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たまにそういうスタッフもいる 大体社長の気分次第

 あー…やっと人が減ってきた…毎年の事とは言え、新作が発表されると以前の物に比べるとここがこう強くなって、ここがこう変わって、そしてこうなってて…と説明をしなければならないのが何とも…で、それだけであれば問題はないんだけど、個人の連絡先を渡そうとしてくる人も年々増えてきてる気がするんだよねぇ…受け取る事はまず無いけど…

 取りあえず午前中にやる事はやったし、ちょこちょこっと他の所を回ってこようかな、準備期間中に見る物は全部見終わってるけど、トリトンとデイライトが出してるオールインタックルもうちが関係してるし、前評判を確かめておきたいし、そっちの方までちょっと遠征。

 ブルーオーシャンがソフトルアーを全て生分解性の物に交換してどうのとか、ソフトルアーの種類をちょっと変更したりインチ数を変えたりとまあ、ちょっとした急な仕様変更もあったりはしたけど、最終的には良くなったので問題なし、トリトンやデイライトに卸す物の値段も変わらず、予定されている値段も変わらず。

 見に来た人が一番興味があるのは一緒についてくるルアーとかではなく、リールと竿の性能や見た目だろうけど、テストした限りではコストダウンで色々削った割りには高性能、ガイドもコストダウンで最初はプラにして、でも金属でも採算は取れるのでトルザイトにして、でもそれだけではちょっとー…となって安定性を上げるためにガイドを増やしつつ削れるところを削り…うん、色々あったねぇ…

 メーカー希望のお値段が15000、そのうち半分近くが竿の値段、リールが色々削りに削って3000円、そしてオールインの名に恥じないようにソフトにハードにちょい投げになんだで約4000円分、人によっては高いってなりそうだけど、ワイバーンとマーメイディアのエントリーモデルと同じブランクスの竿がついてくると思えば安いよね。

 本来の物よりはちょっと性能は落ちてるけど、それはガイドの素材と個数が違う位だし、無茶をしても折れない、きついけどメーターも上げようと思えば上げれる、ULのショートなので遠投は出来ないけど、150と片手でも扱いやすく魚の引きをダイレクトに味わう事も出来るので小さい魚でも楽しめる、後は使う人次第。

 一応テスト中のオールインの道具を特に弄らずそのまま使って釣った魚の写真なんかも展示されてるし、やってやれなくはないというのがスタッフの説明と合わせてちゃんと伝わる…はず、多分、ダメそうだったら開発兼テスターの1人として横から口を出して説明しておこう…


「なんで妹ちゃんがトリトンのブースで針の説明をしてるの?」

「いやー、このスタッフの人がここが凄い、というのを今一伝えきれてなくてねぇ」

「例えば?」

「そうねぇ、例えばこのSiCスムースとダイヤモンドスムース、今までのコーティングと比べて更に滑る針に仕上がっててフッキング率が上がる、口の堅い大型のマグロやカジキに対してもSiCやダイヤモンドスムースを使えば飲み込ませずとも口で貫通させれる可能性が出てくる。

そして滑りやすくなった事により、ダブルやトレブルだと針が2本引っかかった時に力が分散されて刺さり難かった口の堅い魚に対してもスっと針が入る、今までの物も十分滑りが良くてここまで針が入るともう糸が切れない限りはばれない、折れる事も伸びる事も無いって所まで入ってたんだけど、今回発表された針に使われているSiCは独自に開発された物、ビッカースでいえば従来の物を超えて5750まで上昇、ちょっとやそっとじゃ削れない、叩いてもそう簡単には割れない、強くて滑りも長持ち、そして針先はフェムトレベルまで研ぎ澄ませて超がつく程鋭利、しかも…この様に、用意したベニヤに突き立てても潰れない、電子顕微鏡で貫通前と貫通後の針先を比べてもほぼ変化なし。

で、これよりさらに凄いのがダイヤモンドスムース、使用済みの炭から精製した人工物だけどこれも通常の物と違い、何なら天然物は7000から15000とブレがあるけど、これは21000と天然物では出ない硬さ、さらに叩いても割れない、なんなら叩いたハンマーの方がへこむ、ダイヤは傷には強く衝撃には弱いと言われていたけど、これはそれを覆した物でコーティングしてあるわけだね。

SiCとダイヤの大きな違いはビッカースではあるんだけど、一番凄いのはこれ、SiCのトレブルとダブルだとちょっと強め引っ張らないとベニヤを貫通しないんだけど、ダイヤスムースはもっと滑らか、SiCの7割位の力でスル…っと入り込んで貫通する、これなら今までは貫通せず引っ掛けるだけだった口の堅い大型魚が咥えた時にフッキングをせずとも、糸を張るだけで魚自身がフッキングをして外れなくなる、しかも針は伸びないし折れないし針先が潰れない。

ってのを伝えないといけないのに、今までより丈夫で強くて鋭くなってます、位しか伝えてないのよ、今までの針だとベニヤに突き立てた場合こうなりますがSiCとダイヤだと同じ様に突き立てても潰れませんよ、そして特殊な加工をしてあるので魚の口に刺さったまま糸が切れても従来の物より早く錆びてぽろっと取れるので魚へのダメージも少ないですよ、使用後に水道水で洗えば逆に錆びず長持ちしますよって…そういう説明をして欲しいんだけどね?使ってる金属も鉄とか鋼とかステンレスじゃなくてSUS440Cというマルテンサイト系ステンレスより環境に優しく硬度も上げつつ仕上げた独自の特殊ステンレスを使用しているって、そういう大事な所もちゃんとね?

鋼だと高度が大体390前後、鉄だと110の通常のステンレスはSUS430とか304で180前後が多いんだけど、これに使っている物の硬度は大体570、鋼より強く軽く頑丈、さらに加工も簡単で焼き入れ不要と生産性に優れてさらにコストも安い、ダイヤモンドスムースコーティングでも物によるけどマグロ用のトレブルで1本250円、シングルで110円位…って、言うのをちゃんと来場者や雑誌社の人に説明しようね?」

「一番シュールなのはレッドウルフの作業着を着て他社の製品を懇切丁寧に説明している所だよね」

「私はオールインをちゃんと説明出来てるかなーって見に来ただけなんだけどねぇ…」

「オールインの説明はどうだったの?」

「そっちもばっちり説明しておいた、明日からはちゃんと自分で説明してね?」

「自分の所の商品に詳しくないと上から怒られるしボーナスに響くぞー?」

「で、店長さんは何の御用で?」

「そろそろ屋外の方でキャスティング講座が始まるから行くぞーって」

「あ、もうそんな時間?」

「そんな時間なのですよ?」


 さてさて、ここはちょっと本気を出すかそれとも加減をするか、加減をして競っている様に見せる方が盛り上がる気がしないでもないけど…うーん…

「そもそもなんで講座から遠投勝負になったの?」

「さぁ…?社長の思い付きだからさっぱりわからん、新作の遠投性能はどうなのよってのを見せる意味合いもあるかもしれないけどね、クリムゾンウルフも100メーター余裕で飛びますよーってのはやってるけど、全力で投げた事ってそれほど無いからねぇ」

「ちょっとでも投げれる人なら割と軽く80から100でるし、全力で投げる意味は無いといえば無かったしね、これ何メーター巻いてたっけ?」

「50、講座の時なんて投げても30メーターだし、100メーター巻1本でスピニングとベイトの両方行けるからね」

「じゃあスプールを交換して巻くところからだねぇ、程々に加減をして投げるか全力で投げるか」

「本気を出されると勝てないから程々にして欲しい所だねぇ…」

「ちょっと強めに投げれば200は行けるし、200巻いて170前後飛ばせばいいか」

「遠投競技ではないし、まあこれだけ飛ばせるよってのが証明できれば…多分社長も満足?」

「そもそもなぜ勝負にしたのかが謎だよねぇ」

「そしてこのスプールを交換して糸を巻いている間の期待の眼差しよ、これで逆に70メーターしか飛ばさなかったら凄い事になるね」

「売り上げがガターンって落ちそうだよね、適当に投げれば80はいくけど」

「遠投用に12lbを巻いてるし、逆に70しか飛ばさないってのが難しいけどねー、よし、巻き終わり、ギア比最大だと巻き切るのも早いわ」

「こっちも終わり、どっちから投げる?」

「そこはもうジャンケンでしょ」


「遠投勝負お疲れ様です」

「何をどうやったらあんなに飛ばせるんですか?」

「おー、ちーちゃんとさーちゃんも見に来てたかー、大分加減して貰って競っている様に見せていただけだけどねー、妹ちゃんが本気で投げたらベイトでも軽く200超えるよー?」

「本当ですか?」

「本当よー?170前後で競っているように見えていたけど、実は物凄く加減をして貰っていたっていう、まあ投げ方は基本的に変わんないんだけどね、糸が切れる限界ぎりぎりまで力を伝えられているかどうかってやつ」

「そこまで遠投しても使えるルアーは限られてくるけどね、ショアならジグか巻くだけのジグヘッド、バスならずる引きのキャロライナリグ、そして針も魚が引っ張るだけで刺さってばれ難い物をって言う制限も付く」

「バイブレーションなんかも巻くだけだから良いんだけど、そういった物以外は飛ばす意味がないというより、飛ばしても針に掛からないと思ったほうが良いね。

遠くなれば遠くなるほど針に伝わる力は小さくなる、よくフルフッキングだの鬼合わせだの言うけど、遠投してる場合100の力でフッキングしても10とか20しか伝わらないって事も有るからね、遠投する場合は針も大事」

「針に関しては今回発表されたSiCとダイヤモンドコーティングの物を使えば解決すると思うけどね、あれは良いよー?魚がちょっと引っ張るだけで針がスッと入って刺さる、普通なら引っかかるだけで刺さらないって言われた所も貫通する、だからそれを使えば遠投でもばらさずに釣り上げれる可能性が上がる…かな?」

「発売されるのは来月からだけど、針が刺ささずばれてる事が多いなーって時は付け替えてみるといいよー?うちでも当然仕入れるし、祭典が終わった辺りでスポンサーがトリトンの釣り番組でその針の宣伝もあるはず」

「食わせる腕も大事だけど、食わせた後に針を刺してばれない様にするのも大事だからね、デイライトも同じ様に折れやすいけどさらに貫通しやすい、針を出してきてるし、どっちを選ぶかは好みだね」

「トリトンは折れにくくて限界を超えた場合は伸びるけど貫通はちょっと弱め、デイライトは折れやすくて限界を超えたらパキッと真っ二つで貫通力がトリトン以上、今回発表されたSiCスムースやダイヤモンドスムースより細く貫通力がある、けど、フッキング前の引っ掛かり方が悪いと折れるからまあ好みだね」

「今はトリトンの針を愛用してますが…どっちが良いんでしょうねぇ?」

「そこはもう好みとしか、取りあえずトリトンとデイライトの針を使っておけば間違いないのは確かだからね、その2社以外の針は使う必要なし、マキシマとワールド、アナライズとブルーオーシャンはその2社の針を使ってるから交換の必要はあまりないけど、ちょっと古い物になると針も型落ちだから交換した方がいいね」

「トラウトだとデイライト一択だけどね」

「なるほどー」

「ところで回ってる時にこういう名刺を貰ったんですけどどうしましょうか?」

「んー?フィッシングアイドル育成協会?」

「何かテレビやら各イベントの出演やら、アイドルとして動画配信で活動するためにサポートするとかなんとか、定期的に大会も開いて歴代アイドルも呼んで誰が一番釣りが上手いのかを決めるとかもやるとかなんとか」

「そんな物は燃やしてしまいなさい、プロを目指すならアイドル路線は要らん、というよりちーちゃんとさーちゃんの実力ならアイドルだなんだとやってる連中じゃ相手にならん」

「そうなんですか?」

「私達って結構上手い?」

「いやー、上位のプロと比べるとまだまだだけど、あの辺りって釣りがちょっと好きで見た目がいいってだけで選ばれる奴だし、実力は要らないんだよね、客寄せパンダとして歴代アイドルを1人か2人抱えてるメーカーはあるけど、実際にプロとしてやっていけるかというとまあ無理じゃないかな?って感じ。

ワールドとかアナライズとか、まあうちと関係のあるメーカーに拾われれば手厚いサポートも得られるし、スポンサーにもなって貰えるし、テレビの出演が主になるだろうからその分稼げはするけど、プロアングラーとしての活動は厳しくなるね」

「アイドル路線はノーサンキューなので、まあないですね」

「恵里香ちゃんのチャンネルが色んな企業とスポンサー契約してるし、その育成協会っていう事務所で見た目がいい娘を抱え込んで動画配信活動をさせて、色んな企業との契約を仲介なり事務所自体と契約で…っていうバーチャルアイドルの様な事をしようとしてるかも知れないね。

ちーちゃんとさーちゃんの場合は高校卒業して直ぐにとはいかなくても、間違いなくスポンサー契約の話は出てくるから乗らなくて良し、事務所を介すと間違いなく稼ぎが減るしね。

その育成協会とやらに入る場合は間違いなく契約書やらなんやらが出てきます、契約書を交わした後にメーカーから契約の話が飛んでくるとします、そして契約書の内容次第では個人ではなく必ず事務所に通してから、事務所と契約をしてからになります、そして年1200万の契約内容だったとして、そのうちの半分以上は事務所に持っていかれると考えていいね。

個人に来たからって個人でスポンサー契約をしたとして、その場合契約違反だなんだって言われて違約金を支払う必要のある契約書になってる可能性もある」

「バーチャルアイドルも事務所がアイドルの稼ぎの7割以上吸い上げてたってのは有名だしねぇ、それの類友の可能性もあるから、アイドル活動をするにしてもちゃんとした大きいメーカーとスポンサー契約をして、そこからメーカーのお願いを受けてから、がいいね、それならピンハネとか吸い上げはないし」

「アイドル活動の予定はないですねぇ…まずはプロアングラーになるところから始めませんと」

「だよねー、それにアイドルって何かやらかすだけであっという間に悪評が立ちそうだし」

「立つねー、男とツーショットになっただけで荒れるよー?」

「ですよね」

「ま、それはそれとして、お昼にはちょうどいい時間だし、今日は何食べる?」

「昨日はお寿司でしたし、カツなんかの揚げ物が食べたいですね」

「ならチェーンの中華料理屋に行くかー、あそこから普通にとんかつとかチキンカツがあったよね?」

「あるね、中華風カツ丼とかもあるよー?」

「よし、それじゃあ行くか、時間的に恵里香ちゃんやら花井ちゃんやらアイナちゃん達も空いてるだろうし、全員で行くか」

「ジュリアさんは?」

「そもそもあいつ自分のブースにいるのか?」

「居ないかもしれないねぇ…」

説明ベタなスタッフ

そこのメーカーに所属して解説役として駆り出された物の、なぜかうまく説明できない、物は知っているけど伝えきれない

準備期間のリハーサルではうまくいっても、大人数が来る本番には弱い人が割りと説明ベタになりやすい

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