すごろくゲーム 開発者の一言、私が創りました(目線の入った狐耳の女性)
水分多いご飯は冷御飯になった後レンチンして水分を飛ばせばチャーハン向けの御飯になる小技―マヨネーズ投下よりカロリー控えめ―
今日もメイド達と共に農場で野菜の収穫、洗濯、掃除と手伝っていた頃。
「今回はこちらにある物のテストプレイの為に集まって頂きました。
見ての分かる通り簡単なボードゲーム、すごろくですね」
「狐が創ったって言うだけで嫌な予感がするんだけど…」
「メイド長謹製の遊具…少し興味ある」
「いやいやいや、絶対碌なことにならないって、正気にもどろ?」
「失礼ですねルシフ、ちょっとした仕掛けはして有りますが遊ぶ人に危険は全くありません。
それ所か素敵な時間を過ごせる事を約束しましょう」
「ほんとにー…?そう言って以前創ったボードゲームなんて屋敷ふっ飛ばしたじゃん…」
「怪我人は出ていませんでしょう?つまり危険はないという事です。
開始時刻はお茶菓子でも摘みながらできるように三時と致しましょうか。
今回は一組五人まで、参加人数は無制限ですが、組む相手は此処にいる者以外から選ぶ事、以上です」
「怪我人は出ないけど何かが起こる、と…」
「とりあえず私はパパッと選んでくるよ、後は時間までに覚悟を決めておくよ…」
「では私達もパートナーを探しに行きましょうか」
お昼時を過ぎた頃ミネルヴァ達がメイドと交渉し、誘っているのを見かける。
何人か交渉する相手が被っていたようだが、特に争いも無く解決していた。
それを横目に調理場へ入り何時ものお茶菓子やら狐さん用の稲荷やらを手早く作る。
後狐さんから今日はお茶菓子を多めにと頼まれたのでそこそこの種類と量を用意した。
三時が近づく頃、指定された場所に運び並べていく、今日は中庭で過ごすつもりらしい。
「ご主人様、こちらへどうぞ」
並び終えた後、狐さんに誘われたので座るといつもの様に乗っかってくる。
「皆が集まるまでの少しの間こうして居ましょうか」
少し早いが尻尾のグルーミング等を済ませ三時になるのを待った。
「それでは集まったようなのでお茶会を開始しましょう」
狐さんはツヤツヤになった髪や耳、尻尾を少し見せつけるようにしてお茶会開始の音頭を取った。
「お茶会の目的ですが、こちら、皆で楽しめるボードゲームを用意いたしました」
狐さんが遊具を取出しテーブルの隣に置いてあったボードに張り付け説明を開始する。
ルールはとても簡単なものでサイコロを振り出た目の分だけ進むとてもシンプルなすごろくゲーム。
各マスにはイベントが仕込んであり、そのイベントに対応するカードを引き誰がやるかを決め、それを実行する、それだけの物。
「今回チームを組んで貰っていますが勝敗は特にありません、楽しんでもらうのが目的です。
ただ一番最初にゴールマスを踏めば少しいいことがある、位なものですね。
それではご主人様、ボードのこの部分に触れてくださいませ」
ボードに触れると光っただけで特に何も起こらなかった。
「認証は完了しましたのでゲーム開始です、お手元にあるサイコロを振りゴールを目指してください」
そしてゲームが始まった。
「行きますよテレサ」
「はい、ユノー様の御心のままに」
少し前に来たテレサはユノーと組んでいた、ユノーはテレサを気に入ったのが大体いつも連れ歩いている。
「サイコロの目は…4…」
「このマスは青のカードですね、こちらをどうぞ」
狐さんか青色のカードの入った箱を出し一枚引かせる、いつかのくじ箱をさらに強化した物でイカサマ不可にしてあるらしい。
「カードの内容を確認したらどちらが行うかを話し合って決めてください」
ユノーがカードの内容を確認しテレサに渡す。
「テレサ、これはあなたが行う方が良さそうですね」
「わかりました、ユノー様の仰せの通りに」
そう言うとテレサはカードを持ったままボードに触れ、ボードが光ると同時にその場から姿が消えた。
「テレサが消えたけど一体どこに?」
「ボードの中ですね、次の順番が来るまではボードの中に入ったままになりますが危険はありませんのでご安心を」
ボードの中でカードにあるお題をこなす感じらしい。
一巡しテレサがボードから出てきたが顔が真っ赤になっていた。
「どうでしたか?テレサ」
「とても素敵でした、ありがとうございますユノー様」
何か良い事があったらしくユノーにお礼を言っていた、中で何があったのだろうか…
狐さんを抱きかかえ尻尾や耳、髪を手入れしながらゲームの進行を見守る。
「6…ミネルヴァ様、6マスです」
「1、2、3…6、赤のカード」
「ではこちらをどうぞ」
狐さんは抱きかかえられたまま箱を出す、降りる気はないらしい。
「これは…どちらが行きますか…?」
「ユースティアだと難易度が高く、私では簡単すぎる」
「では私が行って来よう」
ニールが名乗りを上げボードへと向かっていった。
そしてニールはツヤツヤになり、やり遂げたような顔をして戻ってきた。
「では振ります…1…申し訳ありません…」
「気にしなくていいのですよエリス、では1マス進めましょう」
「ここは緑のカード、内容は…」
「これはタニアが適任ですね、お願いします」
「了解しました、行ってまいります」
その後ボードから出てきたタニアは何かを持ち帰ってきており、チームメンバーと分け合っていた。
「よーし、振るぞ振るぞー」
「おー」「ふるー」「ころがせー」
ルシフと狼三姉妹のチームは仲良しさんだなぁ。
「コロコロコローっと、3だね」
「さん」「さんさん」「さーん?」
止まったマスに該当する色のカードを引く。
「カードの色は白、いいねぇ、私たちの髪の色と同じだ」
「おなじー」「おなじー?」「同じだー!」
カードの内容を確認する。
「これは皆で行くようだね、それじゃ行こうか」
「いくー!」「いくぞー!」「とつげきだー!」
ルシフ達は三姉妹と一緒にボードの中へ入っていった。
ああして三姉妹と一緒にいるとパッと見は娘達を可愛がっている親にしか見えないんだよなぁ…
ただ最近はユノーのお気に入りであるテレサも狙っているらしい、色か?色を統一しようとしているのか?
テレサも髪は真っ白で目は真っ赤だからなぁ…三姉妹と同じで狼人族だし…本気で狙われるとユノーはどうしようもないだろう、合掌。
ボードから出てきたルシフ達は三姉妹と一緒に手を繋いだり肩車をして出てきた、ニコニコ笑っており三姉妹たちも満足そうだった。
「次こそ…次こそは…あぁ!また1…」
「ケレス様、落ち着いてください、少し言葉遣いが乱れてきています」
「んんっ!すみません、少し熱くなっていたようです」
「それとこのマスは…このカードです」
黄色の箱からカードを引く。
「これは、私が行くしかないようですね、それではアナト、行ってまいります」
「行ってらっしゃいませケレス様」
アナトは普段言葉遣いは荒目ではあるがケレスの前だとおとなしいんだよなぁ…逆にケレスは言葉遣いがあれたりもするけど…
ケレスがいない間はアナトが次のお茶菓子やお茶の準備をしている、好戦的な分包容力の高いケレスに憧れるのだろうか?
ボードから出てきたケレスは満面の笑みで何かの袋を抱えていた、アナトはその姿を少し頬を染めながら見ていた。
「サイコロ振る」
「5ですね、ここは…黒です、クロノア様」
ティアが黒のカードを引きクロノアに渡す。
「んー…?これはどっちが行っても大丈夫?」
「それでは私が行ってまいりましょう」
「行ってらっしゃい」
クロノアがティアを見送りお茶菓子を摘みながら次の番を待つ。
このコンビはティアではどうにもならない限りはクロノアは動かないらしい、今のところクロノアがボードに入ったのは2回、それ以外は全てティアが行っている。
ティアがたまにクロノア様が行ったほうが良いと言う物も全てティアに行かせている、それから戻ってきた時のティアはしきりにクロノアに感謝していた。
もともとティアはクロノアに対し全幅の信頼を寄せているが、今回のゲームでさらに崇めるまでになっていた。
その後もゲームは続きお茶菓子が少なくなってきたので補充したりお茶を淹れたり。
ボードの中に入った後中で何があったかを聞き私が行けばよかったと悔しがるチーム。
難易度関係なく順番に入るようにしているチーム。
互いに譲り合いちょっとグダグダになるチーム。
少しいい物が気になるのか只管ゴールを目指すチーム。
それぞれ個性が出ていた。
狐さんの作ったすごろくは非常に長く、夕食時になっても終わることは無かったので翌日に持ち越された。
一応強制排出は組み込まれているらしくボードの中に入っていた者は皆帰ってきた。
翌日、朝から開始するという事で纏め役は各所に指示を飛ばす。
私も調理場に行きお茶菓子を前日よりさらに多く用意する、お茶は各自の好みの温度があるので特別性の茶器も用意する。
冷蔵ボックスも持ち込み飲み物を含む冷たい物も出せるようにする。
昨日と同じ所へ行きまたテーブルやお茶菓子などをセットしていく、長丁場になりそうなのでお昼はサンドイッチなど片手間に食べれる物にした。
準備が終わった頃昨日と同じメイド達が集合し、再びゲームが始まった。
「それにしてもこのすごろくかなりの長丁場だね」
「ええ、マスを戻ると言った物は無いですが分岐を作り長く楽しむか、最短経路を通りゴールを目指すかの選択肢は作ってありますので。
ですがパッと見は最短経路かどうかも分かり辛くしてありますので選んだ道が最短とは限りませんが」
最短経路を選んだつもりが最短ではなかったという罠を張っていたらしい。
どうりで皆ほぼ横一直線に近い状態だと思ったわ…
「それにそろそろちょうど良いようですし、次の番から私達も参加しましょうか」
すごろくに参加することになった、ほぼ半日分の半ではあるが大丈夫なのだろうか…?
「特に何の問題もないでしょう、勝ち負け名の無い、ゴールしても少しおまけがある程度のゲームですし」
狐さんとコンビを組んで参加することになった。
「えっと、6だね」
「では6マス進めますね、ではこちらをどうぞ」
狐さんが白色の箱を渡してくるのでカードを引くと…
「白黒の二色…?」
「あら、流石ご主人様、また引きましたか」
さっきからなぜか単色ではない複数の色のカードしか引かない。
他のチームも引くには引いているが昨日からの分を合わせてまだ3枚くらいしか出ていないような確立である。
「今回の内容はこちらですね」
カードの内容を確認する。
【この場にいる誰かとボードの中へ入り結婚式を挙げる】
【*なおこれはあくまでもゲームである*】
【*このカードの内容は引いた者にしか見えない*】
「内容はどうでしたか?ご主人様」
これは悩む…カードの内容が他にはわからないのが救いだが…
仕方ない、覚悟を決めるか。
「よし、狐さん、ボードの中に一緒に入ろう」
「わかりました、お供致します」
そして二人でボードの中に入りささやかな結婚式が行われる、狐さんは顔を真っ赤にしていたのでお姫様抱っこをして練り歩いてやった。
そして順番が回ってきたのかボードから排出される、狐さんがウェディングドレスを着たままで…
「狐ー、説明を要求する」
「これはあくまでもゲームなので実際に行われたことではございません」
「あー、そういう事言うんだー」
狐さんがルシフとちょっとぎすぎすした空気を醸し出す、が。
「ちなみにネタばらしになりますが、ゴールした時のちょっと良い物とは今私が着ているこれの事ですね。
誰にも祝福されることはありませんがボード内でささやかな二人だけの結婚式を挙げることができます。
もちろん全ての箱の中にゴールせずとも体験できるカードを仕込んであります、イカサマ防止はこれの為ですね」
「まじでかー…つまりここにいる皆ゴールすれば皆できちゃう?」
「はい」
「これは…頑張ってゴールを目指すしかないね…」
ワイワイと楽しんでいたすごろくだが、少し空気が変わった。
箱の中に本当にそのカードが入っているかを確かめるため全ての箱の中身がチェックされ入っていることを確認、箱の中にカードを戻し、三度ゲームが始まった。
「つまり色ごとによって中で行われるミニゲーム等に違いはあれど、複数色のついたカードの中の大当たりに二人だけの結婚式が入っていたと」
「はい、大々的にやろうものなら惨劇しか待っていませんからね、ゲームの中であれば気兼ねなくできますでしょう?」
あー…まあ…ゲームという言い訳がなかったら結婚式は上げていない…
平等に愛することを是とする狐さんにしては思い切ったことをしたもんだ。
「それとまだ言ってない事ですが、こちらのゲームテストプレイが終わった後は館のメイド達皆に遊んでもらいます」
まじで?
「当然皆がゴールをする、またはスペシャルカードを引き結婚するまで終わりませんので。
ご主人様の当分のお仕事はメイド達に付き合ってすごろくの場にいる事ですね」
はい、がんばります。
「ルシフ達もそれに気づいたのか笑い合ってサイコロを転がしているでしょう?」
確かに、ボードから出てきた瞬間は険悪になったが今は楽しそうに転がしている。
また1ー!と叫んでアナトに窘められるケレス。
三姉妹と笑いながらサイコロを転がし一緒にボードに入っていくルシフ。
エリスとタニアに指示を出し本人もボードに入り楽しむディアナ。
スタンスを変えず貫き通すクロノアとティア。
簡単な物はユースティアに、普通物はニールに、辛い物は自分で行くミネルヴァ。
テレサに心酔され、自分自身もテレサの事を気に入っているユノー。
そこには笑顔で溢れているメイド達がいた。
「いい光景でしょうご主人様?」
「ああ、そうだな」
狐さんが最後に言ったことを頭の隅に追いやり忘れようとしながらメイド達を眺めていた。
後日、ゴールすれば何度でも結婚式を上げれると気づかれる。
いち早く気づいたルシフが2巡目に即参加、同性結婚を慣行、ウェディングドレスを着た私を目撃したメイド達により同性婚での二度目の結婚を迫られる。
当然のごとく2巡目の最初にしれっとルシフと一緒に参加していた狐さんも言わずもがな…
まだまだすごろくの流行は終わりそうになかった。
「そういえば前のボードゲームは何で屋敷が吹っ飛んだんだっけ?」
「あれは注意書きでこれはゲームですと書き忘れた結果、メイド達全員が蜂起。
その時結婚式を挙げたヴェスティアにメイド達全員で襲いかかり…
結果ブチ切れたヴェスティアが屋敷もろとも吹き飛ばしたからですね。
その後暫く羨望の目がヴェスティアに集中して治めるのが大変でした」
「あー…あったねぇそんなの…そもそも私達初期からいるメンバーは皆ご主人様とは契り終えてるんだけどね…」
「今回のすごろくでまた切っ掛けは作れましたので、流行が終わり次第まだ契っていないメイド達との式を挙げませんとね」
「流行が終わった後ご主人様干からびなければいいけど」
「そこは私達でカバーしますので」
「えー、私達も混ざるの?」
「嫌ですか?」
「ははは、この件に関してはミネルヴァやケレス達も否とは言わないだろうよ」
「では準備をお願いしますね」
「はいよ、暫くヴェスティアとか借りていくからね」
流行が過ぎ去った後、まだ契りを終えていないメイド達との式が行われ、一人づつ指輪をはめていくと皆嬉しそうに涙を流していた。
そしてその後ユノーは悔し涙を流していた。
「ルシフ!テレサを今すぐ返しなさい!」
「だってさテレサ、どうする?」
「すみませんユノー様、私はもうルシフ様により…」
顔を赤くもじもじしながらルシフの背後に隠れるテレサ。
「ごめんねユノー、この通りだから」
「ルーシーフー!」
「ははは、いいじゃん、せっかく仲間同士で仲良くなれたんだから」
テレサはルシフの手により同じアルビノである三姉妹と引き合わせられ、三姉妹の無邪気さに当てられ陥落。
母性が刺激されたのか常に三姉妹と行動するようになりユノーと会う回数が少なくなった。
結果ユノーがテレサをルシフにとられたと激怒、今に至る。
でもまあ何だかんだで本気で怒っているわけでもないのでユノーは楽しそうなテレサを見て微笑んでいる。
ルシフも楽しそうにその光景を眺めていた。