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イカれた料理 硬いくらいが美味しい

 生のベーコンを用意して薄くスライスしたら編んで1枚の広く大きいベーコンにしまして、スパイスとバーベキューソースを塗りさらにベーコンを重ねて包み込む、そしてここからが少し難しい…このまま焼くとベーコン自体の重さで押されて形が崩れるので包んだ後もベーコンをしっかりと編み込み、網油でしっかり補強したらオーブングリルの中へ…

 しっかり補強してもベーコン自体の重さでどうしても押されて潰れるのと、ソースや脂が出てくるのでオーブン用の天板に乗せておくというのも大事、野菜を周りに敷いておけばとソースを吸っておいしくなるけど…ベーコンのみということに意味があるので野菜は不使用、後は焼けるのをじっくり待つだけと。

 頑張れば綺麗な円柱を保ったまま焼けなけなくもないけど、金網でぐるっと包んで回しながらじっくり焼いて…になるのでちょっと面倒、均等に焼くならそっちの方がいいんだけど…このちょっとした雑さもまたベーコンエクスプロージョンには大事。

 畏まった上等な料理ではなく兎に角ベーコン食えこの野郎、ベーコンだけで1日の必要な栄養は全部取れるんだよ、と色々四方八方に喧嘩を売った料理なので綺麗に作る必要はない、割と久しぶりに作るので上手く出来るかどうかは…そもそも失敗の仕様がないので気にしなくて大丈夫、ベーコンを編んで中にソースとスパイスとベーコンを重ねていって巻いて焼くだけなので下手も上手もなし。

 失敗するとしたら焼いたままの状態にしてずーっと放置、それによる若干の焦げくらいなので…なんなら炭火が消えるまでオーブングリルの中で放置しても何の問題はない、強いて言えば油が固まるのでちょっと再加熱して温める必要があるなー程度。

 取りあえずもう焼きの状態に入ったので後は焼けるのを待つだけ、主食に副菜という概念はなくひたすらにベーコンを食べるだけで、ここまで来るとやる事は無いので…


「んー…150号リーダーの予備どこだ?」

「そこのリーダーって書いてあるケースの中じゃねぇの?」

「フカセとルアー用で30号までしか入ってないんだよ」

「主様が忘れてきたって事は無いだろうし、違うケースに入ってるんじゃねぇの?主様に聞くのが一番早いと思うけど」

「それもそうだな、おーい兄さーん、150号リーダーの予備ってどこだー?」

「150号と200号は打ち込み用のケースの中ー」

「はいよー、って事は部屋に取りに戻らんといかんな」

「俺は主様と一緒にオーブングリルを見つつ自分の道具を手入れするから行ってらっしゃーい」

「ちょっとは年寄りを労わって私が取ってくるーくらいは言えよ」

「やだよ、年食ってんの見た目だけじゃん」

「小遣いと飴ちゃんやるから」

「どこの婆さんだよ」

「なんかテレビでやってた西の方の婆さんが孫を動かす時に使う組み合わせらしい、まあ仕方ない、取ってくるか」

「歩け歩けー、歩くのをやめると老人はボケるらしいぞー」

「さっき年食ってるのは見た目だけって言ったのは誰だよ」

「さぁー…誰だろうなー?」

「私に孫がいたらこんな憎たらしい感じになっていたんかねぇ…未婚だから子供すらいねぇけど」

「俺だって孫を顎で使うような婆ちゃんはやだよ…」

「そこはその家庭とか家族によるから何ともだね」

「ぴぴょ」

「ひよこの言ってる事はわからん…」

「私の子供は巣立って1日で親の顔を忘れたぞって言ってるね」

「ひよこちゃんまさかの妻帯者?そもそも雄か雌か知らないけど」

「ひよこちゃんは雌だよ、なんかポンポコ卵産んでたらそのうちの1つが孵って子が出来ちゃったっていう、まあ単為生殖みたいな物よ」

「ぴっぴょー」

「そんな適当な感じでいいのかこの不死鳥…」

「元々突然変異で出来た個体でひよこちゃん1匹だけだった種族だし、そんな感じでもいいんじゃない?」

「まあいいや、ここでずーっと話していて手元に予備のリーダーが来るわけでもなし、さっさと取ってくるか」

「ところでオーブングリルに入れたのはいつ焼けるんだ?」

「結構大きめで中身も詰めたから2時間くらいかな?」


 オーブングリルの温度を見つつ昨日仕込んでおいた豚バラ肉をカットしまして、こちらはちょっと硬いくらいの方が美味しいのでバーベキューコンロで表面をカリッと、肉はちょっとゴリゴリ脂はサクッと噛み切れるくらいの硬さで…ついでにホテルの厨房から貰ってきたスパイス漬けの親鶏腿肉もそのまま網の上にどんっと。

 豚バラから染み出てきた脂が炭の上に落ちてちょっと火と煙が上がるので団扇で仰ぎまして、親鶏は若鶏ほど脂は出ないのでくっ付かない様に頻繁にひっくり返して表面を乾かして、皮面はパリっとさせて身の方は水分を飛ばすと硬くなりすぎるので弱から中火くらいでじっくり。

 もう他に焼く物はないのでこの3つを管理しつつ、プールサイドで休んでいる赤の他人のところに匂いを飛ばして遊びつつ…

「しかし、割とやりたい放題やってるのに誰も止めないよな、プールサイドで釣り具の整備とか次の準備はまあ誰に迷惑をかけるわけでもないからわからんでもないけど、オーブングリルとコンロを運び込んで焼き始めるとか普通ホテルの人に止められるだろ」

「ここは泊まるのに紹介状が必要だったり何かやらかしたら利用出来なくなったりはするけど、ホテルの中を見ての通り駄菓子屋があったりゲームセンターがあったり、結構大きな会社の社長やら会長になったりすると人目を気にしないとダメだったりするじゃない?

そういう人が人目を気にせず童心に戻ったり普段は食べさせて貰えない駄菓子を食べたり、昔懐かしい侵略者撃退ゲームとかベルトスクロールアクションとかベーゴマとかメンコとか、立場とかどこの誰かとか気にせず遊べる場所だったりもするからね、だからこのくらいでは何も言われないし皆スルーしてくれる。

というよりあーだこーだ言ってここには相応しくない人だのなんだの言うと叩き出される、ちょっと一切れ頂戴って来るくらいがここの宿泊客としては正しい姿、普通に高級ホテルとして泊まるのも悪くはないけどね、クルージングにダイビングに観光にと連れて行ってくれるし」

「なるほど、それなら誰も何も言ってこないのもわかるな」

「俺が普通に耳とか尻尾を出しててもジロジロ見られる事も無いし、何かこそこそ言っているわけでもないし、なんかプールでなんか船を流してるし」

「あれはポンポン船だね、船の中に水を少々入れて、火をつけたろうそくを入れると中に入れた水が熱されて蒸気を出して動くっていう小さい蒸気船」

「あー、俺のところにもなくはないけどあまり実用的ではないって結局は帆船が主流のままなんだよなぁ、火の魔石もタダじゃないし水を生成する魔石も飲み水に使うし、交易船を動かせるほどの物となるとさすがになぁ…」

「石炭とかはないのか?」

「石炭とかそういう化石燃料の代わりにこういう魔石が生成されるのよ、当然このままじゃ使えないから中に入ってるエネルギー、風ならそれを抜き出すと風が、火なら火が出てくるんだけど、火の魔石をこうやって炭火の中に放り込んだからって別に何も起こらない、ただ熱くなるだけ。

で、これを適切に使おうとしたらまあそれなりの設備とか、制御するための回路とかいろいろ面倒になってくるのよね、こっちでいう電化製品を制御する制御回路とか制御盤とかそういうやつを作らないとダメ。

その技術自体は戦争が終わった今ようやく進み始めましたーってところだから…まだ当分帆船のほうが安いし、大型化するにしてもそもそも材料が足りるのかどうかってなるし、極めつけはサーペントだね」

「食われる壊れる事を前提にするなら帆船一択だよなぁ…」

「王女様の国は結構進歩してるんだけどね、最前線だけあって兵器の開発が進んでたし、基礎理論とかそういうのは出来てるから冷蔵庫とか空調とかの開発も進んでるのよね、ちょっと高いけど」

「俺のところはよほど金を持ってる貴族じゃないと冷蔵庫という物も無かったわ、輸入品になるし、そこのオーブングリルくらいの大きさで中金貨2枚するんだぜ?」

「中金貨2枚ってどのくらいだ?」

「2000万ジン、こっちの価格に直すと…んー…貨幣の流通量を考えて…40万ドルくらい?」

「たっか!冷蔵庫たっか!」

「うちの焼肉屋とかカジノ、カレー小屋に私所有になってる花街のお店も空調冷蔵庫完備にしてるけど、それは私の自作なので掛かったのは材料費だけ、注文して作って貰ったとしたら焼肉屋の冷蔵庫とか大金貨確定だし、向こうだとそれくらいの価値があるって事なのよね。

で、大事なのは価値がほぼ下がらないという事、ゴールドライトにシルバーサイトなんて言う高い金属を使ってるから、制御盤を溶かして延べ棒にすれば結構なお値段になるのよね、元は取れないけど財産としての価値は間違いなくある。

さらに面白いのが回路を最適化してもゴールドライト等の使用量は実はほぼそれほど変わらないということ、つまり値段があまり変わらないから新型が出たら古いやつを持って行って交換して貰うってのも出来るのよね、古いのはそのまま潰して新しい回路に作り直し、容器自体は使い回せるから制御盤だけ持って行って交換って形になるかな?

容器の大きさを小さくしたり大きくしたりしたらそれ用の制御盤を買わないとだけど、まあ環境には優しいね、冷蔵庫の容器自体は木材でデザインしたり武骨な金属の箱だったりするけど、前者は使えば使うほど味が出て、後者はダメになったら潰して再加工が出来る、そう言った意味ではこっちより進んだ家電かもしれないね、電気は使ってないけど」

「まあ、環境には優しそうだよな」

「戦場跡地に落ちてる武器防具なんかを拾いに行く仕事もあるくらいだからな、金属等の資源は無駄にしない、鉱山があるし鉱山奴隷がいるからって無駄にしてたらいくらあっても足りんからな」

「こっちもそういう意識があれば今頃ワーワーギャーギャー騒ぐ事態にはなってなかったのかもなぁ…」

「なお足りないだのなんだのと言ってる金属は全てルシエラカンパニーが抱えている模様」

「まじかよ、原因そこかよ」

「いや、ルシフ的には投棄されたり海に沈んでもう誰の物でも無くなった物をサルベージして延べ棒に変えてるだけ、他にもゴミとして不法投棄された物を回収して再加工をね?その際加工した物を市場に流して無いから一部金属不足なんかに陥ったりしてるだけ」

「あー…車を輸送中のタンカーとか結構転覆したりしてるからなぁ…それを回収出来るならタダで資源が入手出来る様な物だよな」

「深海に沈んでる物とか誰も回収しないし、回収したところでばれないし、そりゃお宝だーって持っていくよね、金塊なんかも数十トン単位で抱えてるはずよ」

「やりたい放題だなぁ…」

「それより主様、いい加減腹が減ってきたんだけどまだ焼けねぇのか?」

「豚バラはもう食べれる、親鶏はもうちょっと、ベーコンは後30分」

「じゃあ豚バラを食うか、でも白米はないんだな」

「バーベキューは肉を焼いて食う物であってパンや野菜を食う物じゃないんだよ」

「本当に?」

「本当に、野菜は野菜を食べたい人だけが焼いて食べればいいんじゃない?って感じで、仕切ってる人が焼いてるとこいつ頭大丈夫か?って目で見られる」

「バーベキューは肉で腹を満たす物であってそれ以外の食い物は要らない、肉とバーベキューソースとドリンクの3つだけあればいい」

「ま、そう頻繁にやる物でも無いしね、肉をドカ食いしたいって時に近所中の人を集めてやるくらい」

「不味い物食わせたら総スカンだけどな、焼くのと焼けた物の振り分けは主催者であるピットマスターのお仕事、不味い物を出すとこいつ俺のこと嫌いだな?って思われるから地味に大変だぞー?」

「早々味に違いは出ないけどね、はい、親鶏も焼けたよー」

「ぴぴょー」

「ひよこが焼けた鶏肉を食うってのもなんだかなぁ…」

「ひよこちゃんは雑食だからね、肉も食べれば魚も食べるしお米も食べる、でも魚はたまに小骨がのどに刺さって泣きついてくる」

「そういや昨日餌のキビナゴとかいわしをつついてたなぁ…丸のみじゃなくて骨を避けて身だけを食ってたが…」

「その過程でためにピンボーンを飲み込んで刺さってーってのがある、大人しく口を開けててくれるから抜くのは簡単だけどね」

「んー…このちょっとゴリゴリとした豚バラは肉を食べてるって感じがしていいなぁ…親鶏は薄くしてもまだなお硬いけど噛めば噛むほど味が出てくる」

「親鶏は美味いのに不味いだの食えないだのって扱いをするやつがいるのが信じられないよなぁ」

「そういう人達はもう顎が弱くなって硬い物が食べられないから、噛みしめて旨味を絞り出すってのが出来ないんだよね、だから硬いだけの不味い物扱いする」

「色々勿体ねぇなぁ」

「昔を懐かしんで何度も噛みしめて食べる人もいるのでこのホテルの厨房は親鶏も抱えてるんだけどね、今食べてるやつも厨房から貰ってきたやつだし」

「ここの厨房って高い物と安い物の差が激しい気がするな、駄菓子ふりかけとかも有ったし」

「お行儀が悪いから周りには止められるけど地味に美味しいやつだね、そういうのを求める人も居るって事で。

上はまあ本当に高いね、1食10万からするような物もあればワイン1本付けて300万からというのもある、昨日ジュリアさんがラッパ飲みしたワインは1本540万ね」

「まじかー…誰も何も突っ込まないから美味いけどそれほど高くない物と思ってたわ…」

「まあ、全部飲まなければ残りは悪くなって味も香りも落ちて価値はなくなるし、それならいっそ上品ぶって飲むよりはラッパで全部飲むほうがいいね。

よし、ベーコンも焼けた、それじゃあベーコンエクスプロージョンを切ってくぞー」

「このイカれた物をここで見る事になるとはなぁ…」

「イカれてはいるけ栄養面でみるとほぼ完璧っていうね、食べ過ぎなければ」

「間違いなく食べ過ぎコースになるなぁこれは…何キロあるんだ…」

「5キロの生ベーコンを全部使ったから…ソースと脂が落ちたを含めて5.3キロくらい?」

「間違いなく塩分過多だな、普通の人間なら軽く死ねるわ」

「そこはまあほら、食べれなかったら匂いに釣られてきたどこからのお偉いさんに分ければいいだけだし、あまり気にしてはいけないね」

「それもそうか…取りあえずリーダーも結び終わって明日の準備も大体出来たし、休憩も兼ねて食うか」

「飲み物は自分で注文してね」

「昼間から酒というのもありだがここはコーラだな」

「俺もコーラー」

「どうぞ」

「ノエルさんも良かったら食べて行ってね」

「では遠慮なく」

「ぴっぴょー」

「はいはい、ひよこちゃんもベーコンを食べるのね」

「イカれてるけど悔しいくらい美味いんだよなぁこれ…」

「体に悪い物は大体美味しいから仕方ない」

親鶏

廃鶏ともいわれる卵を産まなくなった鶏、身が真っ赤で皮が黄色く噛むとゴリゴリとした食感で硬いけど旨味は若鶏以上なので地味に美味しい

1枚丸々そのままで焼くと硬くて食べにくいので焼く前に噛み切りやすいようしっかり切れ込みを入れ、スパイスをたっぷり塗して焼くと…

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