素で忘れてた プライドは遠い彼方
んぅ…チョークがもう無くなってしまったか…連日黒板にびっしり書き込んでたし、仕方ないと言えば仕方ないか、取りあえずないと困るのでササッと作り足して…これで良しと、それじゃあ漢字の書き順の続きを書いて行きまして…
「なぁ、この漢字の書き順って覚える必要があるのか?どこから書いても同じなら大丈夫じゃないのか?」
「見る側からすれば同じ字には見えるけど、書く方の意識の問題かな?例えばこの字を書き順を逆にして書くと言う事は物事を逆に覚えると言うのと同じで、極端に言えば今手元に有るお茶、これは茶葉を摘んで、蒸して手もみと言う作業で葉を丸めて、乾燥させてっていう手順を踏んで、最後にお湯を注ぐなり水出しにしてお茶になるんだけど、最終的にお湯とか注いでお茶になるなら間の工程は要らないだろうと、そのまま摘んだだけの茶葉にお湯を注いでそのお湯を飲む様な物かな?
まあ当然お茶にならないって事は無いけど、全く違う別物になるし、元に戻そうと一旦お湯から出して、乾かして、味が出るように揉んで、またお湯を注いでって言う変な工程になる、つまり書き順と言うのは物事を正しく順序良くやると言う事を学んでいるとも言えるね、後書き順通りに書いた方が書きやすい」
「なるほど、確かに物事には順番と言う物が有るな」
「自由な発想と言うのは大事だし、必要の無い工程を省いて簡略化すると言うのも大事だけど、それは物事の正しい順序と言う物を知っていてこそ初めてできる事だからね、こっちの世界だと機械と言う物を動かすのに安全手順と言う物があるんだけど、その手順を全部無視して動かしてから確認するような物だから、正しい手順を覚える力と言うのが大事になって来るわけだね。
漢字の書き取りはそれに通じる所があるからしっかり順番通りに書いて覚えて行こうね」
「ロと口と□の見分けが付かないんですがこれは…」
「カタカナのロは逆さにした台形に似た形、口はそれを少し細く横長にした形、□はそのまま、書き順も同じだから紛らわしいけど、微妙な形の違いで覚えると良いね、それとカタカナの所にいきなり漢字の口が入ってくる事は無いし、学んでいるうちにあーこれは漢字の方の口なんだな、と言うのが分かるようになって来る、手書きだと分かりやすいけど、こういうパソコンを使って入力、出力した文字の場合特に見分けが付け辛くなってるけど、こうやって勉強している文脈から読み取る力もついて来るかな?」
「そう言えばテレビでやってた達筆と呼ばれる人のミミズがのたくったような字ってアレ読めるのか?」
「達筆…と言うよりは昔の書き方に合わせた感じかな?文字も時代と共に簡略化、分かりやすくして識字率を上げて行ったから、逆に言えば今の人は今学んでいる文字しか読めない、昔の人が使っていた同じ言語と同じ字のはずなのに崩れたりミミズがのたくっている様にしか見えない字の方は読める、でも現代の字は読めない、その昔の字を残そうと学んでそう言う字で書いている人は今も居ると言う事だね、だから実際には達筆とは違うとも言えるかな?
現代の文字に合わせた場合あの崩れた文字は達筆とは言わないし、訳も分からずあれが達筆と誤った認識の人が多いのも確かだね、だからただミミズがのたくっただけの読めない文字ですらない何かを達筆だなんだと持て囃して称賛すると言う変な人達がいる、そもそも読めないから文字として成立してないしね。
ついでに言えばその理論で行くとまだ文字を書く事の出来ない小さい子が書いたミミズも達筆と言えちゃうからね、勢いだけなら迷いも何も無くバーッと書いちゃう小さい子は全員該当するし」
「主様は昨日テレビでやってた達筆とか言われていた書道の先生?の字は読めるのか?」
「全く、だって文字として成立して無いもん、昔の書き方に合わせてはいるけど、自分流で崩しすぎてもはやただの落書きとかしているし、書いた本人が忘れたくらいでこれなんて読むの?って聞いたら間違いなく読めないよ、基本的にはその場で思いついた漢字を適当に書いてるだけだし、そもそも読ませる気が無いし」
「マナー講師に通じる所が有りますよね、全国の書道の先生100人を集めてそれぞれの文字を解読させてみたってのも面白そうな気がしますね」
「マナー講師の場合あれはあれで反面教師、絶対やってはいけない事として学ぶ事が出来たから有意義では有っただろうけど、自称書道家の達筆はなんの生産性も無いと思う」
「あれに出て最後の方まで残ったマナー講師は開き直って絶対にやってはいけない事って本にして出版したりしてますけど、書道の方は確かになんの生産性も無さそうですね、学ぶ物が何も無いですし、一種のカルトみたいな物と言った方が正しいですね、そこを跳ねる時は鉛筆を離さない」
「書き順だけじゃなく止めとか跳ねが有るから覚えるのが大変だぜ…」
「ところで、なんでホワイトボードじゃなくて黒板を使ってるんですかね?」
「こうやって大きく書いて中に色を塗る時にチョークの方が楽だから、後片付けを考えるとホワイトボードの方が楽と言えば楽だけど、見やすさで言えば黒板だよね、光で反射する事は無いし」
「あー、確かに、ホワイトボードは作りが作りなので反射が有りますからね、それに城に黒なので反射しない様に少し暗くすると見え辛いですし」
「太く書くのが難しいと言うのも有るね、チョークだとこうやって太い線を書くのも簡単だし、力加減を間違えると折れるけど」
「ホワイトボードでは出来ない事では有りますね」
「特注のペンを用意すれば出来るだろうけど、チョークなら一本で細い線から極太まで全部カバーできるからね、それはそれとして何用で?」
「あ、そうでした、店長さんがもうメーカー対抗の大会が始まってるけどいつ来るのー?って」
「あー…忘れてた…今何時?」
「午前9時ですね、何ならもう始まってるので…4時間遅刻とか重役出勤ですね」
「まあ…屋台を出すだけだし、呼ばれてるメイド達も行ってるから多分大丈夫…だと良いなぁ」
「おはよー、今日大会が有るってのを完全に忘れてた」
「おー、おはよー、5時間近く遅刻とか重役にも程があるねー、それで、なにをしてたん?」
「ちょっと新しい娘の教育の方を、会話は出来る様になったから今は読み書きの方をね、それの授業をやってた」
「授業をするのも良いけどこっちもちゃんとやらないとね、屋台の方はメイドさん達が回してくれてるから問題ないけど」
「ならよかった、とは言っても大会中飲み食いするのは…」
「余裕が有りすぎる我らがスポンサー様のレッドウルフと野次を飛ばしに来たマキシマとワールドの会長様位だね」
「会長さん来てるんだ?」
「酒が入ってるけど他の人に絡んだりはしないし、自分の所以外には野次を飛ばさないから無害と言えば無害だね」
「取りあえず何をしようかね…んー…表からダンボール入りのソフトとかハードを持って来る位かな?」
「そうだね、ハードは各種10個ずつ、ソフトは500グラムずつ持って来れば大丈夫かな?」
「バーブレスはまだ屋台に並んでるので足りるね、そうだね、折れたり伸びたり切れたりはしてるけど、1袋10入りだから早々無くなることは無いね」
「じゃあ適当に取ってくるね」
「お願いねー、私はこっちで集計とかキャッチしたバスの処理とかしてるから」
えーと、フラットレイカー5インチの単色を4種500グラムずつと、単色フック無しハードが各10個ずつの、5グラムスプーンと1号と2号オモックも持って行こうっと、これも使い方次第だし、スプーンリグとかオモックを使ってはいけない、なんてルールは無いしね。
他に何か面白い物は…特に無いか、ネイルフロートは屋台に並んでたはずだし、イールストレートは試供品みたいな感じで数量限定だから追加する必要なしの…まあこんな物か…な?よし、戻って屋台に商品を追加しましょ。
「追加の商品持って来たよー」
「はいはい、ありがとねー」
「でー、今はどんな感じで?」
「そうだねぇ、計測は祭典の時と同じくアプリを使っての撮影、それで各チームのデータが飛んで来る様にしてるので不正は出来ない状態…と言うよりする様な人はここには呼ばれないから問題ないとして、前回は初見でも今回は2回目と言う事も有って競り合ってる状態だね。
でもまあ、さーちゃんとちぃちゃんはまだまだ経験不足、食わせるまでは行ってもその後のやり取りが続かないね、細い糸を使わないって事は無いだろうけど、ここのは他と違って走るし歯も鋭いし、何より軽く4キロ超えてくるのも居るし」
「フッキングが遅れたりドラグの締めすぎでラインブレイクかぁ、その辺りは経験だよねぇ」
「フッキングが遅れてのラインブレイクはプロもやってるけど、針掛かりが完璧な状態でのミスは圧倒的なまでの差があるね」
「ま、これも勉強の内だね」
「そうそう、国外でも活躍しているプロと一緒に釣りが出来るってだけでもかなりの経験になるし、それを見て学べる事も有るからね」
「メーカー対抗だから個人の記録はほぼ関係ないけど、さーちゃんとちぃちゃんは1500と1700、社長と副社長が4500に4600、5700と5900に7100か、これ社長と副社長がいなかったら負けてるね」
「これで余裕を感じていたらダメダメだけど、周りに置いて行かれて焦っているし、悪くは無いと言えば悪くは無いんだよね、余裕が無さ過ぎるのもダメだけど」
「去年ボロボロだった人も今年は3400と4100を2本上げてるみたいだし、2日のトータルだからまだまだどうなるかはわからない感じだね」
「1回でも良いから4lbの限界を軽く超えてる5000とか6000を上げれば変わっては来るだろうけど、ギリギリの見極めるのは難しいからね、緩すぎると寄せて来れない、強すぎると切れる、魚の動き次第で常にドラグを調整しなければいけないと」
「その状態で動きをコントロールできるようになれば文句無し、そのコントロールに関してはトリトンの金木プロとか花山プロが上手だから見て盗めればいいんだけど、見るだけで盗めるなら苦労はしないって言うね」
「実際にやり取りしないといつ走り出すとか、どうやれば抑え込めるとか分からないしね、今年はクロートーの大木さんと真辺さんは不在であそこにいる2人が代打?」
「そうだね、あの2人は今国外にいるから代打だね、優勝経験こそない物の、堅実に3位から6位辺りには入ってくるから実力は十分あるね、後はフルメンバー」
「特に賞品は無いけど皆頑張るよねー」
「意地と意地のぶつかり合いみたいな感じだね、ボートも魚探も無し、本人の持つ実力だけでの直接対決、道具に関してはメーカーで何が得意これが得意と差が有るけど、その辺りは誤差みたいな物だね」
「何ならソフトとかハードとかここで買って使ってる人も居るよね」
「勝つためにはプライドなんかかなぐり捨ててるのが良いね、普段ならフィールドテストとかも有るし、色々面倒な事も有るからスポンサーの道具がメインになる、なんて言う事も有るけど、今日は無礼講、他のメーカーの道具である無し気にせず兎に角勝て、そんな感じだからね」
「今一番人気はフラットレイカーの単色クリアイエローか」
「それで大きいのが釣れたら直ぐそれに飛びついて同程度の大きさを釣る、そこにはプライドも何も無い、色々試すなら横並びになるか余裕が出来てから、もう勝ちに飢えている状態だね、誰かがパターンを作ったらすぐ真似して横に並ぶ、それの繰り返しがずーっと朝の5時から行われているわけですよ」
「なるほど、まあパターンを直ぐに確認して真似をするのは大事だね、広い湖やダムで広範囲に散ってるわけじゃないし」
「他の管理連部に比べたら大分広くは有るけど、出せて手漕ぎのカヤックまでだからね、そこで掴んだパターンは他の所でも使えると言うのがまたなかなか」
「7キロもクリアイエロー?」
「だね、4キロから5キロがクリアイエロー、そのパターンでやっていた時に7キロがドカンと、それで皆クリアイエローでガンガンに攻めてる状態」
「さーちゃんとちぃちゃんはそれに気が付いてないと」
「んだねぇ、もうちょっと周りを見る余裕を持つことも養っていきたい所、はい、処理の終わったバス持ってっちゃってー」
「キャッチされたバスは全て調理、若干余り気味になりそうな所では有るけど…」
「余ったらそれはそれで近くの食堂に上げれば良いのよ、ムニエルとか天ぷらとか唐揚げとか餡かけとか作ってるし、うちからもたまに買って行ってるし、処理はしてない丸太の状態だけど」
「その辺りはご近所付き合いも有るし、困った時は助け合いとかそう言う物でも有るよね」
「ちょっと仕事で誰も居なくなるから変な人が来たら教えてねーとかそんな感じでね、さて、そろそろお昼時だし、本格的に休憩として食事を取りに来る人も居るし、食事用の屋台もそろそろフル稼働だね」
「だねー、それじゃあ丼物にバーガーに定食にといつでも出せるように準備しますか」
黒板
勉強と言えばこれ、ホワイトボードでも一応問題ないと言えば無い、けどチョークの方が使い勝手が良い事も有る
たまに引っ掻くような音が出て耳と尻尾がぶわっと逆立つ事も有るのが欠点か




