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やる事が無いと… のんびり空の旅

 えーと、不在の間もメイド達と引き籠り組出入りするので戸締りは最低限でよし、お風呂のお湯も落としてカビ対策除湿もしっかり、空いてる窓はなくて水が出しっぱなしになっているところも無し、プールは川の水を引き入れて水を溜めているのでそのままで良し。

 ふと思いついて追加で持っていく物も全部玄関に纏めていて、牧場農場は日替わりの当番制で回してくれているから問題なくて、麓の商店街の人が希望しているお土産メモもちゃんと有って、移動中に食べる朝と昼のお弁当の準備もばっちり。

 それじゃあお迎えが来るまでのんびり待ちましょうかね、予定としては7時前には来るはずだから遅くても後30分、早くて10分待てば来る…はず、多少遅れても到着時間自体は変わらないから影響はないけど、この完全にやる事が無くなった待ち時間というのはかなり暇よねぇ…何か他事に手を出せば時間は足りず、じーっと待つにしても微妙な長さというのもあって体感時間は物凄く長く…

 ヒルダも微妙な待ち時間でやる事が無いので庭をずーっとぶらぶら歩いてるし、ジュリアさんも追加で持っていく荷物を何度も何度も確認中、ここで本を読んで時間を潰す選択肢が出るかどうかでいえば出るんだろうけど、読むという選択をするとそれはそれで最後まで読みたくなって余計な荷物が増えるっていうねぇ…携帯で電子書籍を読んでもいいけど、紙媒体の方が大きくて見やすいのがまた何とも…便利ではあるけど不便でもあるといえるのが…うぅむ…

 こういう事を考え始めるというのもまた暇であるという証明になってさらに…かといってぎりぎりまで確認作業を遅らせたりちょっと遅く起きたりというのもなぁ…

「うおっ!」

「ほえ?何かあった?」

「いや…荷物の底にひよこの死骸が…」

「ひよこ…?どれどれ…あー…家出をして飛び出してきて追加で持っていく荷物の中に隠れたまでは良かったものの、荷物を纏めている時に首が捻じれて絞まっちゃったのね」

「これどうすりゃいいんだ…」

「小さいひよこだとあまり可食部はないからコンポスト行きかな?でも今日から1ヶ月不在になるから庭に埋めておこう、ちょっとした肥料に代わりにはなるし」

「一応こいつペットなんだろ?扱いが酷くねぇか?」

「ひよこちゃんが死ぬ時ってしょうもない理由の時が多いし、そりゃ死んだ時の扱いはそれなりに雑になるよねって、取りあえず台所に行って蘇生させてくるね、家出の原因はまだわからないけどこの感じだと多分旅行についてくる、飽きたら勝手に帰るだろうけど」

「家出をして荷物に紛れ込んで自滅するひよこってなんなんだろうなぁ…」

「ひよこ姿はこっちでいう省エネモードみたいなやつよ」


「ぴぴょー…」

「見た目は普通にひよこなんだよな、川に浮かべたらパイクとかキャットフィッシュなんかが食ってきそうな感じの」

「ぴょっ!?」

「一丁前に卵の殻を被ってお洒落もしちゃってまあ…」

「ぴーぴょー」

「うん、何を言ってるかわからんわ」

「ぴっ!」

「まあ、ひよこだし、人語を介するとそれはそれで怖いよね、インコとかオウムとかそっち系ならしゃべった可能性はあるけど、そもそも覚える気があるかどうかは…一応これでも意思疎通出来るメイドもちょろっといるから」

「で、家出してきた原因はなんなんだ?荷物に隠れてたくらいだし誰かと喧嘩したか?」

「ぴー、ぴよーぴよぴよぴー、ぴょー…」

「だから何を言ってるのかわかんねぇって」

「ミネルヴァとディアナが鍛練中にひよこちゃんの家を破壊してまた作り直せばいいじゃんって軽く済ませたからだって、当然ひよこちゃんの自宅にはお気に入りの殻帽子とかコレクションとかがあったわけで、それも当然全部壊れたから家出したくもなるよねって」

「なるほどな、家を壊された上にコレクションも全滅だとそりゃ出て行きたくもなるよな、そもそも帰るところがねぇけど」

「ひよこちゃんの家はまだ作ればいいだけよ、この大きさに合わせての家だからそれほど時間はかからないしね」

「ミニチュアみたいなもんか」

「ミニチュアみたいな物ではあるけどちょっとした豪邸といえば豪邸だけどね、帽子をコレクションする部屋にベッドルームにお風呂場、天窓がついた部屋と作らないといけないしね」

「いい生活してんなぁお前、そこいらのサラリーマンより良い家に住んでるんじゃねぇか?」

「人の大きさに合わせて建てたら排水やら建築費なんやらを考えて億はするだろうね、ひよこちゃんサイズなので排水はそのまま地面に垂れ流し、材料も屋敷周辺の木材だから無料かな?

今被ってるからは無事だったコレクションの1つだね、隠れてた時に被ってたのは捻じれた時に潰れて砕けたけど」

「主様ー、迎えが来たぞー」

「はいはーい、それじゃあ玄関にまとめてある荷物を持って車に乗りましょうかね、ひよこちゃんも行くよー」

「ぴっ」


「おぉー…いま住んでるところってこんな地形をしてるのか…前に住んでたところも海と海岸沿いの地形くらいしか把握してないけど」

「向こうは空の旅とかそう言うのは出来ないし、航空技術って物がないしね、作れないとも言うけど」

「海でもちょこちょこサーペントやらクラーケンやらが出てくるし、空はバードマンが飛べるっちゃ飛べるけど…高さを間違えたらソニックイーグルとかの餌食になるしなぁ…度胸試しで食われて死んだやつの話とか笑い話にもならんくらいありふれてるし」

「この世界も昔はこういうのが居たらしいぞ、何億年前とかそういう時代で人は存在してないけどな」

「なんか…微妙な見た目だな…それに鳥というよりは亜竜とかそう言う感じのような…」

「まあ翼竜と言われたりする事もあるな、一応これでも鳥類だぞ」

「竜なのか鳥なのかどっちなんだよ…」

「最近では体毛があっただとか陸上型の恐竜にも羽毛があっただとか色々説が出てきてるよね、後は意外とカラフルな退職をしていただとか体格的に走るのが無理だから死食性だったんじゃないかとか、次から次へと色んな説が飛び出てきてるのは確か」

「Tレックスは痛風だったって説もあったよなぁ」

「実際にそうだったかは憶測でしかないし、人に当て嵌めるとそうなるってだけで代謝とか生活環境とか内臓がどうなってたかは考慮してないし、結構無理筋な説ではあるね、生態にしても何にしても憶測と想像でしかない」

「そのうち化石のかけらからどうにか遺伝子を取り出してクローンを作ったりするのかねぇ?」

「作ったところで環境に適応出来ないからすぐ死ぬだろうね、そのまま複製したところで当時のままで現環境に適応した個体にはならないし、長い年月をかけて今の姿に進化、その時の環境に合わせて姿形を変えていったわけだし、当時のままでポンッと複製したところでねぇ…」

「ま、そりゃそうだよな、今はその時代と比べて星の中心部に近づいて重力が増してるとかそういう説もあるし、重力が今より軽くなきゃそもそも立つ事すら怪しいサイズのやつとかいるもんな」

「ふむぅ、俺のところだと50メーターのサーペントがいたりもするんだがなぁ」

「そういうのはこっちだと大きすぎて動けないってやつだね、アミメとかアナコンダとか10メーター前後行くのは残ってるけど、それ以上となるとってのは今の環境に適してないって事よ。

あ、今下に見える小さい島が9月末から10月頭に行く予定の島ね」

「目的地の島じゃないのかよ」

「目的地はもっと南、尻尾をバタバタ振って楽しそうだからちょっと寄り道をね」

「10月になるとその島で何かあるのか?」

「去年も行ったんだけどその時期になると大型のカツオがあそこの島周辺に入ってくるのよ、その中にスマガツオってのが混じっててそれがまた凄く美味しいのよ、それを釣るために今年も行く予定ってやつ」

「ほー、楽しいのか?」

「楽しいというより食べるために釣りに行く釣りだから忙しない、貸切はなくて乗合のみで経験者は自分でタグ付け血抜きと内臓抜きをしろ、初めての人はタグ付けから内臓抜きまで全部船員に任せて数を釣るに集中しろって言うところ。

だから物凄く忙しない釣りになるし、使う道具もロッドパワーが最低XHの出来ればXXH推奨、メイラインもPEの5でリーダーも24から26号が推奨されてる、網でのんびり取り込むなんて事はしない、経験者はさっさとぶっこ抜いていけってやつ、それが10キロクラスのカツオでもぶっこ抜き推奨、だから強い竿に強い糸を求められる、ネットでのランディングはそれが出来ない初めての人に付いてる船員がやる」

「ほほー、それはそれでパワーファイトが出来て楽しそうだな」

「ドラグはフルロックで1ミリも糸を出すなって言われるからどうしてもパワーファイトになるね、初めてとかまだ慣れてない人はきついから船長からドラグを緩めておけって言われるけどね、いきなりフルロックは5キロクラスでも体が持って行かれるし」

「で、兄さんは去年どれくらい釣ったんだ?」

「お裾分けで送る分を含めて10キロクラスのスマを十数本、それ以降は他の人の手伝いをしてた、というより慣れてる人達は必要以上に釣らないし、そうやって周りをサポートするから空気は悪くないどころか結構いいよ、どちらかといえばさっさと必要な本数を釣ったら慣れてない人をサポートして取り込みを手伝ったり、血抜きとか神経を抜く時はこことか教えたりね、だから結構リピーターの多い船…ってのを去年初めて乗った時に聞いた。

私の場合はフルロックとかぶっこ抜きとか慣れてるのもあるし、血抜き内臓抜き神経抜きと一通り出来るから熟練組に放り込まれたけど」

「まあ、アマチュアをほったらかしにしてセミとかプロを優遇するのはちょっと違うから、商売としては正しいっちゃ正しいな」

「ジグを落とす時に自分の使うジグにも乗船前に貰うタグをつけておいて、もしかかった時に糸が絡んだ場合解く時間も勿体無いからもうバッサリと絡んでるところから切るんだけど、その時糸を切らずに解こうとしてるとどやされる、どっちの竿にかかってるか分かる様にするためにジグにタグを付けてるんだろうがー!って。

ノットの結び直しは船員が2分程度でやってくれるけど、解くのにかかる時間はそれ以上だからね、ゆっくり解いて他人に迷惑をかけるんじゃねえって怒られる、カツオは餌を求めてすっ飛んで行く様に移動してるし、1分1秒が勝負みたいなところもあるからね、船長も船長で周囲に目をやりつつ常に魚探と鳥山なんかを見て状況を把握して、まだ釣れていても竿を上げさせて即座に移動とかあるし、早い時はポイントに着いて10分で移動とかあるよ、その辺りは長年の来る経験と勘なんだろうけど」

「タカムラとハナイのガイドみたいな物か、アレも今釣れていたとしてもすぐ場所を移動するし、着いた途端やっぱ他のところにするかーって移動する時もあるし」

「移動する時はすぐに散っていなくなる時とかだね、粘ってもフグくらいしか釣れない、よくて小さいカサゴとかベラ稀にイトヨリって感じ、移動したところだと何のガイドかによるけどヒラメならヒラメ、青物なら青物がかなりの確率で釣れるのよね。

カツオの乗合遊漁船はそれと同じ感じかな?他の船と比べるとポイントの見切りが異常なまでに早くて釣果が3倍からは違う」

「たまにそういうやつがいるよなぁ、私も通いなれた海なら同じ事が出来るけど」

「俺は仕事でいけないから主様が釣って持って帰ってくるのに期待しておく」

「行けたとしてもヒルダは小さいから安全面とかに考慮して船に乗せて貰えない可能性はあるね」

「これでも一応海の女で元船長なんだがなぁ…」

「まあ、がっつりやるなら今回の旅行先の南の島で貸切とか、私のところの海で自由にやるかだね」

「でー、今どの辺りなんだ?」

「今はゆっくり観光モードで飛行中ですので本州の中ほどですね、お急ぎであればすぐに南の島の本島へ参りますが?」

「いや、のんびりでいい」

「ヒルダが窓に張り付いてるし、ひよこちゃんもヒルダの頭の上に乗って地上を見下ろしてるし、このままゆっくりだね、お昼を食べて落ち着いてからホテルに入ればいいでしょ」

「わかりました、ではその様に」

「しかし結構ゆっくり飛んでるよなぁこの飛行機、普通なら墜落してそうな気がするんだが」

「今は時速100キロくらいで航行中ですね、普通の飛行機であれば揚力を失って間違いなく墜落していると思われます」

「思われますじゃなくてするんだよなぁ…ヘリの様にプロペラがついているわけでもなく形的にはセスナなんだがやっぱりプロペラはないし…そもそもエンジンどこだよ…」

「こちらの機体は一般には売りに出されてませんがルシエラカンパニーが開発した重力制御装置、いわゆる半重力で浮いておりまして、その重力制御装置を操作する事により速度も自在に調節可能というものになっております。

下から上に浮くだけでなく正面方向に重力を発生させて機体を引っ張る、といえば少しわかりやすいでしょうか?なので燃料は不要、非常にクリーンな機体と言えますね」

「それが普及するのはどれくらい先になるんだろうな」

「まだ未発表の物ですし、世間一般では電気式のジェットエンジンでようやく機体を飛ばすのに成功したところですし、技術の進歩にもよりますが早くも150年後に発表ではないでしょうか?」

「そのくらいの期間で反重力装置をそこいらの企業が作り出せるのかねぇ?」

「早ければおそらくは、ですがそういう物を生み出せる人材がいればルシエラカンパニーが早々にスカウトしていますね、早すぎる進歩は最終的に破壊にしか行き着きませんので」

「そうなん?」

「割とそうだね、核技術にしたって適切な処理方法が今も存在してないわけじゃない?鉛に詰めて放射線を減らすくらいしかできてないし、核技術が発達して転送装置まで作った星もあるんだけど、処理技術が追い付かず結局は使用済みとか制御できなくなったのは転送装置で宇宙へゴミとして投棄、または侵略するところに投げ込んで先制攻撃みたいな感じで使うってくらい。

早すぎる進歩は処理方法とかが確立されてないから結局はねー…最終的に汚染されてないところを巡っての争いになるし、その進歩により生まれた物で各地を破壊するしであまり良い事はない」

「この機体に搭載している重力制御装置、使い方次第では当然兵器にもなりますし、兵器として使われた場合は地割れに津波といった天災から大陸を海に沈めてしまう事も出来ますので、発表するにしてもタイミングが大事ということです」

「あー…それもそうか…核にしたって新エネルギーがどうこうって言って結局は兵器転用していたわけだし、そんな物が出てきたらまず軍事利用を考えるわな、ルシエラカンパニーを潰す目的で使うやつも出てくるだろうし」

「やれる物ならやってみろ、というのがうちの社長のお言葉ですね、そもそも本社がいまだにどこにあるかすら掴まれていませんし、ほぼどころか絶対に不可能であると言い切れますね、一応の本社としてあるところはダミーですし」

「兄さんはどこにあるのか知ってるのか?」

「知ってるよー?少なくともこの地上には無い、あるのは出張先の支社だけ、本社は個々の現在の技術力では生きたまま到達出来ないところ…かな?」

「重力制御装置にしてもある程度はこちらに合わせて作られた物と言えるほどの差がありますので、核武装した程度では掠り傷一つすら付かないといった感じですね、実際に打ち込まれても放射線は即座に無害化されますし、本社には煤くらいしか付かないのではないでしょうか?撃ち込まれる以前に撃った瞬間核をその場で起爆させるでしょうけど」

「そもそも攻撃すら許さないってやつか」

「さて、そろそろいい時間だし、お昼にしようか」

「もうそんな時間か、昼の弁当は何を持ってきたんだ?」

「昨日に引き続きそういう気分だったから極厚のテンポンドステーキ、地味に調理しながら…だったから今ちょうど食べ頃のはずよ」

「そうか、なら覚める前に食っちまうか」

「ヒルダー、ひよこちゃーん、お昼御飯だよ」

「はいはーい」

「ぴぴょー」

「ノエルさんもどうぞ」

「ではご相伴にあずかります」

わけのわからない考え

何かをするのには短く、何もしないにしては長い、そんな微妙すぎる待ち時間の時に出てくる考え

こういう時は何もしないのが正解だが変な選択肢が沢山出てくるので考えているうちになんだかんだで時間はそれなりに過ぎ去っていく

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