ご主人様を探せそのよん 決着!
釣ったばかりの魚は大体身がコリコリ、少し寝かせると柔らかくなって味も良くなる
けど実際の所好みの問題、どちらのほうが美味しいかというより両方試してみて、その後は自分が美味しいと思う方を食べればええねん
温泉街へ家族旅行!と意気込んて幌馬車を人力かつ快速で引いてきた元王女。
港町に辿り着いていざ船に乗り込もうとしたのだが…
「えー、船だしてくれないのー?」
「申し訳ありません、ただ今海上に現れた謎の生物、及び攻撃して来た者の調査中でして…」
不法侵入をした際、意識をそちらへ向けるために発生させた謎の巨大な水飛沫の正体を未だに探っていた…
「何?うちに喧嘩ふっかけてきた馬鹿でもいるの?」
「それも調査中です、ただ何も見つかっておらず、発生初日以降何も起きていませんので、後数日程で警戒は解かれるかと」
「んー、そうと分かってればのんびり来たんだけどなぁ…まあ仕方ないか」
「誠に申し訳ございません、宿の警備などは手配いたしますので暫くそちらでお過ごしください。
警戒が解除され次第連絡を入れるよう通達しておきますので」
「はいはいー、じゃあ暫くは此処でのんびりだねぇ」
封鎖が解除されるまでは港町でのんびりと過ごす事になった。
これ犯人は私達ですごめんなさいってしたらややこしいことになりそうな気がする…黙っておこう…
「不幸中の幸いか、港から入ってくる人が今は居ないから宿が貸切に出来てよかったねー」
「収入がほぼ消えてたから貸切で代金もかなり色を付けてるから赤字…が解消できたかどうかは知らないけど、宿の人も助かったんじゃないかな?」
現在港街は閑散としている、謎の海上爆発から約20日、船の出入りは止まり、近隣の村から野菜などを売りに来ている人が居る程度。
こちらも不幸中の幸いなのか…漁に出なくとも暇を持て余した人が釣りに興じたりしているので魚の流通は止まってない。
以前少し計算した物より少々割高にはなっているが…
「しかし…数日過ごすと言っても何をした物かねぇ…
特に娯楽施設があるわけでも無し、強いて言えば釣具屋がある程度。
船に乗っての釣りは船が海に出れないから駄目…
それ以前に数日間朝から晩まで釣りしかできないってのもねぇ…」
のんびり過ごすとは言った物の、やる事が寝るか釣りをするか…
何か遊べるものあったかなぁ…
「いやー、何も釣れないねー」
「日中だからねぇー」
とりあえず何もやる事が無いので元王女と桟橋で釣り糸を垂らす。
ただ時間が時間なので何も釣れない、餌をつついてくるのもいるが全て餌取り。
「お、何か掛かった」
何かが掛かったようではあるが…
「んー、なんだこれ、食べれる奴?」
「死んでもいいなら食べれる」
釣れたのは6センチくらいのクサフグ。
…まあ…頑張れば食べれなくはないけど…お勧めは出来ないなぁ…
「じゃあ要らないや、バイバイ」
針を外されたクサフグは海に帰っていった。
「なんかこう…せっかく掛かったのに食べれないのが釣れると楽しくないね…」
そうは言いながらもまた針に餌を付けて、耳をぴくぴく動かしながらまた次に何かが掛かるのを待っている辺り楽しんではいるようだ。
「日が暮れ始めたらまた違ったのが釣れるようになるからそれまでは辛抱だ…ねっ」
こちらも何かが掛かったので合わせて、竿を発てて浮いてくるのを待つ。
それほど大きいわけでも無く、掛かった魚は直ぐに浮かび上がってくる。
「お、ご主人様は何が釣れたん?」
「クサフグ」
先程より少し小さいクサフグ、手早く針を外して放流。
「海へお帰り、そしてもう針に掛かるんじゃないぞ」
「ご主人様優しいねぇ」
「いや、単純に糸を噛み切られたり針を折られたりしてめんどい」
「あ、そう…」
その後も暫く糸を垂れ続け、釣果はクサフグ5匹、ハギ3匹。
ハギは食べれるけど4センチ以下はちょっと…それに宿に持ち帰るには全然足りない…美味しいんだけどねぇ…
時間も経過し日が落ち始めた頃、ぼちぼち釣り竿を持った漁師と思わしき人や夕食代を浮かそうとしている人が集まってくる。
「さて、そろそろ道具を変えようか」
「んー?この竿のままじゃ駄目なん?」
「駄目なことはないけど、数釣ろうとすると時間がね…
日が落ち始めた時様に―って釣具屋で買ってきたのあるでしょ、あれの出番」
まあ餌は変わらないし、のべ竿のままでも良いが、ここはがっつりと行くためにリール式。
のべ竿を仕舞い、リール式の仕掛けをセット、竿は柔らかめの物を使用。
「後は餌付けて底に着いたら少し巻いて放っておく、すると小魚とかを狙って入ってきた魚が…食いつくっ」
ここ暫く漁に出ていないせいか沖からよく魚が入ってくるらしい。
夕食のために数か大きなのを釣らねばならないので、暴れるのもお構いなしに一気に引き上げる。
「とまあこんな感じに」
「なるほど、早速やってみよう」
釣れたのは20センチほどの鯵、少し物足りない気もするが今はこれで良し。
日中に豆鯵が居なかったのが痛いなぁ…
「昼間とは比べ物にならない位入れ食いだねぇ」
竿と仕掛けを変えて10分程度で鯵が24匹ほど、大きさも疎らなのでボチボチ狙いを変える。
「こっちはそろそろ仕掛けを変えるけどそっちはどうする?」
「んー、このままで良いかな?
これ美味しいんでしょ?」
「刺身でも焼いても揚げてタレに漬けても美味しい、小さいやつだと骨まで行けたんだけどねぇ」
話しつつ針を少し大きな物に変え、適度な大きさの鯵がいなかったのでその場で切り身に。
「切り身にして使うの?」
「小さいのがいたら生きたまま使ったんだけどねぇ…まあこれはこれで釣れるから」
針に切り身をつけ沖に向かって投げる、後は掛かるのを待つだけ。
生餌の方がいいと言えばいいけどまあどっちでも釣れるからいいか…
「釣れるといいねぇ、何を狙ってるか知らないけど」
「できればハモが良いなぁ…外道でも美味しいやつは美味しいけど」
竿を持って行かれない様にドラグを緩めて置く。
少々待っている間にも鯵は増えていく、とはいえ30匹程度で鯵を釣るのは終了。
切り身にしたのは1匹だけとは言えあと3回分はあるので仕掛けを変更し、元王女も大きいのを狙い始めるのかと思ったが…
「ご主人様、この切り身勿体無いから食べていい?」
うーん、ワイルド…
「ちょっと待ってね…」
残っている切り身から皮や骨などを綺麗に外し、少ないけど刺身にしてお皿に盛り、小皿に醤油を少し入れお箸と一緒に渡す。
「ありがと。
んー、コリコリしてて美味しい」
「少し寝かせて柔らかくした方が美味しいと言う人もいるけど、まあそこは好みだねぇ」
折角なので少量の刺身を少し摘み、獲物が掛かるのを待つ…
2.3切れ摘まんだところで緩めていたドラグが音を立てて糸を出し始める。
「お、何か掛かった?」
「んー、何が掛かったんだろうねぇ…?」
ドラグを適度にしめ、スプールの回転を手で止め竿を立て針をしっかりと掛ける。
すると、竿の張力の限界を軽く超えたのか、音を立てて折れた…
「えぇ…」
周りで釣りをしていた漁師の人も突然の破壊音にびっくりしてるし…
糸は持参した特別製なのでまず切れる事は無いんだけど…
今もドラグが音を立てて糸を吐きだし続けている。
「これどうしようね…」
「もう無理やり引きちぎるか、何とかして釣るしかないんじゃない…?」
「んー、ちょっと目隠しになってくれる?」
「いいけど何かするの?」
「ちょっとしたインチキを…」
破壊音はした物の薄暗いので折れた竿はみられていない、なので折れた竿を幾分か頑丈にして修復。
スプールの回転を手で無理やりとめ、竿を思いっきり立てるが今度はもう折れる気配は無く、ちゃんとしなっている。
「うん、もう大丈夫。
問題は此処からどれくらい時間が掛かるかだよねぇ…」
「安物とは言え一瞬で竿を折るとか何だろうねぇ?」
「ダイヤいる?」
「こちらに」
「宿に行ってちょっと帰るのと夕食が遅くなるの伝えてくれない?」
「わかりました、では行ってまいります」
これで伝言はよし、ここからは掛かった獲物をじっくりと釣り上げるだけだ…
「しかし糸が出るの止まらないねぇ」
「だねー…」
ドラグはしっかり締めたがそれでも糸をどんどん持って行かれる、切れることも無いし長さという概念もないからいいんだけどさぁ…
「周りの漁師のおっちゃん達も何が掛かったのか釣り上げるの楽しみに見てるよ」
「んー…こうなったら針も弄って伸びないようにするか…?
でも獲物自体の口から裂けて外れる可能性もなぁ…」
時折強引に糸の流れを止めてはいるが、外れないという事は針は伸びていないという事。
んー…針も強化しちゃうか…
スプールの回転を止め、動きを強引に止めつつ針が強化されているか確認。
暫くその状態を維持するが針が外れる気配はない…
「針を飲み込んでるっぽいなこれ」
「飲み込んでるとどうなるん?」
「この場においてはほぼ外れる心配がなくなったから無茶ができるって、ことっ!」
ドラグを限界まで締め、糸が出ないようにする。
すると竿が限界を超えたしなりを見せるが…強化しておいたので折れない。
「あっ…」
なお今度は体を持って行かれそうになった…
「っぶなぁ!」
「ごめん、助かった」
「いいのいいの、これ1人で行ける?」
「支えてくれれば何とか…」
「はいはいー」
竿の強化と針の強化、そして身体を持って行かれないように支えられた状態で第二ラウンドが始まった。
「うーん、重い…ハンドルが回らない…」
ポンピングが意味をなさない…寝かせたら寝かせただけ持って行かれるから巻くことも許されない…
そして寝かせてしまうと今度は立てるのにもかなりの力がいる…
「これもう手で手繰り寄せたりとかは?」
「指が綺麗に飛ぶんじゃないかなぁ…?」
「うへぇ…糸には触らないほうが良さそうだね」
掛かってから1時間以上経過したが…切れない糸、折れない竿、壊れないリール、伸びない針を使っても相手は未だにへばる事なく海へ引きずり込もうとして来る。
漁師の人や夕食を釣りに来ていた人もここまで来たら最後まで見ると言わんばかりに桟橋の近くに集合している。
迎えに来たと思われる主婦も何か見守っている…
「ご主人様、ただいま戻りました」
「遅かったねダイヤ」
「はい、少々ボードゲームに御呼ばれして、今しがた終わった所です」
「何か伝言はある?」
「早く帰って来て夕食を作って下さいと」
「そうしたいのはやまやまなんだけどねぇ…」
今も支えられて弱る事すらない相手と格闘中、本当に何が掛かったんだこれ…
「手伝いましょうか?」
「お願いします…元王女もそろそろへばってきてる…」
「変わってくれるとうれしいかなぁ…そろそろご主人様と一緒に水上スキーを楽しむことになりそう」
2つの戦闘民族のいいところ採りをしたような元王女が1時間でへばる様な相手である…
「わかりました、では交代いたしましょう」
そう言ってダイヤが元王女と交代、王女は前からしがみ付いて持って行かれない様にしていたが、ダイヤは後ろから抱きついているようにしか見えない。
「あー、疲れた…私は道具持って先に桟橋から離れるね」
「ダイヤ、私を抱えたまま桟橋から離れて」
「わかりました」
元王女が道具と簡易冷蔵ボックスを持ち、桟橋から離脱。
その後ダイヤは後ずさりするように桟橋から離脱、後ずさりした分少し寄ってきたがそこは問題ではない。
「あー…やっぱり限界だったか…」
桟橋の先端の方が離れるのを待っていたかのように崩れ去った…
「そりゃね…杭とかに脚かけて踏ん張って無理やり止めないと2人くらい簡単に持って行くような相手だしね…」
桟橋の先端が壊れたことに漁師たちは驚いている。
「まあ先端だけで済んだだけ良しとしよう…」
「だね…」
舞台を岸壁に移し第三ラウンドが始まった…
意図は未だに巻き取れないが、3時間ほど経過した今、少し抵抗が弱まってきた感じがする。
ためしにポンピングをすると少し巻きとれる、これ幸いにと巻けるだけ巻く、ただ糸をどこまで持って行かれたかも不明なのでまだまだ時間はかかりそうだ…
「しかしご主人様タフだねぇ、普通ならもう竿とか手放してそうなもんだけど」
「まあこれでも屋敷に住むメイド達の主人だから」
「納得できるようなそうでないような…」
他愛ない話をしつつどんどん糸を巻き取っていく、ポンピングなしではいまだに巻き取れない。
観客もさらに増え、まだ帰ってこないのを心配したアウラ達も港に集合。
何時まで経っても夕食にならないので1時間ほど前に港までやってきて、釣った鯵を下し、その場で調理して食べ始めた。
それに倣って観客もどこからかバーベキュー用のコンロを持ちだし宴会中。
釣り上げる瞬間と掛った獲物をもう意地でも見たいのと、食欲を満たすためにバーベキューを始めたのだろう…
「ご主人様がんばれー」
「次の食材を早くお願いします」
「お姉様がんばってー!」
元王女の妻と娘の声援を受けまだまだ頑張る、なお食材を請求しているのはアウラである…
まあ、鯵30匹じゃ1時間持たないよね…
その後も必死に巻き取り続け、ようやく糸の先が港まで入ってきた。
「港まで入ってきたからもう少しだね」
「おー、やるじゃん、皆わくわくして待ってるよー」
観客たちの声援を受けながら巻き取り続け1時間、終わりが少しずつ見えてきた。
「んー、今思った。
これどうやって引き上げようか?」
引き寄せていたのはいいが取り込みを考えてなかった…
「おう、ねえちゃん、これ使え!」
漁師の人が大型魚用のギャフを用意してくれたのでお礼を言う。
元王女はギャフを持ち待機。
あと少しあと少しと巻き続け、掛かってから約6時間桟橋手前まで糸が戻ってきた。
「あー、もう少しで終わるー…」
この程度ではへばりはしないがひたすらに重い、ただただ重いだけ…
すると掛かっていた魚の最後の抵抗か、こちらに一気に進んでくる。
これは楽だと巻き取り始めるが…
「ちょおおおおお!桟橋崩れてる崩れてる!」
漁師の人達が崩れる桟橋を眺め…
「あーあーあー…」
「えぇ…」
いったい何をどうしたら桟橋が崩れる事にと此方に向かって泳いでくる魚の強さに呆れる…
桟橋が根元から壊わされ、木材が海に漂い始めた頃、等々決着の時がやってきた。
後は底から引きずり上げてやるだけと、少しずつ引き上げていくと…
「オォーウ…ビィーッグ…」
オォーウ…じゃなくて…漁師さんもうまともにリアクション取れなくなってるよ…
さて、どうしたもんか…
海面に姿を現したその姿は…
「こんなアカエイ始めてみたわ…」
「へー、これアカエイって言うんだ、大きい魚だねぇ」
「普通は此処まで大きくならないよ…」
アカエイの大きさ、目測で横幅30メーター、縦は…わからん…
「っぶなぁ!
アウラ!」
「はい」
巨大なアカエイは今だと言わんばかりにその巨体に見合った大きさの毒針を打ち込もうとして来る。
あんなもん刺さったら貫通する所じゃない…岸壁抉れてるし…
アウラに命令して尻尾を即座に切り落として貰い無力化、ギャフは役に立ちそうにないので返却して貰った。
アウラとサファイアに手伝ってもらい、何とか岸壁作って貰ったペースまで引きずっていく。
その巨大な姿見見合うだけの肉厚なヒレをバタバタとさせているが、尻尾は既に切り落としているので抵抗は出来ない。
「あー…疲れた…」
「お疲れさまでしたご主人様」
「さて…問題は此処まで大きいと確実にアンモニア臭が凄いことになっていると思うけど…」
「そこはお任せ下さい、すぐにその要素を取り除いてみせましょう」
ダイヤがアカエイに触れるとアカエイがバタバタと動かしていたヒレを止め、動かなくなった。
「これで匂いは無くなったはずです、ついでに仕留めて置きました」
「ああ、ありがとう」
臭いを消すと同時に仕留めてくれたらしい、ここまで大きいと骨も凄いだろうからまあアウラとかサファイアとかファイヤ、もしくは元王女じゃないと仕留められないよねぇ…
「ついでに滑りも取ってくれる?
これだけの大きさだと滑りを取るにも使う塩の量が半端じゃない位必要だし」
「わかりました」
ダイヤは再びアカエイに触れるとアカエイから滑りが無くなる。
本当は切ってから―だけど大きさが大きさだけに…ねぇ…?
「じゃあ今から解体して行こうか」
「それではお手伝いしますね」
釣り上げたことで観客は大いに盛り上がりお祭り状態へ。
今から解体始めるけど…大丈夫か…?まあいいか。
まずはヒレを切り落とすのだが、切り落とせるほどの刃物が無いので水圧でアウラに切って貰う。
念のため臭いを確認するがアンモニア臭は無し、軟骨はどうかなーと確認すると特に問題も無く食べれそう。
次は肝臓などを取り出すのだが…港町だけあって慣れているらしく何の問題も無かった。
「まずは皮を剥いで、柵を作ってお刺身に。
他にも調味液に漬けて唐揚げ、ソテー、煮付け、肝臓も同じように」
かなりの量が有るのでお祭り状態になっている観客にもおすそ分け。
「んー、見た目の割に美味しいねこれ」
「大きいから筋肉質も凄くて食べれないかなーと思ったらそうでも無かった。
軟骨も食べれるからどうぞ」
骨せんべいにした軟骨、軟骨付のから揚げも出来たので出す。
「お姉様!これ凄く美味しいです!」
末の娘も満足しているようだ。
「わりぃな姉ちゃん、こっちも御馳走になっちまって」
漁師や観客たちもどんどん持って行く、切り身にした物を持って行き自分の卓で料理する者、また料理法を漁師から習っている者もいる。
釣り上げるのに苦労はしたが、まあこれはこれで楽しめたかな…?
まだ片側のヒレの三分の一も消費できてないが…温泉街の食堂のお土産にしようかな…
なお謎の海上爆発の原因はこのアカエイが原因だったとされ、翌日海上封鎖は解けた。
念のためアウラに探って貰ったらここまで大きなアカエイは他に居ないらしい。
一体何がどうなってこんなアカエイが誕生したんだ…
「当たりますように…
…あー!なにもなーい!」
「では次回の挑戦をお待ちしております、お帰りはこちらから」
「これ本当に捕まえられます…?」
「可能か不可能化で言えば可能ですね、2巡目に入る時にチームのメンバーを増やすか、どこかに混ぜて貰うのもいいかもしれませんね」
「ううー…どこのチームが一番近いんだろうなぁ…」
「そこは自分で考えてくださいね」
「エリス様の所か…それともニール様の所か…」
ベリスとシュリエルが偶然の接触により失格を言い渡された後、2人が何所で接触したかを予測し、挑戦するメイドが増えた。
公開されたのは接触により失格と言う情報のみ、2人は多忙な時は1日で大陸間を往復したりもするので正確な接触場所は掴めなかった。
ただ、2人が依頼を受けるのは基本王城であり、接触するのであればその近辺で有ると予想は立てられ、王城とその周辺に絞り込み探し始めた。
しかし地図の問題はまだ解決していないので当然捕まるわけもなかった…
そして…ヴリトラ組とエリス組は地図の修正がほぼ完了しており、2巡目をまだかまだかと待ち続けていた…
約20日前、巨大アカエイ誕生の瞬間
「今日もご主人様にばれずに済んだようですね…
んんっ…しかしご主人様に見て貰いたいという欲求も有りますが…
ご主人様の陰に潜みこっそり排出するのもまた…
おっと…いけないいけない…先走って少し流してしまいましたか…多分影響はないでしょうし…
気にしてはいけませんね」
ダイヤがご主人様の陰に潜み、排出を見て貰いたくてうずうずしている時、少し先走り液体を海へ垂れ流してしまった…
それは微量ではあったが小魚が取り込み、その小魚を件のアカエイが食べてしまった…
海は封鎖され、漁に出る物も無く、アカエイは漁師に捕られることも無くすくすくと成長。
かくして、微量とは言え高純度のエネルギーを取り込んだアカエイは己を限界を超越し、成長の限界すら超えていった…
わずか3日で体調10メートル、少し緩やかになり20日ほどかけて横幅30メートルのまさに海の主ともいえる大きさに…
だがアカエイの天下はその日で終わりを迎えた…巨大化でエネルギーを使い果たし、空腹を満たすためついつい目の前に落ちてきた切り身を食べてしまったがゆえに…
「オォーウ…ビィーッグ…」
 




