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割とパシリな一日 進化の終わりと始まり

ゼリーを冷凍して少しずつ齧りながら過ごす―そんな夏の夜―

 お茶に使う茶葉やハーブを採取、ついでにポプリに使う花も採取。

「この位あれば十分ですね、ミウ、そろそろ戻りますよ」

「はーいお姉さまー」

 茶葉は紅茶にするために日陰で20時間ほど干し水分を飛ばし、手で揉み、ふるい分け塊を解す。

 その後発酵、乾燥と手順を踏んで行き完成。

 ただ水分を飛ばす時点で20時間ほどかかり発酵や乾燥も時間がかかるので時間短縮のために手伝わされる。

 ハーブもフレッシュで使うもの以外は全て乾燥。

 さらにこれもついでにお願いしますとポプリ用に摘んだ花の乾燥もの頼まれる。

 昔は余程の事でなければ頼み事はして来なかったような気がするが、朱に交わればというか…環境に汚染されたというか…

「紅茶とハーブ、ポプリの乾燥もこの位で大丈夫ですね」

「はやーい、もうできたー」

 時間のかかる工程をほぼ飛ばしたので20分くらいで作業を終える。

 作業中猫姉妹はフレッシュハーブティーを淹れ、茶菓子を用意しティータイムと洒落込んでいた。

「終わったので戻りますね?」

「ありがとうございましたご主人様」

「ご主人様ありがとー」

 ミアは椅子から立ち上がることはなかったがミウはトテトテと走ってきて抱きついてきた。

 その場から立ち去り調理場へ行きこちらは狐さんとの時間を楽しむ準備を始めた。


 狐さんとのお茶を楽しんだ後庭を散歩していると今度はコウに捕まる。

 何でも夕食に巨大な車海老を使ってみたいとのこと、捕りに行くにも狐さんかルシフ以外はそこへの門を開けない。

 なのでどちらかに頼んで捕ってきて欲しいとの事だった。

「それでご主人様は海に行って船を出してほしいと」

「今から行ける?」

「いいよー、今日はもうやることないしねー」

 狐さんはグルーミングしたばかりの尻尾を潮風に当てるのは嫌だと拒否したのでルシフに頼んだ。


「この海も何だかんだで利用することが多くなったなぁ」

「ははは、たまに食材を取りに来るくらいには利用してるねぇ、狐もいい海を創ったもんだ」

 この海に居る魚介はサイズも大きく美味しい、大きいが水っぽくならず締まっている、成長していくたびに蓄積され毒となる物は蓄積されず完全分解され毒性を持たない。

 さらに全て生食可能、海を幸を頂くのに大変理想的な海である。

 目の前の光景を気にしなければ…こらルシフ目をそらすんじゃない、私も明後日の方向を向いてるけど。

「で、これどうするよ…」

「どうにもならないんじゃないかなー…」

 白子がほぼ無色透明化、さらに大きくなり鮃や鰈を食い荒らし、たまに鮪をも襲う捕食者に。

 鮃や鰈は逃げるために空を飛び、鮪は負けじと巨大化、泳ぐ速度もさらに早く。

 ほかにも様々な進化を遂げている魚介で溢れていた。

「とりあえず海老とって帰ろうか…」

「ははは、そうしよう」

 二人して見なかった事にしてお目当ての車海老を探すことにした。

 海老も海老でさらに巨大化しており船と同サイズまで育っていた。


「コウ、海老とってきたよ」

 調理場へコウを呼びに行く。

 大きさが大きさなので調理場に持ち込むことはできず、どう使うかもまだわからないので解体もできない。

「ありがとうございます、それで海老はどちらに?」

「暴れないように拘束して庭に置いてある」

 調理場に持ち込めないほど大きいと説明すると調理場の皆で海老の所に行くことになった。

「これはまた立派な車海老ですね」

「ここまで大きいといろんな料理がこれ一尾で作れそう」

「取りあえず解体してしまいましょう、これでは調理場に持ち込めません」

 料理長が頭を落とし、殻を切り裂き解体していく。

「では私達はこれで、ご主人様ありがとうございました」

 料理長はコウ達に解体した海老を持たせ調理場へ戻っていった。


「狐さーん」

「お呼びでしょうか、ご主人様」

 海老を取りに行ったときの海の事を相談する。

「あの海の魚介が調理場に持ち込めない大きさになってきてるんだけど」

「美味しかったので少し手を加えて進化速度を上げていましたが、そろそろ止めたほうが良さそうですね」

 あの異常なまでの進化は狐さんが原因だったらしい。

「ではご主人様こちらを」

 何か久しぶりに怪しい瓶を取り出してくる狐さん。

「これは?」

「進化を止める薬です、それ一瓶海に撒くだけで大丈夫です、他にも効果は有りますがそれは追々。

では後はお任せしますねご主人様」

 瓶を手渡され海への門を開かれたので浜辺から薬を撒いて屋敷に戻った。


 魚介たちの進化を止める薬を撒いた後、汗や海水を流すためにシャワーを浴びることにした。

 シャワーを浴びるために浴場へ向かっているとフレールと遭遇。

 何やら測量機やトリモチや固定具を大量に持っており今から仕掛けに行くとの事。

 ちょうど良いとばかりに捕獲され手伝いを要求してくる、最初に捕獲されている時点で拒否権などは存在しない。

「そこ、1ミリ下にずれてます」

 ミリ単位での設置を要求してくる。

「そちらは水平になっていません」

 一つ一つ1ミリのズレも出ないようキッチリ水平にし固定具で止める。

「次は此処、その次は此処と此処に」

 どんどん指示が飛んでくる。

「これでこの辺り一帯は終わりですね、次は以前設置した物の回収に行きましょう」

 来た方向とは反対側へ行き、以前設置したトリモチの回収を始める。

「さて今回もどこから来たのか、聴かないといけませんわね」

 フレールがトリモチに捕まってもがいている黒いのを一人づつ気絶させ捕縛していく。

 昔フレールの言ってた黒いやつはこっちの事だったらしい、こっちの黒いのも幾らでも湧くからなぁ…

「ご主人様ありがとうございました、それではお先に失礼させていただきますわ」

 フレールは黒いのを引きずって屋敷に戻っていった。

 しかしあのトリモチもえぐいよなぁ…狐さんお手製の薬配合でくっ付いた時点で文字通り何もできなくされるし。

 設置場所も魔法陣の出てくる所を予測してミリ単位のズレも無く狙い撃ち、以前トリモチの中に魔法陣が現れたのは見たが、トリモチを纏いながらニュルーっと出てきていたのは何とも言えない光景だった。

 まあそんな事はどうでもいいか、早く屋敷に戻ってお風呂に入ろう…


 お風呂に入りようやく汗を流せたが今日はそう言う日なのだろうか。

 涼んでいたところでベリスとシュリエルが帰ってきた、がちょっと不機嫌…?

「ただいま戻りました」

「ただいまー」

「おかえりー、何かあった?」

「代替わりした国で少々…いえかなり…?」

 面倒なことがあったらしい。

「どうやら少し前に代替わりしていたらしく、新しい王が国方針転換だーとか、人族以外はは汚らわしく劣っており奴隷として扱うのが妥当だーとか」

 あー…

「依頼の完了報告をしていた所、それを覗き見てしまった貴族が…」

 あーあー…絶対めんどくさいやつ…

「ベリスは見た目だけなら天の使いとも神とも取れるような見た目だから、それを見た貴族は人族は神の加護を得ているだとか神に選ばれただとか盛大に勘違い」

 見たってだけでは勘違いしないような?

「私達の存在は立場が上の者なら知っていますが、下の者は知らない。

そして当時の王は立場をわきまえており、完了報告を受けるときは傅いていましたので」

 真っ白な羽に誰もが振り返りそうな見た目、傅く王様。

 見る人が見たら神やそれに類する者が現れ王に加護を与えているようにも見える…のか?

「勘違いからさらに曲解に曲解を重ね、民衆に人族こそ神に選ばれた者と吹聴、頭もそれほど良くなく選民思想の強かった王子に近づき結託。

その後兎人族の王妃と王位に付く筈だったハーフの王子は邪魔になるからと共に幽閉。

王それを見逃すわけもなく止めようとしたが貴族の暴走は止まらず王妃達を人質に取り王も幽閉。

まだまだありますけど聞きます?」

「大体何となく察せるからいい…」

「まあ最後はその問題の王子と貴族、それに関わった者は消したのでほぼ元通りですけど」

「貴族も王子もベリスを顎で使おうとしたり、側室として迎えてやろうとか、余の血を引く子を作れるのなら神も本望だろうとか言い出したりして、選民思想も極まるとああなるんだねー」

 そんなこと言われたらこの屋敷に居るメイド達はみんなブチ切れる。

「そういうわけであまり気分がよくないのです」

「お茶とお茶菓子を要求します、とびっきり甘いので」

 少しでも機嫌がよくなるように愚痴を聞きながらお茶とお茶菓子を用意した。


 夕食後食休みにお茶をゆっくり飲んでいると。

「ご主人様」「お散歩に」「つれてけー」

 カミラ、カーラ、カルラの三姉妹が首輪と紐を持ってきた。

「はやく!はやく!」「首輪つけて!首輪!」「いこう!いこうー!」

 三人一緒になって催促してくるので首輪に紐を結んでつけてやる。

「出発だー!」「おー!」「わー!」

 狼人族であって狼や犬その物では無いのだが…

 三姉妹同時に走り始め、当然制御できるわけもなく引きずられていく。

「あははははは!」「きゃー!」「わおーん!」

 無邪気に笑ったり叫んだり吠えたりしながら爆走していく。

 三姉妹が満足するまで引きずられた後、汚れを落とすために三姉妹を連れ再び浴場へ行く。

 頭や体、尻尾をワシャワシャ洗い泥を落として湯船に放り込む。

「あー楽しかった―」「満足満足ー」「お風呂気持ちいいー」

 十分に温まった後、湯船から出て一人づつ丁寧に拭いていく。

 吹き終わったら乾かしグルーミング、その間もキャッキャと落ち着きなく動いているので結構大変。

 終わった後部屋まで連れて行きベッドに寝かせると―

「「「ご主人様おやすみー」」」

 三人同時にお休みの挨拶をしてすぐ眠りについた。


 三姉妹を寝かせた後廊下を歩いてるとミネルヴァとディアナに遭遇した。

 すぐに踵を返すががっちりとつかまれ引きずられていく。

 二人の要求は晩酌のつまみを作れとの事だった。

「ご主人様が逃げないように、これ、つけておくね?」

 ミネルヴァが首輪と取り出してつけてくる。

「それでは私はこちらをつけておきますわ」

 ディアナは鎖を首輪に付けてきた。

 そもそも逃げようとしてもすぐに捕まるので首輪と鎖をつけてきたのはただの趣味だろう。

 調理場まで連れていかれ保管庫を確認すると使い切れなかった海老が残っていたので海老をメインにつまみを作る。

 海老マヨ、ガーシックシュリンプ、アヒージョ、焼売、刺身、から揚げ、次々に出していく。

「ご主人様の料理美味しい」

「お酒を片手におつまみを頂く、最高の時間ですわ」

 二人はお酒を飲みながらどんどん食べていき、一通り食べきった後。

「ご主人様、焼売、おかわり」

「こちらは刺身とから揚げをお願いしますわ」

 まだまだ食べる気らしい。

 酔い潰れるまで作らされた後食べ残しは勿体無いので食べきり、片づけをした後二人をベッドに放り込んだ。


 今度こそゆっくりできるぞー、なんて思っていたらケレスとクロノアに遭遇。

 再び捕獲されるが二人は特に何をするまでもなくただくっ付いてきただけだった。

「ご主人様お疲れですか?」

「お疲れ?」

 あっち行ったりこっち行ったりとあまり休まる時間は無かったので疲れてるといえば疲れている。

「ご主人様、こちらへどうぞ」

 ケレスに誘導され部屋に入る。

「ではうつ伏せになって下さい」

 言われたとおりにうつ伏せになるとケレスとクロノアが乗っかってくる。

 それと同時にマッサージが始まる。

 本格的なものではなく軽いものだがそれでも十分気持ちがいい。

「どうですかご主人様、少しは楽になると思うのですが」

「足にも随分疲労がたまってる」

 二人の手により軽くではあるが解され楽になっていった。

「では仕上げをしますので起き上がって後ろを向いて下さい」

 起き上がり後ろを向くと。

 ケレスに抱きしめられた。

「仕上げの胸枕です、どうですか?」

「こっちもする」

 クロノアも正面から抱きついて胸を押しつけてくる。

 ほわー…っと癒されていく。

 存分に癒された後お礼を言って退室し自室に戻ることにした。


 ケレス達と別れた後は特に誰とも会うことなく自室に戻ることができた。

 いろいろあった一日だったが後はもう寝るだけだ。

 ベッドに向かい布団をめくるとウルカンとヴェスティアがいた。

「ご主人様遅い」

「あまり女性を待たせる物ではありませんよご主人様」

 ベッドの上で準備万端の二人、胸枕に癒され気が緩んでいた所にこれである。

 外から鍵を閉められので退路は無い、後はもうなるようになれ。

 二人を満足させるまで頑張った後、漸く眠りに付けた。

 でもせっかく癒されたのが台無しになったので二人の胸挟まれて寝る事にした。


 海に薬を撒いてから少し後、ルシフと一緒に海を見に来ていた。

「パッと見は以前と変わらないねー」

「以前と変わらないけどなんか数が減ってる?」

 巨大化等は止まったようだが、空を飛んでいる鮃や鰈は居なくなっている。

「白子や鮪が食い荒らした?」

「ここからじゃ判断できないねー、船を出してみようか」

 船に乗り二人で沖へ出る。

 沖に出て観察を始めると、鮃や鰈は水面近くを泳いでいるが白子や鮪は見向きもしない。

 何か変な感じがするのでルシフに捕獲してもらい確認をすると…

「あー、進化は確かに止まってるけど凄い物に進化させたな狐」

「空を飛んだりしてないから退化してるようにも見えるけど?」

「空を飛んでないのはもう逃げる必要がなくなったから、見向きもしないのは食べる必要がなくなったから」

 ルシフが説明を始める。

「たとえばこの鮃、今は捕ったばかりで生きている、頭を落とすとちゃんと死ぬ、そこは生物としては正しいんだけど…」

 まあ頭落とせばいきものは死ぬよね。

「少し勿体無いけど見ててねご主人様」

 鮃の群れを一匹だけ残しすべて消滅させる、すると残った一匹が産卵しはじめ…

「すごい速さで成長していくな…」

「すごいよね、一匹でも残せば単為生殖で群れの数は元通り。

成長に必要なエネルギーも全て自己生産、そして…」

 ルシフが海に居た生物をすべて消滅させると…

「まじかぁ…」

 消滅したはずの生物が一匹現れたかと思うと再び産卵、どんどん増えていく。

 少しすると元通りの光景に。

「これ海その物が生物のバックアップを取っていて、海中にストックされた栄養などからクローンを作ってるみたいだね。

生み出された魚達はエネルギーは自己生産、余った分は糞として排出し分解、死んだ個体も栄養素として海そのものが分解してストック。

根絶やしにするならこれもう海と同時に消滅させないと無理だよ」

 進化を止める薬を撒いたはずが更なる進化を遂げてしまったらしい。

「食べる分には何の問題もないからいいよね、ははは」

 最終進化が終わり絶滅しなくなったというだけで食べる分には問題はないのである。

「ただあれだね、この海じゃもう魚は一匹も釣れないね、ははは」

「次から魚の確保どうしよう…」

「そこはまあ、生け簀でも作って何匹か捕獲して入れておけば良いんじゃないかな?」

そういうわけで種類ごとに生け簀を作り次々と放流していった。


 ただ進化は止まったが大きさまでは戻らなかったので魚介を調理する際は海で解体した後屋敷に持ち帰ることになった。

 そのうち敷地内にある農場でも何か巨大化しそうだなーと思っていたが、ケレスとクロノアが完全に管理しているのはそんなことはなかった。

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