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春祭り 肉体言語でもぎ取れ

 おー…人が沢山で賑やか、開催しているのが農大なだけはあって野菜の無料配布なんかもやってるからそれ目当ての人が半数以上だろうけど、近隣以外からも結構人が来てるみたいだし、賑やかなのは良い事、誰も居ない閑散とした祭り程寂しい物は無いしね。

 無料配布の野菜は必要ないのでそこはスルーして他の場所へ、お祭りと言う事は何か色々出し物が有るだろうし、まずは何か飲み物でも買って一息つきたい所、問題は…名前が独特過ぎて何が何だかわからないと言う事だね…

 カルロス君が密輸してくれたドキドキジュースとか、大隅研究室が精製した健康飲料とか、人工物100%ミックスジュースとか、取りあえずある物を全部混ぜちゃいまし茶とか…もう何が入ってるのか…わけがわからないよ…

 普通に販売してる所を見ると危険性は一切ないんだろうけど、買ってみるまで分からないと言うのが何とも…取りあえず人工物100%ミックスジュースでも買ってみるか、1杯50円と安いし、不味かったらその時はその時、まずは一杯飲んでみるべし。


「あれ?お兄さんじゃん、うちの学校に来て何してんのー?」

「あ、ほんとだ、お兄さんだ」

「んー?お散歩でぶらぶらしてたらお祭りをやってるって聞いたからちょっとねー、それにしてもこれ何とも言えない味をしてるね、不味くは無いんだけど」

「あー…アレを買ったのかぁ…あの辺りに有る屋台は怪しくて客が寄り付かなくなるからって隔離されてる所なんだよね、危険性は無いんだけど」

「密輸云々は嘘だけど、国内だと隔離した屋内で栽培しないとダメな植物である事には変わりないしねー、健康飲料とかたしかに身体には良い成分の詰め合わせだけど味は度外視、お茶は試験農場とか試験林に生えてる雑草詰め合わせで作った物だからねー、不味くは無いらしいけど、普段からその辺の雑草をブレンドしてお茶を作って節約してる連中だから評判通りで不味くは無いんじゃない?」

「私が買ったのは人工物100%ミックスだね、色は透明なのに香りと味は果物系のミックスで何とも…」

「精製水にクエン酸やら甘味料やら香料をドバドバ使って果汁0%らしいね、精製するのに使ったのはレモンとかバナナとかリンゴとかモモとか、一応果物なんだけど、それから抽出して精製して全て人工物に置き換えてるって言うのがね」

「ある意味実験だよね、精製水は水道水から不純物の無い純水を精製、クエン酸等はレモンから、甘味料と香料は各種果物から精製、後はそれを混ぜてジュースにした物を人工物100%として売りに出すって言う、ある意味農大らしいと言うか何と言うか」

「飲んだ感覚は完全に水なんだよね、果物特有の少し水より重い感覚が無いし、でも味は濃いミックスジュースで…色々と思考がバグる…」

「せめて色を付けたりほんの少し粘性を持たせるだけでも変わると思うけどね、でも実験ってそんな物だよ、普通に試験農場で育てたイチゴとか温室で育てた各種果物を使ったドリンクはまた別の場所に有るよー?」

「うちの研究室が出してる出し物でも見て行くー?大した物は無いけど」

「何を出してるの?」

「私達の場合は実家に関係のある研究室に入ってるからねぇ、野菜とかそう言う物がメインよ、つまりは野菜を使った物だね、畜産から肉貰って来て串焼きとかやってるよー?野菜3肉1の割合だけどね、肉をメインに食べたければ畜産へどうぞって感じで」

「農大の春祭りって大体そんな感じ、取りあえずうちの所に行こー、そして売り上げに貢献して?1位取れたら今年の研究室の予算がちょっと増えるのよ、それに加えて賞金10万円。

うちの研究室は私と藤と2年が2人だけだから単純に1人25000円だね、教授や院生も居なくはないけど、そっちは予算増額が狙いで賞金は興味なし」

「特に今年…と言うより少し前までは学校自体が閉鎖されてたし、色んな所で色々不足したりダメになったりした物が多いからどこもかしこも予算増額狙いで必死なのよね、お金が掛かるクラブも予算を増やして貰えるから少しの赤字には目を瞑って採算度外視で数売ろうとしてる所も有るし」

「どこも必死って事だね」

「飲み物に関しては安いと言うだけで買う人も居るから、あの隔離された屋台も結構な売り上げを出すだろうねぇ、と言うわけでうちの研究室の出し物に一名様ご案内ー、一杯買って食べて行ってねー?」

「そう言えば何の研究をしてるの?」

「新しい農薬とか肥料、品種改良の研究だね、人体には害のない、特定の虫だけを除ける農薬とか、栽培に掛かる期間を短縮できる肥料とか、季節問わず栽培可能な品種を作り出そうとしたりとか色々やってるよー?」

「季節が合わない物、土地柄栽培できない物は輸入してたりするけど、国内のどこでも栽培出来る様にって色々弄ったりして研究をねー、今やってるのは1年通して、春夏秋冬で4回収穫できるお米や水田作り、休耕せずとも連作障害とかそう言う物が起きない様にするための肥料作り、かな?

問題は冬の分を収穫する前に学校が閉鎖されてほったらかしにされてお米が全部ダメになったと言う事よ…雪が降ったり気温がマイナスになっても順調に穂をつけていたし、収穫した後に分析やら何やらをして実食…が控えてたんだけどねー…全部ダメになっちゃった。

生き残ってた分も研究と次の田植のための準備で全部使われて実食は無し、収穫量が予定の1%にも満たないから、冬にも問題なく穂をつけて収穫をしようと思えばできる、と言うデータしか取れてないんだよねぇ…食べた時の味がどうとかそう言うのは全く」

「畜産程はダメージは無いんだけどね、お米に関しては20かけ20の試験水田1つ分、他の野菜は育ち過ぎて人が食べるのには適さないから飼料として畜産に安値で卸したり、時間が無駄になっただけとも言えるね。

水田1つ分の種すら残って無いから少しずつ増やして行かないとダメだけど、研究が上手く行けば1年中お米が収穫出来る様になるね、土壌だのなんだのの検査もして問題が無い、年中通して安全なお米が収穫出来る、と言うお墨付きが出るまでは無理だけどね」

「大変だねぇ」

「昔みたいに米不足だなんだって言う事は無くなってるけど、何か有って従来のお米を栽培、収穫する時期に病気が大流行ってなった時に備えて、雪が降ろうが水田が凍結しようが元気に育つ品種を作りだす、と言うのが今うちの研究室で一番お金が掛かってる研究」

「葉野菜とかそう言うのは北の方で雪に埋めて栽培してる物も有るからあまり研究しなくても良いんだけどねぇ、お米は主食だし、ちょっと余る位が丁度良いのよ、っと着いたね、さぁ好きな物を買って食べて行ってくれー、味は保証するよー?」

「好きな物も何も串焼き1種類しかないけどね、塩胡椒だけか焼肉のタレ甘口辛口の味付けで3種に増やしてるけど」

「じゃあ一通り10本ずつ頂戴」

「はい毎度ー、お兄さんが10本ずつご所望だ、直ぐに準備せよー」

「はーい、30本で4500円になりまーす、それはそうと藤先輩も男を引っかけてないで手伝ってくださいよー、地味に繁盛してるんですから」

「発酵蔵でお酒を作ってる研究室の隣に串焼きを出すとやはり売れ行きが良いのぉ、この調子で1位を取ってお小遣いを貰うのだ!」

「頭割りで25000円ならバイトした方が早いですけどね」

「研究の予算が増えたら教授が良い所に連れて行ってくれるさー、研究の為にと言う申請が通れば海外旅行の費用も全部学校持ちだぜー?まあ観光は出来んけどな、文字通り研究のために現地へ飛ぶわけだし」

「サバンナで学ぶ現地の農耕と野生動物の対策は流石にきついっす」

「草食動物を狙って肉食まで寄ってくるもんねぇ、先輩達は上手くかわしましたよねぇ…」

「私達は実家の手伝いが有るからねー、何せ農家の娘、収穫時期になるとそっちを優先しないと食卓に並ぶ野菜が寂しくなるのだよ」

「市場に卸してスーパーやら何やらに並ぶ頃にはごちゃまぜでどれがうちが栽培していた野菜かはわからなくなるけどね」

「人数が少ないし、まあ適当に楽しくやったらいいだろーってクラブ代わり入ったら超ハード、まさか結構ガチ目の研究をしていたとは…」

「そして段々と染まって行っていつかは私達が新入りを逃がさないよう逃がさない様にって動く事になるんですかね?」

「そうじゃない?ひょっとしたら国内の食糧生産事情を支えるかも知れない研究だからちゃんとやろうねー?馬鹿をやったやつが居たせいで新品種の稲が全滅寸前まで放置されるに至ったけど、順調に行けばあのお米は国内で1年を通して栽培されるようになる物だからね」

「お米が多少余っても米粉にして小麦アレルギー人向けのパンなり麺なり色々使い道は有るからねー、ちょっと多くて余る位が丁度良い、それより早く串焼きを用意するのだー」

「急いではないからゆっくりでいいけどね、串に刺さってるのは青バナナとズッキーニと豚肉、ミニトマトとニンジンか」

「バランスなんて物は考えない、うちの研究室が抱えてる試験農場でとれる物を使う、ただそれだけだね」

「豚は畜産と玉ねぎを物々交換して貰ってきたやつ、おかげで向こうの串焼きは玉ねぎ入りだぜ!」

「大分ぼられたもんねぇ、畜産は被害が大きくて結構な数を殺処分したし、閉鎖前にばらして冷凍してたのを貰うのに大分持って行かれたし」

「畜産も畜産で大分切り詰めてるみたいですし、国元から色々輸入して出してる所ほど派手な事が出来ないのが辛いですね」

「アレ研究費を使ってやってるから結構危ないんだけどね、うちや他の所からダメになった果物やら何やらを持って行って色々精製してる所は大分余裕あるよね、雑草茶とか雑草炒めとか出してる所も」

「雑草まで売り物にするあたり商魂たくましいと言うか、被害が甚大だったと言うか」

「短期で収穫出来る促成栽培の物は無料配布の方に回ってるし、色々確保するために物々交換で回したりもしちゃったからなぁ、農大は究極的に言えば物々交換すれば生きていけるけど、こういう時に相場が爆上がりするのが辛い所だねぇ、試験林の方で作ってる炭も高いのなんの。

その交渉を私達が全部やったんだから後輩達はせっせと焼いて売るのだー」

「大分値引きして貰ってもレートがやばかったんだけどね、まあ、使ってる物の味は保証するよー?農薬マシマシ促成栽培肥料マシマシの野菜だけどな!」

「農薬だのなんだのと言うと嫌がる人は多いけど、使ってる物は毒物じゃないし、唐辛子とかそう言う物から精製した除虫薬に除草薬、促成栽培の肥料も科学的に分析して貝殻やら何やらから精製した物だしね、区分的には農薬とか促成栽培肥料って事になるだけで危険性は一切ないって言う」

「そう言う物が有ると言う事を知らない人が多いのも事実なんだよねー、やたら無農薬で育てろとか言う人が居るけど、だったらヘクタール所か最低でもキロ平方ある農地の雑草を全部人力で抜ける物なら抜いてみろや!って言いたいね」

「農家の娘は大変ですねぇ、塩胡椒10本焼けましたよー、後人力での草抜きは御免被りたいですね、去年の田植えの実習ですら腰がやばかったと言うのに」

「試験水田は文明の利器を使えるけど、講義や実習でやる勉学の方は基本的に昔ながらの人力やら機材を使ってやるからね、でも千歯扱きをガッタンガッタン言わせながら藁と籾に分けるのは面白かっただろ?」

「その後精米するのが大変でしたけどね、精米まで人力とかだるすぎですよ」

「そう言う物を経験してこそ文明の利器を有難がれるってやつだよ、それとそうやってやってる時にふと今ある物より良い物を思いつくかもしれないだろ?もし思いついて自動化、商品化する事が出来ればお金持ち確定だぞー?

人が生きて行くには食べ物は欠かせない、その食べ物を扱う物で画期的な物が出来ればほぼ間違いなくと言って良い位には売れるぞー?まあ大体は開発され尽くしてるから難しいけどな」

「んー…ズッキーニの食感が良いね、コリコリとしてて若干タケノコに近い硬さ、トマトは焼いて甘みが増して、バナナもサクッと、ただ…肉はもうちょっと塩胡椒が多めでもいいかな?ちょっと塩辛い位の方が他の野菜の美味しさが引き立つね、身体には良くないけど、肉だけは別に塩と胡椒をバサッと多めに、野菜は塩胡椒なくても」

「だそうだよ?」

「注文の数が多ければさらに別の注文も付けてきましたなぁ…と言うより先輩のコレですか?」

「違うよー?ちょっと高いウナギを奢って貰ったり、染め物を教えて貰ったりした位だよ、背負ってる荷物からしてまたぶらぶらと旅をしてそのついでにここに来た感じだし」

「だねぇ、今は特にやる事が無くてまたぶらぶらしてる感じだね、予定としては2泊3日位」

「じゃあ学生寮に泊ってくー?作業着を着てれば1人2人増えた所で誰も気が付かないし、お風呂は研究室が有る等に有るシャワーを使えば良いしね」

「女子寮に男は不味くないですか?」

「それもそうだね、研究室の方に泊りと言う事で、そして明日は女性をターゲットに売り子をして貰おう、私は賞金10万円が欲しいんじゃ!」

「頭割りで25000円ですけどね、一体何に使うんです?」

「そりゃ当然新しい服でしょー、私はまだ女は捨ててないからね、お洒落のためにお金は必要なのだよ」

「もうここに滞在は決定した感じ?」

「当然、逃がさず確保しておくのだ!まあ夜は夜で学生や教授等の内輪だけのお祭りも有るしね、一般開放してる時間帯には見れない物も有るよー?」

「教授対助教授の肉弾戦とか見物だよね、広い農大とは言え使える場所は限りがある、そして研究室も教授の数だけあるには有るんだけど…助教授も自由に使える試験場が欲しいわけだ、それを教授と肉体言語で語ってもぎ取るって言う行事がねー」

「うちの教授はその点実学で鍛えられてるから凄く強いんだよね、掴まれたらお終い、打撃のみのルールでも一撃必殺、サバンナで野生動物とやり合えるだけは有るよね」

「助教授はインドア派だからねぇ、あれじゃあ70超えてる教授にいつまでたっても勝てないよね、ジムに通ってはいるみたいだけど、地力が違いすぎるしね」

「タレ付きも焼けましたよー」

「取りあえず串焼きを持って研究室に行くかー、流石にその荷物は色々と邪魔になるし」

「そうだね、いこいこー」

「ふぅむ…まあ良いか」

試験場争奪戦

基本的には試験場は教授が管理、助教授も研究用の試験場が欲しいけどそう簡単には貰えない、年に一度の春祭りの夜の部に教授と助教授の肉体言語による交渉で助教授が勝てば試験場が一部貰える

藤と蛍が所属している研究室の教授は単純に強く無敗、平地に居る猪や鹿などの野生動物とも生身で格闘出来る

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