かなり暇な日 暇潰しという名のデリバリー
さて、一応今日から開場、とは言っても今日は雑誌社やら卸問屋向けなのでそれほど忙しくはない、ブースに来たらざっと説明してそれが終わったら屋外会場の方で実際に触ってもらって…とやるのがスタッフのお仕事、私と店長さんがやるべき事は…
「あー…やっと個別インタビューが終わったー…公式ホームページに書いてあるのと変わらん事を聞いて文字起こしする意味なんてあるのかねぇ?」
「さぁ…?でもまあ、公式ホームページにある祭典に来れない人向けの紹介動画と同じ事を言うのもなんだかなーってなるよね」
「グリップがどうの素材がどうの繋ぎ目がどうの、カスタムパーツがこうで自分の思うがままに、リールも大型小型のフットサイズに関係なくピシッとはまって、アウトではなくインナーガイドを採用しているのはこう言う事で、今回発表されたアルマディンフェンリルはー…って、合間合間に何か一言二言追加するだけで重要な部分何も変わんないからねぇ」
「取りあえず今日やる事は全部終わったに等しいけど、これからどうしようね?」
「大会の発表も無かったし、記者に紛れてジュリアをからかいに行くか」
「今日は来てるの?」
「来てるはずよ、というより来てなかったらまずいでしょ、掛け持ちとはいえラハブとJ&Mのブランドアンバサダー様だし、雑誌社が集まっててメーカーの評判をさらに上げるチャンスである今日をすっぽかして湖に出てたらさすがに怒られるし」
「雑誌社と問屋の人が一番気になるのは国内で安定して購入する事が出来る様になるかどうかだろうけどね、特に問屋は他より多く確保したいだろうし」
「うちは関係ないけどねー、ラハブとJ&Mからの直輸入だし、ジュリアが持ち込んだ物を実際に使ってテストもしたし、来月の頭から新作と一緒に並ぶ事になるね」
「すぐ売り切れるんだろうねぇ」
「通販の方の商品一覧に追加されるし、間違いなく注文が殺到して早い者勝ちになるだろうね、国内だとラハブとJ&Mの新作とか2ヶ月3ヶ月待ちとか普通にあるし、持ってるだけで自慢できるからねぇ」
「本国優先だもんね、すぐに売り切れるというのもあるけど」
「そう、だから新旧全て問屋を通さず直でメーカーから輸入出来るようになったのがかなり大きい、ジュリアに頭を下げて無茶を通して貰った甲斐があるというものよ」
「メーカーの売り上げに貢献するという意味も込めてリールと竿も輸入してあげたら?」
「ベイトを10本と10台仕入れたとして、多分売切れるまでに1ヶ月はかかるよ、同じ値段帯ならRシリーズがあるし、リールもキャパはあるんだけど、今は国産のリールもキャパは十分だし、ベイトキャスターって名前の割にはボート前提で飛距離はそれほどでないからねぇ」
「陸からを前提としているから船からを前提しているかは結構重要よね」
「ま、向こうは陸からのんびりやってると命にかかわる場所もあるから仕方ないんだけどね、っと、ジュリア発見、それじゃ記者に混じって質問攻めにしてやるか」
「バレてカウンターが飛んでこないように気を付けないとね」
途中でバレてカウンターが飛んできたもののそれなりに時間を潰せたので良しとしまして、ここからどう時間を潰すかが問題よねぇ…今日は一般入場がないし、個別インタビューやらブースで纏めてざっと説明したらもうやる事は無いし、遊びに来た2人は日帰りで帰って行ったし、うぅむ…この丸々空いた時間をどうするか…
屋外会場の方も行く必要があるのは明日からで、今日は配置されてるスタッフだけで十分、インプレッションのために記者の人達が触って確かめる位、キャスティング講座やらなんやらは一般向けなのでやる必要はなし、遠投性能を見せる意味もなし、というよりRシリーズでも投げる物によっては100行けるし、ハイエンドは100以上飛んで当たり前になっているかつ遠投性能は上がれど下がる事はない、ミドルクラスでも100出せればエントリーでも出そうと思えば出せる、ので、実際に遠投して見せるのは一般入場の人達に対してだけで十分。
今年は大会も何もなくだから…んーむ…かといって会場からそう離れる事は出来んしねぇ…まあいいや、また後で誰かが取材に来るかもしれないし、適当にぶらぶらしてよっと。
「妹ちゃん今暇してるー?」
「暇してるからぶらぶらしてるー」
「だよね、なんか屋外の方で雑誌社対抗遠投勝負してるみたいだから見に行こうぜー」
「勝負をする意味はあるのだろうか…?」
「ずーっと聞いて回ってばかりじゃ飽きてくるし、インプレをかねての息抜きじゃない?それと1位の雑誌社にはプレゼント企画用のタックル好きな物を1組メーカー側からプレゼント、ってやってるから結構必死になってて面白いよ?」
「ショアジギ用と淡水ルアー用なんかで結構道具が分かれるけど、何でやってるの?」
「ショアジギは飛ばせて当たり前だから淡水ルアー用、自分が一番飛ばせると思うメーカーのベイトで遠投、スピニングは面白みがないからベイトでー、らしいよ?」
「スピニングは投げやすいからねぇ、今の所一番人気は?」
「一番人気のリールはワールドのワイバーン、続いてネレイドのマーメイディア、レッドウルフのクリムゾンウルフと来てその他メーカーの物がぱらぱらと、別に統一しないとダメっていう決まりもないから竿も結構バラバラだね、糸とキャスティングシンカーだけは同じ物で固定、12lbと18グラムだね」
「適当に投げても70は飛びそうだけど、優勝ラインはどんな物かねぇ?」
「さぁ…?自分でも釣りに行って書く人と、釣り人から聞くだけの人といるからねぇ、そういう人も参加してるから…まあ優勝ラインは90位じゃない?」
「取りあえず見に行くかー、だーれも来ないブースでボーっとしてるのはちょっと辛い」
「去年は大会があったから地味ーに忙しかったんだけどねー、あれはあれでメンドイからこっちの方がましといえばましだけど」
「移動はできるけどボートの上からは降りれないもんね」
「おー…それほど賑わってない、取りあえず参加しておくかーみたいな感じ」
「優勝しても貰えるのがリールと竿1セットだけだしね、しかもプレゼント企画用で個人が貰えるわけじゃない、優勝出来たらラッキー、みたいな感じだよね」
「地味ーな余興というのもあるだろうし、ただただかっ飛ばした雑誌社が1セット貰えるだけ、特別賞と言った物もないただただ思いつきの暇潰し、盛り上がらないよねぇ」
「これが一般なら我先に我先にと殺到するのにねー、仕事でやってるか好きでやってるかの違いか、かなぁ?」
「去年は大会で地味に盛り上がっていたからなおさらかもしれないね、プロが勢揃いしているわけでもないし、一番盛り上がるラハブとJ&Mへの質問タイム等はとっくに終わってるし、記者からすればもう見どころは終わった、後は適当に新作を押さえておけばいいだろ、って感じよね」
「でもまあ、暇潰しで見物するにはいいね」
「なんだかんだで昨日まではバッタバッタしてたからねぇ、最終調整にパンフに無料配布ステッカーの確認にと、念入りにやってるから欠けている物も無く、コンパニオンも病欠無し、やる事はやったから今日は休日みたいな物だし、暇になるのも仕方なし」
「ジュリアさんは終わったら直ぐにちーちゃんとさーちゃんを連れて湖に旅立っていったしねぇ、私も便乗してさっさとどこかに行くべきだったか」
「あいつ自由だからなぁ、やる事やったら直ぐにどこかへ行くというか、取りあえずやりたい事優先というか、後はスタッフに任せておけば十分といえば十分だけど」
「あ、暴投した」
「真っ直ぐ正面に飛ばした距離じゃなくて、立ち位置から着水した所までの距離で計測だから暴投してもいいっちゃいいけどね」
「バックラッシュしてる人もいるねぇ、ワイバーンとかその辺りを使ってる人はしてないけど」
「遠投するならクリムゾンウルフ一択だけど、雑誌社によってはどこそこのメーカーと懇意にしてますってのもあるし、その場合ほかのメーカーの物で遠投に勝利しましたーって言ったら気まずいしねぇ、かと言ってバックラッシュしないようにブレーキを強くすると飛ばなくなるし、飛ばすためにはぎりぎりまで緩めて…になるし」
「クリムゾンウルフ辺りはブレーキ設定要らないもんねぇ、それでいて絶対にバックラッシュしないし、スプールが常に最適な回転数を保つから飛ぶし」
「高い物には理由がある…でもまあ、他のメーカーが出してるハイエンドモデルって4万とか5万するけど遠心とかマグネットだし、物でいえばワイバーンのエントリーの方が良いまであるからねぇ、そういう所と懇意にしている所は大変よ、スポンサー様でもあるわけだしね」
「チャレンジ回数は制限なし?」
「なし、暴投にバックラッシュにとトラブルが続いてるし、もう満足するまで投げ倒せ、16時の閉場の時にぱぱっと発表しておしまい、そんな感じ」
「しかしあれだねぇ、慣れてる人と慣れてない人がはっきり分かれてる感じだね」
「釣り雑誌の記者をやってるからって釣りをやってるのは4割も居ないだろうね、釣り関連の記事を書いているだけはあって扱い方は知ってるみたいだけど、知ってるだけで実際に使うのは初めてならそんな物よ」
「今のところ80を超える人が出てきてないし、90も出たら優勝はほぼ確定かな?」
「だねぇ、しかし何の動きもないし、ジュリアを追って湖に出るか、何かあったらスタッフから電話がかかってくるでしょ」
「そうだね、それじゃキャンピングカーに戻って道具とボートを用意してくるかな」
「お昼はどうすっかな、時間的には微妙なんだよね」
「皆メーカーが違うからバラバラに行動してるから一緒にお昼に行くかーって事も出来ないし、恵里香さんは社長と副社長と休憩所でお話し中だし、どうしようね?お弁当を買ってくるって方法もあるけど」
「そうだねぇ…ボートの用意をしている間にスーパーでお弁当を買ってくるか、何がいい?」
「切ってない中巻きがあればそれを10本、何巻きかはお任せ、それと唐揚げか天ぷらのよさそうなものがあればそれも」
「はいはい、それじゃちょっと買い物に行ってくるぜー」
「んー、太巻きもいいけど中巻きもいいよね、食べやすいし、太巻きと違ってあれやこれやと種類を巻かない分シンプルに魚介を味わえるし」
「一応ネギトロとタイで5本ずつね、それとゲソ天ね、そして私は海鮮ドーン、海鮮丼じゃなくてドーン」
「確かにドーンって名前名だけはあるね」
「まず寿司飯の量が通常の2倍、ネギトロ丼用のネギトロが半分入ってて、マグロイカカンパチサーモン4種の漬けと漬けじゃない通常の物が1枚ずつ、そして空いた部分にいくらで4つの丼が味わえる、なおお値段1380円」
「2人前と考えたら…そんな物なのかな?」
「海鮮丼が580円、漬けが同じ、いくら丼が880円でネギトロ丼が680円だからまあ若干お得?エビとタコは入ってないけど、寿司飯が250グラムで150円で売ってたから単純にネタだけで400円として、それから2つ引いて600、ネギトロ半分で300、いくらも1人前の半分位400、人件費やら容器やらもあるから、まあちょっとお買い得よね、漬けになってるのはちょっと古いやつだろうけど」
「食べる分にはあまり変わんないけどね、さて、わさびを醤油に溶かしてー、これに中巻きをちょこっとつけて…んー…美味い」
「湖の上で食べるのもなかなか贅沢な物だよねー、ちょっと冷えるけど」
「おう、いきなり人ボートの横にべた付けしてきたと思ったらそっちだけいいものを食べてそれを見せつけるとか酷くねぇか?」
「さっさと湖に逃げたやつが何を言っているのやら…」
「別にいいじゃねぇか、答えることには全部答えて暇になったんだし、この2人をずーっと放置しておくわけにもいかんだろ?」
「まあね、その点に関しては感謝してる、だがそれとこれとは別だ、だからどこまでもついて行って美味しそうに食ってやる!」
「はい、ちーちゃんとさーちゃんのお昼の分、ゲソ天はもう切ってあるから食べ難いって事はないはず」
「あ、ありがとうございます」
「やったー、お寿司だー」
「私の分はないのか?」
「んー?欲しいのかー?この海鮮ドーンが欲しいのかー?」
「そっちのボートに飛び移ってもいいんだぞ?」
「しょうがない奴だなぁ、ほれ、後で金払えよ」
「3つあるように見えるか?」
「さすがに育ちざかりのちーちゃんとさーちゃんが中巻き4本で足りるわけないじゃない、だからそれも込よ、端数は切り捨てておいてやるから後で5000円寄越せよ」
「戻ってからな」
「丼が3つで税込4000円位の…」
「中巻きが1本150円ね、ジュリアの分も合わせて全部で6本、まあ5000円ちょいよ」
「すみません、お昼を奢ってもらって」
「良いの良いの、祭典が終わったら社長と副社長にたかるから」
「メーカーが違うからアイナ達は来ないけど、レッドウルフは去年と同じ様に浜辺の使用許可を取ってバーベキューで占めるから、その軍資金を社長から貰わないとね」
「去年はこっちがたかられたからなぁ、今年はあの2人にたかって日輪牛でバーベキューじゃー!」
「なんか結構高い物になりそうですねぇ…」
「50万位は出させるから期待しておくといいよー?」
「私も行っていいのか?」
「別にいいけど、ジュリアの分まで出してくれるかはわからんぞ?」
「かまわん、買い出しの時に適当についていってその時に私も出すから」
「ならよし、それじゃお昼を食べてお昼からちーちゃんとさーちゃんのお勉強タイムにするぞー」
「どういう方向で育てるかだな、淡水か海水かオールラウンダーか」
「予定としてはオールラウンダーよ、だからこそ中村さんにも会わせたいんだけどねー、まあそれは修学旅行に合わせて追々ね」
「本人がやりたいようにするのが一番だけどね、だから今はのんびりぼちぼち、まずはバスプロを目指してだね」
「プロになるまで何年かかりますかねぇ…?」
「早ければ卒業後すぐ、遅くても卒業してから4年位かな?2」
海鮮ドーン
海鮮丼より多くドーンとはいっているからそういう名前
入ってるものは日によって違う、出ない日もあるけど基本的にはお買い得




