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美味しいお酒を飲もう ただしご主人様は飲めない

 今日は魚を捕るのではなく、海に潜る。

 ルシフに船を出して貰い、海底までロープを伸ばしてロープを伝って潜る。

 パッと見た限りでは割れた瓶は無し、甕も問題なし。

 全て収納に仕舞い込み、船まで戻りロープを引き上げ、もう1ヵ所。

 こちらは瓶と甕が幾つか破損、こっちは移し替えないと駄目だなぁ…

 収納したら海の家まで戻り、最初に回収した瓶と甕を洗浄、付着している汚れを落とし綺麗に。

 破損している物がまじっていた物は割れないように軽く汚れを落とし、新しい瓶と甕に移し替え。

 見分けが付くようにラベルを張れば作業完了。

 前者は温泉街に卸す用、後者はちょっとしたお祝い用。

 作業を終えたので前者の瓶と甕を温泉街に持って行く。


「女将さん達集合」

「何か不手際でも御座いましたかご主人様?」

「いや、不手際は無いけど、ちょっとお酒を作ってきたから、試飲して欲しいなと」

「そういう事であれば…少々お待ちくださいませ」

 女将さんは各所に声をかけ、料理長も食堂も少し早めに引き上げ全員集合。

「全員集まりました、それで、どう言ったお酒で?」

「大したものでもなく時間がちょっとかかる程度なんだけどね」

 瓶と甕を取出し、グラスに注いでいく。

「香りは…かなり良いですね」

「口に含んだ時も嫌な感じもなく、飲みやすい良いお酒ですね」

 女将さんと調理長は高評価。

「んー、まだ少しとげがあるようにも感じますね」

 店長代理の仲居さんは少々辛口評価。

「ただ売るには全く問題がない所か、これよりいいお酒は早々見つからないでしょうね」

 売るには問題がないらしい。

「じゃあ何本か卸していくから、値段も好きに決めて売っちゃって?」

「わかりました、これですと1本…そうですね、金貨20…いえ、30枚ほどですね」

「10本くらいで良い?」

「そうですね、瓶が5、甕も5で」

 仲居さんの要望通りに瓶と甕を渡す。

「ではこちらはお店の方に」

 そう言って仲居さんは瓶を2本、甕を2個ほど横に避けてから残りの瓶と甕は店に並べる用、と分けていた。

「此方の計4つは私が買い取らせていただきます、とはいえ売上金もすべて私の御給金になるのでお代は良いですね?」

「うん、それはいいけど…気に入ったの?」

「はい、少しとげはあるように感じましたので、個人で保管して熟成を進めようと思います。

その後で少しずつ楽しもうかと」

「熟成が終わったら私達にも分けてくださいね?」

「あ、それなら私にもお願いします」

「お二方だけでなく私達にもお願いします」

 何だかんだで皆気に入ったらしく、熟成が終わったら別けてくれと要求。

「構いませんが、いつ終わるか分かりませんよ?」

「そこは気長に待ちますので、熟成中に全部飲み切らないでくださいね?」

「それは保証しかねますね」

 女将さん達も仲はいいので、何だかんだで皆で毎日ちびちび飲んで熟成する前に無くなりそうな気もする…

「じゃあ今日はこの辺で、他にも行く所があるから」

「はい、またのお越しをお待ちしておりますねご主人様」

 店長代理の仲居さんは瓶と甕を大事に仕舞い込んだ後、残りの瓶と甕を持ち店に戻っていった。


「あっ!お姉様!

今日は何かご用ですか?」

「うん、ちょっとお酒を造ったからお裾分け」

「では少々お待ちください、お母様達を呼んでまいりますので」

 体が弱かった以前とは違い、今ではすっかり元気になり姉達に囲まれ過ごしてる末の娘。

 元気よく走っていくとすぐに元王女達を連れ戻ってきた。

「ご主人様何かお酒作ったんだって?」

「うん、最近と言うよりかなり前に作ったやつの熟成が進んだから引き上げて来たんだけどね」

「どんなのかは見てみないとわからないけど、良いグラスを出した方がいいかな?

飾ってある奴持ってきてくれる?」

 妻である元メイドDにグラスを持ってくるように言うと、元メイドDは以前作ったグラスを持ってきた。

「飾っているグラスよりは此方のグラスの方が良いかと」

「あー…それもそうだね、こういう時でもないとまず使わないしねー」

 紋章が刻み込まれたカットグラスを元メイドDが並べたので、移し替えたほうの瓶や甕を取出し、甕の方を注いでいく。

「んー…?何かいい香りがするね」

「花の様な…果物の様な…それも嫌な感じのしない甘い香りですね」

「これはお米で作ったやつだね、香りの割にはちょっときついと思うから一気には飲まないほうが良いかも」

「ならちょっとだけ」

 元王女は少しだけ口に含み味と香りを確かめ―

「んーっ!これ美味しい!」

「ふわぁ…これいいですねぇ…普段飲んでいる物とは全然違います…」

 元王女と元メイドDと妻達も一口飲んだだけで大満足の御様子。

「じゃあグラスを綺麗にしたら次はこっちね、一応…ロゼになるのかな…?」

 瓶から薄い桃色を保ったワインを注ぐ。

「これも美味しいねぇ…」

「ですねぇ…このお酒ばかり飲んでたらもう他のお酒が飲めなくなりそうです…」

「お母様、お母様、私達も飲んでいいですか?」

「んー、まだお酒にそれほど慣れてないんだから、飲み過ぎない様に少しだけね?」

「ありがとう御座います。

これがご主人様の作ったお酒…頂きます。

…ふあぁ…」

 一口飲んだ末の娘は溜息を吐き、顔を赤くして味わっていた。

 姉達も母から分けて貰い味わって飲んでいた。


「それで、このお酒どうするの?うちの実家に卸すの?」

「んー?卸さないよー。

これはただ単に個人的な贈り物だね、末の娘ちゃんが元気になったお祝い。

あと前に来た時はちょっと…ね…」

「あー…うん、この前はごめんね…あの時は何か変な自身に満ち溢れててねぇ…

ご主人様が矯正してくれたおかげで体調以外はすっかり元通り」

「あの時はすみませんでした、私なんかがお姉様にかなうはずもないのに挑発するような真似を…」

「あはは、気にしないでいいよ、なんなら再戦する?」

「勝てる気がしないので遠慮しておきます…」

「うんうん、末ちゃんはこの位謙虚な方が可愛いくていいね」

 末の娘を抱きしめて頭を撫でてやる。

「はぁぁ…お姉様の良い香り…」

 性格は大人しく謙虚な状態に戻ったが、好きな人の匂いを嗅ぐ、と言うのは治らなかった。

 …まあ…こればかりは生まれ持ったものだしね…犬人族である元メイドも元王女の首筋やうなじをよく嗅いだりしてるし。

「何本くらい欲しい?

一応ロゼと大吟醸が10ずつあるけど」

「遠慮なく全部貰おうかな?

お父様や妹達に1本ずつ贈りたいし」

「じゃあ今から包んじゃうね」

「お手数おかけします」

 同じ箱に入れれるように甕に入っているお酒も瓶に移し替え、瓶が2本入る箱を作り、緩衝材を入れ、瓶同士がぶつからない様に納めた後封をする。

 ロゼは透明な瓶に入れてあるので見分けは付くだろう…

 後はラッピングをして完了、その間も元王女達はずっと飲んでいた。


「はい、じゃあこれは置いていくね」

「ありがとねーご主人様。

うちでも何かお酒作ってみようかなぁ…」

「私も趣味で作ってるだけだからねぇ…後屋敷のメイド達の為、大酒飲みが結構いるからすぐ無くなっちゃう」

「うちはちびちび飲むからすぐ無くなったりはしないけど、いったいどれ位飲むの?」

「んー…1人辺り一升瓶20本くらい…?」

「どういう胃袋してるの…」

「今日出したようなやつだと40本くらいは持って行かれるね…作るの地味に時間かかるのに…」

「こんな美味しいのを40本も飲める環境か、羨ましいようなそうでないような…

それとこれどれくらいかかってるの?」

「今日のは熟成がざっと200年分…?」

「え?」

「だからざっと200年分くらい」

「えぇ…そんなの貰っていいの…?

妻も娘も出来上がって次から次へと飲んでるけど…」

「じゃあ追加で30ずつくらい置いていこうか、持ってきてないだけで屋敷にはまだ保管してあるから」

「なら遠慮なく貰います…」

「200年分―とはいっても海に沈めて20年位だね、沈めておくと10倍くらいの速度で熟成が進むから」

「へぇ…それは良い事を聴いた」

「ただ沈めてる間に流されないようにしないといけないし、割れたりもするし、沈めた位置も覚えておかないと駄目だからめんどいと言えばめんどいよ」

「んー、それでもやってみる価値はあるね」

「もっと凄いのもあるけど…一口いってみる?」

「どんなの…?」

「屋敷でも滅多に出さない特別なやつ」

「ぜひ飲んでみたいねぇ…」

「でもまあ今日は止めておこうか」

「えー、期待させておいて止めるとかご主人様酷ーい」

「追加のお酒持ってこないと駄目だし、周りが…ね?」

「んー?

あぁ…これは駄目だね…」

 試飲用に空けた大吟醸の入った甕の中身が空っぽ、ロゼも底をついてる。

 ロゼは酒精弱いけど、大吟醸は飲みやすいわりに酒精が強いからなぁ…

 妻と娘達が酔いつぶれて寝ている。

「んー、じゃあ何時くらいにする?」

「また温泉街に旅行に来る予定は?」

「当分は無いけど温泉街で何かあるの?」

「特に何も、強いて言えば屋敷の皆で温泉旅行に行くくらい。

その時の夕食で出す予定、温泉街に来る予定があったのならその時に出しても良かったんだけど…」

「ぜひ温泉街まで旅行に行かせていただきます…」

「人数制限は特に無いけど、連れてくるのは何人くらい?」

「そうだねぇ、私達家族で20人…屋敷を管理してるメイド達も連れて行きたいけど、そうすると管理する人がねぇ…

メイド達には今あるお酒で我慢してもらうとして…

お父様とお母様はいえば確実に来る、妹達はどうだろうねぇ…?

現国王やってる妹は今お城にいるけどそれ以外の妹達は外交で居ないし…」

「とりあえず22人?」

「んー、お城に今居る妹は確実に来るから…24人かな?

宰相辺りにお詫びのお酒一本贈れば不在の間も上手くやってくれると思うし」

「じゃあ24人追加で女将さんに連絡入れておくね」

「いつくらい出発すれば間に合いそう?」

「来月の頭から1ヶ月だからその間に来れば」

「来月頭からって今から出発しないと間に合わないじゃん!」

「あはは…まあそこは頑張って…」

「むぅ…メイド長!」

「お呼びですかお嬢様?」

「私は今から城に行ってきます、妻と娘達の介抱と酔い冷まし、それと旅支度をお願いします」

「わかりました、馬車の手配も済ませて置きますね」

「よろしく、じゃあ行ってくるよ」

「行ってらっしゃいませお嬢様」

 元王女は人目を憚ることも無く、門を飛び越え城へと走っていった。

 酔いつぶれた妻や娘達の介抱を手伝った後は温泉街に戻り、旅行で止まる人数の追加を伝えるのだった。


「では本日より恒例となりました1ヶ月の温泉旅行へ行きます。

住民の方達には迷惑を掛けないよう、よろしくお願いいたします。

また今回はご主人様が招待したお客様も1ヶ月ほど一緒に止まることになりますが、此方の方々にも迷惑を掛けないようにお願いいたします。

では最後に、忘れ物は御座いませんね?無いようでしたら出発いたします」

 狐さんの号令と共に温泉旅行が始まり、毎度のように直接旅館の前へ。

 直ぐに女将さんが出てきて部屋に案内してくれる。

 部屋に荷物を置いた後は自由行動、まだ元王女一行は来ていないようだ。

「じゃあ私はお客が来るのを門の辺りで待つことにするよ」

「わかりました、御付はダイヤだけで宜しいですか?」

「んー、アウラもお願い」

「わかりました、ではすぐに呼んでまいりますのでお待ちください」

 狐さんがアウラを呼んで来るまで暫し待ち、アウラがサファイアを連れてやってきたので一緒に門まで移動。

 門について暫く待ち、お昼頃前に何やら豪華な馬車が数台やってきた。


「いやー、ごめんねご主人様、待たせちゃったみたいだね」

「いらっしゃい、人数は最終的に何人ほどに?」

「途中で合流した妹達含めて30人かな?

ああ、男はお父様しかいないから安心してね。

妹達の旦那は引き続き外交中、妹が3人と御付のメイド3人で6人増えたくらいかな?」

「まあ別に男性禁止でもないからいいんだけど」

「いやいや…ひょっとご主人様のメイド達にコロッと傾いたらいけないから念のためだね…」

「私は妻一筋なのでそんな心配はないぞ」

「あら嫌だわあなったったら」

「…とまあお父様とお母様はこんな感じなので問題はないかと」

「まあとりあえず移動しようか…」

 途中参加した元王女の妹3人と御付のメイド3人も一緒に旅館へ移動。


「此処って泊まることができたんだなぁ…」

「今は領主の館になってるからご主人様の許可がないと駄目らしいよお父様」

「以前来た時は此処の一段下にあるここの次にいい立地の宿を選びましたが…

内装も別格ですねぇ…」

 内装は少しずつ弄り、上品な状態を維持、過度な装飾などは一切せず下品にならない様に。

 この辺りは店長代理の仲居さんが少しずつ改装しているらしい、なので毎回来るたび内装が変わっていて飽きない。

「部屋はまだまだ余ってるから案内してもらってね、お昼は前に来た時と同じように隣の食堂で」

「はいはいー、じゃあ案内をよろしくお願いします」

「わかりました、ではこちらへどうぞ」

 元王女達は仲居さん達に案内され空き部屋へ、私はその間に饅頭屋へ。


 饅頭屋に着くと既にヴェスティアとエキナセアが鴛渕でお茶を飲みつつ饅頭を摘まんでいた。

 今日から1ヶ月ほど滞在する事を伝え、老夫婦は大吟醸を好むので大吟醸だけを2本ほど渡す。

 多すぎると断られるので程々に。

 1本は自分たちで飲み、もう1本は酒饅頭に使うので酒粕も一緒に。

 私は後は成長した息子さんの作った饅頭を頂きつつお茶を飲む。

 息子さんは現在お嫁さんを募集中らしいが良い人はまだ見つからないらしい…

 とはいえ知り合いが貴族か王族なので紹介するわけにもなぁ…

 こればかりは本人が良い人と出会わないとどうしようもないか…

 そう思いながらダイヤを膝に乗せて饅頭を摘まんだ。


 少し人数の増えた恒例の1ヶ月温泉旅行、夕食の時間がきた。

 連日海に通い用意して置いた魚介をメインに出していく。

 鯛めしにシンプルな塩焼きに、定番のお刺身、天ぷらなど。

 次々と出していき、メイド達が各自お酒を飲み始めた頃、食事はほぼ終わっているので、今度は皮を炙ったりして酒の肴をメインに大量に作っていく。

 メイド達が程よく頬を染め始めた頃、夕食だけの組みは引き上げ温泉へ。

 酒を飲む者達は此処からが本番。

 摘みを好きなだけ持って行けるように小分けにせず、大皿に盛る。

 そしてメイド達は各自グラスを持ちお酒を待つ。

 準備が出来たら一升瓶をこれでもかと並べる。

 この時メイド達は手酌ではなく御酌されるのを待っている。

 元王女達もメイド達を見習いグラスを持ち待機しているのでお酌していく。

 全員に行き渡ったら音頭は無く自然と飲み始める、1杯飲んだらメイド達は各自瓶を持って行き好きに飲む。

 ただ普段のように水のように飲むわけではなくゆっくりと味わいつつ、摘みも少しづつ摘まんでいく。


「な…に…これ…美味しすぎるんだけど…」

「でしょでしょ、このお酒中々出してくれないんだよねぇ…」

「一体何をどうしたらこんなお酒に…?」

「んー?出してるお酒自体は食事中に飲んだのと同じお酒だよー。

ただかけた時間がとてつもなく長いだけー」

 美味しいお酒を飲んで気分を浴したメイドが元王女の質問に答えている。

「ご主人様の収納ってー、時間の経過を止めるのは勿論、戻したり進めたりもできるんだよー。

その中で熟成を促す物を使ってー、なんか1000年程時間を経過させてるらしいよー」

「普通なら腐りそうなものだけど…」

「そこが不思議なところだねー、腐敗する事なく綺麗に熟成だけしちゃうのー」

 腐敗につながるものを全て排除し、熟成な最適な環境を維持、熟成の進み具合に合わせて保存環境も変化させていく、と言う少しめんどい手順を踏んでいる。

「これはご主人様にしか作れない物だからー、ゆっくり楽しんでいってねー」

 メイドはそう言い残し次のお酒を取りに行った。

「どう、楽しんでる?」

「はい、こんな美味しいお酒をありがとうございます…

来ることができない妹達にもぜひ飲んで貰いたかったですね…」

「お土産として渡すことはできないから今回は縁が無かったという事で」

 妹さんはお嫁さんと共にお酌をして楽しみ―

「ううう…ついて来てよかったぁ…」

「共に働いているメイド達に自慢できますねこれ…」

 途中で合流したその下の妹と御付のメイドも感動しながら飲んでいた。

 女将さんや仲居さん達もこの時ばかりはこのお酒を飲む、それはそれ、これはこれらしい。

 毎日提供すると直ぐに無くなってしまうので、初日と折り返し、最終日と3回に分けてお酒を出す。

 最終日はすべて放出するので少しお祭り騒ぎになるが…


「お姉様、お姉様」

「ん?どうしたの?」

 末の娘ちゃんに呼び止められ―

「お姉様も飲みましょう、ほら」

「んんっ!」

 口移しでお酒を流し込まれ飲んでしまう。

「ああー!」

「あーあー…」

「まあいっか…」

 事情を知る屋敷のメイド達は早々に諦めムード、知らない元王女達は何々?何か不味い?と少し身構える。

「んー…」

 足元が少しふらつきその場で寝転がる。

「お姉様!大丈夫ですか!?」

 少しふわふわしていい気持ち…ただ少し暑い…

 体を冷やすため少し浴衣をはだけ、手で軽く仰ぎ体を冷やそうとする。

「お…ねぇ…さ…ま…?」

「流石ご主人様…遠くに居てもかなり来るねぇ…近くにいるあの子は…もう駄目そうかな?」

 末の娘は浴衣をはだけて見えるようになった肌から目が離せず、少し浮き出てくる汗と発せられる匂いの虜になる。

「はい、私達はもうここでお暇しましょうね」

「その方が良さそうだの…1本頂いて部屋で飲むとしよう」

 元国王夫妻は早々に撤退、現国王である妹と妻は…運がいいのか悪いのか、手で仰ぎ少し飛ばされてきた匂いを嗅ぎ、軽く酩酊に近い状態に。

 元王女は妻を周りに侍らせちょっと怪しい雰囲気、姉達も何やら浴衣をはだけている。

 合流してきた妹達も御付のメイドに絡んでいる。

 平然としているのは屋敷のメイド達のみ、匂いは感じ取っている物の我関せずと飲み続けている。

 暫くすると末の娘は顔を真っ赤にして倒れ、元王女と妻達、姉等全員その場に倒れる。

「やっぱり潰れちゃったねー」

「私はこの匂い好きー」

「私もー、誰かご主人様回収して来てー、密着する権利譲るからー」

 メイド達は慣れた様子でいつの間にか取り出している団扇で仰いでいるご主人様を回収。

 ご主人様に少し水を飲ませつつ発汗させ、これ以上酔わない程度の少量のお酒も飲ませる。

 その後近くに侍らせ、一升瓶が尽きるまで飲み続けた。


 翌朝、宴会場で目を覚ますとメイド達や元王女達がその場で寝ていた。

 末の娘ちゃんにお酒を飲まされ、その後暑くなったので少し浴衣を緩めて…

「あぁ…なるほどね…」

 よく思い出すとその後メイド達にも一服盛られ、アロマ代わりに使われたらしい…

 お酒を少量でも飲むと体が熱くなり発汗、その時に発する匂いを酒飲みのメイド達は好む。

 少量でほろ酔い状態になる程度、グラス1杯で千鳥足、グラス2杯で酩酊になるほどの匂いが発せられるのだとか。

 記憶は残るがこの辺りは自分では確かめようがない…ただ全員匂いだけでも酔い潰れているので間違いはないのだろう…

 宴会場の片づけを終えた後、皆を部屋に送り届け、浴衣も着替えさせ布団に寝かせる。

 その後温泉に浸かり、部屋に戻り二度寝を決め込むのであった。

一口飲むだけで200人ほどは入れる宴会場全体に心地よい甘い香りとほろ酔いになる程度の酒気を拡散するアロマ

二日酔いになる事は絶対に無いのでたまに盛られてアロマ代わりにされる

末の娘ちゃんが駄目になったのは用意してあるグラスの1杯くらいの量を飲ませた上に至近距離だったので一発酩酊状態になったから

一応近ければ近いほど効果は強い、密着しているメイドはその匂いを楽しみつつまだ飲める強者

追加で持った量は酩酊ギリギリ手前位の量


ご主人様アロマ取扱説明書

楽しみたい香りのお酒を用意します

どうにかして一口分盛ります

すると発汗し、香りが広がり始めます

効果時間:ご主人様が寝るまで、起き続けている限り効果は続きます

*グラス2杯以上飲ませないでください*

*もし誤ってグラス2杯分以上のませた場合直ちにメイド長に報告する事*

*報告しなかった場合何が起こっても責任は取れません*

*用法用量を守って正しくお使いください*

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