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一応最終日です 日常では役に立たない知識

「すみませーん、店長いますかー?」

「お兄さんは仕事でお出かけ中でーす、今日のお昼までなので夜までには帰ってくると思いますが、お兄さんじゃないと解決出来ない事ですか?」

「お店の方ではなく農場の方の問題なので店長じゃないと無理ですねぇ…」

「書類とかそう言う物であれば協力できるんですけどね、農場の方だとどうしようもないですね、何が問題かすらわかりませんけど」

「初めで育てる物なので何が正解かわからない、と言う事だそうです、新しくマンゴーとバナナを温室で育て始めたのですが、可食部がほぼなくほとんど種で小さいまま黄色くなるのが正しいのか、それとももう少し大きくなるのか。

持って帰って来て貰ったのは種だけなので、それで正しいのかどうかがわからないんですよね、実物を見た事がないので」

「シスターさんなら見た事が有るんじゃないですか?」

「あの人は今シエル様と一緒に牧場の方に出張中です、急ぎでは無いのですが、取り返しのつかない状態だった、という事態になっていると結構大変ですので」

「こっちにもマンゴーとバナナはありますけど、同じ生育環境であるかどうかわかりませんからねぇ、シスターが不在ならお兄さんですよねぇ…ですが今日のお昼まで仕事で不在ですので、夜までは帰ってきませんね、片道8時間位掛かるところにいますので」

「今すぐ出す物ではなく、夏から出す予定の物ですので急ぎとも言えませんけど、植物の病気は致命的な物が多いですし、早め早めの対処が大事ですので…」

「こっちと同じ物であればわかるんですけどねぇ、こっちのマンゴーはこんな感じ、国内で生産しているのがこっちの赤いやつ、輸入しているのがこっちの黄色いやつ、似ているのはどっち?」

「どっちもですね、ただ産地は同じ、赤いものは甘くて黄色いのは酸味が強いそうです」

「山地は同じでそれとなるとこっちの物とはやっぱりちょっと違いますね、輸入した黄色い方は青い状態で収穫、輸送中に黄色くなるだけで熟しているわけではないので酸味が強いわけですし、現地で同じ物を食べた場合こちらの赤い物とあまり変わらないんですよね」

「それだと微妙に違いますね、こちらの黄色い物は少しは甘くなるそうですが酸味が強いままらしいですし、赤い物が似ている位でしょうか?これのように光沢はありませんけど、それとこれよりは小さいですね、黄色い方も」

「ただ小さいだけなら生育不良なんかも考えられるんですけどねぇ…まあお兄さんが帰ってくるまでは待ちですね、それにただ温室にしただけでは現地と同じ物になるってわけでもないですからね」

「ところで店長はどこで何の仕事をしてるんですかね?」

「釣り番組の出演ですけど、無人島で3泊4日のサバイバルだそうです、地図でいうとこの島、今はまだここに居ます、企画が変わっていない限りは」


「さぁ、今回の企画も残すところ後3時間、最後にお昼ご飯を作って食べて後はもう迎えの船を待つという状態なのですが、少しでもお昼を豪華にするために釣りは続けて行きたいと思います」

「これで最後にクエが釣れたらそれはそれで困るね、お土産に持って帰る位しか出来ないし」

「昨日の夜はお鍋、今日の朝ご飯はその残りで雑炊、今日のお昼はなんでしょうねぇ?」

「お昼は最後に豪華海鮮丼で締め、そのために昨日釣ったカンパチの半身と腹の部分全部は取ってあるわけだし、クロダイもタイには変わりはないから1匹は臭いを抜いてとってあるし、2匹じゃ種類が足りないからどうやって増やしていくかだね。

そしてここで大事になってくるのが…島を借りた時の代金の中にちょっとした漁の権利代も入っていると言う事、初日に言っていたアワビとかウニとかを取って良いってやつだね、その中には当然伊勢海老も含まれているわけで、今はそれを狙って釣りをしているわけだね」

「持ってて良かったジグサビキ、一応キャッチして良い伊勢海老は頭を除いて30センチ以上、胴の部分だけで、だから条件はかなり厳しいけどね、アワビもアワビで大きさが決められてるしね、ウニはそうでもないけど」

「ウニは放っておきすぎると海藻を食い荒らしちゃうからねぇ、だからあまり小さすぎない程々の物でも大丈夫、アワビとウニに関しては後で妹ちゃんが素潜りで捕ってきてくれるから、伊勢海老をどうにか1匹確保、ついでに小アジが3匹か良型のアジが2匹、キジハタも釣れたら良いなーって感じ、昨日釣れてたらそれも鍋に入ってたんだけどねぇ…」

「結局はカサゴメインの鍋だったしね、クロダイとカンパチはしゃぶしゃぶにしたけど」

「あれはあれで美味しかったですけどね、メバルもお刺身としゃぶしゃぶが美味しかったですし」

「カサゴは良い出汁が出るからねぇ、ガラで出汁を取って身も骨を全部抜いて具材にしてあげればもう上等な鍋の出来上がりよ、野菜は全部野草だけどね」

「この企画で少しだけ食べれる野草に詳しくなった気がします」

「普段は無理して食べるような物でもないけど、食べれる物を知っておくといざと言う時に役立つね、ヨモギ団子を作りたくなった時にヨモギとブタクサと間違えなくて済む、トリカブトはその辺に生えているような物じゃないから山で採らない限りは意外と大丈夫、でも念のために葉の裏を見て確認ね」

「ヨモギ団子を作る機会があるのかどうかすらわかりませんけどね」

「いい香りのヨモギ団子は一度食べたら忘れられない位美味しいよー?うちの場合は実家の畑周辺に自生してるからたまに作って食べるしね」

「田舎ならではだよね、水路近くの土手にはつくしも生えればヨモギも生える、そろそろつくしを採りにいかないとねぇ」

「おーう、いつでも採りにこーい、実家周辺だとそろそろ最盛期でこれでもかって生えてくるからね…っと、これはエビじゃないなぁ…特に引かず重いだけだから…タコかな?」

「イイダコが釣れるならそれ狙いに変えてもいいね」

「イイダコと一昨日食べたタコは違うんですか?」

「一昨日のはマダコ、イイダコは…こいつだね、これでもう大人サイズで…こいつは卵を抱えているね、醤油漬けにしていくらの代わりにしようか、味は全然違うけど」

「じゃあイイダコを後2匹だね、エギを足元に落として揺すってるだけで釣れるだろうから…そろそろアワビとウニを採ってきておいた方が良いかな?」

「そうだね、こっちはもうカナメちゃんと私だけでいけるね、できれば伊勢海老も確保しておいてー、釣れる気がしない」

「はいはーい、それじゃちょっと着替えてから行ってくるねー」

「本当に素潜りで獲るんですか?」

「本当に獲るよー?でも慣れてない人とか許可がない人は獲っちゃダメよ?密猟になるからねー?」

「それ以前に私は溺れる自信がありますね、泳げない人なので」

「そういう自信は捨ててプールに通って浮くところから始めなさい、ライフジャケットがあれば浮く事は出来るけど、水に落ちた時にパニックになるならないで大分変わるから慣れておくのも大事よ…っと2匹目、エギに変えたら一発だわ」

「こっちは以前なにもかからずですねー…」


「さぁ、それでは今回のサバイバル企画最後の料理を作っていきたいと思いまーす、材料はこちらー、昨日釣ったカンパチの腹の部分全部と半身、臭いを抜いておいたクロダイ、そして今日釣ったイイダコ、アジ、素潜りで獲ってきたアワビとウニと伊勢海老!アワビなんかに関しては島を借りたときに代金を払って許可を得ているので真似をしないようにねー?

ではまず、イイダコですね、胴体の部分を開いて卵を取り出したら漬けダレの中に放り込んで臭み消しと味付け、釣ったばかりとはいえ臭いは有りますので、美味しく食べるために臭いを少し消しておきましょう。

次に目玉とくちばしを取り除いたら塩でごしごしと揉んで洗って、ちゃっちゃっちゃー4等分に切り分けたらイイダコをお刺身の出来上がり。

伊勢海老は頭のほうに刃を入れて頭を外して、胴体の殻にも刃を入れて、身を残さないように気を付けて切り離して…とれた身を刺身にすれば伊勢海老の刺身は出来上がり、頭と殻はがっつり煮込んで味噌汁でーす、無駄にはしませんとも!」

「頭と殻頂戴ー、それとこれ寿司酢ねー」

「はいはい、どうぞどうぞ、それでは続き、昨日のカンパチを刺身より薄目、寿司ネタより若干厚い位で切りまして、半分は漬けダレの中に、もう半分はそのまま盛るのでこのままおいておきましょう、漬けにする事で種類を増やそうっていう魂胆です。

次にカナメちゃんがつってくれた良型のアジ、ゼイゴを落としてから3枚に下ろしたら腹骨をすきとって、手で皮をべりべりーっと、新鮮な奴は包丁で皮を引かずとも手で剥がす事ができまーす、古いのはダメだけどね、そしたら骨抜きで残っている骨を全部抜いて、刺身にしたらアジの処理は完了。

でー、アワビですね、これも特に難しい事はないのでちゃちゃーっと、貝柱を切って外したら肝を切り離して、さっと洗ったらそのまま刺身にしておしまい、肝は串に刺して焼いておきます、カナメちゃんは多分苦手です。

ウニは割って開く道具がないので、包丁の刃の部分で軽く叩いて刃を入れたら後は手でぱかっと、手袋がない場合は棘をはさみである程度落とせば素手でも出来ます、スプーンで取り出した身は塩水の中へ、これで下準備はほぼ完了」

「ご飯炊けましたよー」

「それじゃあご飯を全てこの桶の中に入れるのだー、そしてこのうちわで扇げー」

「炊き立てのご飯を扇ぐ意味ってあるんですかね?」

「有るよー?まずは余分な水分を飛ばしてべたつかないようにする、それに酢でさらに水分が入るから硬めに炊くのも大事、そして熱いままだとどんどん酢が抜けて行って香りも抜けていく、かといって冷めた御飯だと寿司酢を吸わないので炊き立ての熱いご飯で作るのが大事、というわけだね。

だから寿司酢を入れて混ぜる時もさっくり切るように混ぜて全体に広げて冷ましつつ寿司酢を吸わせる、扇がないと冷めるまで時間がかかりすぎて…ってなるので広げるだけじゃダメってこったぁ」

「なるほどー…なんか釣りに関係のない知識ばかり増えている気がします」

「サバイバル企画はそういう物よ、まじめに釣りをして釣りの知識をーって場合はサバイバル企画のオファーは受けちゃいかんね、何せこの企画は全て行き当たりばったり!食料の持ち込みは基本なし!何も釣れなかったら山に入って野草をとるのは基本!なんならクサフグだって釣って食うぞ!」

「この中で食べた事が無いのは新顔のスタッフとカナメちゃん位だろうね、実際何も釣れなくて食べる物に困った時はクサフグを狙い始めるし」

「あいつらなんでも食うから、カニでも貝でもその辺から獲ってきて小さい針に付ければ一発よ、可食部は少ないから数を釣らないとダメだけどね」

「餌を使っても何も釣れないって時でもクサフグは絶好調だからね、んー、漬けダレで焼いた肝の串焼きが美味い」

「うぉーぃ!1つしかない肝の串焼きをつまみ食いとかそれは酷いんじゃないかね!?」

「獲ってきたのは私だからねー」

「それを言われるとどうにもならんね、で、出来上がった寿司飯を桶全体に広げまして、先ほど作っておいた刺身や漬けを見栄え良く並べていって、塩水につけておいたウニ、イイダコの卵ものせて、最後にネギ代わりのノビルの葉を散らしたら海鮮丼の出来上がりでーす、桶という都合上海鮮ちらしっぽくはあるけどね」

「はい、伊勢海老の味噌汁、頭はカナメちゃんにあげる」

「頭…見栄えは言いんですけどこれどうすればいいんですかね?」

「すすって味噌を食べる、1匹から1人分しか取れない贅沢品よ」

「それとノビルの酢味噌和え、頭も食べれるアジの骨せんべい、以上が今日のお昼の献立です」

「サバイバルとは思えない位に豪華で贅沢ですねー」

「実は食べ物だけなら他の回の出演者より良い物を食べてるんだぜ?釣れない時は本当にクサフグを食べるけど、あれもフグには変わらないから美味しいしね」

「当たり外れが大きい企画でもある、過去にはクエを釣って終始クエ尽くしだった事もあったね、刺身に鍋物焼き物、食べきれないのでスタッフも含めて各自お土産でお持ち帰り」

「あの時のクエの予想価格は市場の買い取りが約170万、そこから競りにかけられた場合は600万位、つまり600万の魚を皆で食べていたって事だぁね。

そんな感じで当たりの時はどの回の出演者よりも贅沢をしているって事よ」

「今回の場合はどうなんでしょうか?」

「そうだね、この桶の中身だけでも万は軽く乗ってるかな?ウニが5つで7000円、アワビ大が1つで8000円、伊勢海老が馬鹿でかい奴だから17000円、カンパチも半身とはいえ大きさが大きさだから1匹で7500のその半分、クロダイは700円かな?イイダコも3匹で700円位。

値段と味はあまり比例しないけどね、高級魚であるかどうかは大量に獲れるかどうか、美味しいかどうか、料理しやすいかどうかでしかないし、アワビとかウニ、伊勢海老に関してもそれが適応されてるからね。

それじゃあ各自好きによそって食べろー、ちなみにこのクロダイはマダイより美味いぜー?」

「そういえば昨日食べたクロダイはかなり美味しかったですね、マダイより味が濃かったというか」

「それはね、食べてる物と住んでいるところが大事なのだよ、この辺りのクロダイが食べているのは岩場や堤防の壁に張り付いている牡蠣、それと少量の小魚、そして川にも上らないから臭いもほぼない、そして牡蠣も牡蠣で綺麗な海水で育ってるし、海藻も豊富、つまりこの辺りの牡蠣は海藻の風味が強く味が濃い、それを食べて育っているから身の味に若干牡蠣の風味が混じってるし、味わって食べれば出汁昆布のような濃い味も出てくる。

イワシなんかも食べてるから脂もほどほどでマダイにも負けない美味しさだね、昨日胃袋を開いた時に出てきた残骸、あれ全部牡蠣殻、そりゃ美味しくもなるよねってやつよ」

「ボラと同じで生息している場所によって左右されてくる魚の一種だね、うん、塩水処理をしてさらに味が濃くなって美味しいね」

「塩水処理ってなんですか?」

「簡単に言えば臭い抜きつつ余分な水分を抜く方法、海の魚なら全部出来るからやってみるといいよー?

処理の仕方も本当に簡単、まず海水と同じ濃度の塩水を作って、魚の切り身を5分から10分漬けておくだけ、これによって浸透圧が働いて余分な水分と血といった臭いの元が抜ける、で、水分が抜けるという事はその分味も濃くなるという事だね、水っぽさがなくなるってやつ。

濃度がわかんないって人は水100に対して塩3って覚えておくと良いかな?3%が大体海水と同じ、漬けすぎると抜けたところに塩分が入っていくから漬けすぎ注意」

「クロダイとカンパチに関しては刺身にする前にその処理をしておいたのよー?伊勢海老なんかを獲ってきた時に仕込みとしてね」

「他の方法としては直接塩を軽く振って水分を抜く振り塩という手法もあるけど、塩水の方が全体が使って万遍なく抜けるからこっちのほうが楽、料理をするなら覚えておこうね、んむ、タコの卵も良い感じ」

「このプチプチ触感が楽しいですね、軽く醤油に漬かっていくらに近い感じもしますし」

「漁師飯の中にはマダコなんかの卵を炊き立てご飯に乗せて、その上から醤油をかけて食べるのもあるしねー、美味しくなかったらそもそも誰も食べないってね。

それじゃああとは迎えの船が来るまでのんびり食事、そして片づけをして本土に戻ったら締め括りをしたいと思いまーす」

「お米も5キロなんだかんだで食べきったね」

「カナメちゃんが意外と大食いだと分かったのが今回の一番の驚きだね、これで太らないとかそりゃ嫉妬の言葉で埋め尽くされるわけだわ」

「それは…言わない方が良いですね…この一言で何度も荒れましたし」

「そうだね、言わない方が良いね、妹ちゃんもアンチがそれで何度も燃やそうとしてるし」

「そもそもの運動量が違うといっても信じて貰えないだろうねぇ」

「人は表だけを見て裏を見ようとはしませんからね、おかわり下さい」

「はいどうぞ」

ヨモギ

田舎ならその辺の土手に普通に生えている物、土手にトリカブトは早々ないので普通に採って行って団子にしたりお餅に入れたりが良くある、雑草扱いなので誰も何も言わない

土手に生えているということは散歩中の犬の通り道の可能性もあるので…気になる人は手を出すのをやめておこう

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