何を言ってるか分からない 一応野生です
「店長ー、店長は居ますかー?」
「主様ならディジーと一緒に買い物中ー、急ぎなら電話を掛けて呼び戻すけど?」
「あー…では呼び戻す方向で、ちょっと急ぎなので」
「はいよー、それじゃあお茶を飲みながら待っててねー」
んーむ、なるほどなるほど…牛乳の仕入れ値がちょっと上昇か…先月交渉した時は1リッターあたり中銅貨2枚だったけど、大幅に上がって1リッター中銅貨6枚…3倍になったのはちょっと痛いなぁ…環境の変化やら何やらで量が減ったりはするし、逆に質の良い物になれば上がる事は有るし…今回はそのどちらも…かなぁ?
「どうしましょうか?赤字になる事は無いですが、2号店の分も纏めて仕入れているので3倍になると中々」
「まあ、そうねぇ、初日だけど売れ行きはどんな感じ?」
「朝食の飲物にと買って行く花街の人が試飲したところ大好評、マンゴー2種とバナナのどちらも300ずつは出ていますね、代わりにレモンとライムが止まっている状態ですが、あちらはどちらかと言えば夜の方が沢山出ますので誤差ですかね?」
「買ってきた牛乳は熱処理を加えて…その過程でちょっと量が減って…値段が…でー…まあギリギリだねぇ…でも大好評なら仕方なし、今月はもうその値段で仕入れちゃって、それとバナナとマンゴーは足りてる?」
「そちらは問題なく、牛乳の仕入れ値が3倍になったと言う部分以外は今の所大丈夫です、2号店が開店して出し始めたらどうなるかはわかりませんが…王族貴族近衛に騎士に場内警備兵にとい客層が大分偏ってますし…城内メイドなども利用しますので…読めないですね…」
「不寝番の時の気付けにレモンとライムの原液を頼む人が居る位だしねぇ、メイドさん達もメイドさん達で兵士と同じく24時間体制だから気付けに利用する事も有るし、それを考えるとバナナジュースなんかはあまりでない可能性も有るけど…」
「2号店は報告を待つしかないですねぇ…」
「そこのアニマルガールはどちら様ー?」
「んー?焼肉屋の店長代理、牛乳の仕入れ値が3倍になったらしいからその報告をね?」
「なるほど、ヒルダとディジーもそうだけど基本的には人と変わらんのね」
「サルからサルモドキになって、ヒトモドキになってヒトになったか、その他の動物から同じ様に進化してヒトになったかの違い位だよ、場所によっては同じサルからの進化でも尻尾なんかを捨てずにサルの特徴を残したヒトも居るのよ?」
「なるほどなー」
「店長、こちらの方は?」
「新しい同居人のジュリアさん、釣り業界でプロをやってたけど引退してこっちの永住権を取得して押しかけてきた人だね、店長さんが困ってたからこっちで引き取った、まあそっちに行く事は無いと思うから、ここか海でしか顔を合わせる事は無いと思うよ?」
「分かりました、急ぎの用としては仕入れ値の急騰位でしたのでこれで」
「はいはい、また何かあったら報告よろしくー」
「うぅむ…」
「どしたの?」
「いやー、何を言っているのかさっぱりわからなかった、ディジーとヒルダは言葉が通じるんだがなぁ…」
「あぁ…まあ、ヒルダとディジーはこっちの文字や言語を勉強して覚えてるからね、向こうの言語を覚えないと会話は成立しないだろうね、ボディランゲージも意味が違ったりするし」
「海に居るメイドさん達もたまに何を言ってるか分からなくなるんだよなぁ…母国の単語やなんやが出てくる感じで」
「それも良く有る事だね、和語の途中で英語やらその他の国の言語が混ざるのと同じ、ああその魚ね、をそのフィッシュねとか、そんな感じで単語だけが置き換わるような物よ、最初から最後まで勢いで母国の言語を使うのも居るには居るけど、そう言う娘には翻訳機を持たせてるから通じるっちゃ通じるはず、あのちっこい三姉妹が最もたる例だね」
「あいつらかー…」
「あの三姉妹は遊んで暴れるのが仕事みたいな物よ、たまに年齢相応になるけど」
「実際の年齢は…まあ聞くだけ無駄だな、見た目と年齢が比例してねぇし、ただ海の上を走るのはいただけないなぁ、最初は波打ち際とか浅い所を走ってるのかと思ったらそうじゃなかったし…」
「普通に水の上を歩く事も出来るんだけどね、あの三姉妹は脚力に物を言わせて足が沈む前にもう片方の足を出せば良いってのをやってるからねぇ」
「野生児もびっくりだよ、水の上の走るバシリスクは足が大きくフリンジ状であるとかそもそも軽いとか有るけど、あいつらの足は普通の人と変わらんし」
「まあ、うちのメイドは皆出来るんだけどね、毎日のトレーニングは伊達じゃないって事で、海でごろごろしてる様に見えてもどこかで鍛えてはいるのよ?」
「色々びっくりだわ」
「この家にもトレーニングルームは有るから、力不足だなーって感じたらそこで鍛えるのも良いよ、アリスも暇を見ては鍛えてもっと大きいGTを、ってやってるしね」
「そうだなー…やってればその内釣れる様になるとは思ってるが、トレーニングして鍛える方が早いか…」
「アリスはあれで2メーター近い90キロのGTを上げてるからね、次の目標は100キロのGTらしい」
「普通に世界記録超えてんじゃん…」
「釣ったのは一応南の島なんだけど、その時はまだ国内の記録を管理する所が機能してない、不正な物ばかりだった頃だから申請してないんだよね」
「あー、そう言えばちょーっと前に国際記録を管理している所から除名されてたな、そんなに酷かったのか?」
「除名はされてもホームページ自体はまだ残ってるから見れると思うけど、まあ、笑いがこみあげてくる記録が多いよ、記録を保有している人は共通点が有って、写真が無くても大丈夫だったり、拡大した物の合成で申請して通っていたりするのよね。
で、記録を申請して登録して貰う為には最低500円からを払って申し込みしないとダメ、何だけど、申し込みをしても通るかどうかは別でほとんど通らない、お金だけ取られるんだよね、計測方法が違うとか、計量方法が違うとか、その釣り方では認められませんとか難癖をつけて来て。
それから少しするとホームページを管理運営してる団体に所属しているクラブなんかの会員が急に新記録って出して来てたのよね、遠近法でやたらと大きくした物だったり、拡大して合成した物だったり、ラインクラスもおかしい物が多いね」
「そこまで酷かったのかー…と言う事は昔のタカムラとかハナイの記録も消滅か?」
「それは新しい所に申請し直して参考記録で登録済み、アリスのGTは100キロを釣ってから申請するって息巻いてるね。
新しい所は使用したロッド、リール、ライン、ルアーを全て表記する義務有り、ラインってメーカーによっては表記上のlb数と太さはそれでも、重量限界を軽く超えて耐えるって事が結構あるしそれを無くすために何号とかlbクラスでは無く、どこのメーカーのどれの何号を使ったかを明記しないとダメに。
確実に申請した記録を通す方法として、新品未開封のラインを買って巻く所、そしてそれを使って釣る所をノーカットで撮影、その動画と一緒に申請する事かな?すでに巻いてあるラインがそれと同じ物であると証明できればそれでも大丈夫だけど」
「結構厳しいな」
「それだけ以前の所が酷かったと言う事だね、でも今はこんな感じで、店長さんの釣ったバスが世界記録として登録されてるよー?」
「これかー…この記録は国際記録を管理してる方にも上がって来たから見たけど…マジでこんなの居るのかって議論を呼んだな…」
「推定25歳のブラックバスだね、ちょっと細長くなってる様に見えるけど、横に伸びただけで体高も十分大きいからねこれ、メーターを軽く超えてるから細く見えるだけで。
釣る所に関してはノーカーットかつ、半分公式半分非公式の大会で全てのボートに撮影班が乗って配信されてたから、今も動画サイトで見る事が出来るよー?」
「ま、それはまた後で見るとして、トレーニングルームはどこに有るんだ?」
「お風呂よりちょっと奥に行った所、直ぐに汗を流せる様にお風呂の近くの部屋をトレーニングルームにしてある」
「よし、それじゃあ軽くトレーニングをしてくるか、また後でねー」
「私は買い物先に残したままのディジーを迎えに行きましょうかね」
「そう言えば買い物に出かけて来るって言ってたね」
「整列ー、番号ー」
「がう」
「が」
「ががう」
「がおふ」
「がっふ」
「よし、それでは各自持ち寄った物を出して物々交換開始ー、私が用意したのは季節外れの栗、沢山あるから慌てない様にねー」
「庭に熊が入って来たと思ったらなんだこれ…全部ペット?」
「違うよ?山に住んでる野生の熊だよ?冬眠から覚めて春に実った物を一杯食べている時期だけど、縄張りにしている場所によって採れる物が違うからね、たまにこうやって収穫物を持ち寄って交換して他の物を味わおうという趣旨でございます。
タケノコが沢山取れる所も有ればあまり取れない所も有る、キノコが豊富でもそうでない所とか、結構広い山だから縄張りに寄って本当に採れる物が変わってくるんだよね、まあ熊同士の近所付き合いみたいな物よ。
今日来てるのはその中の一部、全員呼んだら4桁位来ちゃうからね、広い庭とは言え流石にパンクするから、大雑把にエリアを分割して、そこから代表としてきているのがこの熊達」
「野生の熊がドラム缶を抱えてるとかシュールだなぁ…」
「ドラム缶が色々と具合が良いのよ、冬眠前の備えでドングリやら何やらを保存できるし、冬眠に失敗してもしばらくそれで凌げる、それで凌いでる間にまた失敗したら…まあ、その時はその時、飢えて死ぬか、ここに辿り着いて食べ物を得て冬の間は番犬ならぬ番熊になるか」
「犬よりは効果が有りそうだが…必要か…?」
「んー…必要は無いね、でも熊も生きるためだからね、働く代わりに飯をくれってやつ」
「熊がドラム缶に入れて持って来たのは…良く分からん木の実と何かとキノコか、これ食えるの?」
「木の実は灰汁を抜いて乾燥、粉末にすればクッキーなんかの生地に、独特な形をしている植物は山菜で灰汁を抜けば美味しく食べれる、キノコは汚れを落とせば煮ても焼いても美味しく食べれる、そっちの尖っているのはタケノコ。
麓側は割と竹が有るんだけど、内側の方は竹が生えてないからねぇ、タケノコはこの辺りの熊に人気の商品だね」
「で、この中から何を貰うの?」
「山菜とタケノコと茸かな?今回は木の実は不要」
「熊ががうがう言いながら交渉して物々交換してるのって何とも言えない光景だなぁ…本当に野生かよ…」
「ちゃんと野生だよー?だから毎年山菜やらキノコやらタケノコやらを密猟しに来た人がこいつ等に襲われてるし、何人か死んでるね」
「人食い?」
「人は食べないね、縄張りを荒して餌になる山菜やら何やらを根こそぎ取って良く密漁者がいるから追いかけて追い払ってるだけだし、攻撃して来たらそりゃ反撃するよねって、その反撃に耐えれなかった場合死ぬだけだね」
「ベアパンチに耐えられるやつなんか居るのか…?」
「そもそも縄張りに入らなきゃ追いかけられる事も無いし、そもそも人の山に勝手に入ってきて密猟するのが悪い、後この山は関係者以外が入って野生動物に襲われて死んでも死体が回収される事は無い、襲われて何とか生きて帰って来ても猟師が入る事も無い、私有地では有るけどそれと同時に野生動物なんかの保護区だからね、むしろ生きて帰ったら不法侵入と密猟とで訴えられて罰金の支払い命令が飛んで行く」
「オーウ…つまり山のどこかには人骨が…」
「有るだろうねぇ、年に2回は山の整備で全域を見て回ってるけど、その時出てきた死体とか人骨も身元が特定でき次第親族に色々請求書とか支払い命令が飛んで行くよー?
大抵山に入るのは山の近くに住んでいる人じゃなくて離れた所に住んでる人、軽い気持ちで入って行って親族全員を巻きこむ大惨事になるって言う」
「まあ…でも同情は出来んか、不法侵入して人の家の物を盗んでたら射殺されても文句は言えんし、この国だとそれは過剰だなんだで無理だってのは聞いたけど」
「そもそも銃を売って無いからね、でもまあ、人が人を襲っているわけでも無し、相手は法の外に居る野生の動物、縄張りに入って荒して襲われて死んでも自己責任」
「がふー」
「なんて言ってるんだ?」
「虫入りの栗は無いのかって、残念ながら虫入りの栗は無いのよね、入ってるやつは保存してたら孵化しちゃうし、熊とか猪からすれば栗に入ってる栗虫はご馳走だしね」
「んー…猪が交換に来る事も有るのか…?」
「猪はドラム缶を持ち運べないから来ない、でも時期が来たら熊なんかと一緒に採取の手伝いをしてくれる、人だと目視で探すしかない松茸を匂いで探して確実に見つけてくれるからね、他にもしめじやら何やらの採取で大活躍、お代はどんぐり50キロ位」
「高いのか安いのかわかんねぇ…」
「まだここに来て間もないけど、どんどん常識がぶっ壊れて行くなぁ…」
「大丈夫です、最初はそんな感じでしたし、皆通ってきた道です」
「はーい、今日の晩御飯は物々交換で貰った山菜とタケノコとキノコの炊き込みご飯、それと1号湖で取ってきたヤマメの塩焼きとそのヤマメから取った黄金いくら、がんもどき、タラの芽とつくしの天ぷら、ジュンサイのお吸い物」
「んー…味付けが良いのか素材が良いのか…普通に美味ぇ…」
「その両方ですね、物々交換に持ってくる物は良い物ばかりなので素材自体もかなり良いですよ?」
「美味しく無い物は野生動物も食べないからね、おかわりはいくらでもあるから好きなだけどうぞ」
「うーん…気にするだけ無駄か」
「美味しい物を持って来てくれるお隣さんがいる程度に思っておけばいいんですよ」
野生児もびっくり
三姉妹だけでなくメイド達は右足が沈む前に左足を前に出す、と言う理論をいとも簡単に行える脚力を持っている、植えた木を毎日飛んでいれば跳躍力が上がる理論も…
ただ、脚力任せに走るのは基本的には三姉妹だけ、基本的に他のメイドは水面に足場を生み出す、または浮いて優雅に水面を歩く
なおご主人様と一部メイドは水圧を気にせず改定を散歩できる




