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今日も冷やかし 買ったのはアイスだけ

「そう言えばさー」

「ん?」

「タカムラとハナイってなんでプロを辞めたんだ?2人の実力なら世界中どこでも活躍できただろうに」

「あー…それねぇ…私って今お店経営してるじゃない?」

「してるな、それも平日でもそこそこ客入りが良くて空になった棚が目立つ閉店セールでもやってるのかどうかわからん店を」

「釣れる物と売れる物だけに絞るとそうなるんだよ、だから売上げなら大型店舗よりさらに上だよ。

でー、まあこの店は元々両親、うちの親の持ってる店の一つだったわけよ、特に人は雇わない個人の趣味でやってた範囲、場所が良かったから繁盛してたし今もしてるけど、両親が隠居するっていうからこの店を貰って、店をやってたら大会に出る暇も時間も無くなるし、貯金もボチボチ出来てたからスパッとね。

花井ちゃんはその時はワールド所属だったけど引っこ抜いてきた、それが花井ちゃんがプロを引退した理由かな?

稼ぎだけならプロをやっていた時より遥かに増えてるから、お金という部分だけで見れば悪くはないね、余裕もできて国内の各地にトラウトの管釣りも作ったし、ちょっと前にスポテッドも納得の行く物が出来て裏にオープンしたし、自由に動ける様になったと言えばなったね、毎年億単位でお金が飛んでるから貯金はそれほどないけど」

「そこはもうちょっと計画的に使えよ」

「管釣りの整備に養殖するトラウトの餌にスポテッドの餌に、電気代は発電機を買ってるから要らないけど各管釣りの人件費、清掃費用、抜き打ち検査にかかる費用、その他諸々、1ヶ所2ヶ所程度ならそれほど掛からんけど、10とか20となってくるとねー。

それ自体は趣味でやってる事だから多少赤字が出ても良いし、全体で見れば黒の方が勝ってるから問題はない、ただ税金を抜いたり次のやつの飼育だなんだで残らないだけ」

「その黒は主にこの店の稼ぎだけじゃねぇのか?」

「いやー、ちゃんと裏のスポテッドとか、ちょっと北に行った所と、都心部に程近い田舎に作ってる管釣りは黒字なのよ?他も赤を出していたとしても50万あるかないかだからそれほど、だから管釣りだけでの売り上げでも一纏めにしてしまえばほぼ赤はないのよ。

貯金が無くなってるのは環境整備にほとんど突っ込んでるからだね、今回の海にしても個人でポンっと億は出してるし、そうでなくても普段からダイバーを雇って海の清掃をしてるし、裏の川でも清掃活動費として結構なお金を出してるのよー?」

「無駄遣いしてるわけではないんだな」

「花井ちゃんは個人博物館って感じで道具を買い漁ってるから貯金はそれほど残ってないけどね」

「コレクションは一度始めるとどこかで妥協しないと終る事が無いからなぁ…」

「地震が発生して倉庫がぶっ潰れて壊れたら止める可能性はあるけど、そもそも地震津波高波台風対策はばっちりだからねぇ、沖堤防を破壊して突っ込んで来る様な高波と津波が来たらさすがに壊れるけど、その時は倉庫だけじゃなく町が更地になってるよ、すべて押し流されて基礎しか残らないくらいには」

「ま、うちの国だと基本的にコレクションをするならハリケーンが来ない所に引っ越して土地を買うところから、だな」

「いくら土地が安いからってハリケーンが発生してる所にペラッペラの家を建てて住むのはただのバカだと思う」

「地下シェルターもあるんだがなぁ…そうすると高くなるからって設置しないやつが多いんだよな…それで毎年非難が間に合わなくて他所のシェルターに入れて貰うやつが後を絶たないっていう。

吹っ飛ぶ前提で建てるからここみたいに基礎がしっかりしてない分安いし、ケチりたくなるのもわからんでもないんだけどなぁ。

まあ、プロを辞めた理由は取りあえず店を継いだからって事だな」

「そそ、理由は単純明快だね、で、今日はさすがになんか買っていくよな?」

「まだこれと言った物が見つからなくてなぁ、リールとロッドは一番良いのを予約済みだろー?ラインはガレージにあるだろー?となるとガレージに無い物…ってなるんだが、今の所このカタログを見た限りだとなくてなぁ…」

「基本的には国内の物しか扱ってないからね、個人で輸入して取り扱うなり工場で作らせて並べてもいい物はあるけど、この国だと今一刺さらんのよね、浮き釣りとルアーを組み合わせるってのをやる人がいないに等しいし、釣れなくは無いんだけど売れないから仕入れてないし作らせてもない、でもお兄さんのガレージを漁ったら出てくるとは思うよ?ポップフロートとかバブルガムワームとか」

「そういやこの国はポップフロートはねぇな、浮きの種類はかなり多いのに」

「上下で糸を結んでかつぶん投げるための重り付き、それを作る発想がないともいう、作っても使い方がわからないとも言える、形が違うだけの同じ物が祭典で発表はされたけどね」

「マイクロベイトを遠投するためにーってあったあれか、確かに形は違うだけで物は同じだったな」

「値段は10倍からは違うけどね、ポップフロートは円にすれば200円、あっちのマイクロロケットは2400円、ぶん投げるフロート部分だけでも1800円、ボッタクリだねぇ…」

「それは仕入れるのか?」

「仕入れないよ?使い方は変わらない、性能変わらない、ってなるなら200円で売れる同じ物を工場の方で作って並べるわ」

「高くても性能が変わらないならそうだよなぁ…んーむ…アナライズやらブルーオーシャンからは山ほど届いてるし、ラハブとJ&Mもなんだかんだで数百という数を送ってきてるから…これを急ぎでーってのは中々見つからんね」

「結局は今日もただの冷やかしかよ、ちょっとした客寄せにはなってるが平日じゃ何の意味もねぇわ」

「混雑してるとゆっくり出来んからな、平日に来るのは基本よ、アイス一個貰うぞ」

「100円ね」


「そう言えばさー」

「今度は何だ?」

「今日はハナイは居ないのか?」

「花井ちゃんならテレビの収録に行ってるよ、予定通りなら汽水域近くの海でボートシーバス、ダメそうだったらチニングをやってるはず」

「事前に予定していた物なら早々変わらんだろ」

「釣れるなら、だけどね、急に船が出せなくなったりもなくはないし、そういう時は近くで手堅く簡単に釣れる物をって保険をかけておくのよ、滅多にないけどね、道具の都合もあるし」

「スズキとクロダイなら使い回しでも十分いけると思うけどな、MとかMHだと硬すぎるだろうけど」

「ボートシーバスなら遠投するって事もないし、MLが基本でたまにL、大きさによってMを持ち出す位かな?ULはないにしても小さいのしかいなかった時のためにLは持って行ってるだろうし、小さめのポッパーやらミノーやらも持って行ってるだろうし、予定が崩れても大丈夫なはずよ」

「なるほどねー、しかし客こねぇな」

「今日は平日、それに今は午前10時だぞ、来るとしたら時間を気にせず釣りに行く人位だ」

「あー、もう10時か、今日は昼飯何食うかなぁ…昨日は皿うどんを食べたし…」

「家に帰れば用意してくれてるだろうに」

「ま、それでも良いんだけどな、そうするとまたここに来るのがめんどくせぇ」

「いや、何も買わないなら帰れよ、客は来なくてもこっちはやる事があるんだよ、さっきから商品の箱詰めしてるのが見えんのか?」

「客である私が手伝う義理はないな、それにアイスを買っただろ」

「袋アイス1つで釣具屋に3時間居座る時点でどうなんよ?どこに行って何を狙うとかそういう相談とかなら多少居座っても問題はないけどさぁ…ジュリアはそうじゃないじゃん?」

「湖と海に行けば大体は釣れるしな、レッドフィッシュとかクラウンナイフとかはいないけど、海のキングに川のキング、スタージオンも居るし、あそこで暮らしてる限り飽きる事もなければアドバイスを受ける必要もないな、というよりむしろ私はタカムラに海のアドバイスをする側だな」

「釣り方ならな!でもアドバイスする客もいないし、何も買わないならさっさと帰って好きな魚でも釣ってろい」

「気が向いたら帰るさ、それに昼飯を食べに帰るにしてもまだ大分早いし、もうちょいカタログを熟読しないとな、掘り出し物が見つかるかもしれん」

「カタログは問屋がざっと纏めて持ってきた奴だけじゃなく、メーカーから来てるのもあるからな」

「掘り出し物があったら教えてやるからタカムラはせっせと働けー、どうせ客も他にいないしな」

「初対面か親しくもない奴がそれをやったら迷わず追い出してるぞ」

「はっはっは、まあ、どうせ来月になれば1000万位ポンッと落としていくわけだし、ちょっとは大目に見ろや」

「それだけでも十分太客だから性質が悪いわ…リオちゃんも同じ物を予約してるけど」

「来月中頃までにはタックルを全部纏めておきたいからな、注文が遅れて揃わなかったー、とかは止めてくれよ?」

「そういうミスはさすがにしないよ、問屋がやらかした場合はどうにもならんけどな、昔やらかしてくれたのよ、配送中に事故って荷物は無事だけど事故の処理だなんだで入荷が遅れるっていうのが…それさえなければ遅れる事はまずないね」

「ちゃんと発売日に買えれば問題はないけどな、このサポーターとこっちのサポーターだとどっちが性能いいんだ?」

「アナライズとブルーオーシャン、レッドウルフなら好み、それ以外だとただの日焼け防止程度と考えた方がいいね、アパレルに関してはその3社が値段以上、マキシマとワールドが値段相応、ネレイドも出してるには出してるけど、物はアナライズに注文して卸して貰ってる物だからちょっと割高。

というよりソレ系は大量に届いてるだろ、届かないのは追加で欲しければ自分で買えっていうスタンスのレッドウルフ位で」

「まあな、少なくとも着る物には困らん、堂々と着て良いのかっていう問題はあるがな」

「ラハブとJ&Mが何も言ってこなけりゃいいんじゃね?言ってきたらこれより良いサポーターとかジャケットとか作れよって言えば?」

「実際公の場で着るやつは送られてきてるけど、重いし風通しは微妙だし撥水性も全然違うんだよな…動きやすさも全然違うし、アナライズに注文を飛ばしたらラハブとJ&Mのロゴを入れたやつを作ってくれるかねぇ?」

「ラハブとJ&Mが許可を出せばいけるんじゃない?出ないだろうけど」

「出ないだろうなぁ…ま、普段はアナライズ製を着用しつつ、宣伝の時だけラハブとJ&Mの物を着用だなぁ…一応アナライズと同じ位のサポーターと軽いジャケットを作れって言っておくか」

「堂々と着ても何も言われなさそうではあるけどね、むしろ着用せずやってる人もいるでしょ」

「いるな、メーカーロゴが付いてるのは大会の時位ってのがほとんど、基本的には私服だな」

「なら大丈夫じゃない?何かあったとしても契約を切られるって事はないでしょ」

「無いだろうな、んーむ…」

「掘り出し物はそうすぐ見つからないから掘り出し物って言うんだよ」

「だよなー、5日位通って眺めてるけど何も見つからんし」

「何も見つからん事が分かったのなら帰れ」

「そういう気分になったらねー」


「なんてやり取りがあったわけよ、結局買ったのは袋アイス2つだけだったわ、腹を冷やして下せばいいのに」

「色々と自由だからねぇ、これ今日の分のガンガゼの納品書、ペーストが300、500、1キロパックと、粉末が2キロをやめて3キロと10キロの袋と段ボールね」

「はいはい、ありがとねー、量が量だけに私じゃ運べないからまた裏の冷凍庫に放り込んでおいてねー」

「一応売れ行きは…順調みたいね」

「宣伝効果もあってばっちりだね、なぜか美味しかったですとか食レポが上がってるけどね、食べるなら市場の方で出してるムラサキにすりゃいいのに」

「そっちは宣伝してないからなぁ、宣伝すれば注文が殺到するかもしれないね」

「それはそれで生産が間に合わんけどね、ウニならいくらでも獲れるけど、それを処理する人数は現状増やせないからね。

んー、300が15000の500が10000、1キロが10000か、獲るペースが大分上がったのと納品に1日開いたのもあるけど、とんでもない量だなぁ…」

「拡張しておいてよかった業務用大型冷凍庫」

「ほんとにね、マイナス40だから鮮度の低下の心配もなし、ただコートと手袋は有ったほうがいいけどね」

「それじゃ冷凍庫の中に全部入れてくるねー」

「はーいよろしくー」

業務用冷凍庫

閉じ込めが発生してもいいように内側から開くようになっている物が多め

店長さんはエサ用のイワシやらキビナゴは結構買いだめするので、それ用に冷凍庫の拡張工事をしている

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