駄菓子みたいな物 火力とお湯の量が大事
「んー…」
「どしたの?スパイスの量を間違えた?」
「いえ、こっちで暮らし始めてからもうかなり経ちますけど、駄菓子とかそれに準ずる物がないなーと、使用人さんにちょこちょこお菓子を買ってきて貰ったり作って貰ったりはしていますが」
「無くはない、屋台で売ってる串焼きとか飲み物、穀物を粉にして練って焼いた物がそれに該当するね、お店で売ってるお菓子もあるけど、それはクッキーに似た物だったりケーキに似た物だったりでちょっとお高めだね」
「串焼きが駄菓子みたいな物ですか」
「駄賃で買えるお菓子、またはおやつだから駄菓子、こっちだと串焼きに飲み物なんかの屋台料理は安い物だと串1本中銅貨2枚とか3枚とか、遊び盛りの子供達はそれをおやつとして食べている感じよ、安いだけあって量も値段相応、だけど味は濃いからちょっとずつ長く楽しむ感じ」
「タマキさんとタチバナさんはお嬢だからねー、駄菓子に手羽先とか漬物とか揚げ物とかがある事を知らないのよ、あの辺りは普通にご飯のおかずとしても食べれるし、買ってきて貰った串焼きを駄菓子と認識してないのよ」
「おやつと認識してはいますが…お菓子と言われるとどうにも納得が…」
「駄菓子は結構奥が深いのよ?10円のスナックとか10円チョコとか、10円ガムなんかが誰もが想像する代表的かつ一般的な駄菓子なんだけど、駄菓子の定義としては安価なお菓子、駄馬のように値打ちの無い物で作った物の2種があるけど…まあ今は前者の安価な方だね。
で、お菓子自体の定義は食事以外に食べる嗜好品、つまり甘い物である必要は無い事、なので食事ではなくおやつとして食べる安価な物は全て駄菓子とも言える、だから手羽先とか漬物、揚げ物が30円とか50円で、どうしてもお酒のつまみじゃないの?って言うゲソのスルメにドライソーセージ、燻製チーズなんか駄菓子屋で駄菓子として売られているのよ?」
「なるほど…」
「でー、ここからはちょっと曖昧なんだけど、駄賃で買える物というのが大前提にあるから、基本的には100円以下が駄菓子、それより上は普通のお菓子って感じに分かれてるんだけど、とりめんとかぶたそばみたいに120円の物も駄菓子として売られていたりもするのよね。
さらに最近ではカップ麺も値下がりして100円を切ってきたりもするし、駄菓子屋が普通にカップ麺なんかを仕入れて駄菓子として78円で売ってたり、飲み物なんかもメーカーによっては350ミリ缶が38円だったり、500ミリボトルが62円だったりで結構曖昧なところがあるのよね。
駄菓子の清涼飲料といえばポリエチレン入りのよく分からないジュースや瓶入りのラムネ、ってイメージがあるけど、飲み物に関してもそういう感じでよく分からないメーカーの缶ジュースやボトルジュースを売ってたりするのよね、時代に合わせた結果とも言えるんだろうけども」
「そうなるともう駄菓子屋というよりはちょっとした商店ですね」
「駄菓子屋自体が元々そういう物よ、玩具も売ってたりするし、プラモデルも売ってたりするし、ちょっとしたゲームの筐体も置いてあったりするし、普通にアイスも売ってるし、時代に合わせていくとそうなったってやつだね、要冷蔵の物なんかは置けないけど、ジュースに関しては常温保存で大丈夫だし、カップ麺タイプの駄菓子でお湯を使うからポットもあってその場でカップ麺を食べれるし、お好み焼きとかもんじゃ、かき氷を作って売る駄菓子屋さんもあるのよ?
そのお好み焼きとかもんじゃはお店によるけど50円から100円、具材はスナックタイプの駄菓子屋カップ麺タイプの駄菓子を砕いて入れる」
「そこまでいくと…もう…なんでしょうね…?お菓子も売ってるお好み焼き屋さんというか…なんというか…」
「外で遊び回っている子供はよく食べるからね、そして空腹を手っ取り早く満たすには粉物が最適で鉄板に広げて焼くだけだから早い。
インドアな子供が増えてきたから出してないところも増えてきてるらしいけど、まあこっちの屋台はそういう駄菓子屋さんに近いのよ、中銅貨3枚の味が濃い串焼きを買って、足りない場合は隣で穀物を挽いて粉にして練った焼き物、物でいえばトルティーヤとかクレープ系かな?それに巻いて食べたりとかね」
「なるほど…」
「内容だけで見れば食事のような物だけど、食事として食べているわけでもなし、値段も安い、だから駄菓子といえるわけだね。
まあ、駄菓子談義はここまでにしておいて、作り終わったカレーを冷蔵庫に入れたら洗い物をしてお昼ね」
「今日のお昼はなんですか?何かの生地を練っているのはわかるんですけど」
「それは後でのお楽しみ、洗い物が終わったら外に出てそこでね?」
「外で調理するような物…んー…今一わかりませんね」
「普通に調理場でも出来ると言えば出来るんだけど、火力と結構な量のお湯がある方が良いと言えば良いからね、ここだとちょっと火力が足りない」
「煮るのか茹でるのか、それとも高火力で一気に蒸し?」
「茹でだね、一気に茹でる都合上お湯の量が少ないと粘る、火力が低いと温度が下がる、というのもあって、外で大量にお湯を沸かして一気に茹でてしまう必要があるわけなのよ」
「なるほど」
「それと見ている側はちょっと楽しいかもね、そういう料理だし」
「楽しみにしておきます」
「おー…これは見ていて楽しい、確かにこれだと結構な量が必要になりますね」
「なるほど、刀削麺でしたか、量と飛んでいく速度が尋常ではないですけど」
「火力が低く温度が下がると中で麺がくっついちゃう、少ないと粘って吹き零れる、それを考えると調理場では無理よね、タレは坦々、胡麻坦々、肉味噌坦々のお好きな物をどうぞ、スープにしたい場合はそっちの鶏がらを注いでね」
「そういえば刀削麺手どうやって食べるのが正しいんでしょうね?」
「何が正しいって事は無いかな?平たく短い麺ってだけだし、普通にとんこつでも魚介系でも良いのよ、ただ細い麺が束になってるわけじゃないし、持ち上げた時にスープが大して絡まないからこういうスープではなくタレを絡ませるのが向いてるってやつだね」
「確かに、この平たく短い麺だとスープはそれほどついてきませんし、坦々などのピリっとした味付きの油の方が麺には絡みますよね」
「それと一本一本は短くとも量的にはそれなりにあるから、あっさりとしたスープよりは濃い味の方が丁度良いのよね、だから淡々でなくても煮詰めてドロドロになっている鶏がらや豚骨の白濁してるスープ、あれを薄めずに混ぜると濃い様に見えて実は丁度良い、味は塩か醤油を混ぜて整えて、コラーゲンで固まっているスープを茹でたばかりの刀削麺の上に載せて、チャーシューとかメンマを載せれば坦々とはまた違った刀削麺が味わえる」
「今回その濃いスープではなくさらっとした鶏がらスープなのは?」
「ひよこちゃんやぽっぽちゃんのガラが手元になくて市場で買ってきた鶏がらを使ったから、そこまで煮詰めるには量が足りなさすぎたのよね、ガラだけでも20羽分は欲しいし、手羽先も20キロくらいは必要だしねぇ…市場に残ってない以上はこれで妥協するしかないよねって」
「去年散々見ているので慣れましたが、ペットのガラをスープ用に取り置きってのも中々にアレですよね」
「そしてそのペットも何食わぬ顔で変な所から復活してきて、自分の肉やガラで作られた唐揚げや焼き鳥、ラーメンなんかを食べてるよね、野生だと共食いなんかは普通にあり得る事だからおかしくはないんだろうけど…」
「食べてる途中のカキ氷から生えてくるのは勘弁願いたいですね…衛生的には何の問題もないんでしょうけど…いきなりズモモモモってカキ氷の中から出てくるのはちょっと…」
「ひよこちゃんも調理中のコンロから生えてくるからちょっと邪魔になる事はあるね、火力最大のコンロでくつろいでる時もあるし、タイミングが悪いとフランベした直後にそこから生えてくるから蓋が出来ないっていう」
「トンデモな生態をしているペットってあの二羽だけなんですかね?店長のところのペットはそれ以外だと犬しか見た事が無いですし、犬の方は変な所は見当たりませんし」
「ヤモリとヘビもいるけど、あの2匹は常に屋敷の中だからまず見る事は無いだろうねぇ、変温動物というのもあるけど、薄暗い所を好んでるし、大きさはどっちも手のひらくらいの大きさだからよーく探さないと見つからない、呼んだら天井裏から出てくるけど」
「天井裏…まあ…ヤモリとヘビならおかしなところはないですね?」
「そう見えて何らかの事故で死んだらどこかからにょろっと生えてくるとか?」
「それは無いかな?そもそも死なないし、結構な頻度で肉体が死んでるひよこちゃんとぽっぽちゃんが色々抑えすぎなだけよ、抑えてなかったらどっちも死ぬ事は無いね」
「抑えてない場合はどうなるんですかね?」
「ひよこちゃんだとその銀河系の星全部が太陽になる、ぽっぽちゃんはその逆、太陽ですらただの氷の塊に変えちゃう」
「ワーオ…思ったよりトンデモ生物だった…ひよこちゃんは太陽神か何かですか?」
「そういう風に扱ってるところもあるかもしれないね、元々は火山に住んでて溶岩に漬かったりしてたし、元に戻った時の姿が姿だから普通の人からすればそう見えるといえばそう見える、普通に美味しい鳥だけど。
抑えないとダメになっちゃったのはまあ…環境のせいかなぁ?永久凍土から拾ってきたぽっぽちゃんと張り合って色々やって、さらにメイド達が羽毛目当てに追いかけたりしているうちにどんどん鍛えられて強くなって、昔はまあその辺の地形を溶岩地帯に変えたり永久凍土に変えたりするくらいだったけど、今は太陽くらいなら軽く作れちゃうし、ぽっぽちゃんもその太陽を軽く氷の塊かつ永久凍土に変えれちゃうし、って感じ。
そうならない様に抑えに抑えたのが今のひよこちゃんとぽっぽちゃん、熱に強かったり冷気に強かったりといったのはそのままだけど、代わりに物凄く死にやすくなった、でもすぐその辺から生えてくる」
「何かの拍子で本来の力を出したら大惨事間違いなしですねぇ…」
「そのあたりは大丈夫、鳥頭っぽいけどちゃんと頭はそれなりにいいし、本気を出しちゃダメって事はわかってるからね、本気を出してもぽっぽちゃんに相殺されるから環境は何も変わらないんだけど」
「酷いレベルでバランスが取れているとかそういうタイプですか」
「そんな感じ、だから多少本気を出してもちょっと死に難くなる程度、そしてその場合死ぬ時は同時だから被害は出ない、ひよこちゃんぽっぽちゃんもお互いが張り合う以外で本気を出す事はまずないし、意外と大丈夫なのよね」
「他のペットもそんな感じだったりするんです?」
「方向性は違えど似たような事は出来るんじゃない?やる意味が無いからそうする事はまず無いだろうけど」
「意味があればやる可能性が有るんですね…」
「早々ないけどねー」
「そんな有る無しのよもやま話より刀削麺おかわり、このつるっと、そしてもちっとした麺がたまらないのなんの」
「あ、ルシフさん居たんですか」
「居たよー?来たのはついさっきだけどね」
「私の分もお願いしますね」
「はいはい、狐さんも来たのね、タレは普通の坦々、胡麻坦々、それと肉味噌坦々の3つから好きなのを好きなだけ掛けてね」
「その上から更に酢をかけていくスタイル」
「合うんですか…?」
「結構合うよ?一度お試しあれ」
「ちょっと食べ過ぎってくらい堪能してしまった…体重計に乗るのが怖い…」
「その分お腹が落ち着いてからランニングマシーンなりなんなりで消費すればいいのですよ」
「ぐぅぅ…」
「でもまあ、確かに少し食べすぎた感はありますね」
「だよねー、3種類全部に加えて鶏がらスープ入り、さらに酢をちょっと足した物で15杯くらい食べだし」
「途中から1杯あたりの量はわんこそば程度だったけど、さすがにそれだけ食べるとね、50キロあった麺の生地も全部なくなったし」
「休憩に入った焼肉屋の人に王女様の使用人達、カジノのディーラーさんに給仕さんも普通に食べに来てましたしねぇ」
「食べに来てるのはマスター代理が雇った…というか買って育てたディーラーと給仕だね、日雇いの人は立ち入り禁止の場所だし、割りと裏から焼肉屋の方に出入りして食べに行ってるからね、裏と表どっちから入っても変わらないけど」
「変わるのは移動距離だけですね、入口に近いところにいる場合は表から、裏で整備をしている時は裏口からの方が近い、それだけですね、今日は何やら作っていたので食べるならそっちへ、と誘導しただけですが」
「まあ、良いんだけどね、さて、洗い物を済ませたら農場と牧場を見て回ってきましょうかね」
「店長がこうやって働いていても葵さんの所だと無職扱い、というのは笑い所なんですかね?」
「まあ…一応焼肉屋を経営してるとは言ってるけど、どこの何て言う店であるか、というのは誰も知らないし、向こうで職を持っていないのは確かだし、職業動画配信者というわけでもないのに平日休日関係なくその辺をプラプラしてるからねぇ…メーカーと契約はしていても暫定無職、という扱いをされてるね」
「変わってますよね」
「世の中そういうものよ」
駄菓子
引き籠り組が今住んでいるところに駄菓子屋みたいなお店はない、が、値段でいえば駄菓子に準ずるものは存在する
1つあたりの量は少なく味は濃いめ、遊びまわっている子供達がお小遣いで買って食べたりしている、普通に肉だったりするので人によってはお菓子というには違和感がある




