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意外とレアなんです 油の差しすぎ注意

「店長、ふと思ったんですけど」

「どったのさーちゃん?」

「餌と同じ冷凍庫にアイスが大量に入ってますけど、この辺りの人って気にしないんですかね?」

「あー…そうねぇ、この辺りの人はまず気にしないね、別に中身が溶け出してオキアミとかアミエビとかと混ざってるわけでもないし、それなりに長期間置いといても臭いが移るわけでもないし」

「なるほど、地域によるとかそんな感じですかねぇ?」

「それと個人店だからこそ出来る事とも言うね、生鮮食品ならまあ色々と面倒な手続きをして許可を取らないとダメだけど、ジュースとアイスくらいなら別に自動販売機で売るか店内の冷蔵庫と冷凍庫で売るかの違いしかないし、個人の気分でアイスやジュースを仕入れようが別にねーってやつ。

チェーンの釣具屋ともなるとさすがにアイスとかジュースは本部が許可しないとダメだし、大型店舗があるところって街よりなのもあって、餌と一緒に冷凍されているってのを見るとこれはダメって人は結構いるのよね。

後ジュースは兎も角アイスは年中売れる物でもないし、夏だけ仕入れるにしてもそれ用の冷凍庫が必要になるしで、個人店以外はまあ売る事は無いかなってやつ、ジュースに関しては本部の方から各清涼飲料巣にメーカーと契約して自動販売機を設置して貰えるから、それで何とかなるといえば何とかなる、自動販売機による収益はその店舗の物になるといえばなるけど、赤字になってもその分が計上されるから自動販売機も善し悪しってところかな?」

「確かに自動販売機をずらーっとお店の前に並べてる店舗もありますねぇ、1本140とか150円するので買う気がなくなるんですけども」

「あれは利益をどうにか取ろうとした結果値段が爆上がりするってやつだね、350ミリ缶なら1本60から80円、500ミリボトルなら70から90円くらいなんだけど、メーカー契約の場合取り分として貰えるのは20から30%で電気代はこっち負担、だから倍からの値段を取らないと利益が無いに等しい、結果とんでもない値段になるってやつだね。

ちなみに契約の場合メーカーが勝手に補充に来て空き缶とかも回収してくれるから、1本60円っていうのもその費用が含まれてる感じよ、自分で自動販売機本体を購入して設置、中身も自分で補充ってやれば売り上げは全部自分の物になるよー?

まあ、うちは見ての通り冷蔵棚にジュースが入ってるし、冷凍庫にはアイスが入ってるしで自動販売機は要らないんだけどね、魚の冷却に氷が必要だから氷販売機は置いてあるけど」

「あれって利益とか出るんです?」

「意外と出るよ?契約でもなく販売機本体の購入になるし、掛かるのは電気代と水道代だけ、中の氷が減らないと水は補充されない様になってるから水道代はそれほど、問題は表にある氷販売機って意外と抱えているお店が少ないんだよね、大型店舗ですらないところのほうが多いくらい」

「ほぇー、アレ結構レアな自動販売機だったんだ、近くの釣具屋にはないからなんでかなーとは思っていたんだけど」

「水道代と電気代両方かかるってのもあるし、海が近くないと…ってのもあるのよね、うちみたいに海が近くてかつ海のガイドもやってて絶対釣らせますよーって感じでやってると大量に使うけど、街中でそれ用の溶けにくい氷を売っても買う人がねぇ…

ま、どうしても欲しいって場合は漁港に行くといいよ、人がいる時間に限るけど製氷機は必ずあるから、そこで売って貰うのが確実かな?」

「漁港かー…家から遠いんだよねぇ…どちらかと言えば山寄りの位置だし、海に行くだけで自転車で30分とかかかるし、釣具屋はさらに遠く1時間で街寄りの位置だし…」

「そういう時はスーパー鮮魚コーナーに行くのがいいね、スーパーも製氷機を絶対持ってるから、そこで何キロくーださいって言って買うのもあり」

「コンビニで2キロ300円のプレートタイプを買うのとどっちが安いんですかね?」

「当然製氷機のクラッシュアイスを買う方が安い、あっちはカットして袋詰めしてーってやってるから高くなってるけど、製氷機から直接クーラーにぶち込むなら10キロで100円とかそのくらいよ?ついでに言うなら長持ちして溶けにくいような冷凍方法だからプレートより長持ちする」

「おー、かなりお得…今度から海に行く前にスーパーに寄っていく事にしよう」

「袋入りのプレートと違って氷の中に魚をつっ込めて冷却力が段違いてのがまず一つ目の利点、ごみが出ないというのが二つ目の利点、兎に角安いというのが三つ目の利点かな?

魚の冷却方法はガイドのお手伝いで散々教えられてると思うけど、寝かせて冷やしておけばいいっていう物ではなく、氷の上からさらに海水を入れて、お腹を上にして背中を下にして突っ込む、プレートだとこれが出来ないから全体的に冷えないんだよね、何なら氷を敷いてようが重ねて入れた場合上の方はもうほぼ常温まである。

プレートタイプも閉めておけば全体的に冷えるだろー、って思ってるかもしれないけど間違いね、あれは閉めてから冷えるまで長時間かかるし、冷えるのは氷と密着している物くらいで上の方はなかなか、さらに開けてちょっとでも温まったらまあ冷えるまで時間がかかるし、冷やし方としては不適当、開け閉めをほぼしない、開けたら使い切るキャンプの食材を入れておくくらいだね。

ジュースを冷やすのにクラッシュアイスに水を入れてー、ってのがあるじゃない?あれは単純に氷だけだと冷えるのに時間がかかるから、なんだよね、この辺りは理科とかそのあたりの問題よ」

「なるほどー…今までプレートタイプを買って使ってたのは無駄だったかぁ…」

「プレートは便利な様に見えて実はそうでもないっていう典型だね、あれはもうアイスピックで砕いて飲料に使ったりかき氷にしたりするくらいよ、冷却には向いてない。

魚の冷却用って売ってる店もなくはないし作ってるところもあるんだけど、単純に売りやすいのと、これで売ってるんだからこれでも十分冷却出来るって勘違いする人がかなりいるのと、キロ200円でも売れちゃうから儲かるってのがある」

「確かに、キロ200円で売れたらぼろ儲けですよね、氷だから期限はないし、ブロックにするだけで約20から30倍の値段で売れるとなれば…」

「作ってる側も売ってる側も儲かっていいってやつだね、それがあるから氷の自販機を置いてるところが少ないとも言えるんだけど、うちの自販機でもキロ10円だからね、500円入れたら50キロも買えちゃうよ?それでたまにやっちゃう人もいるけど」

「居るんですか?」

「この辺の人じゃない人が来るとたまにね、プレートと同じ感覚で買うから300円とか500円分買おうとして30キロとか50キロ買う人がちょこちょこ、キロ指定で1キロから100キロまで売れる様にしてるんだけど…50って入力してそのままぽちっと押しちゃう人がね…1キロ10円って書いてるのに100グラム10円だろーって感じでピピッと、そしていつまでもドバドバ出てくるからそれで目が覚めると」

「そりゃ目が覚めるでしょうね、なにこれ?ってなるか故障を疑いますし」

「1人だけの場合なら運転もあるから意識はしっかりしてるけど、2人とか3人の場合は大体一緒に乗ってきた人はボーっとしてるか半分寝てるかだから氷の購入を任せると大体そうなる、運転してきた人は大体中に来て餌とか買ってるしね、そして氷が止まらないんですけどーって駆け込んでくるまでがセット、さすがに返金は出来ないけどね、出した氷は戻せないし」

「余った氷はどうするんです?そのまま?」

「邪魔にならないように排水溝の近くに纏めて欲しい奴は持っていけーって状態にする、安いから大体自分で買っていくけどね」

「土とか砂とか付着している部分があるのも考えると自分で買う方が良いか」

「んだね、はい、次はこれをそっちのオイルに浸したら綺麗に拭き取ってね」

「はーい、しかしちょこちょこ出てくるこの真っ黒いべたついたのってなんなんですかね?」

「緩く固まってるけど油の塊だね、メンテナンスに適当な潤滑油を吹き付けるでしょ?そしてぐるぐるハンドルを回して馴染ませるのはいいんだけど、海水なんかで使うと油がどんどん乳化して固まっていくわけよ。

そして古くなってどんどん黒くなっていって、真っ黒になったのがこの油の塊の正体、まあ動作に影響はそれほど無いし、ある意味これで膜が出来ちゃってる様な物だから海水とか弾いてくれるんだけど、また油を差すと次にぐるぐるこねくり回されて乳化したのが漏れ出てくるのよね」

「これ簡単に落とす方法ってあるんですかね?」

「無い、と言いたいところだけど、まあこれも科学の問題で、水と油が混ざって乳化してるならそれを分解、解乳化させればいいわけで、その方法として解乳化剤を溶かした溶液の中に漬け込んでハンドルをぐりぐり回すのが手っ取り早い。

遠心分離とかお湯でっていう方法もあるんだけど、こういうリールなんかだと変形しちゃう可能性があるから、解乳化溶液ってのを作ってそれに漬け込んでしまうのが一番手っ取り早い、問題は地味にたけぇんだこれが…分解するよりは早く確実に隅々まで落とせるから重宝はしてるんだけどね。

別解としては古い天ぷら油と水を混ぜた物の中にぶっ込んでハンドルを回して乳化させて古い乳化物質を押し出す、その後で重曹を溶かしたお湯に浸して油を分解させるってのもある、あまりおすすめはしないけどね」

「ドロッドロに汚れるから?」

「ありとあらゆるところに乳化物質が入り込むから溶かして分離させるのに時間がかかるのよ、それなりに高い温度を保たないとダメってのもあるしね、だからこういう解乳化剤を溶かした溶液を作って漬け込むのが確実かつ手っ取り早い、中のメンテナンスオイルとかが全部剥がれるから分解整備しないとダメになるけどね」

「今オイルに浸しているのがそのオイルが剥がれた部品と」

「そだね、ここまでバラッバラにするのはうちくらいで、大抵の店だと乳化物質を取り除くかどうかも怪しい…というより知識があるかどうかだね、メンテナンスに出したけど油を差しただけで終わりってのもなくはないくらいだし」

「それくらいのメンテナンスは誰でも自宅で出来るのでは…」

「それが出来ないのもいるからメンテナンスはどこに出すのがいいのでしょうか?とかいう質問がちょこちょこ出てくるわけだね、ちょっと高いけど確実なのはメーカー、それとここなら出来るって多数の人が挙げているお店。

大型店舗でのメンテナンスとかオーバーホールはまあ…メーカーに投げる方がましかなぁ…昔スピニングでオーバーホールに出したらオートリターンしなくなったんですけどーってうちに持ってきた人がいてね、そのリターンに関係する部分を開けて部品が足りなかったって言う事があったのよ、これがオートリターンに関する部品の一つね、この鉤になっている部分がこっちの部品に引っ掛かってハンドルを回した時にカチャッと戻る、この部品が無かったのよね、まあオートリターンしないだけだから使えなくはないけど。

で、その店舗に問い合わせたけどまあ結局知らぬ存ぜぬ、うちはちゃんとオーバーホールをして元通りにしましたの一点張り、仕方ないからうちで部品を仕入れてオーバーホールもやり直しって事もあったかな?

小さい部品だし、オートリターンしないだけで動作自体に問題は無いっちゃ無いのがまたねぇ…だからと言って部品を無くしていいという言い訳にはならんけど」

「この大きさだと確かに無くしても気が付かない、最初から付いていたかどうかも覚えているかどうか怪しい可能性がなくはないですね、そうならないようにバラした順番に部品を並べて行ってるんでしょうけど」

「一番多いのが順番に並べるバラせるところから適当にバラバラにしていって順番が分からなくなる事、そして余るはずのない部品が余るという事、慣れて構造を全部覚えていればこの部品が足りなくね?ってすぐわかるようになるけどね。

はいこれもオイルに浸して余分なオイルは拭き取ってね、それと7番の棚に入ってるベアリングを8つオイルに浸して拭いたらこのベアリングは中古ベアリングの棚に入れといてー」

「ベアリング交換って効果あります?」

「今オーバーホール兼ちょっとした改造を頼まれてる古いリールには効果がある、新しいリールには意味がない、特にマーメイディアとかその辺りは交換すると性能下がるよ?

今整備してるのは30年くらい前のリールだし、ベアリングもオピニオンギアも何もかも性能も値段も桁違いだし、古いのをそのまま使うよりはこうやってちょこっと部品を良い物に交換するのも有りってやつ」

「そのまま使った場合の性能はどんな物なんですこれ?」

「悪くないよー?さすがに経年劣化と摩耗してるのもあって新品程とはいかないけど、当時のハイエンドなだけはあってブレーキもしっかりしてるし、投げる物によるけど40から50メーターは飛ばせる、ドラグも7キロあってキャパは20lb100メーター。

新品だったら70メーターは飛ばせたかなーって感じ、今回交換したベアリングにギアにで80から90くらいは飛ぶ様になるはずだから、作りは今と比べて荒いけどベアリングなんかの性能がかなり向上してるってのはよくわかるんじゃない?」

「古くても手入れをすれば長く使えるんですねぇ」

「油を差しすぎるとこういう風に黒くなった乳化物質が出来るから善し悪しだけどね、よし、オイルを拭き取った部品全部こっちに回してー、後は組み立ててしまえばもうお終い」

「ベアリングが8つのオピニオンギアのモジュールギアの…欠けてる部品は無し、どうぞ」

「それじゃあ組み立てている間に解乳化溶液に漬けてるスピニングリールのハンドルをグリグリ回してねー、速さにもよるけど大体200回くらい回したら綺麗に落ちるから、表でゴム手袋をつけてそれくらい回して来てねー、それが終わったら午前中のお仕事は終わりで休憩、ちーちゃんは夕方まで帰って来ないだろうからお昼は適当に冷蔵庫を漁って食べてねー」

「はーい、わかりましたー」

氷の自動販売機

氷を大体10キロ100円で売っている自販機、食用ではなく冷却専用、プレートではなくクラッシュなので万遍なく冷却させるのに向いている

あるところにはある、けどないところには全くない、困った時は漁協か近くのスーパーで売ってもらおう

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