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釣れる時は簡単に釣れる さーちゃんの握力死亡中

 んー…岩の隙間にちらほらいるなぁ…埋め尽くすほどではないけど見える範囲で中から大くらいが30ほど…去年はオニオコゼやオニカサゴを求めて各地の堤防をふらふらしたというのに…まあいいや、今足元にいる美味しい魚をさっさと釣ってしまいましょ。

 事故によりオニオコゼがそれなりに居るという話が一気に広まってるのもあるし、近所のおばちゃん達がずらーっと堤防に集結してるし、あまりのんびりしていたら大きいのが居なくなってしまう…中程度の物は全部リリースしているので居なくなるって事は無いし、2匹か3匹釣ったらサビキでアジを釣ってるから大丈夫だろうけど…

 出遅れたと言う事には変わりなし、ささっと準備をして人数分釣っちゃいましょ、特に時間が掛かるような仕掛けでもないのでクーラーに海水を入れるくらいだけど…

「仕掛け自体は普通に穴釣りですね」

「岩なんかの隙間に居るのを釣るだけだからね、ブラクリにキビナゴというシンプルイズベストな仕掛けと餌が最適解、根掛かりを恐れないならMくらいのルアーロッドにジグヘッド、餌はそのままキビナゴでちょっと投げて、岩で出来てる駆け上がりの隙間近くを添わせてくるのも有り。

基本的に足元狙いなのは隙間の奥に入られる前に一気に引き抜くため、ちょっと投げる場合はまっすぐ上に引っ張れないからちょっと硬めで岩から引きはがす感じ」

「普通なら食い込みとか口から針が弾かれるからってLやMLを選びそうですけど」

「口が堅い魚ではないし、食い込む食い込まない以前に吸い込んで丸呑みするような魚だから硬くても大丈夫、よし、これで準備完了、キビナゴの付け方は大丈夫だよね?」

「目から刺して貫通させたら針を返して背中に…の縫い刺しでいいんですかね?」

「縫い刺しでもちょん掛けでもどっちでも大丈夫、ちょっと投げるなら縫い、落とすだけならちょん掛けでも早々外れないから好みだね」

「最初は落とすだけにしてみます、当たりがどんな感じかもわからないので」

「結構ガツンっとくる、吸い込んで丸のみだからコンコンとした小さい当たりじゃなくて、一気に竿がドフッて持って行かれる感じ」

「結構重い感じなんですね」

「小さいコツコツとした当たりの場合はフグとかベラとか小さいカサゴ、大きいオコゼは丸のみだからわかりやすいはずよ」

「取りあえず足元の隙間に落としていって何もなければ軽く投げる感じですかね?」

「そだね、足元に落とすだけでも十分だと思うけど、居なかったら軽く投げで一旦底まで落として、根掛かりに気をつけながら巻くだけ」

「釣り方自体は簡単なんですね」

「今日は大きさが大きさだから大き目のキビナゴを使ってるけど、小さいのならオキアミ、ボイルでも生でもどっちでも大丈夫」

「うちの近くの海でも釣れますかねぇ?」

「さぁ…?今回ここにオニオコゼがぼちぼちいるのは駆除中のガンガゼとかムラサキウニが関係しているだろうし、居る時は居るけど大抵は沖の方に居るね」

「なるほどっ…!」

「掛かったら竿は下げずそのまま一気に巻いてぶっこ抜き、毒があるのは背ビレだけだからそこにさえ気を付けておけばいいよ、何ならバス持ちも出来る」

「うわ…かなりいかつい見た目…」

「これがオニオコゼと呼ばれる理由だね、暴れて針が外すのが辛いって時はお腹の法からこうやって手をまわしてここ、胸ビレの下を掴むとピタッと止まる、腹とか尻ビレにも毒腺が通ってるやつには出来ないけどね、魚掴みで掴む時もここを掴んでやると暴れない、後は大人しくなっている間に針を外してあげれば安全だし魚も必要以上に傷つかない」

「あー…魚によっては持った時に暴れる暴れないってのがありましたけど、持つ場所の問題でしたか」

「口に指を入れるバス持ちが出来ない魚はエラに指をかけたり、胸ビレの下に指を入れて掴んだりするけど、それで魚が暴れないのはツボみたいなのを押しているからなのよね」

「次からクロダイなんかを釣った時に試してみます、大体は口をあけた時にフィッシュグリップを付けて、それで寝かせたままプライヤーではずしてたりしてたんですけど、それだと結構暴れるので」

「掴み方さえ知っていれば必要のない魚って結構いるからね、魚掴みとかフィッシュグリップはどちらかといえば手で触りたくない人向け。

で、手洗い用に用意したバケツで血を抜いたら跳ねない様に神経も抜いて背ビレを除去、背ビレはハサミで切ってもいいけど捌く時に中に通ってる部分も取り除くのでこうやって刃を入れて、刃を入れ終わったら背ビレを抑えてオコゼを引っ張るとヒレが取れる、後は氷と海水を入れたクーラーの中に入れるだけ、ヒレは危ないから新聞紙に包んでからね」

「内臓は抜かないんですか?」

「オコゼの場合はヒレを除去したら次は皮を剥ぐんだけど、その皮を剥ぐ時に一緒に内臓が出てくるからお腹は開いちゃダメ、鱗がついてる魚の様に皮引きをして剥がすわけじゃないからね。

それじゃどんどん釣って行こう、オニオコゼは食べたいと思った時に食べれる様な魚ではないから釣れる時に釣って食べるのが吉」

「あまり釣れない魚…というわけでは無いですよね?」

「居るところに行けば釣れるけどそれでも確実ではないし、スーパーに並ぶ事もほぼ無いに等しいのよね、昔ながらの魚屋さんだと仕入れてる事もあるけど時期によっては1キロ1500円とかする、オニダルマオコゼになるとさらに倍以上…そう言えば修学旅行は南の島に行くんだっけ?」

「そうですね、何もなければ南の島のはずです」

「自由時間に釣りをするならリーフやその間の砂地にキビナゴを落としてみるといいよ、オニダルマオコゼはそう言うところに潜んでるから、で、毒針の場所はこいつと同じ背ビレ、だからそこにさえ気を付ければ見た目いかついだけの美味しい魚に早変わり」

「釣ったところで食べれるかどうかが問題ですね、パックロッドで道具は持ち込めても刃物は持ち込めないでしょうし、宿泊先のホテルに持ち込んでも料理をしてくれるかどうかは…別料金を個人で出せば何とかなりそうですけど…」

「ホテルは本島?離島?」

「一応修学なので本島ですね、例年通りであればお城を見に行って、そこからスキューバダイビングをする人、ハブ酒の製造工場を見に行く人、サンゴ染に行く人、焼き物を見に行く人と結構別れる感じです、なので場所は市にほど近い…とはいっても結構南の端に近い場所ですね、そこにあるホテルです」

「ほぼほぼ南の端となると…んー…持ち込み出来る様ないいお店は無かった気がするなぁ…」

「それだと釣るだけ無駄な気がしますねぇ…」

「ゴミの処理も考えると持ち込みの方が良いと言えば良いし、んー…釣りをするとしたら丸1日自由時間の日なんだよね?」

「そうですね、店長さんに中村さんを紹介して貰って1日色々教えて貰ってなので、その時間に実践を兼ねたお勉強といった感じで釣りをする事になると思います、中村さんの都合が合わなければホテルから徒歩で行ける近くの海で釣りをするだけになるかと」

「そうねぇ…その日の食事が集団行動か個人行動かによるけど、ちょっと時間をかけて移動すればいいところがあるよ、本島の最南端に沖そばアークティックレギオンっていうなんだかわけの分からない名前のお店があるんだけど、そこなら持ち込んだ魚を料理してくれるよ、値段も刺身に天ぷらに唐揚げにと作って700円くらいで」

「結構安い…んですかね?」

「手間賃と天ぷら粉に唐揚げ粉、その他敷物や添え物の値段を含んでだから安いね、骨やアラはまあお鍋にしない限りは持って行かれるけど、基本的な可食部は全て出してくれるから結構良心的、お店によっては1000円とか2000円とか取られるし、半身だけ使って残りは全部持っていかれるとかもなくはない」

「そんなところ有るんですか?」

「あるよー?ちょっと高いお店だったのもあるけど、13キロのカンパチを持ち込んだら調理代として2000円取られて出てきたのが背中の刺し身が5切れ、その他の部分は虚空に消えた」

「それはまた中々に酷いお店ですねぇ…」

「隣の部屋にどこかのお偉いさんが来てたみたいだし、料理長らしい人がたった今良い魚が入ったところって説明してたからそっちに回したっぽい、結果として13キロの脂ノリノリだったカンパチは刺し身5切れに化けて残りは虚空に消えていきましたとさっていうお話。

まあ、沖そばアークティックレギオンはそんな事はなく、可食部はちゃんと全部使って出してくれるし、アラは持ち帰りたいっていえば調理しやすいように頭を割ったり、骨を切ってる状態にして包んでくれるよ」

「さすがに修学旅行中にアラを持って帰るという事はしないですよ、滞在中の保存にも困ればアラだけを要冷蔵で実家に送るというのもさすがに…なんじゃこれって言われますよ…」

「お吸い物にしてね?って書いて置けばいいんじゃないかな?オコゼのアラから出汁を取ったお吸い物は美味しいよ?」

「値札を付けて送れば捨てずに取っておいてくれそうな気がしなくも…ってところですかねぇ…身はどこに行ったって言われそうですけど」

「アラだけでも大きさが大きさなら3000円とか4000円とかするんだけどねぇ…時期と大きさによっては1匹3万超える魚よ?」

「高いですねぇ…オニダルマって事はこれよりさらにいかつい見た目なんですよね?」

「そうだね、物凄くいかついし皮が厚くてぶよぶよしてるし毒の強さもこいつ以上、でも美味しいんだよねぇ、だから南の島に行ったらどうにかして確保する事をお勧めするね、家に帰った後皆と食べるって場合は鮮魚店を探してそこに持ち込んで手間賃を払って捌いて貰う、そこからクール便で自宅にーってすれば後はもう家で煮たり焼いたり刺身にしたりで食べるだけ、現地で食べるならさっき言ったところ」

「釣れるのが前提になってるような気がしますけど、そう簡単に釣れるんですかね?」

「人が頻繁に立ち入っている様なところでは滅多に、南の島の釣りって歩いて行けるなら海の中をどんどん突っ切ってリーフに行ったりするから、そういう風に人が入りまくっているところはほぼ居ない、たまにどこかから迷い込んで踏んで事故が発生するけど」

「それだと釣れる可能性はかなり低いですねぇ…今釣れているオニオコゼの様なほぼ入れ食いはまずないでしょうし」

「穴場も有るには有るんだけどね、昔雑誌で紹介されていたポイントとかって今の時代だともう誰も入ってないとか結構あるし、南の島の場合そういうところが多いから探せば出てくるのよね。

ちなみに誰も行ってない理由は釣れないからじゃなくて、車から降りて徒歩30分から60分かけてちょっとした山を登っておりてーって移動するからだるい、っていうのが主な理由、周りにお店もなければ自動販売機もない電気もない、だからどんどん通う人が居なくなって穴場になってる。

湾になっててかつ内側は結構入り組んでて船が入って漁が出来ないってのもあるから、そこそこの年月をかけて復活した場所ともいえるね、雑誌が出たときは結構人が押し寄せて行ってたらしいけど、今はのんびり歩いて移動するくらい余裕のある人って少ないし、皆近場で近場でーってなってるからねぇ」

「でも修学旅行中にそこへ行く事は無いと思います、自由時間とはいえ常識のある範囲内での移動…ってなりますので」

「そうねぇ、慣れていても往復するだけで1時間はかかるし、携帯の電波も届かないところだからねぇ、常識のある範囲内での移動をってなると行けないね、緊急連絡も出来ないだろうし」

「行くにしても卒業後とか自由時間が一杯取れる様になってからですね、しかしさっきから釣りをしてませんけど良いんですか?」

「オニオコゼが確保出来ればそれでよし、それにちーちゃんはオコゼ捌けないでしょ?」

「出来ないですねぇ…練習をすれば出来る様になるとは思いますが」

「慣れるまでは背ビレをハサミで切って処理すればいいだけだから練習自体は簡単だけどね、神経もワイヤーで無理に抜かず血だけを抜いて氷水で絞めればいいし」

「今神経を抜いてるのはその絞まっていく過程で身が跳ねるからですかね?」

「そうだね、そうすると旨味がちょっと減っちゃうし、美味しく食べるならってやつだね」

「えーと、オコゼが今…」

「中くらいのはリリースしたから18匹だね、時間もそろそろお昼時だし片づけて帰ろうか」

「お昼はオコゼ尽くしか、それとも夕食に回すのか…」

「それは店長さん次第だね」

「しかしさーちゃんは結局来ませんでしたね、釣りに行きたそうにはしていたんですけど」

「手縫いは苦手な人はとことん苦手だからね」

オニオコゼ

見た目は物凄くいかつい、けどいかついだけで危ないのは背ビレだけなのでそこに気を付ければ問題はない、なので見た目が悪い、毒を持ってるからって口を引きちぎって針を外すのは止めよう

身の刺身に皮唐揚げ、肝は肝醤油やポン酢和え、アラを使ったお吸い物にと割と余さず使える

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