そうだ、お仕事参観に行こう あーっと困りますご主人様、これはいけません
ニラ・味醂・砂糖・ゴマ・ごま油、調味料をよく混ぜてニラをつければニラダレの出来上がり―マヨ七味と混ぜてレタスを刻んで蒸し鶏を解して和えると美味しいよ―
ベリスとシュリエルが外で依頼を受け仕事をしているのは知っている。
ただたまに愚痴をこぼしてくる位で実際何をやっているかは知らない。
「というわけで二人の仕事を見に行こうと思うんだけど、どうだろう狐さん」
「正気ですかご主人様?」
正気を疑われた。
二人が来てからもうかなり立つけどたまに愚痴をこぼすだけで何してるか知らないんだもん。
「見にいっちゃダメ?」
「もう一度聞きます、正気ですかご主人様?」
二度も疑われた。
その後正気を疑われた仕返しにとモフりという名の説得を腰砕けになるまで続け、何とか狐さんから許可を得た。
「ルシフ、いますか?」
「はいはいー、今日は何の用ー…って狐どしたん?」
「ちょっとご主人様に可愛がられまして」
「ははは、愛されてるねぇ狐、それで顔真っ赤にしてソファに寝転がったままビックンビックンしてたのか。
それで何の御用で?」
「んんっ…!ご主人様がベリスとシュリエルの仕事を見に行くそうです、私もついていきますが念のためルシフも同行を」
「はいはいー、で、件の二人には?」
「二人には伝えなくて結構です」
「ははは、あの二人も災難だねー」
日程を決め二人が出かけた後、最後の確認をする。
お弁当持った、冷蔵ボックスにお菓子入れた、紅茶の茶葉持った、お湯を沸かせるための道具持った、その他諸々、よし確認完了、出発!
何所の国に行くかは事前に狐さんに調べて置いて貰ったので門を開いて貰い先回りする。
狐さんとルシフもついて来てくれているので特に危険なこともないだろう。
門を通り抜けた後その場で立ったまま待つのもあれなので、椅子とテーブルを取出しお茶を用意し飲みながら待つことにする。
周りが少し騒がしいが特に気にしない、誰か近寄ってくるがすぐにルシフに拘束され、縛られた後ポイっと捨てられる。
狐さんの見立てでは二人の到着までもう少しかかるという事なので建物内を少し見学して回る。
あー、このシャンデリアいいなぁ、狐さんに頼んで大広間に合わせた色合いにして作ってもらおう。
この扉の装飾もいいな、後これもメイド達が喜びそうだ。
他に何かよさげなデザインの物はメイド達が喜びそうな物を探して回っているうちに。
「そろそろ二人が到着する時間です、戻りましょう」
二人が来る時間らしいので戻る、まだ見て回ってない場所は帰りに見て回ろう。
元来た場所へ戻ると二人が何か交渉をしていた、交渉相手がこちらに気が付くと―
「そやつらだ!そやつらが急にこの城に現れて好き勝手にしておるのだ!
取り押さえてくれたら追加報酬を払おう!だから何とかしてくれぬか!?」
二人がこちらを振り向いたので笑いかけながら手を振る。
何か叫んでいた人は二人が振り向いてる間にルシフに縛り上げられ、振り向いた二人は顔が引きつっていた。
「ご主人様、なぜこちらに?」
「いやー、二人がどんな仕事してるか知りたくなったから見に来ちゃった」
「そうですか…それでメイド長と副長もここに居るのですね」
二人に何故ここに居るかを話した後、このままでは仕事にならないので縛られた人の開放を求められた。
「はぁ…はぁ…それで、そやつらは一体何者なのだ?」
「私達のご主人様になります、断片的にでも知りたいのであれば昔話か神話を研究するのがよろしいかと…」
「そ、そうか?後で学者たちに調べさせておこう」
「それで、今日の依頼内容は?」
「うむ、勇者殿はこの村と街を経由してこの砦へ向かってほしい。
魔王殿は部屋で待機している姫を連れて砦の向こう側にある廃城で待機。
後はいつもの様にお願いします」
「わかりました、では早速準備いたします」
人おり依頼の内容を聞いた後何やら人が整列を始め、シュリエルとベリスは部屋の外へ出て行った。
そして…
「ふはははは!魔王ベリスが王に告げる!この国の姫は我が預かった!
返して欲しくばこの国の何処かに封印されているという秘法を持ってくるのだな!
それはでは我が姫を預かっておく、あまりにも遅くなりすぎると…姫はもう人前にはでれぬやもしれぬなぁ?」
ベリスが何かを叫んでいた、そして周りは―
「くっ、姫様を人質に取るとは卑怯な!」「誰か魔王を倒せるものはいないのか!?」「魔王討伐に名乗りを上げる物はいないのか!?」「国中にお触れを出すんだ!」
―などと動揺したように言っていた。
暫くしてシュリエルが人に連れ戻ってきて椅子に座った人の前に傅いた。
「良くぞ参られた魔王討伐に名乗り出た勇者よ、実はこの国の至宝である姫が魔王に攫われてしまったのだ…」
椅子に座った人が説明を始める、説明が終わった後。
「わかりました、このシュリエル、見事魔王を打倒し姫を取り戻してきましょう」
すると周りは勇者だ、流石勇者だと言い始める。
「うむ、頼んだぞ勇者殿、魔王を討伐し姫を連れ帰った暁には姫との婚約を約束しよう」
「ははっ、勿体無き幸せ」
「では早速だが、支度金を用意して置いたので役立ててほしい」
何やら命令を出して箱を持ってこさせシュリエルの前に置きシュリエルが開ける。
「では早速行ってまいります」
そう言いシュリエルは出て行った。
その後椅子に座った人が更に―
「パレードの準備を開始!民に振舞う料理も忘れるな!材料が足りなければ備蓄してある物も全て回せ!」
―そう命令を飛ばしていたが、特に気にする事はなくシュリエルの後を追う事にした。
シュリエルは受け取った支度金を手に持ち店に入り剣や鎧、盾などを購入。
その後民家を回り箪笥や壺を漁っていた、住人は何も言わずに拝んでいた。
まだ暫くは民家を回りますとシュリエルが言ったのでベリスの方を身に行く事にした。
「ベリス様、お茶の用意ができました」
「ありがとう、移動中寒くはなかったですか?」
「いえいえ、大丈夫です!ベリス様がしっかり抱き締めていてくれたので暖かかったです!」
「そう、ならよかった、一緒にお茶を頂きましょう?」
攫った姫?らしき人と歓談しつつお茶を飲んでいた。
「あら、こちらに来たのですか?」
「ベリス様、こちらの方々は?」
「はい、私たちのご主人様になります」
「え?ベリス様っててっきり常に一緒にいるシュリエル様と出来ているものかと」
「あー…まあ…出来てなくはないですが…」
「では私にもまだチャンスはありますね!」
何やら興奮した様子でベリスに話しかけていた、適当に挨拶をかわし一緒にお茶を楽しむ。
ちょうどいいので冷蔵ボックスに入れてきていたお茶菓子を出すと感動して泣いていた。
「私もこの方の元で働きたいです!」
「それはメイド長に聞いてください、私の一存で決めることはできません」
その後メイド長は何所にと聞かれ?こちらの狐さんですと答えると交渉を開始していた。
採用しないよね…?あ、する?磨けば光る?そうですか…お仕事を見に来ただけだったのに一人お持ち帰りすることになった。
シュリエルの元に戻ると何か巨大な野生生物と戦っていた。
特に苦戦もするはずはないのだが何かやたらと時間をかけている、周りには分かれるまでは居なかった戦士っぽい男性に魔法使いっぽい女性、僧侶っぽい女性を連れていた。
他にも素手で戦う格闘家っぽい男、馬車を守る者もいた。
シュリエルは支持を飛ばし手加減をしながら相手しているようだった。
「あ、ご主人様、ベリスの様子はどうでした?」
攫った姫?らしき人とお茶をしていたので「一緒にお茶を飲んでお菓子を楽しんだ」と言ったら少し膨れていた。
時間もちょうどお昼時なのでお弁当を食べるついでに機嫌を直すためお茶をお菓子も用意してやると魔法使いっぽい女性と僧侶っぽい女性が涎を垂らしてみていたので分けてあげた、泣きながら食べていた。
男性人はお弁当に興味津々で大量に作ってきていたのでおすそ分けするとこっちも泣きながら食べていた。
「シュリエル様、あのお茶とお菓子は一体…?」
「あんなに美味しいの頂いたことが無いんですけど…」
「あれは茶葉もお菓子もご主人様の手作りだよ、屋敷でも頻繁に取り合いになる」
「私達も屋敷に行けば毎日いただけますか?」
「無理じゃないかなぁ…ご主人様の左右を固めてるメイド長と副長、後纏め役達は論外だけど私くらいは軽く倒せないとお情けで一個もらえるかどうかだよ」
「ぐっ…そこまで…」
「でも諦めきれない…!なんとか…何とかする方法は…!」
「まあ…駄目元でメイド長に聞いてみればいいんじゃないかな…、今ちょうどあそこにいるし」
ベリスの所にいた人と同じようにまた交渉が始まった。
今度こそ採用はしないよね?しない?よかった、え?見習いとしてさっきの人の御付にする?
こちらもまた磨けば光ると?ソウデスカ、ウンワカッタスキニシテ。
追加で二人お持ち帰りが決まった後砦にたどり着いた。
時たま狂ったようにこちらに襲い掛かってくる野生動物はそこそこの頻度で発生する異常個体で家畜などを襲うから始末しなければならないらしい。
手加減していたのはその場数と経験を踏ませるためらしい。
砦内部に入ると人が駆け寄ってくる。
「お待ちしておりました勇者殿、これよりわれらが廃城への道を切り開きます。
どうか魔王を討伐し姫様をお救い下さい」
そういうと廃城へ続く扉を開き何か皆突撃していった。
廃城からも人が出てきて乱戦になり、シュリエル達は廃城へ向かって走っていった。
…追いつけないから狐さんに門を開いて貰いベリスの所に行く事にした。
「あらご主人様お帰りなさい」
「お帰りなさいませご主人様」
ベリスが何か教育をしていた、服装もドレスからメイド服に変わってるし…
この姫様?らしき人とさっきの二人の名前もまだ知らないんだよなぁ…屋敷に戻ってからでいいか…
「さっき砦に着いてその後シュリエル達が走っていったからそろそろ来るんじゃないかな?」
「あら、そうですか、では準備してまいります、姫様、行きますよ」
「はい、ベリス様、それではご主人様行ってまいります」
目の前で姫様?はメイド服を脱ぎドレスを着用する、羞恥心と言うものは無いのだろうか、無いんだろうなあ、見せつけてきてたし…
大広間に移動しシュリエルが来るのを待つ、その間狐さんが何か話していたがなんだろうか?
シュリエルが到着した後は互いに前口上を述べ戦い始め、何やら水晶玉みたいなものを取出し使う、その後ベリスが何かを言い残し消える。
シュリエルが姫様?をお姫様抱っこで抱え外に出ると歓声と勝鬨が上がる。
後はこのまま各町と村を練り歩いてお城まで帰るらしい、腕が疲れない?って聞いたら慣れてますって答えてきた。
お城に着いた後椅子に座っていた人の所まで戻る、王様だったらしい、という事はこれ本物の姫様?
まあいいか、身分とか何の意味もないし…
その後お祭りが始まり盛り上がってきたところでパレード開始、パレード中シュリエルと姫様の婚約発表、これに関しては振りなので王様も笑ってみていたが。
姫様が「嫁ぐべき良い方を見つけましたので城を出ます」と大々的に発表、王様大慌て、何所の誰だと御騒ぎ。
嫁ぎ先が私の所だと知り安心したような、これ本当に大丈夫か?と言ったような百面相をしていた。
なぜメイドとして雇うはずが嫁いでくる事になっているのかはわからん、多分狐さんのせい。
ルシフは大爆笑してた。
魔法使いっぽいのと僧侶っぽい女性はメイド見習いのままだったので安心、いや安心していいのか?
お祭りは数日続くとの事なので報酬を受け取り屋敷に帰る。
シュリエルとベリス達は主役なので期間中国にある全ての村や町に行かないといけないらしい。
この依頼、というかお祭り?兵士たちに異常個体との実践経験を積ませると共に巡回し、各町や村の巡回の頻度を増やすかどうかの確認も兼ねていた。
姫様を連れていくのは王族が現場を知らないままはさすがに駄目だろうという事で見識を広げさせるため、姫ではなく王子の時もある、大体五年に一度やっているらしい。
今回はたまたま姫様だっただけで、次回は第二王子が攫われる?予定との事。
お祭りが終わりその翌日、姫様達のお見送りが盛大に行われた。
「ベリス様、シュリエル様、娘の事を…ユースティアの事をよろしく頼みますぞ」
「お父様、そんなに泣かなくても…」
娘との別れに王様は泣いていた。
「マキア、頑張ってくるのですよ」
「はい、お母様」
魔法使いっぽい女性は母親と。
「テレサ、あなたならば何も問題はないはずです、今までの様に慈悲の心を忘れずに…」
「今まで有難うございました、院長様」
僧侶っぽい女性は修道服を着た女性と。
それぞれ別れの挨拶をしていた、今生の別れでもなく生きている間はいつでも会えるのになぁ…
暫く別れを惜しんだ後教皇と名乗る人が出てきて儀式を始め―
「女神ミネルヴァよ第一王女ユースティア、賢者マキア、聖女テレサに祝福を与えたまえ、そして女神ミネルヴァの加護があらんことを…」
んー…?ミネルヴァの祝福とか加護上げればいいの?
とりあえず狐さんに屋敷で摘みを片手にアルコールを飲んでいるであろうミネルヴァを呼んできてもらう。
狐さんが「正気ですか?」って返してきた、祝福と加護を―って言ってるから呼んだ方がいいじゃん。
わかりましたといい狐さんは屋敷に戻っていった、ルシフはやっぱり爆笑していた。
儀式が終わろうとした頃大広間が光に包まれた。
ミネルヴァは普段は付けない鎧や盾を身に付け大広間の真ん中に立っていた。
その後ミネルバがユースティア達に近づき―
「この者達に祝福を、そして女神ミネルヴァの名の元に加護を与える、では去らばだ」
祝福と加護を与えた後さっさと帰っていった、飲み足りないらしい、今度摘みでも差し入れよう。
大広間は静まり返った後歓声に包まれた、女神が降臨した日として語り継ぐらしい。
ルシフはそりゃこうなるよねーって笑いながら言ってた。
お祭り騒ぎは深夜まで続きお開きとなった。
別れは済ませてあるので三人を連れて帰る。
「ここが皆で住んでる屋敷、部屋は好きなところを選んでね」
そう言い残しお風呂に入り寝室へと入る。
この数日間楽しかったなーと思いふけっていると扉が開きユースティア達が入ってきた。
狐さんも入ってきた、監視との事、またですかそうですか。
三人ともかなり積極的だった、祝福と加護が付いてるせいか決着がつくまでかなり時間がかかった、だが勝った。
その後狐さんが以前腰砕けにしたお返しとばかりに油断していた所に襲い掛かってきた、ルシフもたまにはサービスしろオラーと言いながら乱入してきてしっちゃかめっちゃかになった、今度仕返しをしてやる…
翌日ミネルヴァに祝福などのお礼に摘みを作って持って行く、ユースティア達を見かけたので大量の摘みを一緒に持ち運んでもらう。
目的の場所に着くと摘みをどんどん追加していくが昼間から酒を飲んでいるミネルヴァとディアナを見て三人は固まっていた。
復活した後ミネルヴァに誘われたので皆でお酒を片手に摘みを食べた、私は飲めないのでお茶だったが。
のんびりとした時間を過ごしている間ユースティア達はミネルヴァに祝福などのお礼を言っており、ディアナがちょっと、むーっと言っていた、あの時ディアナは呼ばれなかったからね…
手招きして膝の上に座らせ撫でてやるとすぐに落ち着いたのでそのまましばらく過ごした。
「それで、何故ここに居るのだ?娘よ」
「この国の仕事をするためですが何か?」
「てっきりもう帰ってこない物かと」
「大丈夫です、後進が育つまでは勤め上げますので」
「ただいま戻りましたお母様」
「あら、マキアどうしてここに?」
「お母様、こちら土産です、仕事もまだ残っていますので暫くは屋敷からの通いですね」
「そう、それならまだ暫くあえるわね」
「そうですねお母様」
「院長、怪我をしていた方の治療は終わりました」
「ありがとうテレサ、でも朝からずっと続けていて平気かい?」
「いえ、このくらいなんともありません、ミネルヴァ様から祝福を頂いた時からずっと調子がいいのです」
「そう、常に元気でいられるのならミネルヴァ様に感謝をしないとねぇ」
「はい、毎日感謝をしております」
「ご主人様、そろそろ手を止めて頂きたいのですが」
「こっちもとめて貰わないとちょっとつらいかも…」
昨晩不意打ちをしてきた二人にお仕置きをしていた、何があっても動かないように命令し執拗以上に尻尾の付け根などを刺激する。
二人の腰がガクガクしているが手は止めない、大義は我にあり!
「だーめ、これはお仕置きなんだから」
尻尾を弄るのはまだ終わらない…
その後仕返しが仕返しを、復讐が復讐を呼び血で血を洗う抗争が勃発。
この屋敷で狐さんに逆らえるものは居ない、逃げ場などなく、そして見つけ次第好きにして良しとの命令が下された。
狐さんの怒りは収まるのに半年くらいかかった。
ルシフは三ヵ月くらい引籠ってた。