多分期間限定 皮も食べます
「大銅貨5枚とは言え、お持ち帰りも許可しているとそれを目当てに来る人も居ますねぇ」
「口コミで広まったんだろうけどね、物自体はこの辺りの屋台でも売ってる柑橘ジュースだし、その内落ち着くとは思うよ?それに水筒に入る量は知れてるし、タンクで買いに来たらそれはそれで保存環境に冷蔵庫が無い所だとあまり日持ちはしないし」
「原液だけを持ち帰っても炭酸や冷たく美味しい水、それに氷が無いですからねぇ」
「あの手の飲み物はお店だからこそと言うのも有るんですかね?」
「そうだね、試作品とは違ってミントエキスを抜いた柑橘だけに統一してあるし、何種類か混ぜて自分好みに、またはその日の気分次第でお酒に混ぜたり、ミントエキスを抜いた分ミント単体も追加したし、色んな組み合わせで楽しむのがあのドリンクサーバーの正しい使い方」
「飲み放題かつ持ち帰りも自由で赤字にはならないんですかね?」
「ならないね、ジュースのみを求めて来ている人と食べに来ている人は別だし、ジュースのみは人数分を纏めて買うとうちの方が安く付くからと花街の人が来てる位だし、原液に使ってる柑橘も投げ売りだったのを大量に纏め買いして加工した物だから1杯辺り中銅貨3枚位よ、砂糖とミントはこっちで用意した物だけど。
最初は海の家にもある自動販売機と同じ様にいくらでもーって思ったけど、それをやるとこっちの作物の消費が減るから作り直した感じ、ガレージの方に有るスープ専用自動販売機と同じだね、あれもちゃんと毎日出汁を濃縮して容器を洗浄して詰めてってやってるし。
炭酸水と冷水は井戸から水を汲んだりなんだりが面倒だからあれ自体で生成してるけどね、ただの水だし」
「確かに、飲み物のみは花街の人が8割位ですね」
「まあ、お店の中にいる限りは無制限とは言え、1人2人で持ち運べる量は限度があるし、限度を超えて持ち帰ろうとする人は居ないし、消費量に関してもあまり気にしなくて良いかな?」
「空になったらそこで終了ですかね?」
「カレー小屋の冷蔵庫の中に今月分の原液が入ってるから、空になったらそこから取ってきて補充、冷蔵庫の中に有るのが無くなったらそこで終了。
来月も売るかどうかはまだ未定だねぇ、柑橘類が投げ売りされてないと数が用意できないし、安定して供給できるのはミントエキス位、中身はミントエキスのみを炭酸にと言う人も居るから最終的にはそれだけになる可能性も無くは無し」
「香りが良いので好きな人は好きですよね」
「特に花街の人達にはね、柑橘にミントは体臭にも影響が有るし、職業柄ニンニクや玉ねぎ臭を漂わせる、ってわけにもいかないからね」
「最終的にはミントエキスだけになりそうな気もしますね、お金が掛かりませんし」
「放っておいたら爆発的に増えるからね、ミントは取り放題使い放題、油断すると田畑を荒らして埋め尽くしてくるから管理が大変だけど」
「デザートに乗ってるのは葉っぱだけですけど、そんなに凄いんです?」
「その辺り一帯の生態系を破壊する位には凄い、だから農場では育ててないし、うちで育てる時も完全隔離してある状態の所で栽培してる。
まあ、それはそれとして、1ヶ月近く休業していても客足は大して変わらないね、増えるわけでもなく減るわけでも無く」
「有難い限りですね」
えー、今のところ注文は普段通りで何も変わらず、新しい物が有るぞと言う事でドリンク飲み放題を注文する人も多めで売り上げちょっと増加の、人気が有るのはライムとレモンの炭酸割り、オレンジとグレープフルーツは微妙、飲み物だけを買いに来た花街の人はライムかレモンにミントエキスたっぷりの炭酸か冷水の…焼肉を食べている人を観察した限りでは苦味が少々出る程度の薄目が多くて…花街の人は現役たっぷりで甘め…ふぅむ…
続けるにしてもオレンジとグレープフルーツは無し、レモンとライムは酒場に料理屋にと需要が有るから意外と値段が落ち辛くて…んー…来月も続けようと思ったらレモンとライムだけに絞って、かつ今のうちに大量に余っている物を買い取って加工する必要あり…
「これどう思う?まだ初日では有るけど」
「そうですね、このお店に来る人は常連9割新規1割位ですし、常連の人達がレモンとライムしか飲まないのであればそれ以外は不要ですね」
「だよねー、それで来月も続けようと思ったらオレンジとグレープフルーツは除外するのは確定だけど、甘いのを避ける様に香り程度と言うのも多いし、砂糖無しの果汁のみも作った方が良いかねぇ?」
「お酒を飲まない代わりに炭酸水を選ぶ人も居ますし、果汁のみも有りだとは思いますが、どこから仕入れるんです?」
「市場でー…だから、安い今のうちに買い溜めしておけば来月再来月は持つ計算、それ以降は知らない、今月だけのド短期限定でも良いけど、今買えばキロ単価がこの位」
「なるほど、確かに今買えば安いですね、豊作で安く輸入したは良い物の数が多すぎて周りが消費しきれないとかそう言う感じですかね?」
「多分そんな感じ、うちならカビも生やさず保存できるし、市場に余ってるだけ買うかどうしようか悩んでるのよね、ちなみに全部買って全部売った場合儲けで言えば大体大銀貨4枚いくかどうか」
「3ヶ月でそれだと微妙では有りますが…お酒を頼まない人が買って飲むのを考えると悪くは無いんですかねぇ…?」
「売り上げにはあまり影響しないけど、少しずつ黒字を出す物では有るね、安い時限定だけど」
「んー…それなら買えるだけ買って保存して、値が上がり次第仕入れるのと無くなり次第販売終了ですね」
「はいはい、それじゃあちょっと市場まで行って余ってる分全部買い占めてきましょうかね、そろそろカビが来てる物も有るからそれ込みで安くなってるはず」
「安くなっていてもカビで使い物にならなくなった分安くなっているだけですけどね」
「後清掃費用なんかの手間ね、それじゃちょっと買い占めて来る、ポケットマネーの方から出すから来月の仕入れ額の方に上乗せでよろしく」
「分かりました、あまり余計な物は買わないようにお願いしますね?」
「掘り出し物が有るかどうか次第かな?」
カービー、カビー、通称牡丹餅ーをコンポストに捨てて、まだ表面だけで中まで行ってない物はカビの生えた部分だけをカットして念入りに殺菌洗浄、無事な物もカビの粉を被っているので綺麗に洗浄をしてから更に殺菌ミストで念入りにカビの菌を死滅させて、カビの臭いが残らないように消臭もきっちり。
選別作業が終わったら果汁を全部搾って、残った皮はお湯で茹でて香りを抽出、皮を取り出して砂糖で煮てレモンピールを作りつつ、香りを抽出したお湯は香りが飛ばない様に気を付けながらじっくり水分を飛ばして濃縮、搾った果汁の中に加えてちょっと香りを強めに。
ライムも同じ様に果汁を搾り取ったら皮をピールにして、香りを抽出して濃縮した物を荷重に加えて馴染ませて、不純物を漉し取ったら半分半分に分けて、ドリンクサーバー用の砂糖を入れた物と入れてない物の原液を作りまして…
砂糖を入れてない果汁もしっかり濃縮、ドリンクサーバー用レモン、ライム、砂糖有り無しとメモ書きを貼り付けたら劣化防止機能付の冷蔵庫に保存しまして…これで良し、量的には再来月の中頃には尽きそうだけど、無くなり次第終了と張り紙を出しておけばいいか。
「レモンとライムの香りが充満して凄いんですけど…何を作ってたんですか?」
「ドリンクサーバーに使う原液、普通とはちょっと違って現役だけが出るサーバーね、そっちで現役を好きなだけ、隣の冷水、炭酸水のウォーターサーバーで薄めて自分好みに、と言ったドリンクバー、混ぜて飲むのも有りだね」
「あー、なるほど、ドリンクバー用ですか、昔色々混ぜすぎて味が死んだ事が有ります、コーラにメロンソーダにオレンジジュース、リンゴジュースにと混ぜて行ったら…」
「美味しい組み合わせも有るには有るけど全部混ぜはお勧めしないね、取りあえずお店の有るのは見ての通り柑橘のみ、オレンジとグレープフルーツが今一のレモンとライム人気、原液とは言っても搾った果汁に砂糖を加えて煮詰めて濃縮しただけだからね、屋台で売ってるのとそう大差はないよ、違うのは飲み放題って所だけ。
砂糖入りはレモネードとかになるけど、果汁のみは酸味以外にも苦味が少々あるから、苦手は人は苦手かな?」
「そう言えば煮詰めた物を添加してましたね、あれが苦味の原因?」
「いや、しっかり絞った時点でどうしても皮から苦味が出るから、濃縮するとその分苦味も強くなる、香りを抽出した物も苦味は有るけど微々たる物よ」
「そっちの更に砂糖で煮た皮は?」
「これはレモンピールとかライムピールってやつ、果肉を包んだ皮と綿を剥がして、外皮だけを砂糖で煮た物、ある程度水分が飛ぶまで煮詰めて乾かしたらほぼ出来上がり、後は付着しているシロップを丁寧に落して…これでピールの完成。
用途に合わせて細かく刻んだり粗く刻んだり、細切りにしたり、細切りに砂糖を塗してそのまま食べるのも有りだね、残ったシロップは瓶にでも詰めて置いて、お湯で溶いた後に冷水か炭酸、そのままお湯を足してホットレモネード。
ちょっと苦味が有るのと、香りを抽出した後とは言え大分香りが残ってるし、更に煮詰まってるから結構レモンとかライムの香りがするよー?」
「そのシロップは原液の方には加えないんですか?」
「ちゃんと加えてるよー?更に香りが強くなるからね、これは単純にカジノの方で使う分を追加で作ってるだけ、カクテルにレモンとかライムピールを使う事も有るし、シロップ自体も使うからね」
「あー、なるほど、バーで出す分でしたか」
「と言うより単純に市場に有ったのを買い占めたから、カジノで仕入れて使う分が無くてね、だったらそっちで加工してもってこいやって事で」
「買い占めたんですか…」
「買い占めた、豊作でかなり安かったから大量に輸入したは良い物の、うちみたいに劣化させずに保存と言うのは基本的に無理だし、ひんやりしていてもカビは生えるし、お店で使う量も知れてるし、って事で市場に溢れていたのを全部買って来た。
100個中10から15個はカビが来ていたから大分安く買いたたけたよ、それでもドリンクバーで売ると最終的に大銀貨4枚位しかプラスにならないけどね」
「薄利多売と言うやつですかねぇ…」
「さて、シロップとピールを作り終わったし、カジノの方に納品して来ましょうかね」
「はーい、私達は片付けが終わったら上がりまーす」
「はいはい、お疲れ様ー」
ピールとシロップの納品が終わりましてー、今日やるべき事のメモ帳を確認して終わった項目にチェックを入れて…次は家具屋さんと鍛冶屋さんに行って特注のテーブルとその部品の進捗を確認、出来ていたら出来ているだけ全部引き取って改装中の2号店に持って行って…人がぶつかった衝撃で潰れたと言う排煙パイプの修理もしないといけなくて…ふむ、お店の方はもう店長代理に任せて良いから2号店の方に行きますかね。
でもその前に家具屋さんと鍛冶屋さん、1台でも良いからテーブルが無いとお店を開く事も出来ないしね…
「で、破損状況は?」
「天井を伝っている排煙パイプが2本変形、テーブルの上に有った吸引口は全滅、これは低い位置に有ったので真っ先に、ですね。
それと個室のドア、椅子、テーブル、七輪も9割方破損、無事だったのは一部個室と厨房に保存していた物だけで七輪は数が全く足りません、エプロンやナプキンもは使用していた物は全滅、厨房は死守したので被害は有りませんが在庫が足りません。
エプロンとナプキンは1号店に在庫が大量に有るから一旦それでしのいで…お城に居る使用人さんは内職をするわけないよねぇ…?」
「無いです」
「となるとまた引籠り達の家に居る使用人さんに内職を頼んで…七輪はどのタイプが残ってる?」
「2人用丸型が4つ、1人用が3つ、4人用角形が3つ、特注の10人用等は全滅です」
「個室用しか残って無いのかぁ…まあ良いや、次から七輪じゃなくてこれになるから、持ち運ぶのは七輪じゃなくてこの金属の入れ物ね、テーブルの下にソケットが有って、そこに炭を入れたこれを差し込むだけ、炭を交換する時は入れ物ごと交換で。
一応テーブルにせよこの入れ物にせよ特注品だから、壊すと高いと言う事は覚えておいてね?壊してもお城に請求書が飛んで行くだけだけど。
でー、この入れ物の説明、上には熱が上がって行くけど横とか下方向には熱が伝わらない作りになっているから、素手で触っても火傷する事は無いけど、念の為に他袋を嵌めて扱う事、火力の調整はテーブルの横の摘み、ここで風力を調整して風を送り込む仕組み、最大にしてホルモンを焼いても火柱が上がる事は早々無いけど、念の為に説明書を各テーブルに貼り付けておいてね?
まあそれはそれとして、掃除は終わって壁の補修も終わってるみたいだし、吸引口と排煙パイプの修理、ついでにパイプ内の清掃を済ませようか、厨房の方でお湯を準備しておいてねー、修理が終わり次第パイプ内を洗浄するから」
「分かりました」
よし、それじゃあ修理から始めるか。
それにしても…派手に壊したなぁ…肉体言語で語り合う派閥争いは外でやって欲しい物だよねぇ…
ピール
レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、みかんでも作れる物
沸騰したお湯で30秒、その後お湯を捨てて砂糖で10分から15分、粗熱を取って冷蔵庫で1日、翌日水分が程々に飛ぶまで煮詰めたら出来上がり、冷蔵庫で1日の工程は省いても良いと言えば良い、けど物による




