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壊れる時は壊れる 別名湯たんぽ

「あー…なんかだるい…今日は外に出たくない気分…」

「出たくても外には出れませんけどね、豪雪で山を下りるためにはお兄さんかメイドさんの先導が必要です」

「オーウ…そんなに積もってる?」

「屋根は融雪ワイヤーなんかを張ってあるので大丈夫ですが、積雪で行けば2メーター位です、玄関の扉は開きますが、積もった雪に溶けた水がぽたぽたと垂れているのでちょっとした壁が出来てますね」

「窓は外から板が張り付けてあるから外が見えないんだよねぇ…」

「板を打ちつけて補強しておかないと雪の重みで窓ガラスが割れる事が有るんですよ、内側から補強するには限界が有りますし、打ち付けていても割れやすい板だった場合はそのまま割れて雪が室内になだれ込んできますけどね」

「シティーガールには辛い環境だぜ…」

「今は立派にカントリーガール、住んでる場所が、ですけどね、今日は麓も雪が積もってますし、自動車学校はお休みですね、こういう日の講習や実技も役に立つと言えば役に立ちますが、そもそも山が降りれませんので」

「積雪2メートルでお出かけとか遭難して死んじゃう、雪の日のお出かけとかシェルターガールの私には無理ー」

「箱入り娘ってそう言う意味でしたっけ?」

「違うね、世間知らずを指す言葉であって体力の無い人を指す言葉ではない」

「まあそんな会話は置いておきまして、朝ご飯が冷める前に来てくださいね」

「今日の朝ご飯はー?」

「ふっつーにトーストとインスタントのポタージュ、ベーコンとソーセージは華ちゃんの実家が作ってる手作りですけど」

「シンプルイズベスト、ポタージュが付いてくるのは汁物を良く食べる国だからなぁ?」

「単純に朝食の後にガレージに向かって道を作るために少しでも体を温めておきたいってだけですけどね、動いているうちに温まりますけど、最初から程々に温まっているか冷えているかで結構変わりますしね。

なんならリオも雪掻きをしますか?ちょっとした運動になりますよ?」

「なんかだるいから気が向いたらねー」

「まあ、そのだるさは寝起き直後かつ気圧的な物でしょうね、しばらくしたら元に戻りますよ」


「それじゃあ雪掻きの前に軽く運動始めー」

「いっちにーさんしー」

「ごーろくしち鉢植え割れてた」

「んにぃー…どこの鉢植えー?」

「玄関出て直ぐ、つららが丁度良い感じに落ちたんじゃない?」

「そこそこ風が吹いてたし、朝食を作ってる時にポキッと折れたのかと」

「基本的に外にある園芸品は安いから良いんですけどね、400円もしないやつですし、取りあえず雪掻きの前にお兄さんにつららを落として貰わないとですねぇ」

「ヘルメットを被ってやるから頭部は大丈夫だけど、それ以外の場所は風穴が空くからねー」

「今日はお兄さん何をしてましたっけ?」

「1号ちゃんに付き合って色々とリアルな方で少し前から新作ゲームの宣伝のお仕事、まだ台所でディジーとお昼の仕込みとおやつの仕込みをしていると思いますので、今ならまだ呼べば来ると思います、ゲームの中に入ったらお昼までは待たないとですけど」

「ならちょっと呼んで来るねー」

「ついでにミスコピーなんかの要らない書類も全部持って来てー、一斗缶で燃やすから」

「紙束は着火剤代わりにしかなりませんし、薪も引っ張り出して来ませんとねぇ…ガレージまで掘り進まないと1本も無いけど」

「オール電化はこう言う時に響いてくるよね」

「かといってこの広さを暖炉で補ったら色んな意味で死ぬね」

「火の管理を怠って焼死か、広さゆえに主要部を温めるだけでも薪代がこれでもかと掛かって財布が死ぬか…」

「雪山の生活は大変だぜ…」


「取りあえずいつもの様につららを全部落とせばいいのね」

「そうそう、ついでにぐるっと回ってる間に外れそうな板とか割れそうな板が有ったら直しておいてください、まだ雪が降ってるのでそっちまでは手が回りませんし、それでもガレージまでの道は作っておかないと不便ですし」

「もういっそ地下通路作った方が早いんじゃない?」

「その地下通路への入り口を何所に作るかがそもそもな問題ですね、ガレージに比較的一番近い部屋は仕事部屋ですし、その隣も仕事部屋、玄関の床をぶち抜くと言う方法も有りますけど…それはそれで玄関が狭くなりますしねぇ…でも靴を履いて行くと言う事を考えると…」

「ロマンを求めるなら隠し扉、そうでもないなら普通に地下へ続くハッチにするか、仕事部屋を引越しして一部屋丸々地下通路経由ガレージ行きの部屋に改造するか、行き来しやすいのは部屋を改造じゃない?

玄関はそこそこ広いっちゃ広いけど、それなりの広さの通路を作るにはちょっと狭い…と言うより使えるスペースがね、1人で降りて1人だけで行くなら梯子で良いけど、階段、もしくは坂道の方が良いと言えば良いでしょ?」

「掃除をする場所は増えますけど、坂道の方が楽と言えば楽ですね、でも利用するのは冬場位ですし、玄関からガレージまで雪を掘って進めば済む話ですし、玄関からガレージまでロープを張っているので、それを辿って一直線ですからねぇ」

「まあ、要らないか、それじゃつらら全部落として来るねー」

「完全にダメになった板が有ったら交換もしてくださいねー?」

「はいはーい」


「それでボスボスドスドス音がしてたのか」

「冬場はたまに雪の重さで窓ガラスが割れますからね、家の中は自然の光が入らず全体的に暗い感じになりますが、板を打ちつけておかないとそれはそれで後が大変なので。

後普段はそれ程音はしませんけど、外に出れない期間が少々が無かったのと、積雪量が積雪量なのでつららが育ちに育ってましたからね、雨樋もぶっ壊れてましたけど」

「それで主様は買い物に行ったのか」

「支えている金属部分がへし折れたのと、水を地面に流す部分が破裂したのとで急遽ですね、柔軟性のある塩ビパイプも内と外から凍ると一発ですからね」

「寒い所は大変だなぁ」

「暑い所は暑い所で苦労はありますけど、寒い所は油断すると家がぶっ壊れると言う苦労が有りますからねぇ…」

「塵も積もればと言うやつで?」

「そう、融雪ヒーターを屋根に付けてあるので早々潰れはしませんけど、付けてない所かつ住人不在だとグシャッと、現に昔この家を貰った時は使わなくなっていた物置が潰れてましたよ、潰れたのなら撤去しておいてくれればよかった物を…」

「変な所で苦労してるな、書類の仕分け終わったぞ」

「はいはいどうもどうも、やっぱり色んな品目を取り扱っていただけあってこういう作業は早いですね」

「稼ぎは兎も角紙の束はいつも山ほど抱えてたからな」

「紙の束をどうこうするのは慣れているのに稼ぎは出なかった、単純に運の問題か、品物を見る目が無かったのか、どっちなんでしょうねぇ?」

「運じゃねぇかな?仕入れた物は全部売れてたし、単純に持って行った物物を先に卸してるやつが居て買い叩かれる、かと言ってそこで売らないと赤字で売ればギリギリ黒字、ってのをやってたからな、そして帰りも帰りで向こうで仕入れて来た物を売ってもギリギリ。

逆に買い叩かれず儲けた時は帰ってきた時に仕入れた物を卸す時に買い叩かれ過ぎて赤字、収支はギリギリ黒、そんなんだしな」

「才能が有るんだか無いんだかよく分かりませんね、潰れたと言う事は結果的に無かったんでしょうけど、運が悪かっただけとも言えますよね、ちゃんと家を維持する事は出来ていたわけですし、船が沈んでなければ今も続けていたでしょうし」

「ま、今の生活にもう慣れたし、たまに船に乗りたくなった時は乗せて貰えば良いだけだしな」

「こっちに帆船で動かす大型船はもうないですけどね、小型の物は有りますし、人力も有りますけど、それはどちらかと言えば競技用ですね、今の時代はもうすべてエンジン付きの船での航行です、貿易も船であれば大型タンカーが基本ですしね、一度に運べる量が違います」

「品目としては何が有るんだ?」

「電子機器に車その物、部品、飛行機の部品、衣類に何やかんやと新しい物も有りますが、保存の効く食べ物や調味料、距離によってはそれ程保存がきかない物でも十分間に合うので果物、まあ基本的には変わりませんよ、運べる量が増えて積載量も上がった結果、じゃああれも輸出しよう、これを輸入しよう、ってなっただけですからね。

それに輸出と輸入する側には保険が掛かっていますし、リスクはもう昔に比べて大分減ってますね、船が沈んでも品物には保険が掛かっているので払い戻しが有る、船を運航する側も過失が無ければ保険が降りる。

嵐の位置を常に把握する必要はありますけど、安全度も跳ね上がっていますし、ある種安定した職では有りますね、その代り昔みたいにこれがやたらと高くて儲かる、見たいなのは無くなりましたけどね」

「やたらと高い交易品なぁ…相場なんて金持ってる貴族の気分次第で乱高下するからなぁ…古い民芸品だったり新しい民族衣装だったり、そんな直ぐ用意できる物でもねぇから行って帰って来たら流行が去っていて庶民向けとして安く買われたりとかなぁ…

常に需要のある物は意外と相場が動き辛いし、大きく変動する時は不作か豊作か、でも仕入れれる量と卸す量もも変動するから結局は売り上げは変わらなかったりなぁ…」

「胡椒とか奴隷貿易みたいなのは無かったんですかね?」

「奴隷は常に需要はあるけど、愛玩用以外は国内だけで足りてるからあまり扱った事は無いな…そもそも下手すりゃ1人仕入れるだけで大金貨10枚も飛んで行くしなぁ…まあそう言う物を仕入れる時は大抵奴隷商からの依頼が絡んでるし、赤字になる事は滅多に無いんだがな、予算がこれ位で差額が報酬、でも高いだけあって常に誰かが求めているわけでは無いから年に1回あるかどうか、そしてそれを仕入れに行く時は行きの荷物は多くても帰りの荷物は追加の食糧と水、それとほんの少しの生の果物。

物が物だけに食事にも気を配らないといけないからなぁ…出来るだけ軽くして少しでも早く帰れるようにして、航海中に潮風で毛や肌がロボロになりましたー、では話にならないから、水浴びは出来ずとも毎日身体を噴いたり出来る様に水は余分にと言うのも有るし、睡眠不足は大敵だからほんの少しの睡眠薬を食事に混ぜて緩やかに、夜更かしではなく程良い時間、かと言って寝過ぎず中毒や依存症状が出ない様に気を使ったり…生きてるだけに扱いが難しいんだよ…」

「こっちの奴隷貿易とは大違いですね、こっちの場合は労働力として出荷、物々交換で奴隷1人に付き当時最先端とされた銃が1丁、お金ではなく現物での物々交換、そして得た銃を使って各地に戦争を吹っかけたり奴隷を確保したり、と言う時代が有りました。

記録によると仕入れた銃は9000から12000とも、でも出荷された奴隷は2000も居ない、1人1丁と言う記録が有るのに、不思議ですよねー?

まあそれを調べているのがやっていた国で、奴隷貿易自体をなかった事にしたいので誤魔化し誤魔化しで改竄しまくっているので、多分その内100人で12000丁の銃を仕入れた事になると思います」

「矛盾点は直そうとしないんだな」

「自分の都合の良い様に数字だけ改竄して真実はこうだってやる様な人がそんな物に気付くわけないじゃないですか、酷い所だと戦争に参加してないのに勝手に戦勝国を名乗っている所も有りましたし、そしてそれを当時の戦勝国の総督に怒られても止めてませんし、当時の人口より多い人数の虐殺が有ったとかどんどん数字を盛って行ったりして、最終的には当時の人口の200倍、約600万と言う人が物資も乏しい数千人の兵が虐殺した事になってましたよ、そう言う事を考える頭も無いから正しく歴史を見ようとしないわけなんですが…」

「たった数千人で600万を一方的に虐殺とか、そいつらは英雄か魔王の集団か何かか?」

「実際そんな戦闘力が有ったら世界征服できてますって言うね、頭のネジが外れていて空の魔王と呼ばれた人は実際に居ましたけど、その人でも3桁に乗ったくらいしか殺せていませんので…最低でも一晩で2000人以上徒手空拳で人を殺せる戦闘力を保有して、かつその一晩のうちに600万と言う人数を占領していた場所から運び出して跡形も無く処理する輸送能力と処理技術も持っていたというトンデモ集団になるんですよね」

「実際は何人虐殺したんだ?」

「公式記録では1万、なんですけど、それでも当時のその地域の人口の3分の1なので不可能に近いです、1万もの人が一塊になっているわけはないですし、そこまで纏まったら暴動がおこって物量で負けますし、占領していた所は物資が乏しく爪に火を灯している状態、当然武器弾薬も無駄遣いできる余裕なんて一切ないので…」

「刃物は2人か3人斬ったらもう使い物にならないしなぁ…手入れをすりゃ別だが…」

「ま、その600万も殺されたーって言っていた国はもうないんですけどね、クーデター発生で完全消滅、前体制派は一人残らずこの世から消えましたとさ、めでたしめでたし」

「めでたいのかそれ?」

「少なくとも少しは世界が平和になりましたよ?国外にまで足を運んで各地で犯罪行為を行う集団はその国だけでしたし、世界中から嫌われていましたからね、虐殺されたー、私達は被害者だーとか言いながら犯罪行為をやっていたわけですし、ルシエラカンパニーが介入からの世界中に散っていたその民族は3世とか4世、果ては5世まで全員強制送還、からの振るい分け。

多すぎた人口問題も解決、残っているのは新体制派のみ、公害を世界中にまき散らしていた場所も完全に更地にして緑化活動中、他に色々有りますが、良い事づくめなのは確かですね」

「実際に有るか無いか分からない物を有ると主張、更には誇張してそれを盾に好き放題していたら文字通り虐殺されたわけか」

「そんな感じですね、まあそんな話はどうでも良いので置いといて、書類の仕分けが終わったら次はこちら、既に終わった物を会社別にファイリングして行って下さいな」

「はいよ、これが終わったら今日はもう上がりだな」

「ですね、それ以上の仕事は求めていない…と言うより意味が分からないと思いますので」

「そうだな、流し読み位はしてるがさっぱり」

「内容的にはどこの会社からどこの会社へいくら融資するとか、買収するとか、売却するとか、基本的にはそんなのですね、たまに破り捨てたくなるような物も来ますけどね。

まあそれが終わったら丁度お昼時でしょうし、終わり次第上がって良いですよ」

「半日で終わる仕事は楽で良いと言えば楽で良いが、身体を今一動かせないのがな…」

「遭難気分を味わいたければ外に出ると良いですよ、家の周りは塀で囲っていますが、その兵に辿り着く前に確実に遭難できますので」

「誰が助けに来るんだよ…それに遭難する位なら色々持て余してるけどベッドで丸くなってる方がましだわ…」

「私もそう思う、後持て余してるならお兄さんのベッドに潜り込むと良いですよ」

「何か意味があるのか?」

「抱き枕に丁度良いのでお昼寝に最適」

「そうか…」

お手軽遭難体験

積雪量が約2メーター、ついでに少しとは言え雪も降っているので視界状況はそれ程よろしくない、通ってきた道に雪が崩れてくるともうわからなくなる

玄関から門まで車でもぼちぼち、徒歩だと一直線でも15分位は掛かるので…遭難した場合は直ぐに助けが来るので体験程度で済むと言えば済む、でも小言も飛んで来る、主にもっと重装備で挑め、的な感じの小言が

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