何処か遠い空の下で… 天ぷら揚がったよ
葵さんに拾われた翌日、葵さんと共に服を買う為にお出かけ。
寝間着のままと言うわけにはいかないので、体格の似た使用人の服を借りている。
「着いたわ、さ、車を降りて買い物に行くわよ」
「はいはい」
「それにしても動じない所か、驚くほど似合っているわね…」
「そう?よくある事だから何も考えてないだけだけど」
「よくある…ねぇ…?」
線が細く、腰回りも締まっているのでパッと見はメイドにしか見えないだろう。
ガーターとストッキングも装着済み、下着も…ね…?
トコトコとついて行き店内へ、いろんな服がずらーっと並んでいることも無く。
見本で数点置いてある程度、何やら店員を放し始め採寸が始まった。
「着替えている所を見たけど、世の中の女性に刺されそうな位腰回りとか締まってるわね…」
首回りから肩幅、腕の長さ、胸囲にと、あらゆるところを測られ採寸完了。
採寸が終わった後は再びメイド服を着用、店員さんは無心を装っているが耳が赤くなっている。
「これとこれ…後これもお願い」
「一から作るとなりますと2.3日ほど頂きますがよろしいですか?」
「構わないわ、出来るだけ質の良い物をお願いね。
それと…この生地に似たようなのは有るかしら?」
あ、私の寝巻…
「では少し拝見いたします…
そうですね…これほどの物となると何所を探しまわっても見つからないかと。
それに有ったとしても値段がつけられない物になるかと…」
「そう…ならいいわ、今ある一番いい質の物を使ってちょうだい」
「わかりました、出来上がり次第ご連絡いたします」
「ええ、それでいいわ。
さ、次に行くわよ」
「またの御来店をお待ちしております」
採寸と注文だけをして1軒目は終わり、次は何所だろうか…
「さ、降りて」
「次は何かなー」
「靴ね、今度は先程の店とは違うから適当に選んで1足買うわよ」
店内に入り物色、いろんな種類の靴が有り重さもまちまち、これほど種類があると悩むな…
「どお?何か気に入ったのは有る?」
「どれにすればいいかさっぱり」
「そうね、あなたが普段履いてたのに似たようなのは有る?」
「んー…」
店内を見渡し、ぶらついて靴を確かめていく。
「これが近いかな?」
「ならそれにしなさい、慣れない靴を履いても靴擦れするだけよ。
それにそれは使い捨てにするから3日も履かないでしょうけど」
服やで測った時の足のサイズに合わせた靴を買い退店、その後何処かに連絡を取り何かを伝えている。
「これで服と靴は問題なし、下着はどうする?」
「いくらか欲しい…かな?」
「なら次はランジェリーショップね」
また車に乗り揺られること暫し、下着専門店に到着。
「男物はあまり取り扱ってないけど、あるにはあるわ。
それにあなたなら女性物でも十分でしょう」
「あー、うん、まあ…」
そう言えば採寸したとはいえ、体系も自由に変えれるからあまり意味はないんだよねぇ…
なんにせよ今は下着選び、起きた時に性別が変わった時様に一応ブラもセットで買っておこう。
「あら、ブラも買うの?
少し前にはやった大胸筋サポーターとかかしら…」
「そんなものがあるのか、まあこれは後々必要になるから、だね。
早ければ明日にはわかるかと」
「そう、ならいいわ。
此方のレースとかどうかしら?」
「レースも良いけど、こういうのも良いかなぁ」
デフォルメされた狐が描かれているパンツを手に取ってみる。
「…結構少女趣味ですのね…」
「そう…なのかなぁ?
でも普段身に付けているのはこういうのだよ」
白のレースや黒のレースなどを手に取り渡す。
「何とも言えませんわね…」
他に何か良い物が無いかを探し、可愛い物を探す。
「これも良いな」
白と青のストライプ、残念ながらブラはセットでは無いようだ。
「また子供っぽい物を…」
「ブラは…適当にこれでいいや」
「下は選ぶのに上は適当ですね…大きさもバラバラですし。
下はBから上はGまで…よく分かりませんね…」
「んー?気になるなら今見せようか?」
「気にはなりますが、試着室に入ってからにしてくださいね」
手を引っ張られて試着室なる所に連れ込まれる。
「此処なら他の方の目も有りませんのでどうぞ」
「ふんふん、カーテンで遮ってる何かがあると思ったらこういう事ね、では早速」
男性だった身体を弄り女性の物へと変化、ただ失敗したのは…
「あっ…」
「いたっ!」
特に気にせず性別を変更した事、ブラをしていなかった事、使用人から借りていた服の持ち主は胸が平らだった事、以上の事を踏まえると…盛大にボタンが弾けとんだ、そして正面に居た葵さんに綺麗に当たった。
「っつぅ…」
「大丈夫?」
「一応は…」
とりあえず胸をひっこめて弾けとんだボタンを拾い集める。
後で修繕しなきゃ…
「なるほど、ブラのサイズがバラバラだったのはそういう事だったのですね…」
「弄ろうと思えば体形も好きな様に変えれるよ」
「なら採寸する意味はほぼ無かったと…」
「んー、何も考えずに男になった場合はあの体系だから意味は有るかと」
「そう…ですか」
散らばったボタンを集め終わったのでポケットに仕舞い込む。
「しかし参りましたね…」
「んぅ?」
「一旦帰らないと次の場所に行けませんね、服が…特に胸の部分が駄目になっていますし」
「ああ、ね…」
家に戻り次第謝らねばなるまい、それから修繕してお返ししよう…
「取り敢えず下着は以上ですか?もう無ければお会計を済ませてきますので」
「んー、ないかな?」
「では先に車まで戻っていてください、後これで胸の部分を隠せばいいでしょう」
ストールが手渡されたのでストールを巻き、胸の部分を隠す。
「ありがと」
「いえいえ、こちらが車の鍵です、運転できるのであればしても構いませんが…
事故は起こさないでくださいね?後始末が面倒なので」
「流石にしないよ…」
先に退店して車の鍵を開け、乗り込んで待つこと暫し。
紙袋を片手に歩いてきたので片側の鍵を開ける。
「はい、これがあなたの当分の下着の替え。
それじゃあ一旦家に戻るわよ」
来た道を引き返し帰宅、手荷物だけ持って降りて車はまた使用人の人が乗って行った。
「これは見事にはじけ飛んでますね…実は女性でかなりの巨乳だったとか…?」
「その辺はあまり聞かないでもらえると…いずれわかる事ではありますが」
「お嬢様がそういうのであれば…」
「ごめんねー、何時もと違う服だったの忘れてて。
糸と針あります?」
「いえ、こちらで修繕するので大丈夫です」
今はメイド服は脱ぎ、寝間着を着ている状態、しかしどうした物か。
「そう言えば何時もの違う服、と言ってましたが、何時も来ている服であれば服は破れなかったと?」
「そうだねぇ、ボタンが飛ぶことも無かったかなぁ?」
「触った感じでは上質のシルクよりさらに良い物を使っているとしか思えませんでしたが」
「そうだねぇ、例えば」
適当に体を弄り体形を変える。
「このように、身体に合わせたサイズに自動で変えてくれる、あくまでも布には変わりないから切ったり破いたりすると駄目になるけど」
「なるほど…」
「お嬢様、鰈にスルーなさっていますが、どう見ても女性になっていますし、身長の方もかなり縮んでいるのですが?」
「そういう物だそうです、納得しなさい」
「まあ…お嬢様がそういうのであれば…」
「お昼も近いですし、また出かけるにしても食事を取ってからですね」
「帰ってこないと思っていたので特に何も用意していませんよ?」
「適当に冷蔵庫を漁るわ…」
「お嬢様のするような事ではありませんねぇ…」
「なら何か作りなさい」
「パスタ位しか有りませんがそれで宜しければ」
「それでいいわ、その間にこっちは午後のお出かけの準備をするわよ」
使用人さんは部屋を出て行き調理場へ、こちらはお昼の準備。
「体形も性別も自由なら…」
衣類が大量にしまってある部屋に連れて行かれ、体形を指定された物に変更、掛けてある服を合わせ始める。
「私のお古だけどほとんど新品の様な物だし、問題はないわね」
「うーん、お人形さんになった気分」
「そお?私は楽しいけど」
「まあ屋敷でも頻繁に着せ替え人形にされてるし、それに比べるとかなりマシだけど」
「ただ着せ替えるだけに酷いとかマシとかあるの?」
「衣類も下着も全部脱がされてリボン一本だけのコーディネイトとかも無くはない」
「…ただの変態ですね」
「メイド達の受けはかなり良いけどね」
暫く着せ替え人形になり、これだという組み合わせが見つかったので終了。
「そろそろ昼食も出来ているでしょうし、食べに行きましょうか」
「さて、どんなものが出てくるのか…」
「あの娘の料理は普通に美味しいので安心してください」
葵さんの言う通りに普通に美味しかった、飛び抜けたところも無く安定した美味しさ。
お店を出せば人気店になる事は無くとも、安定した客入りで確実に稼いでいけるだろう。
「まあお店なんて出しませんけどね、ここの給料の方が多いので。
お嬢様に仕えているだけで月の手取りは40万!
こんな楽な仕事他には有りませんって」
「お給料カットしようかしら…」
「そんなご無体な!」
「仲がよろしい事で」
「そりゃもう、おはようからお休みまで一緒のベッドですし、付き合いも長いですしねぇ」
「今月の給料明細は0という数字だけでいいかしら?」
「それだけは!それだけはご勘弁を!」
「なら余計なことは言わない」
葵さんの耳が赤いなぁ…まあそう言う関係はうちだと普通だし、何もいう事は無い。
「しかし、今一物価が掴めないなぁ…」
「そうですか?」
「衣類が少々高くつくのは分かるんだけど、食料品の値段がねぇ…」
質はそんなに良くないのにやたらと高い野菜や肉、質がかなり良いのに10円程度のもやしなど、よくわからん…
「一応あの娘が買ってきている物は全て質の良い物だと思いますが」
「うん、それは間違いなく、少なくとも私の居た所ではこの量のもやしだと銅貨2枚はするかな」
「銅貨1枚で何円くらいなんでしょうかね…?」
「逆にこのキャベツだと銅貨4枚くらいだねぇ」
「10円のもやしが銅貨2枚で、198円のキャベツが銅貨4枚、情報が少なすぎてわかりませんね」
「お肉は…牛1頭なら金貨1枚から高くて2枚、魚も種類によりけりだけど銅貨から銀貨まで」
「ますますわからなくなりましたわ…」
「物価とかは地域によって違うからねぇ…
この質のお肉量だと…銅貨10枚くらい?」
「これ…一切れで2980円するんですけど…」
「ね?だからすり合わせを使用にもできないの」
スーパーに行き食材を自分の目てみて値段を質を確かめる。
しかしどうにも自分の価値観と品物が合わない…
とりあえずもやしは買いだな、10袋位買っちゃおう。
「まあ、野菜は仕入れてたから値段は有る程度覚えてるけど。
魚に関しては自前の海で養殖してるし、お肉に至ってた製造してるしねぇ。
ちょっと旅してみた所の価格だから正確には分かんないや」
「養殖していたんですね…肉を製造と言うのはよく分かりませんが」
「1.2日有れば作れるよ、作ろうか?」
「それは牛などを捌いて下すという事で?」
「いや、そのまま言葉通り、お肉を製造する物」
「興味は有りますね、作ってみて下さる?」
「家に帰ってからね、取りあえず見た中では肉の質はこれ…魚は…これが良いかな」
「調味料などはみませんの?」
「調味料だけは何時も大量に持ち歩いてるから大丈夫」
「ではお会計に行きましょうか」
支払いを済ませ帰宅、スーパーでのお買い物、締めて5781円なりぃ…
なお買った物を見てもやはり銅貨1枚当たり何円か、の答えは出なかった。
「ちょっと荷物が多いからあの娘を呼んで来て頂戴」
「暫しお待ちください」
車から降りた後、暫しその場で待ちぼうけ。
「お帰りなさいませお嬢様」
「ただいま、早速だけどいろいろ買ってきたから厨房に運んでくれるかしら?」
「わかりました、しかしお嬢様が食材を買ってくるとは珍しいですね」
「この人の希望でね、流通している物の質の見極めと、価値観の擦り合わせ…との事だったんですけどね」
「ははぁ…質は兎も角価値観が合わなかったと」
「そういう事ですね、そちらのお肉なんてグラム100円の特売で500円の程度物なんですが」
「お買い得ですね」
「彼…彼女?の所では銀貨2枚らしいです、それとこちらの1枚2980円のお肉、これは私が個人的に買いましたがなんと」
「なんと?」
「銅貨10枚だそうです、よく分かりませんよね」
「国産の物で物は良いはずなんですがねぇ…輸入物の特売の方が価値があると?」
「野菜に関してはもやし一袋10円の物が銅貨2枚で、一玉198円のキャベツが4枚らしいです」
「ますますわかりませんね、取りあえずとっとと冷蔵庫に入れちゃいましょう」
荷物を車から取り出し、いざ調理場へ潜入。
実際銅貨1枚何円くらいなんだろうなぁ…
「此処が我が家の厨房になります」
「おー…と言うほどでもなくそんなに広くはないね」
「そうですか?」
「住んでる人数に対してこの広さは十分広いですけどね、いまでも持て余していますし」
「うちは皆よく食べるからなぁ…火を使う所だけでもお鍋とか50個は同時に調理できないと話にならないから…」
「どれだけ広いんですかそれ…」
「少なくとも…ここの5倍?」
「厨房だけで3世帯位住めそうですねそれ」
100人からのメイドが居て、1人当たり最低3人分、多くて30人分は軽く食べれるメイド達だからなぁ…
「それで、買ってきた食材で何を作りましょう?」
「あぁ、夕食は彼女が作ってくれるようなので任せましょう。
心配であれば見張っていてください、私はお風呂に入ってきます」
「ではお風呂に他の使用人を向かわせますね、私は一応ここで見ていますので。
道具の使い方も違うと思いますし」
「あぁ、それは確かに、これとかどうやって火を点けてるか分からない」
「うちはガスとIH両方ですからねぇ、そちらではどうやって火を?」
「んー…大体炭か薪、後はこういうやつかな?」
携帯コンロを取出し火を点ける。
「見た目は普通に携帯用のガスコンロに近いですね…あ、火の調整もちゃんと出来るんですね」
「これの大きいのが大量にずらーっと、薪か炭かこれかは使い分けかな?」
「ではこちらの火の付け方を、まず元栓を開けます、この時に手元のレバーが閉まっていることを確認してください。
仕舞っていれば元栓を開け、次に一番手前にあるレバーを引き、これに火を近づけます、此処に着いた火が種火になります。
次にこの左右にあるレバー、これを開くと子のように大きな火が付きます、閉じれば消えますが、種火の所を締めない限り、レバーを開けばまた何時でも着火できます。
使い終わればレバーを締め、種火も締めてけし、元栓を締めれば完了です。
何か質問は有りますか?」
「使い方は分かったので大丈夫、排気とかは?」
「煙などは真上にある換気扇から排出されるので、室内に煙がたまる事は無いです」
「ふんふん、この辺りは変わらないね」
「そうですか、どこも似たような感じになるんですかねぇ?」
「形だけならオーブンも似てるしなぁ、使い方は違うけど」
「まあ、他に何か分からない事が有ればお聞きください」
「はいはい、あ、揚物に使う油は?」
「こちらをお使いください」
「ちょっと匂いを確認…ほぼ無臭だね」
「ですね、こちらで流通している物は大体無臭に近い物が多いです」
「うーん、油あったかなぁ…」
ちょっと収納を漁って探し物…
「お気に召しませんでしたか?」
「舐めてみた感じだとちょっとねえ…悪くない物だってのは分かるんだけど」
お、あったあった、揚物用油。
「オイルポットですか、まさか使い古した油の使うので?」
「もちろん、確かめてみる?」
「では念のために…なんと言うか…油って感じの匂いですね」
「気になるけどなんか癖になりそうでしょ?」
「確かに…油って感じはしますが、ネットリト纏わり着く様な感じはないですね」
「ちょっと舐めてみるとよく分かるよ」
「では失礼して」
小指に付けて油を舐め取る使用人さん。
「あぁー…これは中々…」
「いいでしょこれ」
「これで揚物とか贅沢ですね、こんなの何揚げても美味しくなるに決まってるじゃないですか…」
「使い古しては有るけど、油自体は新品同様なんだよね、ポットの中に小型の浄化槽を仕込んであるから汚れたり参加したりしても綺麗に元通り」
「廃油が出ないのいいですねぇ…廃油の処理も中々面倒で…」
「じゃあ夕食の準備をしようか」
もやしは鮮度が命、買ってきた10袋全てを開け、ザルに盛り上げさっと水洗い。
水を切ったら片栗粉を纏わせ、次に冷水で溶いた天ぷら粉を入れサッと混ぜる。
後は熱した油の中に入れて生地に火が通ればもやしのかき揚げの出来上がり。
「もやしの天ぷらですか…美味しいので?」
「試食用に揚げたやつだからどうぞどうぞ」
「では早速」
衣のサクサクとした音にもやしのシャキシャキとした音が伝わってくる。
「これは…なかなか…油が良いのか…もやしがいいのか…おかわり」
「おかわりはまだありません、夕食までお待ちください」
「えー…」
欲しそうな目で見てくるが、まだ夕食時ではないので本格的に揚げたりはしない。
次に買ってきた魚や海老を仕込んでいく。
「海老は…頭要らないか」
海老の頭は全部落として小鍋の中に。
「魚も骨は取り除いて…」
こちらも海老の頭を入れた小鍋の中へ入れて灰汁を取りつつ煮る。
「海老天と白身魚の天ぷらですか、王道ですねー」
「天ぷらにするにもあまりいい食材がね…」
「ナスは時季外れ、カボチャも無し、かき揚げと言えば玉ねぎですが玉ねぎも有りませんね?」
「あまりいい玉ねぎは無かったんだよねえ、残ってたのは全部小玉だったし」
海老と白身魚を仕込み、買ってきた食材での天ぷらの準備は終わり。
「天ぷら3品だけでは寂しい気がしますね」
「天ぷらは天ぷら、お肉はお肉で有るから大丈夫」
これは良いと目をつけて買っておいたお肉の封を開け、そのままボウルの中にどさっと全部入れる。
既に切り落とされてバラバラになっているので、スパイスを入れ、握りつぶしながら混ぜ合わせる。
スパイスが混ざり、荒めに潰された肉がくっついたら形を整え、小麦粉、溶き卵、パン粉の順番で付けてカツに。
「天ぷらにメンチ…?」
「美味しければ全て良し、後メンチと言うよりは牛カツだね」
形を整え衣を着け終わったら煮ていた骨とエビの頭を取り出し、砂糖と酒と醤油、最後に山椒を入れて少々とろみがつくまで煮詰める。
とろみが付けば丼のタレが出来上がり。
天つゆは作ろうにもよさげな昆布が無かったので塩で。
「あら、まだ夕食は出来ていないの?」
「すみませんお嬢様、後は揚げるだけなのですが」
「そう、ならもう少し待っているわね」
「じゃあ今からどんどん揚げていくから、好きなだけ食べてね」
炊き上がったご飯を器によそい、先に丼タレと一緒に渡して置き、携帯コンロを持ち込み目の前で上げていく。
「お店でもないのに目の前で揚物とは斬新ね…」
「はねた油の掃除で後仕舞いが大変に…」
「掃除とかも慣れてるのでお気になさらず」
まずは海老から揚げて行き、程よく油が切れた所でお皿に乗せて渡す。
「んんー…普段食べている天ぷらとは大違い、風味や甘み、それにぷりぷりとした食感もたまらないわ…」
「それほどですか?」
「ええ、段違いね」
「一つ頂いても?」
「駄目です、これは私の夕食です」
「お嬢様のケチ」
「なんとでも言いなさい、この海老は私の物です」
オホホと笑いつつ海老を独占する葵さん、エビは全て葵さんの胃袋に収まって行った。
ちゃっかり海老天丼にして食べていた辺りあまり食べ方にはこだわらないようだ。
「次は何を揚げてくれるのかしら?」
「白身魚かな、4枚くらいしかないけど」
「では揚げて下さるかしら?」
「はいはい」
海老と同じ様に目の前で揚げはじめ、こちらも残さず美味しくいただかれた。
使用人さんは葵さんを恨みがましく見つめ、葵さんはそれを笑って返している。
「次はもやしのかき揚げ、それと牛カツだね」
「もやし…美味しいの?」
「美味しかったですよ、おかわりをすぐに要求した位には」
「ではお願いします」
「はいな」
もやしのかき揚げは衣がさっくりと揚がれば出来上がり、油の中から救い出して油をきれば…
「はふぅ…これがもやし…別の食べ物みたいですね」
サクサクシャキシャキと食べ続け、丼タレを着けたり、塩で食べたり。
もやし2袋分食べた所でかき揚げは終了、最後に牛カツを2個。
「これが特売だったお肉…ですか、普段頂いているような高いお肉に勝るとも劣らず…いえ、勝っていますね」
「調味料を入れて粗くつぶしていただけにしか見えませんでしたが…」
「こちらはまだ数が有る様なので食べてみなさい」
「ではお言葉に甘えて…」
ゆっくりと咀嚼し、カツを味わって食べる使用人さん。
「んっ…確かに、これならお嬢様が買ってきた高い肉より美味しいでしょうね。
それにしても」
「それにしても?」
「これはお酒が欲しくなる…」
「駄目ですよ、それに私はもうお腹いっぱいなので付き合えません」
「ぶーぶー、いいもんいいもん、残りのカツ全部貰っちゃうもん」
「それはどうぞご自由に、食事が終わったらお風呂に入った後はいつも通りに」
「わかりました…とは言っても何時もよりは遅くなるかもしれませんが」
「美味しいですからね…食べ過ぎない様に…もし太る様であれば…」
「あれば…?」
「強制的にダイエットですね」
「ぐっ…!」
中々にいい笑顔で宣告をして去って行った。
「いやー、ごめんねー、掃除を1人に任せちゃって」
食事が終わった後即お風呂に入り身体を磨いてきた使用人さん。
現在お風呂上がりに冷ました紅茶を飲み一服中。
「まあ慣れてるしねぇ」
汚れは残さず、全て綺麗に清掃完了。
「所で夕食はどうするの?私達が全部食べきっちゃったけど」
「んー、どうしようね?食べなくても死にはしないけど」
お嬢様の御付っぽい使用人さんと、車を所定の位置まで停めに行っている使用人さん、それと庭の掃除などをしている使用人さんの3人に、もやしと牛カツは食べ尽された。
「まあ何だったらお嬢様が買ってきたお肉を焼いて食べちゃえばいいから」
「ご飯は残ってるからまあどうとでもなるかな」
「すみません、以外にもかなり美味しかった物で…」
「もやしなのにあの美味しさはねぇ…」
「いいのいいの、美味しいって言ってくれるのが一番うれしいから」
ぺこぺこと謝っている2人の使用人さんと、紅茶を飲んでる御付っぽい使用人さんをその場に残し、厨房で最後の後片付け。
ちゃんと食器や調理器具も洗わないとね、その前に余っている白米を塩にぎりにして食べて夕食はお終い、海苔位は付けるべきだったか…?
お風呂に入った後は借りている部屋に戻り就寝。
明日は小型の変換機を作らないとなぁ…お金に余裕は有るみたいだけど、出来るだけ出費を減らすに越したことはないし。
自分で作れるなら作った方が安上がりだね…
そう考えつつ眠りに落ちそうになった所で、扉が勢いよく開き、誰かが飛び込んでくる。
「一緒に寝ましょう」
「はい?」
「はいという事はオーケーという事ですね、では失礼したします」
特に返事を待つことも無く潜り込んでくる使用人さん、葵さんのところに行ったはずでは?
「では行きますよ」
「え?え?」
潜り込んできたと思ったらそのまま抱きかかえられ別室へ。
連れて行かれた先では葵さんがベッドで横になったまま此方を見ている。
「今は女性?男性?」
「触ったところ付いていませんでしたので女性ですね」
「ではそのままで、私左、あなたが右で」
「わかりました、では失礼して」
「ほえ?」
何も理解できないままベッドの真ん中に寝かされ、左右から抱きつかれ、2人に首筋を嗅がれ始める。
「んー、男性の時もそうでしたが匂いは変わりませんね」
「男性の時の匂いも確かめたのですか?」
「病院で寝ていた時に少し」
「くすぐったいんだけど…」
「我慢してください、もう少ししたら私は寝ますので、今少し我慢している状態です」
「なら我慢せずに寝てください、お肌に悪いですよ…」
「それもそうですね、ではお休みなさい」
「お休み」
「お嬢様結構素直ですね」
「お肌をボロボロにしたくありませんので、あなたも早く寝なさい」
「はーい、それにしても良い匂いですね」
「ですねー…このまま気持ちよく…ねむ…れ…」
そう言いながら葵さんは首筋に鼻を付けたまま眠りにつき、使用人さんも続くように眠りについた。
「んー、結局屋敷に居る時とあまり変わらんな…」
メイド達のために夕食を作り、メイド達と一緒に床に就く、それがメイドであるか、拾ってくれた人であるかの違い位しかないな…
お腹が少しくきゅううぅぅーと可愛い鳴き声を発したが、眠気も有ったので特に気になることも無くすぐ眠りについた。
明日はもう少し食材に余裕を持たないとなぁ…
「それで、何時頃突撃するの?」
「そうですねぇ、ご主人様が本気で落としに掛かればもう落ちているでしょうが、そういう事はしませんし、自然に落ちるのを待つとして…」
「待つとして?」
「余裕を持って1ヶ月ほどですね、ここまで待てば確実に肉体関係にまで及ぶでしょう。
そしてイチャイチャしている所に乗り込むのです!」
「面倒事が増えるだけな気もするけどなぁ…」
「別にいいんじゃないですか?あちらには昔の借りを持ち出して話を付けてありますし、ごねる様であれば乗り込んで行って叩いてやればいいんですよ」
「んー…まああちらさんには昔色々ちょっかい出されたしねぇ…」
「今存在できていることが幸福と思っていればよいのです、また何かするようであればメッてして首を挿げ替えればいいんです」
「じゃあもういいよ其れで、何ならもう先に首を挿げ替えて置く?その方があとで面倒がないよ?」
「それもそうですね、誰か有望な人いましたっけ?」
「アリシアの所にいた後輩は?何だかんだで8000年はアリシアの下で管理してたから用量は分かってるでしょ?」
「アリシアの管理してた所ってどうなりましたっけ?」
「今はアリシアの後輩が管理中、後進も育てているみたいだから1人2人抜けても大丈夫かな?」
「ではそちらの2人を連れてきてください、私は首を挿げ替えて置きますので」
「へいへい、あちらさんも可哀想にねぇ…遊びのために首が挿げ替わるとか…」
「昔に此方がやられたことに比べれば大したことないのでは?」
「こちらの被害は皆無だったけどね…まあ行ってくる」
「はい、行ってらっしゃいませ、現地で待ってますね」
…遊びの為にどこかの管理人さんの首が挿げ替わったらしい、でも暮らしている人には何の影響もなかった。
近くにいた人は、ああ、まあ仕方がないんじゃないかなぁ…って納得してた。
ブラ
またの名を大胸筋サポーター
ご主人様の用途は普通にブラジャーとして、垂れはしないけどつけていた方が楽
狐さんプリント
狐さんラブ、普段つけている下着も何処かに小さな狐さんが…?
居るかもしれないし居ないかもしれない、スカートを捲って確かめるしか方法は無い
ご主人様は何も言わないけど多分周りのメイドにコロコロされる
首
狐さんの気分次第て簡単に挿げ替わるもの、後釜もちゃんとした人を選ぶので影響は出ない
過去に何をやったかで挿げ替わるか繋がったままかの二択になる
今回は過去にやらかした所だったので綺麗に飛んだ、現在アリシアの後輩が管理中
罪状:よそ様の土地、ましてやご主人様の土地に許可なく住人を侵略・破壊目的で転移・転生させてきた
刑罰:狐さんの気分で変動、今存在できていることが幸せ、逆に言えば何時首が飛ぶが分からない




