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無水 ちょっとアレな会話

「店長ー」

「はーい、なんでしょう?」

「カレーにバナナやマンゴーを入れると美味しいって聞いた事が有るんですけど、カレーに入れないんですか?」

「入れないね、確かにフルーティーな甘みも追加されて美味しくはなるんだけど、それがここで受けるかどうかといえばまた別問題、個人で作って食べる分には良いんだけど、あのバナナ高いよ?1本あたり中銀貨5枚だし」

「おぉぉぅ…高ーい…そういえばそんな値段だったー…」

「なのでやるにしても個人でね?それと無水カレーもあまり受けはよろしくない、ドロッとするのもそうだけど、ちょっと濃くなりすぎるからね」

「無水カレー作った事が無いんですよね、美味しいというのは聞いた事あるんですが」

「じゃあ今日のお昼は無水カレーを作ろうか、時間がかなりかかるけど、普段作ってるのと時間自体はそう変わんないね」

「材料も同じなんですかね?」

「ほぼ同じ、ただ玉ねぎを使う量が半端じゃない、水を使わない分野菜の水分で補う事になるからね、まあいま作ってる分が終わったら作ろうか、その間にバナナやらマンゴーやらを取ってくるから後はよろしく」

「はーい、わかりましたー」


「では今から無水カレーを作るとしまして、まず玉ねぎが300個、頑張って薄切りにしていきましょう、まあスライサーに放り込むだけだけど」

「多いですねー…」

「まあ、焼肉屋の従業員の分も考えるとこんな物よ、スライスした玉ねぎは寸胴に入れて軽く炒めて、ざっと炒めたら蓋をして玉ねぎの水分だけで蒸す、その間にバナナとマンゴーをざっくり切りまして、お肉は整形の時に出たあまり全部、材料は以上です」

「水を使わないだけで材料は特に変わらないですね」

「ちょっと圧をかけつつ玉ねぎをドロドロにして、果物を入れて潰しながら混ぜて溶かし込んで、混ざったら肉をほうり込んで蒸し煮、ある程度火が通ったらスパイスをどさっと、しっかり混ぜたら蓋をして弱火でコトコト」

「野菜と果物の水分だけだと凄い事になりますね、小麦粉でとろみをつけているのはまだサラサラな方だと言わんばかりに」

「玉ねぎの量は増えるけど、その分甘味やらなんやらが強烈に来るから、そういう濃すぎるのが苦手な人には…ってやつだね、スパイスによる香りと味付けでかなり変わってくるけど」

「スパイスも量に対してかなり多く入れてるみたいでしたけど、それは?」

「少ないとバナナとマンゴーの味や香りに負ける、その場合はカレー風味のバナナとマンゴーが混じった玉ねぎとお肉を食べる事になる」

「不味…くはないんでしょうけど微妙ですね」

「なので塩もちょっと多めにね、水分が通常のカレーより少ないので焦げ付かない様に最後は底を掬い上げる様に混ぜまして…肉をホロホロにして崩すならもうちょっと、肉を味わうならこの位で火から下して後は放置」

「パパパーッとやっている様に見えて2時間位掛かりましたねぇ…」

「まあ量が量だからね、それじゃあ休憩に入っている焼肉屋の娘を呼んできてー、主食はパンと白米とパスタとうどんを用意してあるから各自好きな物で」

「カレーパスタもカレーうどんも美味しそうですけど…ちょっと食べ難そうなのが辛い所ですね」

「つけ麺っぽく湯溜めにしてる状態から掬い取って少量を絡めて食べるといいよ、しみ込んだ物がいい場合は別に水を足してちょっとうどんなんかを煮てやる必要があるけど」

「カレーうどんは凶器!跳ねたカレーが染みになるとかとんでもない凶器だぞ!そんな物を食そうというのか!」

「我先にとうどんをどんぶりに入れている人が言っていい言葉ではないね」

「だってカレーうどんおいしいんだもーん」

「あー…まあ、私は休憩に入っている人達を呼んできますね」


「濃いなー…物凄く濃い…ドロドロでかなり絡み付くというか…美味しいには美味しいんだけど」

「野菜の水分だけでやるとこうなるんですねぇ、ドロドロとは言え小麦粉は使ってないのでまた違う感じですけど」

「ペーストに近いんだよね、いつもは繊維なんかが残らないように濾すけど、濾さずに全部残ってるからね、それで余計にドロッとしてる感じ、バナナとマンゴーも多少なりとも粘性があるし、濾してもドローっとしてることには変わりないけど」

「肉うめー、焼き肉のタレもそうだけど果物が入るだけでどうしてここまで美味しくなるのか」

「でも果物が入ったタレは花街の人以外はあまり好みませんよね、ニンニクと玉ねぎだけの物を好むというか」

「味覚の違いもあるし、花街の人は臭いを気にするからねー、臭い消しも出してるからあまり気にする必要はないけど、お酒を飲む席でニンニクの臭いがしたらいやでしょー?なので玉ねぎとニンニクがガツンと効いた物より、レモンで作ったさっぱりとした香りのいいタレを好む、って感じ。

休日の時はあまり気にせず食べてるけど、それでもレモンが好み、柚子があるときはそっちかな?」

「一応接客業になるのでニンニクの臭いはまあ…無しですよねぇ」

「香水より体臭を好む人もいるし、ニンニクの臭いがするとお酒も進まなくなっちゃうしね、お酒の匂いでちょっとはごまかせるけど」

「知らない人が体臭を嗅いでくるとかなり嫌ですけど、そういうお仕事ですもんねぇ」

「ダメなお店もあるけどね、ただ楽しくお酒を飲んで話すだけのお店だとダメ、ちょっとしたお触りが許可されているところなら嬢の判断次第で大丈夫、裏のお店はお店自体が許可を出しているので嫌がっても大丈夫」

「あまり想像したくはないですねぇ…」

「それはそれとして、結構重いですねこのカレー」

「水分は野菜から、さらにその水分もある程度とんでいる状態だからねぇ、見た目より重くなっちゃうのはしょうがないね」


「あー…食べ過ぎた…濃い物を食べるとどうしても主食が進む進む」

「カレーライスにうどんは欲張りすぎですね、そういう時はおにぎり1つにうどんを少量にするんですよ」

「美味しいとついねー?食べ過ぎたところで苦しくなるって事はないけど」

「玉ねぎ300個使ったカレーも全部なくなりましたね」

「50人近くで食べればまあ意外とね、取りあえず洗い物を済ませたら今日はおしまいだね」

「お店の方で出してるカレーは変わり映えしなくても売り上げは落ちず変わらず、順調ではあるんですけど、あまり刺激はないですよねぇ」

「そして冒険して潰れて行った飲食店は数知れず」

「メニューがやたらと増えていって仕入れる数に仕込みの数にと増えて行って首が回らなくなるんですよね、持ち込みの物を調理するのであれば仕入れは気にしなくていいですけど」

「持ち込みで作ってくれる所ってどれ位あるんですかね?」

「個人店でもダメなところはダメ、何かあった時に責任を取らされるのは料理した店だからね、仲の良いお店で自己責任ってのなら大丈夫だけど、知らないところに持ち込みでこれで何か作ってーってのはなかなか難しいね、魚持ち込みで刺身が鉄板だろうけど、たまに店側も毒とか何も知らないでやってる事が有るからリスクはある」

「なるほど」

「シガテラなんかは食べるまでわかんないしね、フグだったらちょっと知識があればわかるけど、シガテラはもう大きさだけで判断するしかないし、美味しい魚でもちょっと大きくなったらもう止めた方がいい、ってのもあるのよね」

「そもそもメニューが増えすぎる原因は…」

「お客さんの要望に応えすぎた結果だね、あれ欲しいこれ欲しいって言われてどんどん追加していくと首が回らなくなっていく、売れないからって店主が追加していくケースもあるけどね、とにかくソーセージやらチーズやらを単品でどかどかと」

「あー…そういう店ってなんか微妙に美味しくないんですよね、メニューは豊富なのに客入りはよくなくて、仕上がりも微妙だったり、そういう店は学校周辺に結構ありましたねぇ、学生がターゲットなんでしょうけど、その学生も遠ざけるというのが」

「メニューが多いから不味いって事はないけど、売れない原因を味ではなく品数と結びつけるのはよくある間違いなのよね、味が良ければ増やしても売れるし稼ぎも増えるんだけど、仕込みの手間も増えるからまあ良し悪し、安定して稼ぎ続けるなら無理はせず現状維持、つまりはカレーも今のままが良いって言う事だね、通常とペーストの2つ位で十分、お肉が多めに余ったときはお肉マシマシビーフカレーを出す位で。

それ以前にそこまで稼ぐ意味がない、他の店も独自のカレーを出している、なので出す意味がないとも言う、他のカレーが食べたければ他の店へ、うちの味で食べたいなら通常のカレーを買って後は各自の家庭で」

「ここは結構お店で買って持ち帰った物を改めて調理する、というのが多いですよね、料理が出来ないってわけではないんでしょうけど」

「そういう文化と言う事だぁね、スーパーで惣菜、もしくは後は焼くだけ、煮るだけにした様な物を買う感覚よ」


「そういえば店長」

「はいはい」

「物凄くどうでも良い質問なんですけど、私達みたいに召喚された場合って何かしら都合が良い特典?みたいな物が提示されるじゃないですか、その中で無敵とか不老不死とかがあった場合ってどうなるんですかね?」

「どうにもならないよ?システム上そうなっていると言うだけで、遊び終わったらフラグのオンオフでオフにして剥がして終わり、まあやってる側はゲーム感覚だからね、主人公となる連れてこられた人に会うのも別に神でも何でもない使い捨ての駒だし、とことん良い夢を見させておいて、人生の絶頂というところで全部オフ、後は転落していくまでの過程も見られて2度美味しいっていうやつ」

「割とろくでもないですねぇ…」

「そもそもそんな都合のいい世界があるわけ無いだろって突き落すまでが1セットだからね、まあ自分の作った世界でそうやって遊んでいる分には放っておくけど、無関係のところから引っ張ったり巻き込んだりするのはちょっとねー」

「店長は巻き込まれたんでしたっけ?」

「そうそう、サイフォン効果みたいなやつで吸い込まれてスポッと、正確にはまあまた違う効果だけど、その水が流れていく筒の中に入った様な物だからそのままね、乱気流とかダウンバーストとかそういうのに巻き込まれるのとも大差ないけど」

「体感としては一瞬だったけど、そうやって引っ張られてきてたんですかねー?」

「そうだね、体感が一瞬なのは意識が飛んでるだけで、実際には数ヶ月から数年経っているという可能性もなくはない、距離によるけど」

「店長が使っている繋いだ場所と瞬時に行き来するあれは別なんですかね?」

「別だね、転送とも転移とも違う、間に減圧室なんかを挟んで次元やらなんやら色々ぶち抜いて直結してるだけだからね、だから片側が空いている場合は閉じないともう片側が開かないようになってる、飛行機の中で窓ガラスをぶち割るのと変わらない状態だからね」

「無理やりあけると気圧で吹っ飛んでいく、もしくは吸い込まれていくと」

「だね、減圧室は大事」

「で、話を戻しまして、今までその特典で調子に乗っていた人でめんどいのってなんでした?」

「んー…特に何も?実際システムでフラグがオンになっている間はその通りに動けて、無敵とか不死身だと死なないけど、こんな感じで真空梱包して」

「店長、動けません」

「後はこのまま石でも括り付けて海に投棄するとか、別解としては石の中に埋め込むかすればばっちりよ」

「んんんー…!」

「タカミー本当に動けないの?」

「全く、力を入れても全然動かない」

「これは科学の問題だね、梱包している素材、この場合はまあちょっと厚手の普通のごみ袋と変わんないけどこれで首から下全部を覆って真空にすると…」

「うわっ、ほんとだ、全く動けない」

「5メートル歩く事が出来たらお小遣いをあげるよー?」

「あー…札束が見えているのに一歩踏み出す事すらできなーい…」

「まあちょっと空気を入れれば動ける様になるんだけどね、簡単に破ける薄いビニールでも、こうやって空気を抜いて軽く真空状態にしてしまうと…関節ががっちり固まって動けなくなるってやつだね。

もう一つ、ビニールの中は大気、まあ空気がない状態なので気圧が限りなく0の状態、気圧が0ということは外から外から取り込もうとする、さっき言った減圧室と真逆の状態になるのよね、なので力を入れてビニールを伸ばして破ろうとしてもその気圧に押されて動けなくなる。

つまりは2重の力が掛かって動けなくなるので、どんなに馬鹿力といわれる人でもこうなるともう動けなくなる、ビニールに空気を入れるよー」

「ふわぁー…自由に動けるって素晴らしいですね」

「こんな風に関節を完全に固めつつ、さらに大気圧を使って拘束しつつ、ってすれば簡単だね、別解の石の中に埋めるも同じ、無敵だの不死身だのと言われていても関節を動かなくしてしまえば大抵は無力化できるので後は沈めるだけ」

「でもそんな事をするしない以前に店長ならどうとでも出来そうな気がします」

「あまりにもおいたが過ぎた場合は痛みと苦しみを知って貰う為にーって事も有るのよー?」

「今もそれで海の底で生きてる人もいるんですかね?」

「さすがにいないかな?締め上げてそういうシステムをオフにした時点で窒息するし、そもそも圧力で潰れてるしね。

まあ同情の余地なしってのばかりだから、あまり気にすることはないね」

「同情の余地があったり、ただ玩具として巻き込まれただけであれば私たちみたいに生き残ってますよねぇ…」

「くっ…このっ!動けっ!動け私の足っ!100万円は目の前だぞ!」

「色々と化学やらなんやらを無視出来る人じゃないと動けないんじゃないですかねぇ…」

「ちゃんと正しく魔法を学べば拘束を解いて動ける様にはなるけど、どうやって体内に取り込んで変換するか、変換してもどうやって出力するか、だから結構難しいのよね」

「ビニールを燃やして拘束解除は遠慮したいですね、自分も燃えそうです」

「頑張れタカミー、100万円まで後2メートルだぞ、つまり1センチも進んでない」

「タマキみたいに諦めるなー」

「諦めたというよりはどうしようもないんですけどね、どうやっても動けませんし、タカミヤが粘りすぎなだけです」

「ふんぬうぉー!」

「さすがにあれだからビニールに穴開けて空気を入れようか」


「ちょーっと長々話し込んじゃったけど今日はこれまでということで、100万円のお小遣いは無しね」

「ちくしょー…」

「そもそも遊びに行く度にそれ以上のお小遣いを貰ってますし、追加で貰って何に使う気だったんですかね?」

「ちょっと玩具を色々と…」

「タカミーも好きだねぇ、程々にしておかないとそのうち部屋からあふれるよー?私達は気にしないけど、段々大きくなっていってるし、そのうち入らなくなるよ?」

「大丈夫、頑張って拡張すれば入るから!」

「その拡張をするのは店長なんですけどね」

「フィギュアを集めるのも良いけど程ほどにね?特に等身大はケースだけでも結構高いからね」

「フィギュアっていう主語の部分を抜いたらエロい会話にしか聞こえんな、そう思わないタマキ?」

「私に振られても困るとしか…」

新しい玩具

フィギュアやらその付属品やら、タカミヤの部屋はフィギュアとショーケースで埋め尽くされていていつ外に出てきてもおかしくない、なのでちょこちょこご主人様に部屋の中を拡張してもらっている

別にそういう玩具を買っているわけではないのだが、フィギュアという部分を抜き、少しずつ大きくとか拡張とか言い始めるとちょっとエロく感じる不思議

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