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皆真面目にやっている おろしぶっかけ天ぷらうどん

 事の始まりはなんてことの無い一言。

「遊びましょう」


「狐さん、遊ぶとしても何をして遊ぶの?」

「そうですね…思わずくすっと来るような事を皆でやりましょう。

もちろん遊ぶだけでなくちゃんとやる事はやって頂きますが。

笑わせる対象はご主人様、ご主人様に一番面白かったと言われた方が勝者、それ以外は敗者。

シンプルですね。

期間は明日から10日間、1人でチャレンジするもよし、チームを組むのもよし。

景品などは決めていませんが、ひょっとしたら景品を出すかもしれませんので、真面目に取り組むように」

 簡単なルール説明が終わり、明日からお遊び開始。

 不安なようなこれから起こる事が楽しみな様な、不思議な感じだった。


 10日間と言う長期戦な事もあり、舞台などではなく、屋敷全体が戦場に。

 挑戦回数も無制限、小道具でも大道具でも何でも使って良し。

 ただし、仕事はちゃんとやること。

 簡単に言えば仕事さえしていれば何時でも仕掛けていいという事、何時何が飛び出してくるかは近くにいるメイド次第…


 翌日から遊びがスタート、これから10日間は就寝時間以外、メイド達がありとあらゆる手を使って笑いを取りに来るだろう。

 その為かいつもはメイドの誰かが寝ているベッドに今日は誰もいない、一緒に寝ていたことは確かだが、既に抜け出して準備をしているのであろう。

 箪笥から着替えを取出し朝風呂で目覚まし。

 扉を開けて貰い、お風呂に向かおうとしたところ…

「…」

「…なんねこれは?」

 部屋の前には四駆と書かれた三輪車が置かれていた…

 乗れという事だろうか…?

 メイドはこちらを見てニヤニヤしている…

 しかしこちらは笑わされる側で有って笑われる側ではないはず…

 暫し考え、三輪車を少し弄る。

 とはいえあまり弄り過ぎでも駄目な気がするので幟を一本。

【巡航ミサイル】

 うむ!

 後は窓を開けてメイドに視線を送る。

「…マジで?」

マジもマジの大マジです。

 ちらっちらっと視線を送り続けると、観念したメイドは三輪車に跨る。

 すると三輪車は前輪を開いた窓の方に向け、前輪を持ち上げ車体を浮かせる。

「助けて?」

「ノゥッ!」

 そして始まるカウントダウン…

【ふぁーいぶ…ふぉーぅ…すり発射】

「ご主人様の馬鹿ああぁぁぁぁっーーーー!!」

 ふぅ…悪は滅びた…、悪ではないけど…

 三輪車に乗ったメイドは叫び声を木霊させつつ空の旅へとご招待。

 まったく…今回の趣旨は私を笑わせる事であって、決してメイド達に笑われることではない。

 それを学んで帰って来てくれるといいな…


 メイドが1人孤独な空の旅をしている間に本来の目的を果たすためお風呂場へ。

 お風呂場まで何も起こらず、脱衣所も特に何もしかけられておらず、少し平和な入浴時間となった。

 お風呂から上がり、脱衣所に戻った所で籠を漁っているメイドが数人。

 近づいても漁る事を止めず、メイド達が止めるまで待つことに。

 籠を漁り終えたメイド達が居なくなった後に着替えを籠から取り出すと…

【奇跡の一枚】

 と題名が掛かれた封筒が折りたたまれた服に挟まれていた。

 封筒はいったん籠に入れて置き、先に着替えを済ませる。

 長椅子に座り、恐る恐る封筒の封を切り、中に入っている物を取り出す。

「あぁー…」

 そこには三輪車に乗り、空を飛んでいるメイドの写真が入ってた。

 ただ三輪車の後方に撒き散らされている液体に日が当たり、キラキラと輝き、虹も出来ている。

 遠くからの撮影なので表情は見えないが…これは後で慰めておいた方が良いな、うん…

 どうしてそうなったかを知っているだけに、このシュールな写真を笑うに笑えない。

 何も知らなければ、メイドが三輪車に跨り空を飛んでいる、というだけでもクスッときたかもしれないなぁ…


 朝食中は休戦。

 美味しく楽しく、そして食べ物で遊ばない。

 ちゃんと食べるのであればまだ許されるが、遊んだ後に食べない場合はお仕置き。

 そしてそれを忘れていたのか、一人の勇者が無謀な挑戦を試みていた…

「パンはパンでも食べないパンは?

残飯、なんちゃって!」

 食べないという点には賛同しよう、ただ自分の手で残飯を産み出すのはいただけない…

 後、面白くない…よってお仕置き。

 厨房からヴリトラとハクがゆっくりと出てくる、極上の笑顔に青筋を立てた状態で…

「あっ…あの…」

 してはいけない事をしたメイドの首根っこを掴み、無言で何処かへ引きずって行くヴリトラとハクの背中を見守り、皆馬鹿な事をしたなぁーと、一人の勇者を見送っていた。

「ごめんさぁぁぁぁい!

ゆるしてぇぇぇぇ!!」

 その後勇者の姿を見た者はいなかった居なかった。

 …1時間くらい。


 朝食後はお仕事開始。

 とはいえ特にやる事もないので屋敷の中をぶらつくか庭で散歩、または農場で土いじり。

 …屋敷に居ても碌な事にならないかもなぁ。

 空に木霊する声は放置して農場へ、土を弄って気分転換をしよう。

 途中木に吊るされ【私は食べ物で遊んだ駄メイドです】と書かれたプラカードを下げたメイド。

 隣に机が有り、机の上にはハリセン、風船+針、風船+エアーポンプ、ゴム単品、洗濯ばさみ+ゴム、他にも色々と道具が置かれており【ご自由にお使いください】と書かれている。

 しくしくと泣いて同情を誘おうとしているが、食べ物で遊んだ君が悪いのだよ…

 ゴム単品を咥えさせ、限界まで引っ張り伸ばす。

 メイドは、イヤ…イヤ…と顔を横に振り恐怖している。

 緩める振りをし、ほっと安堵した所で発射、パチーンと良い音が響く。

 少し涙目になっているが、お仕置きなのでヴリトラとハク、もしくはヴェスティアの許しが出るまでは解放できない。

 暫くは玩具として扱われるだろう…

 ヴェスティアが笑顔で歩いて来ていたので、もう一度ゴムを引っ張り快音を響かせておいた。

 咥えさせたゴムを外してやり、後はヴェスティアにお任せ。

 これからもっと辛い事があるかもしれないが、これに懲りて食べ物を粗末にしないよう反省してほしい。


 遠くで聞こえる叫び声を聞きつつ農場へ。

 道中特に何もなく農場に到着。

 何か良い物が無いかとぶらつきつつ考える。

 簡単に料理が出来て満足感が得られるもの…

 よし、ナスにしよう、揚物に適したナスに。

 ナスのある区画に移動中、何かを引っこ抜くのに苦労しているメイドを発見。

 近づくのと同時に引き抜かれ、引っこ抜こうとしていた物の正体が明らかになる。

 セクシーなポーズをしたダイコンだった…

 足だけでなくちゃんと手もある。

「みちゃイヤンっ!」

 …やたらと可愛い声まで出している…

 セクシーなダイコンはメイドの手から離れると走って行き、野菜を運搬中だったメイドに跳ね飛ばされ…

「ぐふおぅわぁっ!」

 野太い声になった…

「お父さぁぁぁぁん!」

「あなたぁぁぁぁ!!」

「ダイコンさぁぁぁぁん!」

 地面からダイコンが這い出して来て跳ね飛ばされたダイコンに駆け寄る。

「ぐうっ…はぁ…はぁ…

俺はもう駄目だ…もう何も見えない…何も聞こえない…

今まですまなかったな…駄目な亭主で…」

「あなた!しっかりして!」

 そして始まる寸劇、何を見せられているのだろうか…

「ダイコンさんしっかりして!

もうすぐあなたの子供が生まれるのよ!?」

「ちょっとあんた誰よ!

このダイコンは私の夫よ!

あなた人参じゃない!?」

「ダイコンさんは私の赤い色がいつも素敵だね、って言ってくれたわよ?

あの女の肌は白すぎてどうも…とか言ってたしね!」

「なんですって!

あなた!どういうことよ!?」

「…もう何も見えない…何も聞こえない…」

「ふんっ!」

「ごはぁっ!」

「お父さぁぁぁぁん!」

「それにあなたも誰よ!

一体誰の子よ!?」

 おおっと、駆け寄った妻?らしきの横にいるのは違うダイコンの子供らしい…

「あなた!白状してもらうわよ!?」

「ダイコンさん一体どういう事よ!子供がいるなんて聞いてないわよ!?」

「…もう何も」

「ふんっ!」

「オラァッ!」

「えいっ!」

「うぎゃああぁぁぁぁっ!!」

 誰の子かは知らないが、子供にまで攻撃されてダイコンは砕け散った…

「この女誑しめ!」

「女の敵!」

「次の金蔓探さねぇとなぁ…」

 こっわ!子供こわっ!さっきまでの可愛らしい感じは何所へ行った!?

 お父さんってそういう事!?


 何か野菜たちの闇を垣間見た気がする…

 ダイコンと人参たちは土の中に戻った後はメイド達に引っこ抜かれて出荷されていった。

 昼食はダイコンと人参のサラダだな、タラコを乗せるのもいいかもしれない。

 農場ではほかにも、鐘が鳴る木なる木が生えており、叩いてみると鐘の音が鳴り響き、戦いの火ぶたが切って落とされた。

 …ダイコン対ダイコンの…


 いやー、ダイコン対ダイコンのカードは実に見ごたえが有った。

 セコンドに着いたメイドが作戦を伝え、互いに死闘を尽くすダイコン。

 その後ろではうどんに出汁が用意されており、何時でも料理可能と言ったご様子。

 セコンドについているメイドもおろし金を用意し、ダイコンにおろし金をちらつかせる。

 決着がついたのは8ラウンド開始直後、ダイコンが互いに手を取りあい、反旗を翻しメイド達に襲い掛かった。

 だが動けてもダイコンはダイコン、両者水洗いからのかつら剥き、そして大根おろしに。

 茹で上がったばかりのうどんの上に乗せられ、さらに出汁をかけられ、止めにセコンドの胃袋に収まりフィニッシュ。

 8ラウンドと11秒、実に見ごたえと食べ応えのある試合だった。

 決まり手は何所だろうな…かつら剥き?大根おろし?それともおろしぶっかけからの胃袋行き?

 ただまあ…面白いには面白かったけど笑いとは程遠かった…


 天ぷらにする予定だったナスはおろしぶっかけと一緒に食べたので手ぶらで帰宅。

 庭の木にはまだメイドが吊るされており、三輪車に乗ったメイドはまだ空を飛んでいる。

 昼食前には解放されるし帰ってくるだろう、たぶん…

 屋敷に入るとメイド達は窓を拭いたり、調度品埃を落としたりと掃除中。

 何か仕掛けてくる様子もなく、掃除に集中している。

 まあまだ初日、始まったばかりだもんなーと思っていると、目立たない様にと見せかけた、とても目立っているボタンに目が行く。

【触るな危険!】

 …よし!触らない!絶対に触らない!

 ボタンを無視して土で汚れた服から着替えるために部屋を目指す。

 ボタンから離れた所でメイドが不自然に此方へ倒れ、避けた所で別方向からの体当たり。

 見事に触るな危険のボタンを押してしまった。


 ボタンを押してしまった後に待ち受けていたのは閃光と爆発音。

 光と音で目と耳が暫く使い物にならなくなる。

 周囲の状況を把握しようにも、目と耳が使えずどうにもならないのでおとなしく回復を待つ。

「――――!」

 微かに何かが聞こえるがよく聞こえない。

「――――――っ!」

 揺さぶられているのも分かるが見えないしまだ良く聞こえない。

 暫くすると目と耳が回復し、周囲の状況を把握できるようになった。

「ご主人様大丈夫ですか!?」

「うん、だいじょう…」

 揺さぶっていたと思わしきメイド、その頭部が何やらおかしい…

「ご主人様しっかりして!」

 先程まで生えていたはずの髪の毛が一本もない、モフモフの耳や尻尾の毛もないツルツルの状態…

 丁寧に丁寧に手入れをしてきた髪や耳に尻尾の毛が…ない…だと…?

 絶望感に打ちひしがれ、笑うに笑えない…

「もう…だめだ…」

「ご主人様ぁ!!」

 余りにものショックな出来事によりその場に倒れ、これは悪い夢だと思いながら意識を失った…


「はっ!?」

「目が覚めましたかご主人様?」

 膝枕をしてくれているメイドの髪の毛は…ある、耳も尻尾もちゃんと生えている。

「なにか…すごく嫌な夢を見た気がする…

皆の髪の毛や尻尾の毛が一本もなくなってツルツルになってるって言う…」

「あはは、そんなわけないじゃないですかー」

「だよね」

 メイドが自分の紙や尻尾の毛を軽く引っ張るが抜けない。

 どうやら悪い夢だったようだ…

「ボタンに触るなり悲鳴を上げて倒れるからびっくりしましたよ」

「ああ…そうだったの…か?」

 触るな危険と書かれた物に触ったら叫びたくもなる。

 …うん?ボタンニサワッタ…?

「ボタンは!?危険は!?」

「特に何も起こっていませんよ、そもそもこのボタン押せるだけで何もついてませんし」

 メイドはボタンをポチポチと押すが何も起こらない、ただの木の枠にボタンらしきものを付けただけのようだ。

「ただのドッキリかぁ…」

「誰が仕掛けたんでしょうかねぇ?」

 メイドから受け取り、ボタンを押してみるが何も起こらない。

「うーん、まあいいか」

 膝枕は名残惜しいが起き上がり、メイドを立たせ、その場で別れた。


 扉を開けて中に入り、扉がパタンと閉まった所で…

「いったぁぁぁぁぁっ!」

 悲鳴と共に何やらコーンと良い音が響いてきた。

 外の様子は気になるが、まずは先に着替えてしまう。

 箪笥を開き、またパタンと閉じた所で悲鳴と良い音が響いてくる。

 様子を見るために部屋の外へ出てみると、バラバラになった木の桶と頭を押さえているメイドが2人。

 扉を閉め2人に近寄ると上から桶が降ってくる。

 避けようと横に移動すると桶が軌道を変え急加速、的確に脳天を打ち抜き、良い音を出しながら桶はバラバラになった。

「――ーっ!」

 頭を押さえてうずくまり、先に犠牲となったメイドと一緒に涙目になる。

 一体誰がこんな悪戯を…

 もう何をしたいのかわからなくなってきてるぞ…

 屋敷中から悲鳴や桶が直撃したと思われる音が響いてくる。

 悲鳴が上がる度にバラバラになった桶が散らばってるんだろうなぁ…


 その後も謎の仕掛けや、よく分からない置物、変なポーズを決めたメイド達とすれ違ったりしたが…

 何がしたいのか、何が目的だったのか理解できず、午前中は終了した。

 三輪車に乗っていたメイドは無事屋敷に着弾、頭から壁に突き刺さり、スカートが捲れ上がり、パンツが丸見えと言うはしたない状態になっていた。

 少し可哀想であるが、プラーンプラーンと、壁に突き刺さって揺れているメイドが一番面白かった。

 気に吊るされていたメイドと壁に刺さっていたメイドが回収され、色々と汚れているのでお風呂に放り込み、その後皆で昼食。

 さぁ、昼食を食べ終えたら初日後半戦の開始だ!


 …まだ…初日なんだよなぁ…

ダイコン

遊びが始まる前日に種を植えられた

一晩で育ち、隣に生えていたダイコンと結婚、そしてすぐに隣の畑にあった人参と浮気

元の畑に戻った後、一番若いダイコンに言い寄る、言い寄られたダイコンは金銭を対価に了承

そして謎の寸劇が始まった

当初の予定では跳ね飛ばされた後そのまま回収され、調理場まで出荷されるはずだった


ダイコン対ダイコンは途中までは予定通りに進んだ

途中で反旗を翻したので、メイドの手により大根おろしにされ、決着がついた


謎のボタン

予定通りに髪と尻尾の毛を無くしてツルツルにして笑いを狙った

でもご主人様はショックを受けて気絶したので、メイド長から毛生え薬を貰って急いで元通りにした

毎日手入れして綺麗にして有る髪や尻尾の毛を無くしてはいけません


木製の桶

掃除しているメイドの誰かが仕掛けた

扉を締めたり壁を叩いたりすると振ってくる

当たるまでどこまでも桶が追ってくる

木製なので当たった後はバラバラになるので後片付けの手間が増える


残飯

いわゆる処分される残り物

一発ネタとは言え決して食べ物で遊んだ上に粗末にしてはいけない


三輪車

四駆と書かれた三輪車、ご主人様に巡航ミサイルと書かれた幟を付けられた

飛ばされたメイドはハンドルとペダルとサドルに手と足とお尻を固定され、降りれなくなった

不規則な軌道で揺さぶられ、お漏らし、昼食前に屋敷に着弾し、壁に突き刺さった

いくらご主人様の背丈が低くて三輪車が似合う状態になっているとは言え乗せようとしてはいけない

ご主人様は笑う側で有って、笑われる側ではないのだ

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