ダイエット開始までたぶん秒読み 二日酔いには?
「おはようございますご主人様」
「んぉ…?おはよう…どしたのディアナ?屋敷か海の方で何かあった?」
「いえ、そちらは何も、家出をしているひよこちゃんを迎えに来たのですが…」
「ぴぴょ!」
「まだ帰りたくないらしい」
「こういう時だけは物覚えがいいというのがまた…わかりました、機嫌が直るまで待つとします」
「その前にひよこちゃんの家の建て直しからだね」
「家はもうしっかり元通りです、帽子はありませんが」
「ぴー!」
「壊れた物はどうしようのないのでまた作りなさい、それでは私はこれで」
「はいはい、何もなければ9月頭にはお土産を持って帰るからねー」
「ぴょー」
んー…ただいまの時刻は5時半、釣りに行くならちょっと遅くもあり誰も居ないところなら丁度良くもあり、でも先に朝食を済ませないと釣り場でお腹が獣の咆哮を上げちゃうのでレストランで朝食、ちょっと前の若干古くなった食材一掃処分なバイキング形式も良かったけど、椅子に座って注文をしてのんびり待つのもいいね、まだ注文してないけど…
で、何を食べようかねぇ…何を食べても美味しいし、昨日の夜が普通の焼き魚定食だったから…ちょっと重めにステーキ重にするか、食べて少し休憩したら釣りに行くし、軽すぎると釣り場でお腹が空いちゃうからなぁ…すぐそこのサーフや堤防だから配達を頼めるけど。
ステーキ重は特大の脂身多め玉ねぎソース多めでご飯の底に少し溜まるくらい、お汁はジャガイモのポタージュにして漬物は桜漬け大根でデザートは無し…こんな物か、それじゃあ注文して出てくるのを待ちましょ。
しかし…ジュリアさんとヒルダはまだ寝てるし、起こすべきかそれとも寝かせておくべきか…夜遅くまで泡盛をじゃぶじゃぶ飲んでたからなぁ…まあ復活したら後から来るか…
「ぴー」
「あぁはいはい、ひよこちゃんも何を食べるか決めたのね」
「ぴっ、ぴぴょ、ぴっ」
「厳選五穀米のネギトロ丼大盛り、わさびは千切りで醤油は特製刺身醤油ね」
「ぴよ」
「ひよこちゃんも朝からがっつりだねぇ」
「ぴっぴよ」
「まるまるふくふくしてるのはいいけど太りすぎたらダイエットだからねー?」
「ぴー…よー…ぴー…よー…」
「寝たふりしてもダーメ」
「ぴぴょー…」
「ぽっぽちゃんも旅行に出てくる前に確認した限りではちょっと太り気味だったし、帰った時にさらに太ってたらダイエットだね」
「ぴっぴぴょー」
「ひよこちゃんもぽっぽちゃんのことを笑う前にちょっと運動しようね?」
「ぴー…」
「お待たせしました、ご注文のステーキ重とネギトロ丼です」
「はいはい、ありがとねー、それじゃひよこちゃんも食べようか」
「ぴぴょー」
んむ、今日の堤防は貸切状態、ジュリアさんとヒルダが二日酔いで起きてこないだけともいうけど…薄めて飲んでたとはいえ昼からずっとで量が量だし、そりゃ限界も軽く突破するよねぇ…
なので今日は1人でのんびりフカセ、なんだかんだで次の準備をしている間もぱらぱらと餌と撒いていたので場所の仕上がりは中々、初日は割と散々な結果ではあったけど今は見える範囲だけでも50を超えているであろうニザダイにオビにヒブダイ、キビナゴなんかも撒いていたのでカスミにカッポレ、バラフエダイにアオチビキにといい感じ。
外側もちょーっと海中を覗き見てみるだけでもカスミオニヒラロウニン、ハマフエフキにオニカマスなどのメーター近いのから軽く超えているのが沢山、アオチビキも内側より大きいし80キロあるんじゃないかという巨大なイソマグロも居るし…近辺での漁は禁止かつホテル利用者以外は立ち入り禁止なので他の堤防や人があまり入らない離島でも見られない光景になってるなぁ。
海中の観察を終えたところでコマセの準備と道具の準備、今日はもう最初から12号やPE5号を使ってもいいかもしれないねぇ、特に外側はオニカマスも居るし、リーダーを太くしてないとちょっとした事で切れちゃうし。
細い糸で1対1のやり取りを楽しむ釣りも悪くはないけど、それは横から追い食いしてくる魚がいない環境に限るのよねぇ、内側なら何てことは無いだろうけど、外側は間違いなく何かをかけた瞬間周りにいるイソマグロやらロウニンやらオニヒラ、さらに貪欲なオニカマスが横から突っ込んでくるし、取り込みにもたつくと海面まで上がってきて食われる事間違いなし。
まあ、それはそれで楽しいんだけど…美味しい魚が掛かってる時に食われるとちょっと辛いのよねぇ…横から食ってくる魚が美味しくないとは言わないけど…大きすぎても動いてない奴は大味になるのがねー…
なんて考えているうちに準備完了と、それじゃあまずは内側でオヤビッチャやグルクンなどの小さいやつを釣りつつ、たまにニザダイにカンランハギにモンガラにといった引きの強いやつ、グルクンとオヤビッチャの大きさ次第では外側ですぐ泳がせもいいかな?
コマセをポイポイ適当に撒きつつ外側にもイワシとキビナゴを少々投げて場を温めておいて、まずはオヤビッチャとグルクン狙い、数も釣れるし餌にもなるしの優秀なやつを狙うのは基本よねー、ブダイも餌になるといえばなるけど、ブダイを使うならグルクンやオヤビッチャでもいいというか…もっと大きいのを狙うならメーター前後のダツを釣って泳がせる方がいいというか…
でも内側にダツは入ってきてないしで…グルクンかオヤビッチャになるよねー、という事でまずは一匹、でも小さいのですぐリリース、落とせばすぐ釣れるくらいの場所にはなってるし、しばらくは小物と戯れましょ。
「おぉぉー…やっと落ち着いてきた…薄めていたとはいえ泡盛7本はさすがに効くなあ…」
「あぁー…あれ度数いくらあるんだ…なんか最終的にはサルサビアで割って飲んだりもしてたが…」
「昨日飲んだのは35度だな…大分薄めてたが1日中飲んだからなぁ…薄く飲みやすくても次から次に送り込めばこうもなるわな…」
「主様は一人でさっさとご飯を食べて釣りに行ったけど今日はどうするんだ?」
「完全復活してから考える…落ち着いてきてはいても頭いてぇ…」
「そもそもこんな状態で外に出たら間違いなく倒れるわ…」
「ミキー…追加の薬と水をくれー…」
「水はいいですけど薬はダメです、即効性がないだけでちゃんと効いてきますので水だけで我慢してください」
「しかたねぇ…ラムネ食ってごまかすか…」
「それ二日酔いに効くのか…?」
「気持ち程度にな…頭痛の原因は要は分解が間に合ってない、分解するのに必要なブドウ糖なんかが足りてないからそれが含まれてるラムネを摂取すれば気持ち程度は楽になるって寸法よ…これも即効性があるものではないけどな…」
「じゃあ俺にもくれー…」
「しかし、どんな胃と肝臓を持っていたら1日で泡盛を7本も空けれるんですかね?普通の人ならさすがに死んでますよ」
「そこは人種による身体の作りの違いと答えておこうか…」
んー、ぼちぼちお昼時か、そろそろアオチビキを狙うとして…餌は確保しておいたグルクンで泳がせ、他の魚に食べられない様にちょっとキビナゴヤイワシで誘導しつつグルクンを投入、これでアオチビキが来ればよし、カスミやカッポレが来たらまあそれはそれで。
「ぴー…ぴー…」
「どしたのひよこちゃん?」
「ぴよー…ぴぴょー…」
「あー…イワシの小骨が刺さったのね…かなり前にも餌のイワシをつついて刺さってたよねぇ…」
「ぴー…」
「口を開けてー…はい取れた、早々刺さるような骨ではないけど刺さったらチクチクする事には変わりないもんねぇ」
「ぴぴょ」
「突くときはちゃんと骨の無いところを突かないとダメだよー?」
「ぴっ!」
「でも突きすぎて太ってもダイエットだからねー?っと、何か来た、こーれーはー…ヒラアジ系っぽいなぁ」
「ぴっぴぴよ」
「そうだね、これが釣れたらお昼だね、横とか下から何かが来る事は無いだろうけど、美味しく食べるためにもここはちょっと強引に…」
「ぴっぴょー」
「見えたね、これはカッポレだね身も当然美味しいけど皮が厚いやつで皮も美味しいやつ、70ちょっとあるけどこのくらいなら…よっと」
「ぴぴぴょー、ぴっぴょー」
「早く食べたいのね、でもここだと料理出来ないからお片付けしてホテルに帰ってからね」
「ぴー」
「血抜きと神経を抜くための道具はあれど、手持ちだと刺身しか出来ないからね、皮を食べるなら湯引きにして鱗も落とさないとまたのどに引っかかるよー?」
「ぴぴょ!」
「それじゃあ血と神経を抜いて片付けたらホテルに戻ろうねー」
「ぴょー」
「ジュリアさんとヒルダはお昼食べれるー?」
「ちょっとズキッとするくらいだから大丈夫だ、吐き気なんかは無いからな」
「これ何?なんか黒いけど海草?」
「カッポレの皮の湯引きポン酢和え、針生姜と一緒に食べるとさらに美味しいよ?」
「ぴーぴょー、ぴょーぴー、ぴょっぴょっぴょ!」
「なんかひよこは絶好調だなぁ…こっちは二日酔いで倒れていたというのに…」
「朝は贅沢にネギトロ丼の大盛りを食べたし、お昼もこの通り刺身の盛り合わせにカッポレを釣らないと食べれないちょっと貴重な皮の湯引きで2回連続の贅沢だからね」
「カッポレ…ブラックジャックか、見た目が黒いから不吉だなんだといわれてるけど美味い魚なんだよな、ヒラアジはどいつもこいつも美味いけど」
「主様は昼も釣りに行くのか?」
「小物狙いだけどね、外側も大型の魚が集まってきてるからダツが釣れたらそっちで泳がせるつもりだけど」
「でかいのが集まってきてるのか…完全に復活したら行きたいところだが…」
「無理に行っても後が辛いだけだろうから俺はコーラと刺身の盛り合わせを摘まんでのんびりしとく」
「ま、無理をすると大体酷くなるしね、二日酔いなら分解されきってしまえば楽になるからあまり関係はないけど」
「泡盛じゃなくてサルサビアだけにしておけばよかったわ…」
「食中毒とかそういうのならすぐに直せる薬を出すけど、二日酔いはまあ反省してねということで」
「ぴよ」
さーてと、再び道具を広げて午後の分のコマセを用意したところで釣りを再開、外側にイワシやキビナゴとぱらぱらと少量ずつ撒くのも忘れずに、そしたらもう後は午前中と同じ、小物を釣りつつ餌に丁度良さそうな物を確保しつつ、ダツが入ってきてるのが見えたらそれを狙うだけ。
午前中は入ってこなかったら出来れば入ってきてほしいけど…こればかりは魚の気分次第、というより外にいるやつに入る前に食われている可能性もなくはない、何せメーターオーバーの魚がうようよと…それらからしたらダツの群れとか食べ放題のバイキングでしかないもんねぇ…
ま、グルクンとオヤビッチャがいるし、大きい餌じゃなきゃ絶対に食って来ないというわけでもないし、あまりダツにこだわり過ぎるのもよくないか。
とりあえず餌を釣らない事には何も始まらないので餌の確保を開始、午前中と違って本格的に外側での釣りを目指すのでブダイも容赦なく餌として使用、イスズミが釣れたらそれはそれで餌に向いてるからいいんだけど…居たらそもそも午前中に釣れるよねーっていう…
この感じだと外から寄ってきたイスズミも片っ端から食われているだろうし、ポイント作りは成功したけど活性がちょっと上がりすぎてる気がしないでもない…
グルクングルクンオヤビッチャたまにロクセンスズメタイ、ニザダイ辺りは逆に遠ざけているので無し、グルクンの一部はバッカンで生かしつつ残りのグルクンやオヤビッチャは生きたまま外側に投げて活性チェック。
普通に視認して見えている範囲だけでも投入されたグルクンは即座に丸呑み、オヤビッチャも着水直後に横からかっとんできたオニカマスに捕食されて水飛沫が上がって…うん、これならダツが無くても大丈夫だね、何が来るかわからないほどの活性ともいうけど。
バッカンの中にいるグルクンは5匹の撒き餌兼刺し餌のキビナゴとイワシはぼちぼち、これだけあれば十分か、それじゃあさっそくグルクンを泳がせていきましょ、釣れるのはオニカマスかそれともヒラアジか、ハマフエフキかアオチビキか…はたまたそれより下にいる80キロクラスのイソマグロか…
それじゃあグルクンちゃん行ってらっしゃい、君の死はきっと…無駄にはならないかなぁ…?バラしても弱肉強食で食われたってだけだし、釣れたら更なる強者に食われるというだけなので…うん、きっと無駄にはならないはず。
「ぴっぴー」
「どしたのひよこちゃん?また骨が刺さった?」
「ぴぴっ、ぴよ」
「んー…あー…なんか見慣れない船が近づいてきてるねぇ、沢山とは言わないけど人が数人乗ってるし、釣り道具も積んでるから遊漁船かな?少なくともホテル所有の船ではない…ねっ!」
「ぴぴょ」
「これは…オニカマスだね、走る勢いが…変わって…オニカマスも食われちゃったね、今度はイソマグロ、下の方にいた80キロクラス、それよりさらに大きい影だから…130キロはありそうかな?」
「ぴーぴょー」
「うーん…釣れなくはないけど、イソマグロという名前だけでマグロではないよ?どちらかと言えば脂の抜けた水っぽいサバ、個体によるから捌いてみるまではわからないけど…まあちょっと時間はかかるねぇ、無理をしたら道糸から切れるし、お昼前のカッポレと違ってこれはのんびりじっくりだね」
「ぴよ」
「んー…あー…確かに…なんか船が近づいてきてるねぇ、この辺り一帯の海はホテル関係者以外利用出来ないし侵入禁止なんだけど…迷い込んだだけで立ち去るならまあそれでいいんだけど、船を停めて釣りを開始ーってなるとちょっと問題があるねぇ」
「ぴょー」
「でもまだそうと決まったわけでもなし、しばらく様子見だね」
「ぴっ」
「ここホテルの関係者以外立ち入りも進入も禁止、当然釣りも禁止ですよー、って言っても聞かないし無視して釣りを始めたので来て貰いました」
「珍しいですね、この辺りの漁師や住民であれば進入禁止というのがわかっているはずなのですが」
「私が立ち入り禁止とか言ってるここ釣りをしてるんだからいいだろ、的な事も言ってきたから根本的に理解してない可能性もある」
「船の名前が…でー…登録番号と所属が…とりあえず運営元と海保に通報する前に情けとして警告をしておきますか、大人しく止めて投降するならそれでよし、無視をしたり逃げるなら不法侵入と密漁で1人3000万ほど支払って頂きましょうか」
「私としてはさっさとどこかに行ってくれるとうれしいんだけどねぇ…掛かってるイソマグロが走って行って好き放題投げてる釣り客の糸に絡まないようにずーっと誘導を続けているというか、ただの散歩状態になってて釣りじゃなくなってるというか…」
「…ダメですね、話が全く通じないタイプの相手です、このままだと全員密漁で捕まりますけどよろしいですか?という問いにもやれる物ならやってみろと返してきましたし、お望み通り密漁と不法侵入その他諸々で捕まって貰いましょうか」
「エンジンもガソリンエンジンみたいだし、液体燃料やら固形燃料等の化石燃料を禁止にして綺麗にしてあるここを汚しに来てるようなものだよねぇ…」
「そういった不純物のみを取り除くのもタダではないので上乗せですね、最終警告はもう終わっているので最後にお別れの死刑宣告だけはしておきましょうか」
「そこはもうノエルさんのご自由に…あー…散歩状態になってたイソマグロも食われちゃった…さらば世界記録確定のイソマグロ…君の血肉はサメの中で明日くらいまでは生き残るでしょう」
「ぴー!」
「いやーごめんごめん、でもこれはもうどうしようもないよ、どこに誘導してもサメに食べられてたし、美味しい獲物をサメが見逃すわけもないよねって」
「ぴよー…」
「とりあえず頭だけでも回収と…んー…この大きさだと150キロはあったっぽいなぁ、見えてた魚体でも2メーターは軽く超えてたし…まあ大きすぎて大味になったサバだったということで我慢してね?」
「ぴょー…」
「海保がヘリを伴って来ましたね、これでもう後は放っておいても大丈夫でしょう」
「船自体はまともなところのだったの?」
「遊漁船の運営元自体はまともですよ、少し前に雇った…もうクビになっているので雇っていたですね、今無免許で船に乗って違法操業をしている人がまともではない流れ者というだけです」
「免許持ってなかったのか…」
「いえ、海保に通報ついでに免許を強制停止させていただきました、これでさらに罪が重くなり当分は出てこれなくなりますので」
「なるほど、さて…船が来て場も荒れて魚も散ったし、今日はもう納竿するか」
「残っているキビナゴとイワシはどうします?」
「内側にもカスミとかアオチビキがいるから場を維持するためにもそっちに撒いておこうかな」
「わかりました」
「撒く時は浅く広くねー?」
明日くらいまでは
食べられたイソマグロの胴体はきっとサメの中で明日までは生き残る、明日になればいい場所を見つけたと住み着いたサメは駆除されより強い生き物に食われる
サメに食われたイソマグロは頭だけは釣れたので一応兜焼きにしてひよこちゃんの餌になった、これもまた明日まではひよこちゃんの中に残るであろう…完全に分解されて吸収されるまでは…




