「横からGTとかそういうのがすっ飛んでこない限りはまあ大丈夫だと思うよ?すっ飛んで来たらこうなるだけだし」

「それ釣れるのか?」

「さぁ…?針が伸びるかその前にはずれるかのどっちかだと思う、トレブルとかダブル、シングルと違ってがっつり刺さる形状はしてないし、歯に引っかかってるだけだからいつ外れてもおかしくないと言えばおかしくない」

「群れから離して寄せてきたクワイカを掛けたら掛けたでカスミが丸呑みにしていったのはさすがに笑うわ」

「こっちは割と笑い事ではないんだけどね、刺さってないからちょっとでもテンションを抜くを外れるし、口を開けて頭の向きを一気に変えられると簡単に外れる」

「諦めた方が早いんじゃねぇかそれ?もうクワイカもカスミの胃の中だろ」

「だよねぇ…仕方ない、諦めて外すか…足元まで寄せても取り込みの段階で絶対にはずれるし…よっと」

「外そうと思って簡単に外せるのも凄いわ、普通ならドラグを締めて弾かれて外れるのを待つくらいなんだが」

「コツがあるのよ、慣れれば返しが付いていても外せるし、トレブルががっつり2本刺さってても外せる、まあバーブレスの方が簡単といえば簡単だけど」

「バーブレスでも出来る気がしねぇなぁ…がっつり刺さって思いっきり引っ張られてテンションが掛りまくってる状態で外すとか人間技じゃねぇし、この世界中を探しても出来るやつはまずいないだろ、刺さらず引っかかってるだけならテンションを抜くだけで外れるから出来るが…」

「まーそんな事よりこっちをどうにかしてくれ、地味にきついんだよこれ…」

「そうは言ってもしてやれる事なんて取り込みの手伝いくらいだしなぁ、後25メーターくらいだから頑張って巻き続けろ」

「あれだけ巻いて5メーターしか回収出来て無いのに絶望するわ、もう20分巻き続けてんだぞ…」

「リーダーは20lbだから問題ないけどさっきも言った様に餌木がねー、それと身切れ、それを考えると今の状態を保つのが最善、少しでも緩めるともう糸が回収出来なくなるし、少しでも締めると針がじわじわ伸び始めるし、ポンピングでもしよう物なら針の伸びが加速するし身も裂け始める。

今は針がギリギリ伸びず身も裂けないラインを保ってる状態だし、それ以上はもうどうしようもないのよね」

「くっそー…5号餌木を使ってた時に来いよなぁ…そしたらもうちょい楽だっただろうに…」

「少なくとも針が伸び始める限界が違うからそれならもう釣れてただろうね」

「とりあえずこっちは釣れたクワイカを餌にして海老を釣ってるから近くまで寄ってきたら呼んでくれや、一人じゃ取り込みは出来んだろうしな」

「邪魔にならないように応援だけはしてるからね」

「ぬぁー…手がだるいー…これ明日絶対筋肉痛だろ…」

「帰ったら手と腕のマッサージは必須だね」


「ぴぴぴっ!ぴぴぴぴぴぴっ!ぴぴょー!ぴぴょー!ぴっぴょー!ぴー…ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴっ!ぴよー!」

「ひよこちゃんノリノリだねぇ」

「堤防に来ないなーと思ったらまだ着色と模様付けをしていたのか」

「時間を掛けてるだけあって結構な大作になってるな、こっちのマーブル模様も吸い込まれそうな雰囲気を出してるし、有名ブランドの物ですって言っても通じるだろうな」

「ワンポイントの花柄もシンプルでいいよね」

「ぴー…ぴょー!ぴよー…ぴーぴぴぴぴぴぴぴっ!ぴょーっ!」

「で、ミキはずーっとひよこを撮ってたのか?」

「特にやる事も無いですし、おおよそひよことは思えない事をやっていても可愛いものは可愛いので」

「見た目だけなら間違いなく万人受けするからなぁこのひよこ、行動と食ってるものがどう見てもひよこじゃねぇけど」

「可愛いは正義、多少変なところがあっても問題なし」

「まあ、撮るのは自由だし、動画を投稿するのもいいけど一応うちのひよこちゃんだってわかるようにタグ付けはしてね?こんな変な事をするのはひよこちゃんだけだから見る人が見たらわかると思うけど」

「だよなぁ、こんな変なひよこ兄さんくらいしか飼ってないもんな」

「主様とりあえずマッサージしてー、腕がだるくてだるくて」

「はいはい、クブシミと伊勢海老はマッサージが終わってからだね、ミキさんも食べてく?」

「頂ます」

殻帽子

ひよこちゃんが選び抜いた卵を使い、ひよこちゃんの気が赴くままに色や模様を付けたひよこちゃん専用帽子

今までに何憶何十億個と作ってきているのでそこいらの芸術家では太刀打ちできないほどの芸術性を帯びている、でも所詮は卵の殻である

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