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学校都合により ウナギがあれば頑張れる

「あー、それはそっちの棚に並べて、そっちの箱は予約注文分だから開封したら注文書をよーく確かめてケースに張り付けておいて、そこのダンボールに入ってる冷凍の生オキアミは封を開けて籠に入れたら表に出して自然解凍、ボイルも籠に出して同じ様に解凍、見間違える事は無いと思うけど一応生とボイルって分かる様に籠にメモを張り付けておいてね」

「はーい、生とボイル10キロずつくらいありますけど、予約でも入ってるんですか?」

「いや別に?ただ加工して小分けにして売るだけよ、そっちの棚にオキアミの漬けダレみたいなのが有るでしょ?餌持ちをよくしたり集魚力とか食わせをよくしたりするやつ、中にはちょっと発光するってやつもあるけど、それをうちでも作ったから加工済み生オキアミにして売ってやろうかと。

ボイルの方もそれ用に作ってあるから同じ様に漬け込んで基本的には量り売り、の予定、小分けにしても良いと言えば良いんだけど、どうせ皆わーっと大量に買っていくから小分けにするパックと時間が勿体無い」

「あー…そう言えば去年も最初から小分けにしてある物より、解凍済みのオキアミブロックの方が注文が沢山有りましたねぇ…」

「最初から小分けにしてあるのってちょっと加工してあるから、刺し餌としては優秀といえば優秀なんだけど、1つじゃ1日持たない、量が少なすぎるし数を確保すると高すぎる、1パックで100グラム入ってるかどうかで500円とかするからね。

それに対してただの冷凍ブロックなら生でも1キロで300円しかしない、3キロ5キロブロックとなってくると更にお得、3キロ700円5キロで1200円、小分けを買うのが馬鹿らしくなるよね!解凍するっていう手間は出てくるけど」

「100グラム500円を買うなら1キロ300円の方が遥かにお得ですよねぇ…」

「余ったら再冷凍すれば良いだけだからね、カットでブロックに加工してあるやつだとさらに安い、これはカットせずに形をそのままってやつだからちょっと高いけど、それでもうちの売値で1キロ280円とかだからね。

あ、解凍する時は虫除けの網を忘れずにね、多少ハエが集ったところで何て事は無いけど、直射だと煮えちゃうから陽が動いた時の日陰作りも兼ねてね」

「はーい」

「うわ、この箱の中身全部アルマディンフェンリルだ…この箱だけで一体いくらするんだか…」

「絞ってるから意外としないよ、一番売れる組み合わせのパーツを追加で仕入れてるだけだから1000万もはしないんじゃないかな?」

「うーん…バイト10ヶ月分と考えると…」

「1ヶ月のバイトで100万ぽんっと出すのはここくらいだけどね、その分休みもないし船で何時間も海に出たりとキッツイけど。

一応混ざらない様ちゃんと分けてショーケースの中に収めてね、ティップからバットに至るまでロッドパワーとかちゃんと刻印されてるからわかるっちゃわかるけど」

「ガイドとか細かいパーツのばら売りってのはわかるけど、ロッドのばら売りは相当珍しいというか、クリムゾンウルフとアルマディンフェンリル以外はないというか…何をどうしたらこうなるんですかね?」

「そこは技術力による物だね、ブランクスの太さというか細さをそのままにロッドパワーとテーパーを変えれる技術があるからこそってやつ、それによりロッドパワーを途中で変えて自分好みにカスタマイズ、ULだとちょっとパワーが足りない、でもLだと微妙に強いって時にティップとベリーだけULでバットはLとかティップだけULとか、それに長さもティップを何センチで長くとるか短くとるか、ってのが出来るのよね。

やろうと思えばティップが100でベリーとバットは30センチ、とかも出来るよ?そこまで極端な組み合わせで使う人はこの店の利用者にはいないけど」

「ロッドパワーが途中で変わる利点って何かあるんですかね?」

「あるよー?とはいっても扱い方次第になるけど、ティップが固いとノーシンカーとか軽い物を扱う時にアクションとかつけづらいじゃない?そういう場合は大体ULとかLを使うし、でもそれで70とか超えるライギョとか来たらロッドパワーが足りないじゃない?根元近くまで曲がるし、それ以上引っ張ろうにも引っ張れないしで」

「あー…ありますね、トラウトRのULでやってる時にライギョが来たら小さいのはどうにかなりますけど、大きい奴だとどうにもならないというか」

「そういう時のためにティップは細かい操作用でUL、大きいのが来ても大丈夫な様にベリーをML、バットをMって感じで組み合わせるのよ。

普通に同じパワーで組んだ場合はマーメイディアとワイバーンと大差なし、組合せと扱い方次第ではそれ以上、っていうちょっと玄人向けかな?」

「便利そうではありますけど、なかなか扱いが難しそうですねー」

「慣れると便利だけどね、10センチ前後のハヤを釣るための竿から4メータークラスのマグロを釣るための竿まで自由に作れるし、パーツさえ揃ってればなんでも行ける、揃ってなくてもかなり汎用性の高い竿、バーサタイルの極みっていうようなのも作れるよー?」

「んー…ロッドはしばらくはRシリーズのままでいいかなー?ライトタックルでやってる時に70を超えるライギョが来たら困るには困るけど、パワーが足りないだけで折れる心配はないし、何より置き場がない!」

「さーちゃんの場合玄関まで浸食していってるもんね、オキアミ外に出してきました」

「はーいご苦労さん、次はそっちの箱の中身をスカスカの棚に収めつつこのメモを見ながらいくつか抜いておいてね」

「通販の注文分ですね」

「そそ、物と数を間違えない様に抜き取っておいてね、それが終わったら注文書を見ながら箱詰めして発送準備、さーちゃんは手が空いたらレジね」

「はーい」


「しかし、今年は夏休みに入るのがちょっと早かったね」

「学校の設備が一部老朽化云々で工事をするためにー、だそうです」

「おかげで課題がその分増えて面倒なのなんの、単純に予定を繰り上げて夏休み入りしたから本来は授業でやるはずだった範囲が課題になってるだけ、ともいうけど」

「一部なら学校全体を休みにせずとも工事は出来そうな気がするけど、繰り上げて休みにって事は何か致命的な部分が破損したんかねぇ?」

「上下水道関係だとは思うんですけどね、7月頭の時点でプールが使用不可かつトイレも一部使えなくなっていましたし」

「おかげでプールを掃除した意味がなくて困る、洗うだけ洗って水を抜いたまま放置、水泳の授業は今年はないかもしれないね」

「プールに一部トイレにって事はぶっとい水道管のどこかが割れて漏れてるんだろうねぇ、放置しておくと液状化する場所が出てくるし、校内のどこの管が割れてるかとかも調べないとだろうし、まあ時間はかかるだろうね。

地面に通してるとしてもコンクリの下に通してるのが割れてる、ってなるとコンクリを引っぺがさないとダメだし、場所次第では9月とか10月まで工事がもつれ込むだろうね」

「うへぇ…その場合だと追加の課題云々以前に出席日数がヤバそう…」

「さすがにその場合は特別扱い…してくれるんですかねぇ?」

「その場合は学校都合になるし大丈夫じゃない?課題なんかがどっさり出るか、一時的にリモートになるかのどちらかだと思うけど」

「うちの学校にそんな予算と機材あるかなぁ…」

「課題が出るくらいじゃないかな?それとちゃんとやっていれば結果を残せる中間テスト、そのあたりに落ち着きそうな気がする…かな?」

「夏休みが延長だーって浮かれて酷い事になるのが何人も出るだろうね、そうなりたくなければこの客も居ないやる事も無い空き時間に課題を進めるのだ」

「うへぇーい…」

「そういえば花井さんは釣り具を持って出かけていましたけど、ガイドか何かですか?」

「いや、私の実家近くの川で遊んでる子供達に釣り具の貸し出しとその指導…だけど仕事として言ってるからガイドっちゃガイドか、ちーちゃんとさーちゃん達みたいに一足早い夏休みに入った小学生が親と一緒に実家の方に遊びに来てたりするからね、今はそこで釣り方を指導しながらウナギを釣ってるはずよ、ちょっと前の突発的なお祭りで800匹ほど放流した生き残りがまだいるはずだからね」

「ウナギ…そう言えばまだ釣った事が無いなぁ…取りあえずミミズをつけて投げておけばいいっていうのは知ってるんだけど」

「それとは違う釣り方だね、直接竿先をウナギの居そうな穴に突っ込んでしっかり食わせて、食ったら出されない様に中で巻かれる前に一気に引っこ抜くっていう釣り方、竹に直接針を付けた物とか、水糸に針を結んで竹の先に針先をかけておいて食わせて手で引っ張る、っていう釣り方もあるのよ?

今回貸出しで持って行ってるのは穴釣りショートに10号を巻いた穴釣り用のチョイ小さめの両軸、投げるためじゃなく糸をだすだけだからロックを外すとハンドルが逆回転するやつね、ドラグもないけどそれで十分だしね」

「やってみたいなぁ…」

「釣りに行ってもいいけど今日の課題を終わらせてからね、頑張ればお昼前には終わるだろうし、そしたらお昼休憩って看板を出して、解凍中オキアミもちょっと内側のほうに移動させてから実家近くの川に行ってウナギ釣りだぁね」

「釣れなかった場合のお昼は…?」

「ザリガニを釣って味噌汁だね」

「差が…食材の値段の差がすごい!」

「お祭り中に捕獲されたのは200くらい、昨日はその生き残りを狙ってウナギ用の仕掛けを出してた人もいるけどまだ400は残ってるだろうし、釣れないって事は無いと思うよ?近所の人達以外立ち入り禁止というより私有地だし、少なくとも近所の人達以外は川に立ち入ってないはずだからね」

「じゃあウナギのために課題を頑張るかー」

「お昼までに終わるかどうかが問題ですけどね」

「頑張れ若人よ、その勉強はいつかきっとためになったりならなかったりするであろう」

「店長は何かためになった事はあるんですか?」

「地理は割と、世界中飛び回って釣りをしてたわけだし、土地とか気候を把握できるってのは便利よー?初めて行くところでも知っていれば対策も立てやすいしね、それと科学と生物も役に立つぞー?後はそれなりに出来れば大丈夫、英語なんかの言語学は8月までにジュリアが何回か来るだろうし、その時に教えて貰えば良いよ、リオちゃんが来れば英語だけじゃなく独語に仏語なんかも学べるけど…その辺りは高校で習う物じゃないね」

「なるほど、地理と生物は釣りの役に立つのは確かですね」

「英語はねー…ここで学んでいるのと学校で学んでいるのは違いすぎてかなりこんがらかる…」

「それで去年英語のテストで文法が滅茶苦茶、何をどう訳したらこんな文になるんだって減点されてたよね」

「アレはむしろお前は対等な相手との日常会話で何々様とか敬称を付けたり、どこそこからやって参りましたとか謙遜していうのかよって突っ込みたくなったわ…」

「学校で習う英語ってそういうところがあるよね、日常会話でぜってぇ使わねぇよ、っていう単語とかが混じってくるの、今度ジュリアが来た時に課題と一緒に英語の教科書を見せてみ、間違いなく読み難い分かり難いっていうから」

「なんでそんな通じない英語を学ばねばならないのか…」

「義務ではなくとも進級するために必要だからだよ、そこ計算間違えてるよ、途中の式が11じゃなくて12になってる」

「ありゃ…ここがこうなって12になってーじゃないの?」

「そうじゃなくてここがこうなって11になる、だから答えは48じゃなくて44」

「んー…あ、ほんとだ」

「2年にもなると数学も面倒な物になってきますねぇ…」

「ま、誰が将来どこへ行って何をする様になるかはその時の当人しかわからないけど、どこに行ってもそれなりに出来る様に教えるってのが学校だからね、ひょっとしたらそこそこの大学に行って研究者になるかもしれないしただの主婦に収まるかもしれない、ただ選択肢が多いのに越した事はないのと、少しでも可能性を広げるためにってやつよ」

「確かに、1つしか選べないよりは2つも3つも選べる方がいい気はする、1つだと何も考えなくていいから楽な気もするけど」

「そこはまあ人それぞれだね、なりたい職種が決まっているならそれに関係する物を重視して後はそれなり、決まってないなら全体的に学んでおけば選択肢が増える、それだけの事よ。

で、そこも間違い、3じゃなくて5、後ろの数字は17じゃなくて14」

「なんで数学ってこうxとかyで数字をひた隠しにするんだよぉ…さらにその隠してる数字の出し方も隠してる数字から出せとかわかるかよぉ…これ考えたやつ絶対性格悪いだろ…」

「数学はそんな物だよ、何々の定理とか最終定理とか数学者がどうやったら解けるのかとか日々頭を捻ってるけど、あれって絶対に解ける事が無いんだよね」

「難しすぎるから?それともどう公式を当て嵌めたらいいかすらわからないから?」

「いや、解いたら解いたで解けない周りの数学者が難癖つけて間違えている事にするから、皆独自の公式だのなんだのを持ち出してくるから答えが絶対に一致しないし正解する事もない、つまりそういう意地悪な人達が作ってるから学問としては相当意地が悪いし捻くれてる。

ちなみに最終定理はお兄さんとかルシフさんに言わせると証明不可、解無し、らしいよ?そもそも当て嵌めれる様な公式が存在せず、適当にこれが最終定理だよーって構成の数学者を悩ませてあざ笑うためだけに作られた物、とのこと」

「ほへー…」

「相当捻くれてますねぇ…」

「相当ストレスを抱えていたんだろうねぇ、何せ兎に角相手の解を否定して間違っている事にする分野だから、だったらもう最初から絶対に解けない、解けたとしても確実に間違っている物を作ってやれって感じになってたんだと思うよー?

で、なんでそんな物に数学者が必死になってかつ他の数学者の答えを否定しまくっていたかというと、単純に高額の賞金が掛かっていたから、最初は500万ドルで挑む人がかなりいたんだけど…皆賞金欲しさに否定しまくってもうどうにもならんわって下げまくって、最終的に1万ドルまで落ちてじゃあもうそれでいいよ、みたいな感じで証明された物が認められたっていう結構笑えるエピソードもある」

「結局はお金かー、それで、その証明は結局どうなったんです?」

「これがこうでこれがこうのって説明して、最終的にこうですって解を出して証明完了としてあるんだけど、まあそれらしい事を説明していてかつこれがこうならこれまでのこれらは全て間違えているぞ、っていうパワープレイでねじ伏せただけだから、実際のところは間違えているってのが正しい。

お兄さんはアレでもやばい頭の作りをしてるし、ルシフさんもお兄さんとそう変わらない頭の作りをしてるから、2人の言う証明不可の解無し、そもそも嫌がらせのためだけに適当に作った物である、ってのが正解だと思うよ?証明した人とかそれを認めちゃった数学者達は全力で否定してくるだろうけど、そうしないと権威が吹っ飛ぶし」

「なんだかなぁ…」

「ま、そんな物より今は課題の数学、意地の悪い学問ではあるけど学生のうちは卒業出来る程度にやっておかないとね」

「うぁーぃ…」

「終わったら目が飛び出るくらい高いウナギが待ってるからねー」

「頑張る!」

「現金なやっちゃ」

「川にいるウナギそんなに高いんですか?」

「お兄さんに極上のやつでーって頼んだら本当に極上品を持ってきたからねぇ、一般販売はされてないから通販で買うのは不可、食べるなら取り扱ってるお店でってなるけど、大体どのお店でも最低2万から、1匹丸々だと4万ほど取られるのは確かだね」

「たっかっ!」

「それ遊びに来ている家族の人達は知っているんですかね?」

「パンフレットはお兄さんが持ってきてたけど、多分そういう名前のウナギなのかーくらいにしか理解してないと思う、実際はとんでもなく高い専門店に行かないと食べれない代物なんだけどね、それをお昼前には釣りに行って、取ったばかりの物を蒲焼にして食べようではないかってやつよ。

ちなみにウナギは最低でも1メーターで極太、1匹でそこいらのスーパーやらウナギ専門店で扱ってる天然物と謳っているやつの4匹分くらいは取れる」

「そう考えると意外と高くない…?高級とされるウナギ屋さんでも特上のうな重が5000から1万ですよね?」

「高級だと大体時価になるけどそんな物だね、だから高い様に思えて実はそれ程ではない、けどそれは完全養殖かつ安定してるからともいえるね、天然でアレが取れたら倍じゃ聞かないくらいの料金が取られるよ」

「終わったー!」

「どれどれ…うん、あってるね、ちーちゃんはどう?」

「私の方はとっくに」

「はいはい、それじゃあ店先にお昼休憩中の看板を出して、解凍中のオキアミを日陰に移動させたら道具を用意して行くぞー」

「わーい」

「お昼自体は現地で作るんですかね?」

「現地…といえば現地かな?ウナギを焼くコンロやらなんやらは実家で借りる予定、ご飯も分けてもらう予定だから、うちの実家に献上するウナギも釣れよー?」

「頑張りまーす」

学校都合により…

割と深刻な水道管破裂によりプールと一部トイレが使用不可、ごまかしごまかして続けてはいたけどどうにもならんと予定より1週間ほど早く夏休み入り

順調にいけば夏休み中には、他にも危ないところが見つかれば夏休みは延長、そして課題もどっさりと…

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