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旅立ちの代償 食べ物で遊んではいけません

 エイヒレ品切れ、葛餅アイス品切れ。

 追加希望はあるがエイヒレは無理の…葛餅は農場の梨なら可と…

 梨は後にするとして、苺、林檎、蜜柑、桃などシロップ漬けにしておいた物を加熱、葛をしっかりと溶かし込んで冷やし固め、棒状に切って冷凍に入れて終わり。

 冷凍されてアイスになる前の桃の葛餅を1本ほど一口サイズに切り摘まみつつお茶を一杯。

 調理場で葛餅を楽しんでいるとベリスとシュリエルがやってきて横から葛餅を取っていく。

「んー、仕事帰りの甘いものは沁みますねぇ…」

「ご主人様もどうぞ」

 横から持って行った葛餅を差し出してくるので食べつつお返し。

「で、何かあったの?」

「いえ、急ぎの事は何も」

「平和その物ですね、北と東は変わらず、南は開発も終わり、元々住んでいた人もある程度戻りましたし」

「西も今は大人しい物ですね、新しい国は他の大陸と交易もしてるので栄えてますし。

以前から色々と後ろめたい事をやっていた国はほぼ無くなりましたかね?」

「特に何もないならいいや」

 最近の事を聴きつつ、2人と葛餅を楽しんだ。


 葛餅を食べた後はお茶菓子を作ったり、狐さんの部屋に行ったり、夕食を作ったりと、ちょっと慌ただしくなる。

 ルシフが海に解き放つと見せかけて空に帰って行った魚は行方不明だが、生け簀から捕る魚は特に何の変化もなく夕食に並んでいる。

 あれ以来一度も呼んではいないが、またどこかのタイミングで呼び出してみないとなぁ…

 ルシフも研究したいって言ってたし、食べれるなら生け簀まで行く必要もないしね。

 夕食に出した蛸のから揚げやたこわさ、鰤の照り焼きなどはいつも通り好評だった。

 酒飲み達に…普通に食事を楽しんでるメイド達にも好評だけどね、消費量が倍から違う…


「ご主人様ー、海に行こうぜ!」

 翌日早朝から珍しくルシフが起きており、海に誘ってくる。

 麦わら帽子にパーカー、ビキニにホットパンツと言うスタイル。

「うん、行くのはいいけど朝食もまだだし、隣で寝ている娘が起きるからもうちょっと静かにね?」

 ただ勢いよく扉を開けて入ってくるのはいただけない…

「まあいいからいいから、ほらいくよー」

 私を抱き枕にしていたメイドの拘束を特に抵抗もなく解き、身代りにと丸めた布団を抱かせていた。

「朝食…」

「向こうで食べればいいじゃん」

「ごもっともで…」

 ルシフの手により着替えさせられ水着に、でもブーメランはさすがに…

「それもにあってるぜ!」

 なんなんだろうねぇ、今日のこのルシフのテンション…

 他に用意されている麦わらとパーカーを身に付け海に移動した。


「何をするにしてもまずは朝食を取ってからだね」

 ルシフが海の家の厨房に入り何かを作っている、匂い的に…焼きそば?

「はい、おまっとさん。

ぱぱっと食べて生態調査するぞー」

「もうちょっとゆっくり食べようよ」

 出来上がったばかりの焼きそばを豪快に音を立てて食べるルシフ、口の周りがソースだらけである。

「ルシフこっち向いてー」

「ん?なになに?」

「口の周りがソースだらけ」

 口の周りを拭き取って上げると顔を赤くして大人しくなり、焼きそばを食べるペースが少し緩やかになり、ソースで口の周りを汚さなくなった。

 それにしてもあれだなぁ…この不味いのに箸が止まらない焼きそば、癖になる。

 狐さんと言いルシフと言い、海の家で出される食べ物はこうあるべきだという拘りがあるのか、やや不味かったり微妙に美味しいのか不味いのか判断が付かない味にしたり、不味いのに手が止まらなくなるという不思議な物を出してくる。

 食べ終わる頃にはルシフも元に戻っており、いまにも海に向かって走り出しそうだ。

 使った食器などを洗い、片づけた後はルシフの目的である生態調査。

 生態…と言うよりは読んだ場合と読んでない場合の違いと捌いた場合どうなるか―だけど。


「まずは前回呼んだカジキが戻ってくるか確かめよう」

「戻ってくるのかなぁ…?」

 カジキにせよ鮃にせよ何処かに飛んでいった気がするんだが…

「カジキー」

「…来ないね?

大きな声で呼んでみてー」

「カジキー!」

 普通の声の大きさでカジキと呼んだ場合は来なかった、大きな声で叫びながら呼ぶと…?

「おお、飛んできたね」

 また砂浜に突き刺さり、尾だけ出しているカジキ、引き抜くとまた青白い光を放っている。

「んー…あれぇー…?」

「何か変なとこでもある?」

 引き抜いたカジキを観察してルシフが唸っている。

「これ海に返したのとは違うやつだね、前の奴よりちょっと小さい」

「違いがあまりわからない」

「10センチくらいしか変わんないからねぇ、これだと鮃も違う個体がきそうだね」

「一度返したのはもう戻ってこないと?」

「さぁ…名前つけて海に返したからかも?

名前で呼んでみたら来るんじゃないかな?」

「ルシフが名前つけたんだからルシフが呼べばいいんじゃないの?」

「私がカジキとか叫んでもこなかったけど、いけるのかねぇ?」

「試してみない事には何とも」

「すぅ…カジキウスーーーー!!!」

 名前を叫び木霊する、暫く待つが何も来ない。

「んー、こないねぇ」

「カジキウスー!」

 来なかったので呼んでみる、が…

「やっぱり来ないね、何所に行ったんだろうか?」

「もうこの海に居ないのかもねー、じゃあ次の調査に行こうか」

 一度放した魚は多分もう戻ってこないと結論を出し次の調査をするため船へ。


「この位の大きさでいいか」

「多分大きさはそんなに影響しない気もするけどなぁ…」

 砂浜につき立てられたカジキと同じ程度のカジキを1匹捕獲。

「とりあえず締めちゃうね」

 カジキを締めて血を抜きつつ浜辺まで戻る。

「それにしてもこのカジキまだ生きてるね、まあこいつも締めちゃうか」

 捕ってきたばかりのカジキと同じように締めてしまう。

「おお?青白く輝いてた光が消えた」

 どうやら魚として絞めてしまうと普通の?魚に戻るようだ。

「となると以前海に返したカジキは死んだかな?」

「わからないねぇ…まあとりあえず捌いて食べてみようよ」

 生け簀から捕ってきたのと飛んできたのを捌いて実食。

「んー…んー…?」

「変わらないね、何が変わるというわけでもなく、どっちも同じ」

「だねぇ…」

 食べ比べた後は夕食用に切り分け収納、骨などは乾燥して粉末に。

「じゃあ次の実験行ってみようか」

 まだ終わらないらしい…


「次は呼んだら来る魚と来ない魚の確認だね、ではどうぞ」

 カジキと鮃は来たから…

「カレイー!マグロー!スズキー!」

 鰈は来るかなと思い叫び、後は適当に思いついたのを叫んでいく。

「タイー!アマダイー!クエー!」

「おお、どんどん飛んでくるね」

 叫ぶたび次から次へと飛んでくる魚達、例外なく尾だけだして砂浜に突き刺さっていく。

「この位で良い?多分何呼んでも飛んでくる気がする…」

「そうだね、取りあえず引っこ抜いていこうか」

 刺さった魚達を1匹づつ引抜並べていく、全て何かしら色を帯びて輝いている。

「呼んだら飛んできて絞めるまで生きてるだけなのかなぁ…」

「生け簀まで行かなくていいのは便利だけどね、砂浜に穴が開くけど」

「ふぅむ…」

 ルシフは何か少し考えはじめ…

「未確認飛行物体カレイウス発進!」

「おい」

 海に返された鰈は何時かの鮃の方に回転し、光りながら飛んでいった…

「ヒラメウスが左回りでカレイウスが右回りか」

 すごくどうでもいい知識が増えた。


「残った魚どうしようか」

「タイ、アマダイ、マグロ、スズキ、クエかー…」

「カジキもあるから今日は海鮮メインかなぁ」

「そうだねー、昨日は蛸と鰤に鶏だったしねー」

「蛸唐鶏唐、鰤照り鶏照りと、同じ調理法で別の味を楽しめるってのが大事」

 さっさと絞めて柵にするかと並べてある魚を持って行こうとすると…

「斬り裂け!タインスレイフ!」

 鯛が海を切り裂き何処かへ飛んでいき…

「地を揺らせ!アースクエイク!」

 クエが地響きを起こし飛んでいき…

「魚を導く王と成れ!マグロイヤル!」

 鮪は王冠とマントを身に付け、現れた玉座?に立て掛けられ天高く…

「スズキとアマダイは美味しくなぁれっ」

 スズキとアマダイはそのままだった。

 無言でハリセンを取出し一閃、青い空に快音が響く。

「いったぁぁぁぁぁ!」

 お尻を抑え飛び跳ねるルシフ…はもう放っておいて残ったスズキとアマダイを回収、さっさと絞めてしまう。

「いきなり何するのさご主人様!」

「何をするも何も、飛んでった魚どうするの…」

「さぁ…?数日もすれば誰かに美味しく頂かれるんじゃないの?」

 何も考えてなかったのでもう一回叩いておいた。


 スズキとアマダイは特に何も変わらず、味も変わらずそのままだった。

「方向性決めた上で名前変えないと変化は起こらないっぽいねぇ」

 海の家の御座席で真っ赤なお尻を突き出して突っ伏しているルシフが何かを確かめている。

「飛んでいった魚は槍として飛んで行ったり、飛行物体として飛んでいったし。

特に何もしなかったカジキとスズキとアマダイはそのまま。

他の名前を付けても効果があるかはまだわかんないけど方向性を決めて名づければどこかに飛んでいくのは確かだねぇ」

 ふーん、と聞き流しながら残った魚を全て捌いてしまう。

「もうちょっと実験したい所だけど今回は此処までだね、そろそろ屋敷に戻らないと」

 時計を見るともう良い時間、お茶の用意しないとなぁ…

 ルシフは真っ赤だったお尻を綺麗に治すと屋敷に戻る準備を始め、魚も全て処理が終わったので撤収。

 割と役に立たない知識が増えたなぁ…


 それから暫く経過し、また葛餅の追加を作っていたらベリスとシュリエルが調理場に入ってくる。

「お帰り」

「ただいま戻りました」

「冷たいお茶を一杯お願いします」

 珍しく汗を流している二人にお茶を出し話を聞く。

「少し前から変な依頼が来ていまして、その正体を探っていたのですが…」

「何やら各大陸の空で高速で飛行する物体を見たとか、夜空を見て流れ星かと思ったら流れ星にしては何かおかしかったとか」

「最近になってその高速で飛行する物体が増えたようで、気になって仕方ないから正体を早く突き止めてくれと…」

「んー?悪さか何かしてるの?」

「いえ、特には」

「基本的には世界各地を高速で飛び回っているだけですね」

「それで正体は分かったの?」

「ええ、まあ…一応…」

「報告をしたときに正気を疑われたので楽しい楽しい追跡の旅に連れて行きましたが」

「速すぎてなかなか追いつけないんですよね、何かに統率されているようで此方を攪乱してきますし」

「ただ巨大なので近づいてさえしまえば視認は用意でしたね」

「普通の人が玉座に立て掛けられた鮪が高高度を高速で飛行している―なんて聞いても信じませんよ…」

「…へぇ」

「他にもカジキやタイ、クエなんかも飛んでいましたね…」

 うーん…海にいないと思ったらいつの間に…

「害もないので討伐するわけにも行かず、各所で何か高速で飛行する発行物に助けられたという報告も有りますし。

依頼主にこれが正体だと見せた後はもうそのまま放ってありますね、流石にあれににぴったりついたまま移動するのは疲れました」

「うん…まあ…お疲れ様…」

 よく冷えたお茶のおかわりを出し2人を労う。

「今は各地で何か困った事が有れば高速で飛行する発行物に助けを願うと助けてくれる、という話が広がってますね」

「実際に土砂で道が塞がれて困っていた所、翌日には綺麗に舗装された状態になっていたとか。

熊などに襲われたときに目の前が光ったかと思うと熊の身体に穴が開き死んでいたとか。

川などで溺れている所に発行物が飛んできて救出されたなど。

神の使いとも言われていますね」

「何所の者の差し金か、それとも何かの影響を受け知識を得て進化したのかはわかりませんが。

現状では害はが無いので放置してある状態ですね」

「うん、ご苦労様…」

 どうしようかなぁ…ルシフに命令して回収して来てもらうべきだろうか…

 でも害はないみたいだしなぁ…

「一応討伐命令が出れば討伐はしますが…」

「残念なことに私達では追いつくのが精一杯なんですよね…」

「まあ討伐対象になったらこっちでも何かするよ…」

 主に解き放ったルシフがね!


 また暫く立った頃飛行物体を崇める人も出てきたが、木を一本切るだけでも願う者達が出てきたため、このままではいけないと討伐命令が下り。

「今日も駄目でした…」

「早くてなかなか追いつけないし、カジキの鋭さと鯛の切れ味に加え、回転してる鰈と鮃に全て攻撃を受け流され…」

「あー、もうこっちで何とかしようか…?」

「すみませんがお願いします…」

「私達ではあれはもうどうしようも有りません…」

 ベリスとシュリエルでどうにもならないって、本当に魚なのだろうか…


「と言うわけでルシフ、責任取ってきてね?」

「えー、やだめんどい」

 ハリセンを取り出すと直ぐに支度をはじめ…

「じゃあ行ってくる!」

 直ぐに狐さんに許可を取り出て行った。

 その後討伐?捕獲?された魚が絞められた状態でベリスとシュリエルに渡され、討伐証明としてお頭を依頼主に届けに行った。

 身は夕食として美味しく頂いた。

 でもやっぱり普通に生け簀から捕ってきたのと味は関わらないなぁ…

何所まで行っても魚は魚、最終的には胃袋に収まる

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