表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/1104

そう言う日 何所からが夢で何所からが現実なのか…

 ナディから搾ったミルクで作ったチーズを御世話すること暫し。

 表面の色がクリーム色からオレンジ色っぽい色になっており、表面に白いカビが少々繁殖中。

 見た感じでは熟成も進んでおり、そろそろ夕食に出しても良いだろう。

 念の為、木箱を一つ取り出し調理してみる。

 確認するには実際に食べてみるのが一番、ついでに他の材料も漁るか…


 チーズを熟成している部屋とはまた別の部屋に行き、ソーセージ、ベーコンやハム、他にも肉類を少々。

 帰る途中に農場へ行き野菜もいくらか収穫、じゃが芋、マッシュルーム、ブロッコリー、アスパラ他多数。

 海老や牡蠣、鮭、ホタテなど海産物も各種揃える。

 まずは木箱をアルミホイルで包み、チーズの表面を剥し、ワインを注ぎオーブンで焼く。

 焼いている間に野菜やソーセージ、海老、ウズラの卵などを茹でておく。

 変り種として海老、牡蠣、鮭、ホタテ、ウズラの卵のフライ、鶏唐、タコ唐、トンカツなどの揚物。

 表面だけを焼いたステーキ、蒸した豚バラ、焼いた鮭とホタテ等々。

 合いそうな物をどんどん作っていき、最後にバゲットもちゃんと用意すれば準備完了。

 オーブンから焼いたチーズを取出し、用意しておいた具材を漬けて味見を開始。

 チーズの出来は良く、塩気も問題なし、茹でただけの具材も美味しく頂ける。

 変り種として用意したフライ等も合わないわけがなく、用意しておいた具材は直ぐに食べきってしまった。

 量を用意して置けば良かったと思いもするが、時間帯はまだ朝食時なので程々に。

 朝食にしては随分と量も多いし重いけど…それと朝食を用意しているヴリトラとかハクの目が痛い…


 朝食が終わった後は海へ。

 イクラの醤油漬けが屋台を出した時にほぼ全て食べられたので早めに作っておく。

 今だと1匹取るだけでかなり取れるから楽と言えば楽か…?

 以前生け簀が有った所まで船で行き、雌鮭と書いたプラカードを掲げる。

 暫くすると何匹かの鮭が沖から高速で泳いできて船の前に腹を上に向けて整列する。

 その中から一匹選ぶと残りの鮭はまた沖へと帰っていく。

 最近ますます大きく成長し、さらにはちょっとした文字まで読めるようになっている魚達。

 絞める時にちょっと罪悪感が無いでもない…

 血を抜きつつ船で牽引しながら帰港、まだ血が抜けきっていないので暫し吊るす。

 その間に解体場の中を冷やして置き、運び込む準備をする。

 解体場が冷える頃には血も抜けたのでルシフ達に運び込んでもらう。

 鮭を運び込んだらまずは腹を開き、卵巣を取り出す、のだが…

 卵巣自体がかなり大きい、卵の大きさは変わらないのにねぇ…

 お湯を沸かしている間に卵巣を取り出して貰い、いくらを仕込む組みと鮭を捌く組みとで別れる。

 お湯は50度くらいで止め、塩を溶かし飽和塩水を作る。

 卵巣から取り出した卵を纏めて入れている所に飽和塩水を入れ撹拌、3分ほど続け、身を締める。

 撹拌が終わった卵を取り出せばいくらの出来上がり、ここから調味液に漬け、醤油漬け、身と一緒に漬けて紅葉漬けの二種類作る。

 一晩ほど漬ける必要があるが少々時間を飛ばして時短。

 骨などの残骸はいつも通り肥料にした後は解体場の清掃、戸締りをして屋敷へ帰る。


 魚粉を農場に送り届けたらすぐに昼食。

 朝に味を確かめて置いたチーズと具材でチーズフォンデュ。

 木箱のままでも良いがそれだと複数人で食べるには量が少ないので、表面を剥し、鍋に移してワインを注いで火にかける。

 木箱に入ったままのも用意しておく、此方は火にかけずそのまま、バゲットに漬けて食べてもいいし、鍋に足しても良い。

 他にも朝は用意してなかったおかき、蒲鉾や野菜天などの魚のすり身を使った物、タコ焼きなども追加。

 チーズに合う物は大体何を付けても美味しく頂ける。

 問題は…

「フォンデュ用のチーズの追加お願いします」

「ウズラの卵とマッシュルームが無くなりました」

「フライも全て無くなりました」

「お酒が足りません」

 野菜だけでなく揚物なども全て一口で食べれる大きさにして有るせいか、食べるのにそれほど時間が掛からずあっと言う間になくなった。

 チーズの在庫が無いので追加は作れない、そのことを伝えるとちょっと不満は出た物の納得はしてくれた。

 チーズフォンデュなんてチーズを作りすぎて、文字通り山ほど余ってる時くらいしか作らないからなぁ…

 普段はチーズを作ったとして酒飲み達の肴として消えるし、何より甘いもの大好きなメイド達の御菓子に生クリームを大量に使うのでそれほどチーズに回せない。

 やろうと思えば出来なくはないが…ナディのタガが外れるので却下。

 それでも食べたいというのであればナディの相手でもして貰おう。


 昼食が終わり、食堂と調理場の清掃も終わったので農場でダイコンと大葉、ワサビに生姜と、夕食で使う食材の収穫。

 調理場に持ち替えり、ダイコンはつまにし、水にさらしておく。

 大葉は水でさっと洗い、ワサビを幾つかとネギを刻み一緒に冷蔵。

 残っている生姜とワサビは夕食直前に擦り下す。

 寿司飯用のお酢も炊き、此方は常温になるまでゆっくりと冷ます。

 狐さんが毎日毎食稲荷寿司を食べるので、寿司酢のストックは常に作っておかないと切れた時が大変。

 他にも人参、レンコン、椎茸を細かく刻みお酢を少々入れ甘酸っぱく炊いた物、油揚げを醤油と砂糖で甘辛く煮た物も作っておく。

 寿司酢とご飯を混ぜ合わせ、その上から炊いておいた野菜を少々入れ混ぜる。

 油揚げは寿司酢が水分でべしゃべしゃにならない程度に水分を落とし、中に混ぜ合わせた寿司飯を詰めて閉じれば稲荷寿司の出来上がり。

 お茶の時間用なので1人3個の4人分で4皿、12個と緑茶を用意しておく。

 余った時間で手軽に摘まめるクッキーやがっつり食べれるホールケーキ、ホイップクリームたっぷり果物盛りだくさんのプリンアラモード、他にも饅頭なども作ってき並べていく。

 お茶の時間になると同時に食堂にメイド達が雪崩込み、各自食べたい物を持って行く。

 調理場の清掃は後回し、お茶の時間が終わり次第戻ってくる食器を洗うついでに済ませる。

 部屋で狐さんが待っているので稲荷と緑茶、饅頭を持って狐さんの部屋行きのんびり。

 カレンとリッカも随分と落ち着いてきたように感じるが…多分気のせいだな。

 何時まで経っても子供は子供、血は繋がっていないが娘には変わりない。

 アリサ達も屋敷に来てから随分と経つけど、アリサ達もずっと変わることなく子供のまま。

 …まあ…アリサ達は外見は完全に20半ばだし…狐さんがやりすぎた結果だから、もう戻ることが無いだけだけど…

 本人達は幸せそうだからいいか…


 お茶の時間が終わり、少し狐さんやリッカ、カレンと話した後は調理場に戻り食器洗いと使った調理器具周りの清掃。

 清掃が終わるくらいで夕食の準備を始めるのにちょうどいい時間。

 お米を研いで浸水、その間に貝等でお汁の出汁取り。

 出汁を取っている間に今朝取ってきた鮭を刺身と丼用に切り付け。

 切り終わったら浸水を済ませたご飯を炊き、炊いている間に出汁の中にお味噌を溶かす。

 水にさらしておいたダイコンのつま、スライスした玉ねぎを取出し、つまは大葉と一緒に敷物に、玉ねぎは骨の周りについている身をこそぎ落とした物をのぜカルパッチョに。

 寿司飯用のご飯が炊けたら寿司酢と混ぜ、風を送りながらべたつかない様に混ぜ合わせる。

 寿司飯用じゃないほうのご飯はそのまま置いておく。

 一通り用意が終わった頃、食堂にメイド達がやって来て夕食開始。

 各机の上にはいくらの醤油漬けと紅葉漬け、下した生姜とワサビ、刻んだワサビと下しワサビを混ぜた物、刻んだネギを置いていく。

 カルパッチョと刺身も取り放題、ご飯は白ご飯か寿司飯か両方かを選び、生ワカメを入れてある器に貝の味噌汁を注いで渡す。

 味噌汁を除くと見事に鮭尽くし、いくら丼や紅葉漬け丼、漬けにしていない鮭とイクラで親子丼を食べるメイド。

 それぞれ単品で食べるメイド、カルパッチョや刺身にマヨネーズをかけてマヨサーモンにするメイド。

 みんなそれぞれが一番美味しいと思う食べ方で食べている。

 一部ご飯と味噌汁は取らず、お酒を片手に、刺身といくら、紅葉漬けを肴に飲み続けているメイドも居る。

 今はご飯と味噌汁が必要ないだけで、飲み終わったら具無しの塩おにぎり1個と味噌汁を要求してくるのでちゃんと取って置く。

 鮭が大きく育ってくれたおかげでいくらも紅葉漬けの在庫もまだまだ沢山、此方はフォンデュと違って幾らでもおかわりに対応できる、いくらだけに。

 なんて馬鹿な事を考えつつ、刺身用の柵といくらと紅葉漬けはまだまだあるよーと、言うと机の上に有ったいくらと紅葉漬けは全て消費され、おかわりを要求された。

 まだ…まだ大丈夫なはず…

 残りを確認しながら追加を渡していくと、おにぎり用の御飯を残し寿司飯と白ご飯が終了。

 ご飯の終了を伝えると不満が…特に出なかった。

 そのかわりいくらと紅葉漬け、お刺身を要求され続け、今朝取ってきたばかりの鮭は綺麗に食べ尽された…

 お酒を飲んでいたメイド達はおにぎりと味噌汁を最後に注文し、食べ終えた後食堂を去って行った。


 夕食の賄をどうしようかなーと、冷蔵や冷凍を覗き材料の確認。

 あるのはダイコンのつま、こっそり取って置いた頬肉、スライスした玉ねぎ、各器の底に少量ずつ残っていたいくら、ワサビに大葉…

 収納の奥にラーメン用の細麺数玉、スープは無し。

 主食が無いので麺を茹で、氷水で締めて器に盛る。

 余っていた紅葉漬け用のタレに少々お酢を入れ加熱、味を調え良く冷やす、頬肉の刺身、ダイコンのつま、スライス玉ねぎ、刻み大葉、器の底に少量残っていたイクラをちらし、タレを回しかけて出来上がり。

 ワサビはお好みで。

 麺の黄色に桃色の頬肉、玉ねぎと大根の白に大葉の緑、見た目は兎も角内容が少々寂しい気もするが、まあない物は仕方なし。

 カルパッチョ風冷麺とでも思えばいいだろう。

 今日はヴェスティアもエキナセアも非番…というか珍しく作る側ではなく食べる側に回っていた。

 リッカも狐さんやカレンと一緒に食べていたので1人寂しく麺を啜り、つまや頬肉の刺身も食べる。

 錦糸卵も欲しくなるが…卵なかったしなぁ…

 食べ終わったので食器を洗い、調理場の清掃をする。

 清掃が終わった後も寂しいので何となく秘蔵のお酒を御猪口に一杯用意。

 まだ少しだけ残っているいくらを肴にちびちびと飲む。

 小鉢に少量有ったいくらを食べきり、御猪口一杯のお酒を飲み終わる頃には寂しさも紛れていた。


 寂しさも紛れたのでお風呂でのんびり、調理場でゆっくりしすぎたのかもう誰も入っていなかったのでお風呂を独り占め。

 少し泳いでみたり大の字になって浮かんでみたり、アヒルのおもちゃを大量に浮かべてみたり。

 意味もなく髪を足先より長く伸ばしてみたり、背丈をとにかく小さくしてアヒルのおもちゃに乗ってみたりと、普段できない、やらない事をやってみる。

 どれほどの時間が経過したかはわからないが実に楽しい、少々疲れたのでまた大の字になり湯船に浮く。

 お酒を飲んで少し気持ち良くなっていたせいか、湯船に浮かんだまま眠気がやってきたので、すぐに湯船を出て脱衣所に戻る。

 ただ眠気には抗えず、体は拭き終わったが、長椅子をベッドに、タオルを布団代わりにしてそのまま寝てしまった。


 目を覚ますと既に朝になっており、脱衣所ではなく寝室で寝ていた。

 脱衣所で寝てしまった後、誰かが探しに来てくれたらしい。

 ベッドから起き上がろうと、布団を捲ると衣服は一切身に付けていない。

 隣には運んできたと思わしきメイドが布団の中に潜んでおり、幸せそうなだらしない寝顔を晒している。

 耳をくすぐってやるとさらにだらしない顔になったので弄って遊ぶ。

 起きない程度に堪能した後は箪笥から下着と衣服を出し着替え、布団を元に戻し再びメイドを布団の中に埋めて置く。

 あの様子だとお昼前までは起きてこないだろう、酔っているみたいだし。


 朝食をとるために食堂へ行くが、メイド達の姿が見えない。

 廊下を歩くときにも見当たらなかったが…何所に行ったんだろうか…

 中庭と庭は…いない。

 少し屋敷を離れて農場を探すも見つからない。

 戻る前に朝食用の野菜を収穫、加工場に行って卵と思ったが不在の立札。

 んー?と頭を捻りつつ考えるが、いない物は仕方ないので諦め、屋敷に戻り調理場でレタスとトマトだけのサンドを作り食べる。

 食べ終えてもまだ誰も食堂に訪れず屋敷は静かなまま。

 なんか変だなーと思いつつ起こさなければ大体寝ているルシフの部屋に行ってみる。

 中に入るとルシフは人形を抱いてい鼻提灯を作って寝ているので皆出かけたわけではないようだ。

 特に用事もないのでだらしなく鼻提灯を作っている寝姿を撮影し、机の上に飾って置いた。


 他のメイドの部屋を回ってみるがメイド達の部屋には誰もいない。

 朝早すぎるわけでもなく、時間的にはそろそろ皆働きはじめる時間帯。

 どこで何をしてるんだろうかと探し、お風呂場へと行き着く。

 ふと、皆まだ入浴してるのかと思い脱衣所へ入ると…

「ふにゃぁ…いいきもちぃ…」

「うふふ…もういっぱーい…」

「早く戻らねば…でもここから動きたくない…」

「あはははははは」

 皆顔を真っ赤にして酔っていた…

 酒瓶などは転がっていないので飲んだわけではないようだが…

 念のために浴場の扉を開けるとお酒の匂いが漂ってくる、何人かのメイドが中で倒れていたので救出。

 救出が終わる頃には匂いだけで少しほろ酔いに。

 先程まで用は無かったが用が出来たのでルシフの部屋に行きルシフを起こす。

「るしふー、おきてー…おきないときすしちゃうぞー…」

 揺すっても起きず、鼻提灯を出したまま。

「むぅー…」

 起きないので鼻提灯を拭き取り宣言通りキスをしてやる、すると…

「んむぅ!?」

「んー…」

「んー!んんー!?

…ぷはっ!なになになに!?」

「るしふおきたー、だついじょでみんなたおれてるー…あとはまかせたー…」

「ご主人様酒臭っ!こんな時間から飲まされたの!?」

「のまされてないー…でもなんかー、おふろばがー、おさけのにおいがー、じゅうまんしてたー…」

「んんー?昨日誰かお酒をお風呂で飲んだかこぼしたかしたかなぁ…

取りあえずご主人様は寝てなさい、狐と何とかしておくから…」

「おねがいー…」

 説明している間にも瞼が重くなり限界が来たのでルシフのベッドで寝る事にする。

「あーあー自分の部屋でー…ってもう聞こえてないか…

それに寝ている時に急にキスしてくるとか…それに…もう…」

 ルシフは顔を真っ赤にしながらご主人様をベッドの真ん中に寄せ、布団をかぶせた後部屋を出て行った。


「…と言うわけでなんかみんな脱衣所で倒れているらしいよ。

お風呂場で倒れてたのはご主人様が救出したみたいだけど」

「なるほど、ではお風呂場に行ってみましょうか」

 2人はお風呂場に行き状況を確認、脱衣所で倒れているメイドの状況を確認する。

「うわぁ…これはひどい…」

「此処まで酩酊するのも珍しいですね…何が有ったのでしょうか…?」

「とりあえず誰か起こして聞いてみたいとわからないね…

あ、あそこにミネルヴァが倒れてる」

「ミネルヴァが酔い潰れるまで飲むとは思えませんし、起こして聞いてみましょうか」

 浴場へと続く扉の前でメイド服を着たまま酔い潰れ、倒れているミネルヴァを椅子に座らせ酔いを醒ます。

「あぁ…いいきもち…

あっ!」

「酔いは覚めましたか?」

「そそそ、それはもうばっちり!」

「ではここで何が起きたか聞かせていただけますか?」

「は、はいっ!

まず朝のお風呂に入ろうとしたところ、浴場の明かりが消えておらず、脱衣籠の中にはご主人様の衣服が雑に入れられていました。

ご主人様にしては珍しいなと思い、衣服を直した後お風呂に入ろうとしたら衣服から微かにお酒の匂いがしました」

「んー?昨日誰かご主人様にお酒飲ませたっけ?」

「いえ、昨日は夕食以降誰もご主人様の姿を見ていません。

ただ飲んでいたのは確かなようで、浴場の扉を開けるとお風呂で浮かんだまま寝ているご主人様が居ました…」

「ああー…なるほど…」

「浴場の扉を開けている時にメイドが入ってきたので、入ってきたメイド達は匂いにやられ酩酊。

無事な者達で決死隊を結成、お風呂に飛び込みご主人様を救助、無事だった者にご主人様を託し、その後全滅いたしました…」

「ミネルヴァ、良くやりました、回復した後、突入した決死隊を連れて部屋に来るように。

何か褒美を取らせます」

「ありがとう御座います…」

「なんにせよまずは倒れているメイド達を此処から退避させましょう」

「いやー…見事に全滅だねぇ…お風呂はどれだけ酷いことになってるんだろ…」

「何なら今すぐ見に行きますか?」

「…やめとく、数秒で倒れる自信ある」

「賢明な判断ですね、では大広間に運び込みましょう」


「無理酔いを醒ましても良いですが、自然に抜けるのを待つ方が良いですね」

「皆幸せそうだもんねぇ…」

 大広間に運び込まれたメイドたちは皆幸せそうな表情で眠っている。

 事故によるものではなく、ただ朝から酔い潰れて寝ているだけであるならば、無理に酔いを醒ましてお説教だっただろう。

「酔い潰れていたメイド全員運び終えました、これから如何致しましょうか?」

「まずは突入する前準備に換気扇の強化、それからお酒になっている湯船の処理、またはすべて回収。

質問は?」

「回収する場合入れ物はどうしましょうか?」

「こちらを湯船に投げ込んでください、時間はかかりますが湯船のお酒を全て吸収してくれます」

「わかりました」

「これで良しと…換気扇の強化終わったよー、あと数分で少しはましになる」

「では数分待った後突入、湯船に向かってこの輪を投げ入れてください。

明日には全て回収できているはずです」

「…もういいよー」

「では行きますよ」

 3人が浴場に突撃し、湯船に向かって輪を投擲、着水を確認した後直ちに撤収。

 作戦は完了したが、少しずつ酔い、最終的に酩酊。

 大広間でみんな仲良く泥酔する運びとなり、その日は屋敷の機能は完全に停止、翌日まで誰も目を覚ますことは無かった。


「そんな事になってたのか」

「だよー、結構大変だったんだからね?」

 まだ完全に抜け切っていないのでルシフのベッドで横になったまま、桃の皮を剥いて貰い、さらに食べさせて貰う。

「んー、桃が美味しい…」

「そりゃクロノアが選りすぐったやつだからねぇ。

まあもう暫くは此処で寝るように、ここなら被害が広がらないから」

 自分の寝室は現在立ち入り禁止で浄化中、狐さんの部屋はリッカとカレンが寝るので除外。

 となると対処できるのがルシフだけ、という事でお泊りが続いている。

「まあ今回も中々にいいお酒が採れたし、誰も怒ってはいないけどね。

にしても何でお酒飲んだの?」

「1人で夕食を食べるのが寂しかった、気を紛らわせる為に飲んだ、反省はしない…」

「あー…ヴェスティアもリッカちゃんもいなかったのか…」

「あの日は珍しく誰も調理場にいなくて、1人で作ってたからなぁ…」

「なら仕方ないか、桃食べたら頭撫でてあげるからゆっくり寝なさい。

何所にも行かず近くにいてあげるから」

「うん…」

 ルシフが剥いてくれた桃を食べた後、頭を優しく撫でられながら眠りについた。


 なお回収した湯船は決死隊に1樽ずつ、倒れていただけの者にはピッチャー一杯分を瓶に詰めて贈られた。

 どう使うかはメイド達の自由である…

プラカードを掲げると見える範囲にいる魚が「私を食べろ」と言わんばかりに泳いでくる

選ばれなかった魚は身を引きしめたり脂を少々増やしたりと、日々食べられるための努力をしている


ご主人様は寂しいと色々と駄目になる

一応ルシフの部屋には素っ裸で行った、泥酔したご主人様は現実と夢の区別がついてなかったので…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ