忙しくて揃わない 基本的には碌でもない出会い
岩にくっついてる牡蠣をはがしましてー、大体500キロくらいとったら次は素潜りでアワビを同じくらい、さらにウニに伊勢海老とどんどん捕っていきまして、ホタテにカニにと手を伸ばしてそれらを捕り終わったところで一旦戻って洗浄作業。
貝類は表面を削って洗浄したらフロート付きの籠に入れて生簀の中へ、ウニはとげをカットしてから同じ様に、伊勢海老とカニはどちらも大きいので生かしたままではなく、さくっと絞めて解体したら冷蔵棚に仕舞って、エビの頭とカニの胴体から身と味噌を取れるだけ取ったら殻を全部オーブンで焼きまして…
焼き終わった殻を適度に砕いたら香味野菜等と一緒に煮込んでラーメンやパスタの出汁に、取り除いた味噌はバターと解した身の一部を混ぜて軽く火を入れてから冷やし固めてエビカニミソバターにして、出汁を取り終わった殻を焼いてさらに砕いて粉末にしまして、麺やパスタの生地に練りこんで余す事無く使い切ったら…
「何やら美味しそうな匂いがするぞー?」
「美味しそうなもなにも匂い自体はエビとカニくらいしか…十分いい匂いか」
「エビとかカニの殻を焼いた匂いっていいよね、ビスク?」
「いや、エビカニラーメンとエビカニパスタ、出汁を取り終わった殻ももう一度焼いて乾かしてから粉末にして麺の生地に練りこんである」
「濃厚なんて物じゃないのが食べれそうだね」
「具材はなくスープと麺のみになるけどね、何かを足したい場合は生簀から好きな物を取って焼いて入れてねって感じかな?それにエビとカニの解し身入りミソバターもあるから、麺とスープのみでも十分といえば十分でしょ」
「んー…このミソバターだけでもご飯を何杯もいけそう」
「で、朝食はどうするの?こっち?それとも屋敷に戻って?」
「こっちでかな?今日はお休みモード、というわけでラーメン大盛り、それと焼くための炭をくれー」
「はいはい、ラーメンはすぐ出来るから先に炭を用意しようか」
「今日も生簀の中は貝類が大量かな…どれを食べようかねぇ…」
「刺身でも食べれるから、その時はこっちに持ってきてくれれば」
「じゃあホタテとアワビをさっそく刺身にして貰おうかな」
「はいはーい」
「んぐ…それにしてもアレだね、今年は休みに入るのがちょっと早かったんだね」
「そうだね、焼肉屋はまだ営業してるけどカレー小屋は一足先にお休み、売れてないってわけでもないけど、ペーストの方が需要がちょっと高くなってるから、そっちの数を増やしてって感じ。
ペーストだと肉を漬け込んだり魚に塗って焼くとかも出来るし、それなりに保存出来るしでね、特に肉とか魚に塗って焼くのが流行ってるみたい、味付けはもう終わってるし、スパイスたっぷり玉ねぎたっぷりで塗って焼くだけで美味しい物が出来るし」
「かけて焼くだけ塗って焼くだけはお手軽料理の代表みたいな物だよね、お家でお店の味をそれなりに再現って出来るし」
「そう、それでペースの需要が高まって普通のカレーがそれほど、ってなったから、ペーストを大量生産して一足お先に長期休暇入り、焼肉屋組はもうちょっと先、牧場と農場はお世話があるから一斉にとはいかないけど、交代でって感じだねぇ」
「それに加えてエステルちゃんにフィリスちゃんにとここに遊びに来ると」
「例年通りといえば例年通りだね、私は8月頭から南の島へ1ヶ月の釣り旅行だけど」
「それも例年通りといえば例年通りになったね、葵ちゃんと恵里香ちゃんのところに行ってから、だけど」
「夏に新製品の宣伝動画とか、来年か再来年には製品になるであろう物のテストとか色々やってるからねぇ、色んな所と契約するまではそんな事はなかったけど」
「契約初期の頃は国外へ行ってたよねぇ、皆暇だったってのもあるけど、それが今ではご主人様を除く皆が社長でお偉いさん、葵ちゃんと恵梨香ちゃんとかは変わらないけど」
「A5…って言って5人揃ってた頃が懐かしいねぇ、今でも揃わない事は無いけど揃って釣りに行けるほどの余裕は無いと言うか、8月には纏まった休みを取るけど、行き先は同じとは限らないからねぇ、早期リタイアをすればまた皆揃って何処かへ釣りに行くってのも有るだろうけどね」
「会社は売り払うにしてもちゃんとした後任や買取手が見つからないとどうしてもねー、特にアイナちゃんの場合だと2つの会社掛け持ちだし、辞めるに辞めれないよね、家電製品やリールの電子部品を作ってる会社と、最近出来たばかりの竿とリールを作ってる会社と2つ持ってるし、とくに後者はねぇ、出来たばかりで辞めるに辞めれないよね。
ラーメンお代わり、次は塩の極細麺で、それとホタテと牡蠣を天ぷらでー」
「はいはい」
「それにしてもアレだねー」
「んー?」
「生簀の中に入れてた物がもうほぼ無くなってるって言うね」
「リミッターを外した狼三姉妹の食欲はねー、ティア達以上だからねー…あの小さい体のどこにあの量が消えていくのか…単純に吸収が物凄く速いだけなんだけども」
「よく食べてよく遊んでよく寝る子は育つ、フィジカルだけで見れば同期を遥かに超えてるよね、来たばかりの頃はフレールがちょっと抜きん出てて、ベリスとシュリエルはまあ弱くはないけど、普通の人だと絶対勝てないって程度で、ミアとミウは庭師兼薬師なので方向性は別で、コウはティアと同じ年代に生まれた龍人なだけはあってちょっと鍛えただけでメキメキと。
まあ、三姉妹が一番成長が早いよね、今なら本気のティアとかニールをぶん殴ったら鱗の2枚か3枚は割れるんじゃない?何十年か前にティアとニールが暴走した時はへこませるくらいだったけど」
「あー…そういう事もあったねぇ…ティアとニールが何となくで作ってみた苦渋と辛酸を合わせた物よりさらに渋いお茶を飲んでのた打ち回って混乱、元の姿に戻って屋敷崩壊っていう…」
「目覚まし用とはいえそんな渋いお茶を作るのもどうなんだろうね?」
「いやー、あれやこれやと混ぜたら出来ちゃって、かつ砂糖を舐めたらすぐ治るから目覚ましにいいかなーって思ってたら…うん…飲んだら舌がひん曲がってまともに喋れなくなって、収納にも砂糖が入ってなくて、あーだーこーだとボディランゲージで伝えたらティアとニールが指をさした先にあったお茶を舐めて、それから屋敷が崩壊して砂糖が調達できなく…」
「ご主人様はちょこちょこ変な物を作るよね、主に寝不足でハイになってる時とか」
「大体記憶にないんだよねぇ…お茶は普通に調合してた時に出来た物だから覚えてるけど、実物大お菓子の家とか未だに作った記憶がないもん」
「基礎工事から始めるお菓子の家とかご主人様以外誰も作らないよ、庭付きでは無いけど戸建てだし、基礎に使ってるモルタルも滅茶苦茶比重を上げて固くしたチョコだし、骨組みのクッキーも木材かそれ以上に固い奴だし、カーテンとかベッドとかの布物も龍の髭を編んで作ってるし、クオリティからして色々とおかしいんだよね、熱で溶かさない限り住もうと思えば住めちゃうし。
まあ、食べられる事も無く不審物としてフィリスちゃんの妹に燃やされちゃったけどね、戸建てが入っている箱かつひんやり、さらに漏れ出る甘い匂いと傍から見ても不審物だったけど」
「んーむ…確かに…戸建てが入ってる箱とか物凄く大きいし、さらにひんやりしてて匂いが漏れ出してたら警戒するね、燃やされたのは勿体無い気がするけど」
「燃やしたら燃やしたでチョコとか砂糖が甘い匂いを出して最終的には焦臭くなるっていう、迷惑以外の何物でもないね!ラーメンまだー?」
「今から打ち終わった麺を茹でるところよ、だから天ぷらを摘まんで待ちなさいな、極細だからすぐ湯で終わるし」
「極細はすぐ茹で終わるのが良いところよね、生地があまいと伸ばしてる時に千切れるわコシはないわちょっと茹でる時にぼろっぼろになるわふにゃふにゃになるわで難しいけど」
「さすがにそういう初歩的な失敗はしないかなぁ?それに湯きりはせず冷水に突っ込んでできゅっと締めて熱盛りにすれば細くてもつるつるでプツッと歯切れがよく腰のある麺を楽しみやすいね」
「極細はじゃかじゃか湯切りをすると簡単に潰れて切れちゃうしね、んー、天ぷら美味ぇ…油が染み渡るー…」
「長い間料理をしてきて地味にいい発明だったなー…って思うのがこの揚げ油とフライヤーよね、酸化や劣化を防ぎつつ揚げた物を凄く美味しい物に出来るっていう、はい、極細麺おまち」
「普通の極細よりさらに細い極細、なのにしっかりコシはあってプツッと歯切れも良く…まあ、冷水で冷やせば最初から蒸したり茹でたりしてる麺以外はこうなるけど」
「まあね、インスタントラーメンですら冷水で締めたらそれなりの食感にはなるし」
「安いインスタントラーメンも使い様、んむ、エビカニミソバターを足すとさらに美味い、そして天ぷらを浸すともっと美味い」
「カニ天とエビ天も足す?」
「足すー」
「ふぃー、食べた食べた、これだけ食べれば余は満足じゃ」
「ラーメン4杯にホタテとアワビの刺身が1キロずつ、さらに焼きと天ぷらにと食べれば満足よね」
「お休みモードとはいえ体が資本、食べれる時に食べないとね、というわけで次はデザートに柚子シャーベットをよろしく」
「小?並?」
「並、さすがに大はいらない、でも白玉は2つほしい」
「はいはい、お姫様の仰せの通りに」
「私はお姫様っていう柄ではないなぁ、狐もそうだけど、うちでお姫様ーっていうと元お姫様のユースティア、扱いでいえばフローレンスとかテレサがそれに近いけどどちらかといえば崇拝だから違って、その扱いで行くとミネルヴァとディアナ、ウルカンとユノーも同じで、ヴェスティアはあの時代は狂犬みたいな物だったから私とか狐寄り、ケレスとクロノアはひっそりとしてたから崇拝は特に。
アリシアとアリサも元だからユースティアと同じで最も近いと言えて…んー…3人くらいしかいないね?屋敷外を含めたら3桁くらいは軽く現役のお姫様が出てくるかもしれないけど」
「3桁で済むかなぁ…シエルも王女様もリサもアレだけど一応現役の姫の様な立場ではあるし、フィリスは…元か、それで継承権は放棄してるから娘達は公爵家の娘というだけ…なのでフィリス一家は除くとして…
んー…各地に散らばってる分身の記憶や情報を辿っていくと…現役が291人、立場を捨てて押しかけてきた元が677人だから…うん、元を含めてもぎりぎり4桁行ってないって感じだね」
「なるほどねー、押しかけてきたり拾ったりしたのを含めても9桁少々のメイド、または恵里香ちゃんみたいな遊び相手がいるわけだけど、意外と王族はいないね」
「はい、柚子シャーベット白玉付き、そうねぇ、立場を維持したままってのは色々厳しいし、大体は継承権を放棄なり籍を抜くなりしないとだからねぇ、そもそもそう簡単に出会える様な立場でもなし、出会ったとしても大体碌でもない出会い方が多いよ?
直近のエステルの場合は初対面で奴隷商に売り飛ばされたでしょー?財政難で食費だなんだと捻出するのに必死だったわけだけど、リサの場合はツケが溜まりすぎて借金して奴隷というまあこれも碌でもないっちゃ碌でもないね、自業自得だけど、シエルにしても店とお金を奪いに来た様な感じで良い出会いではなかったかなぁ?
ユースティアの場合はそれなりにまとも…かな?逆にこっちが押しかけてお仕事の見学、とかそんな感じで行っただけだけど。
それ以外だと…んー…散歩中に召喚に巻き込まれて、私の場合はそもそもあの手の遊びによくあるレベルや数字とかの概念は付かないし、それでゴミ扱いされて大体ポイ捨てされるから後は適当に散歩して満足したら帰るだけだし、たまに処刑しようとしてくるのもいるけど、その時もさっさと逃げるだけだし、うん、9割以上は碌でもない出会いと別れだね。
まともと言える出会いだとなんだろ、呼んでしまった物は仕方ない、取りあえず出来る事を仕事として紹介とかそんな感じ?その場合は最も身近で率先してやる人がいないトイレ掃除とか、汚物塗れの牢の掃除とか、感性がもうちょっとましな場合はお城、または個人宅の廊下の掃除に始まり部屋の掃除、野菜の皮むきに料理に庭の手入れに、かな?直接関わり続ける事はほぼ無いから、飽きたら適当にやめて帰るんだけども」
「ゲーム感覚で作られた世界だと大体そういう物だよね、ステータス至上主義というか、職業至上主義というか、身内だけでやって被害者は居ないってのならまあ好きにやってくれてかまわんけど、人様の星から誘拐するのはいただけないねぇ」
「友好的になる時は召喚された人が遊び感覚で周りの兵士とかに喧嘩を売った時かな?その場合はこっちにも確実に飛び火してくるから無力化して取り押さえて、恩人扱いされて友好的にー、かな?
9割以上、大体92%くらいは事が終わるまで鳴りを潜めてるのが多いんだけど、残りの8%は最初から自分が神になったつもりというか、宇宙で一番偉いと思っているというか、倫理も常識もないただの頭おおかしい人が混じってくるのよね、その8%を引いた時に友好的になる事が多い…かなぁ?」
「どちらにせよ碌な物じゃないね、吊り橋効果でそうなってるだけだろうし、そもそもの原因は自分達だろうって」
「その中から何だかんだで友達付き合いだったり押しかけだったりで残ったのが1000人近くって感じかな?某所ではゲームやアニメ、漫画等のキャラを現実に生み出してて、その中には当然の如くお姫様なんかのキャラもいるけど、それはそう言う立場のキャラであってお姫様ではないのでノーカウント、入れても150人くらいしか増えないけど」
「あのマッドな娘はまだ自分が気に入ったキャラの製造を続けてるん?」
「続けてるね、プレイヤー側のキャラクター敵側のキャラクター関係なく気に入ったキャラは…だから、造り出した直後に一触即発とかちょこちょこあるね、設定と性格をそのままインプットしてるし、喧嘩をするなって方が無理なんだけども」
「あまり増やすな、と釘を刺してはいるけど、イカレた奴が言う事を聞くわけも無しか」
「あっちの星のキャパは大体350億人くらいまでいけるし、そこに住んでるのはまだ100万にも満たないくらいだからまだまだいけるといえば行けるね、それに気に入ったキャラのみ、だから早々増えない」
「星の数ほどゲームや漫画はあれど、あれが気に入るってなると大分絞られるといえば絞られるか、レモンシャーベット頂戴、果汁多めで酸っぱい目のやつ」
「ゲームその物を気に入ったら女性キャラに限り全員製造もあるけどね、はい、果汁多めの酸っぱいシャーベット」
「両刀ではあるけど、どちらかといえばガチな同性愛者寄り、というのも厄介だねぇ」
「理想の人が居ないなら造ってしまえばいいじゃない、っていう考えの持ち主だし、さらにそれを実現するだけの技術も知識もある、足りなかったのは実現するまでの寿命だけ、寿命の問題が解決して途中からなんかズレて今に至るだけど」
「ま、こっちの害が来なければいいや」
「分身は気が付いたら増えている新しい住人という名のキャラクターで毎日がてんてこ舞いだけどね。
さて、生簀の中が空になったし、追加をとってこないとなぁ」
「今日の私は手伝わない!だからがんばー」
「明日からは手伝ってね?」
「明日からねー」
エビカニミソバター
エビとカニのミソに解し身を入れて軽く火を入れ、バターを追加して混ぜて冷やし固めた物
そのまま舐めて酒の摘みにするもよし、海鮮丼の具材として使ってもよし、チャーハンにしてもラーメンのトッピングにしてもよしな物、でも苦手な人は苦手




