興味がないとそんなもの 街中で投げてはいけません
「そう言えばさー」
「んー?」
「ここに来てから露骨にゴーヤ?ってのが入ってる物を避けてる気がするんだが気のせいか?店に入ると大体ゴーヤチャンプルーってのがあるし、周りの人は頼んで食ってるがここに来てからまだ一度も食べてないよな?」
「あー…アレねー…ちゃんと処理したのは苦味もそれほど無くて美味しいのよ?でも手抜きのところのはエグくらいの苦みがあって、この苦味がーって人以外には受けない、食べ続けていれば慣れるけど無理して食べる物でもない。
体にはいいからって無理に食べてたらそれこそ体に悪いし、ピーマンとかパプリカでも代用出来るっちゃ出来るからね、栄養とかそういうのは変わってくるけどそっちの方が食べやすくて美味しい」
「苦いのか…」
「物凄く苦い、場合によっては食べるな飲み込むなって胃が押し戻そうとしてくる、苦み成分のモモルデシンを摂取すると胃が粘膜を張って保護したり胃腸が活発なるっていうけど、保護してるのはそれから守ろうとしてるんじゃないかとも考えられるよね」
「耐えれる程度の毒を摂取してとかそんな感じか?」
「多分そんな感じ、だから普段から食べてるこの島の人達以外はあまり食べない方が良いかもしれない、もし食べるならちゃんと成分をほぼ抜いてピーマンと大差ない状態にしてから、そうすれば美味しく安全に食べれる」
「安全にって時点でどうなんだろうな?」
「まあ、食べてみたいというなら止めないけど、食べるならバイキングのところでゴーヤを1切れだけ取って齧る程度、ダメそうなら他の物と一緒に食べて無理やり押し込んでもう食べるのを止めるのがいいかな?」
「んー…まあピーマンで代用出来るならそっちでいいかな?気になっただけで食いたいってわけじゃないし」
「チャンプルーを食べるなら麩かそうめんが一番食べやすいんじゃないかな?チャンプルーイコールゴーヤ入りじゃないし、ゴーヤチャンプルーはゴーヤ入りのごちゃまぜって意味だし、それを入れなきゃいけないという決まりはないのよね」
「なるほどねー」
「よし、今日の餌撒きはこんなものにしておいて適当に観光にでも行こうか」
「観光とは言ってもどこに行くかだよな、ジュリアみたいに釣具屋巡りをしても俺にはさっぱりだし、城を見てもこっちはこんななんだなーくらいにしか思わんし」
「ま、そうよね、大体の観光名所って興味のある人以外だとこんななんだねーくらいにしかならないのよね、歴史とか時代考証が好きな人からすれば興味深い物ではあるんだけど、普通の人からしたら凄いなーくらいにしかならないっていう」
「だから観光にとはいってもどこに行って何を見ろっていうやつなんだよなー…交易をやってたから船はまあぼちぼち興味はあるが、動力と素材が違うだけで基本的には同じだしなぁ…」
「最初見たらなんだこれってなっても、形の基礎は同じで動力が違うってだけってわかったらあーねーってなっちゃうからね」
「車もそうだよなぁ、入れ物と形の基礎は馬車と同じ、動力が馬か機械かでしかないし、餌で動くか燃料で動くかってやつだし」
「便利になって色々変われど基礎は変わらず、動かすために必要な物が変われど維持する費用が必要な事にも変わらず、さらに買い替えたりする費用が必要な事にも変わらず、まあ手間はかからなくなってるとは思うけどね、整備を専門にする人もいるから整備は丸投げでいいし」
「馬の世話をしなくていいって事を考えればまあ楽だよな」
「変わったのは危険性と故障率くらいかな?楽になった分危険性が上がって、無茶をしても車は早々壊れない。
馬車の事故は基本的に馬が暴れるような事をしない限りは早々…だけど、車の事故に関してはそれを運転する人次第なのと、普及しすぎてその辺中を走ってるのと、車が走っていようがお構いなしに道路を突っ切ってくるのがいるから事故が絶えない、だから事故の数と率は馬車より遥かに多くなってるね。
故障に関しては車はだましだましで何とかなるし、悪くなった部分を交換すればいつまでも…だけど、馬だとどこかが壊れても買い替えだから故障でいえば馬の方が確率が上だね、心臓に病気を抱えたらもう馬車馬としては使えない、足が折れたら楽にしてやるしかない、生き物だからちょっと無茶をすると…」
「馬が1回で潰れる様な乗り方や使い方はした事ねぇけどな、でもそうだよなぁ、馬車は乗合もあったが基本的には金のあるやつしか乗らないから街中を移動してる数はそれほどだし、車みたいに飛ばしたりしないから時間は掛かれど事故はそれほどないな」
「便利になればなるほど事故率も危険性も上がる、それでも便利な方を選んでしまうのが人、らしいよ?まあ、正しく扱えば余程の事がない限りは…なんだけど、どうしても省略しちゃう人がいるからどんどん事故数も率も上がっていくっていう。
母数が増えただけで率が変わらないっていう人もいるけど、大体のところは事故が発生しても隠蔽しちゃうから、それらを全部調べる事が出来ればほぼ確実に上がって行ってるんじゃないかなぁ?」
「んー…ま、それは置いといてどこに行くかだよ、ジュリアは朝飯食ってすぐ出かけちまったし」
「泡盛とサルサビアの工場見学に行くって言ってたからねぇ、今頃サルサビアを片手に見学ツアーの人と一緒に手作りしてるんじゃない?」
「見学ツアー俺も申し込んでおけばよかったかなぁ…でもジュリアほど好きってわけじゃねぇしなぁ…」
「こっちのは甘さがかなりマイルドって言ってたからかなり濃いのを作ってくるんだろうねぇ、ジュリアさんの故郷って味付けが結構極端なところがあるし」
「そうなのか?」
「甘味をつける時はこれでもかってつけるし、薄くする時は入ってないに等しいくらいまで薄くする、両極端といえば両極端、これは体に悪いから摂取を控えましょうって言ったら摂取量をいきなりゼロにしようとするからねぇ…砂糖とかマヨネーズに税金をかけようとした事もあったっけ…?州によってはそれを本当に導入したところがあって、1オンス…24グラムにどれだけ砂糖が含まれているかで税金がどんどん重くなっていくっていう。
当然砂糖その物も値段が上がりに上がってこんな物買えるかってなって、税のない隣の州に気軽に行ける人はそこへ買い物に、中心部に住んでて遠いっていう人は通販で買うっていう事が昔あった。
この国でも昔砂糖税があったみたいよー?砂糖は嗜好品で甘い物は贅沢品だから税金をかけるって感じで、今は消費税の中に取り込まれたから廃止されてるけど…まあそっちは財源の確保であって、健康に悪いから税をかけて値上げ、購入数を減らすっていう狙いとはまた別だね。
ジュリアさんの国で撤廃されたのは通販で買ったり隣の州で買うからそもそも何の意味もなかった、って感じ」
「ある意味合法的な脱税か」
「その州で買う時に追加で掛かる税金ってだけで、所持してたら課税とかじゃないからね、国の法律です、っていうのであればどうしようもないけどこの州だけの法律です、となればねー」
「お金は大事だもんな、節約出来るところは節約して備えておくに限る、それでも全部吹き飛んだら足りなくなるが」
「さて、バッカンやらなんやらを洗ったら適当にどこかぶらぶらするか、特に何も決まらない時は適当にぶらぶらするに限る、ハブを捕まえに行ってもいいけど」
「ハブって…一応注意って感じで見せられた蛇か」
「そそ、アレ1匹1000円から5000円くらいで売れるのよ、自分で持ち帰って処理してハブ酒にしてもいいけどね」
「簡単に捕れる?」
「噛まれても大丈夫なら簡単に、とはいっても先にこっちから見つけて補足してしまえば飛び掛かってきても掴み取ってしまえばいい、大体噛まれる時は物陰からの奇襲だからね、そこに気を付ければもう後は捕り放題。
それとマングースってのをもし見つけたらそれもボチボチお金になる、ここ数年は捕獲されてないから大体根絶出来たとは考えられているけど、山奥とかそういうところに隠れて人里に出てきてないだけってのもあるからね」
「でー、ハブにせよマングースにせよなんで賞金がかかってんだ?」
「ハブは単純に毎年死人が出るくらいには毒が強いし、物置なんかに入ってきたりして危ないしそれで噛まれる人もいるから生息域と生息数の調整、マングースはそのハブの駆除にって持ち込まれたけど、夜行性と昼行性で駆除に全く効果がないまま数が増えて色んな動植物に大打撃を与えて特別外来指定、このまま放っておくとよろしくないって事で賞金を懸けて駆除に乗り出したって感じ。
まだ完全に駆除ができたかどうかは分かってないから賞金はかかったままで…1匹あたり8000円から1万円くらいだね、どっちもお小遣い稼ぎにはいい感じよ、メインはハブだけどね」
「捕まえて売るのか?」
「ハブはお酒にする、何年か前にお土産で持ち帰ったのがそろそろ無くなりそうだし、熟成させつつちびちび飲むなら作っておかないとねーって感じ」
「それが目的なわけね」
「売ってるのを買ってもいいけど、自分で捕まえて漬けるのもいいものだよ、お酒として飲むというよりは滋養強壮とかの健康方面だね、だから以前作ったのがまだ少し残ってるって感じなんだけども」
「じゃあ今日はハブを捕まえるかー、噛まれてもまあ多分大丈夫だろ」
「一応即効性のあるお薬もあるから何回噛まれても大丈夫だね」
「何度も噛まれるのはやだなぁ…」
「どういうところにいるか分かっていれば大丈夫よ」
えーと、この辺りの岩の隙間は確認済みの、木も隅々まで確認して草むらも大丈夫、大体捕り尽くしたからそろそろ次の場所に移動かな?
「結構な数を捕ってるけど大丈夫なのか?」
「このくらいの数ならまだまだ大丈夫、絶滅させる勢いでってなるとさすがにダメだけど、こういう町中にある川に潜んでるのは捕り尽くしても大丈夫、というよりハブがいて危ないからこういう風に手入れがされず放置状態になってる。
階段はあれど雑草は生え放題、鳥がどこかから運んできた種が育って生えてきた木、元々は誰かが川で涼みつつ休憩していたのであろう雑草が隙間から生えてきている木製のベンチ、利用しているのあれば雑草も刈って必要とあらば木も切ってるはずだけど…
ハブ注意の看板が有った様に危なくて入れないから手入れも出来ない利用者もいないという放置状態、なので結構増え放題って感じで繁殖してるし、人も入らないからちょっと捕りすぎてもまたすぐに戻る、少なくともこのくらいなら来年にはもう元通りだよ」
「それはそれで怖いな…」
「まだ繁殖出来ない子供とかそういうのは見逃してるし、本当に根こそぎってわけじゃないから回復するのも早い、この川に関しては100匹くらいなら特に影響はない、そもそも人が入らないからね」
「これ以降捕るやつが居なければーってやつか…まあ草むらに入るだけで5回は噛まれてるし、こんなところ誰も入らんよな…俺もう何回死んでるんだこれ…」
「血清を打てば死なないから病院に行って処置すれば意外と死なない」
「打たなかった場合は?」
「24時間放置で75%、24時間生きてもそのまま放置したら翌日は90%まで上がって3日目はない、処置が遅れると筋肉と血管が壊れるので助かってもしばらくは病院生活になるから、噛まれたらどれだけ早く病院に行けるかも大事だね。
毒の強さでいえばヤマカガシの方が強いんだけど、あっちは大人しくてこっちは攻撃的だから被害の数は比べるまでもなしってやつ、というよりヤマカガシは無理やり噛ませようとしない限り噛まずに逃げる」
「毒をもっててかつ攻撃的だから注意喚起の看板なんかが出てるんだな」
「ここはどうにかしようにもどうにもならないくらいジャングル化するまで放置しちゃったから駆除に入れなくなっただけで、他の場所だとちゃんと整備して居つけないようにはしてるのよね」
「なんでここはそんな事になったんだか」
「単純に街から離れているのと若干村に近い感じで駆除する人もいなければ頼むお金もない、最初はしていたんだろうけどどんどん村から人が離れて行って、高齢化してー、そして追いつかなくなってこうなったと思われる。
普通の人がここに入ってハブを駆除しようとしたら…どこを噛まれても大丈夫なようにフルプレートを着てくるのがいいかな?さすがに鉄板は貫通してこないからここだと前時代的にもほどがあるけど地味に有効、捕獲自体は罠を使えばいいから、フルプレート装備で罠を設置して、回収しに行く時だけまた着てって方法は割と有効だね」
「確かにここだと前時代的だなぁ…でも有効といえば有効か、問題はそんな物がどこにあるのか、誰が着て罠を設置するのかというところだな」
「どこにも無いし誰も着ないね、さて、ハブも捕るだけ捕ったし、漬けるための泡盛を買いに行くかー」
「俺はその前に一旦ホテルに戻って着替えたい、もう傷は塞がってるけど地味に噛まれたところに血が付着してるしなぁ…」
「それもそだね、それじゃ一旦帰ろうか」
「まあ、それ以前にハブを100匹も持ち歩くのはどうかと思うけどな」
「出れない様にしてるから大丈夫よ、街中で投げるとテロで捕まるけど」
「絶対やるなよ?」
ハブ酒
ハブを泡盛につけたお酒、熟成させて色が琥珀に変わったくらいが飲み頃
お酒としてぐいぐい飲むのではなく滋養強壮や健康にといった感じで飲んでいたので、ロザリアとの国内一周旅行の時に作った分はまだちょっとだけ残っている




