ご主人様を探せそのに ルールに則りノーヒント進行、一応お情け有
初日にニアピンはあった物のその後何もなく、拠点を湖から川付近へ。
川から海を目指して川下へと順調に旅を続ける。
しかし未だに人里は見つからず、アウラが持ち帰ったお米も残りわずか。
流石に主食無しだと辛いものがある、無くなる前に人里か海に辿り着ければいいのだが…
「木に登って見渡す限りでは人が住んでいるようなところは有りませんね。
窪地になっているせいか海も見えませんし、今は川を下っていくしかありませんね」
「んー、狐さんは常に位置を把握しているだろうし、危なくなったら迎えに来てくれると思うからそれしかないかなぁ」
「しかしご主人様何故海を目指すのですか?
湖の周りを整備して不規則に寝所を移動する、と言うだけでも十分だったと思いますが」
「それはねサファイア、ただ単に旅がしたくなった、ついでに逃げれるだけ逃げてやろうかと。
それと前回は出来なかった食べ歩きの旅と言う物をしてみたいから。
海に出ればアウラが海沿いを調べてくれるし、人が住んでいるなら漁村とか港町あるはずだしねー」
「わかりました、そうであるならば全力でサポートさせていただきましょう。
所でアウラ様は何所に?」
「偽装工作中かな?
もうそろそろ戻ってくると思うから早めにお昼の準備でもしようか」
「何かお手伝いする事は有りますか?」
「お鍋に水を出してくれたら後は休んでていいよ、お昼を食べて済んだらまたすぐに移動するからね」
お米が残り少ないのでお米は雑炊に、野菜はもう無くなっているので食べれる野草を採取してある。
乾物と肉と魚介、調味料は豊富なので味付けや出汁を取るのには困らない、主食と野菜が無いだけで…
出来上がる頃にアウラが戻ってきたので昼食、食べ終えたらサファイアが痕跡を消去。
3人で川を下り、海を目指し始めた。
日が沈み始めた頃、周囲の安全を確保、幸い今の所猛獣などには遭遇していない。
手早くテントを設置、コンロなども取出しぱぱっと夕食の準備。
食べ終わったらお湯を沸かしてタオルで汚れなどを拭き、片づけたらテントの中に入り寝る。
初日以降はローテーションでアウラかサファイアが胸枕で寝るようになった。
サファイアは背丈がある分相応の重さは有るがそこは我慢、少し話をした後明日に備えて眠りについた。
その頃の屋敷。
「メイド長、ノーヒントはさすがに見つけられる気がしません」
「何か情報を得る方法をなにとぞ…」
「駄目です、一度決めたルールなので曲げません。
初日に痕跡を掴んだ人を割り出し、掴んだ人が何所に目星をつけていたかを自分で考え導き出すように。
もちろん初日に来た人の情報も渡しませんので各自で調べるように。
まあ見つけた所で情報は絶対に渡してはいけないというルールですので自分で予想をするしかありませんがね」
「ぐぬぬ…」
「それで、挑戦して行かれますか?」
「一応やってみます」
「ではこの地図の中から此処だと言うところを思い浮かべてください。
思い浮かべたらこの中に手をどうぞ」
2人のメイドが相談し、ここだと言うところを思い浮かべ、1人が手を伸ばす。
すると少しだけ空間が避けその先に手が伸びていく。
が…
「何も有りませんでした…」
「はい、残念でした。
それでは次回の挑戦をお待ちしております、まだ来ていないメイドも大勢いますので次回の調整は今のペースですと…
2ヵ月くらい先ですかね?」
「これはやはり無理なのでは…」
「初日に来たメイドはノーヒントからの勘だけで持ち帰りましたから、できなくはないと思いますよ?
少なくとも勘だけでも行けると証明したわけですからね」
「せめて何所の大陸かだけでも絞り込めません?」
「駄目です、それとこの地図も地味に弄ってありまして、北と南と東と西、その他の場所が全てごちゃ混ぜになっていますので、北と言ったとしても地図上では北にある大陸が北の大陸、とは限りませんよ?
ちなみに屋敷内にある地図がある物は全て改変済みなので調べるだけ無駄ですね」
「…やはり無理では?」
「実際に1人のメイドが持ち帰っているので出来ます、少しでも頭を働かせて割り出すか、運に任せて痕跡を掴むなりすれば後はそれを追っていくだけですから。
まだ来ていないメイド達は運に任せるか悩み、地図と睨めっこをして何とか割り出そうとしている状態ですね。
ご主人様も就寝時間以外は常に移動していますので早くアタリを付けて痕跡を引かないと逃げ切られると思いますけどね。
チームを組めば分け前は減りますがその分次回の挑戦への待ち時間は減るのですが…
ほぼ全てのメイドが単独で捕まえようとしているので、やはり早く見積もっても2ヶ月待ちですかねぇ…
直接的なヒントでもなくまあどうでもいい情報ですけど、挑戦に来たのは貴方達で二組目です、開始から既に10日、この調子だと年内にご主人様が屋敷に帰ってこれないかもしれませんねぇ?
あ、それとこの情報も口外禁止ですのであしからず、欲に目が眩んだメイド達の連帯責任、という事で」
「メイド長酷くないですかそれ」
「早く気づかないとどんどん楽しい事になりますね。
それでは就寝時間ですので此方を通って部屋にお戻りください、誰が挑戦したかを秘匿する為ですので」
「徹底してるなぁ…ではおやすみなさいメイド長」
「はい、お休みなさいませ」
狐さんはメイド2人を直接部屋から出すのではなく門を経由し、違和感なく他のメイド達に混ざれるよう細工。
徹底して情報を秘匿する構えだった。
「アウラ起きてー、後サファイアもー」
昨日はサファイアが上に乗っかって寝ていたはずなのだが、いつの間にか片側をアウラ、もう片側をサファイアが枕にして寝ていた。
「あと10分ー」
「いえ、後1時間ほど…」
「起きてるならちゃんと上から降りる、後寝ている間に服を脱がせない」
「やはり枕にするなら柔肌を直に堪能できる方が気持ち良いので」
「アウラ様の言う通りです、衣服の上からより直接肌に触れるべきです」
「そう…」
衣服の上からより直接肌に触れ、枕にする方がいいらしい、何時の頃からかサファイアもすっかりアウラの色に染まったなぁ…
「んふふ、やはりこれは良い物です…はぁ…何時まででも触っていられる…」
「そうですね…自分の胸ではこうはいきません、ただ無反応と言うのが少し寂しい気もしますが」
「そこはご主人様はちゃんと抑え込んでいるから、ご主人様をその気にさせる技術が無いと崩すことはできませんよ。
エリス様のルビーがその技術を学んでいるはずなので、その気にさせるのであれば屋敷に戻ったらエリス様に教えて貰いなさい。
私としてはその気にさせないほうがずっと触っていられるので今のままの方がいいですが」
「では教えは請わない様にいたしましょう、アウラ様が第一ですので」
「うふふ、ありがとうねサファイア」
アウラとサファイア仲がいいのは確か、今も2人で胸を触り離れようとしない。
仕方ないので頭や尻尾をなで、耳をくすぐったりしながら二人が満足するまでテントの中で過ごした。
「予定より1時間くらい遅い朝食なので今日は手抜きです」
あの後1時間たっぷり弄り回されたのでゆっくり朝食を作る時間は無い。
「食べ終わり次第髪を整え後片付け、すぐに移動を再開します」
これぞ手抜きの極地、生食可能な肉と魚を切って出すだけ、火は点けてあるので焼いて食べることも出来る。
「これはさすがに愛がこもってないのではないですかご主人様…」
「その分テントではたっぷりと愛情をこめて頭を撫でてあげたでしょうに…」
「それもそうですね、早速いただきましょう」
愛がこもってないとアウラが言い、食事に回す愛情は頭を撫でる事に使ったと私が良い、サファイアは納得して食べ始める。
とはいえちゃんと美味しく頂けるように大きさも部位もちゃんとしてあるのでわずかではあるが愛情はこめている。
…生だけど…
軽く炙って食べたりそのままお刺身で食べたりと何だかんだで好評。
食事を終え手入れと後始末、かく乱するための痕跡を作り川を下りを再開するのだった。
川下りを始め大体10日目にして川幅が広くなってきた。
徒歩だとどれだけかかるか分からないので簡易な筏を作り下り続けていたが…相当上流の方だったか、かなり長い川という事になる…
こんなに長い川のあるところあったっけ…
川幅が広くなって流れも緩やかに、一先ず岸に寄せ上陸、サファイアに気に上って貰い周辺の地形の把握。
見る限りでは流れの急な所は無く、筏を少し大きく、安定した物にしましょう、との事なので収納から筏に使った木材を出し筏をさらに大きく、双胴船の様に2つ繋げ安定させる。
これから先川幅は更に広く、目測で川幅50メーター、また深さもそこそこで大体アウラの背丈位。
ここから暫くは川の上で水上生活、寝ている間にひょっと海まで流される―なんてことを考えたとしても、流されたところでアウラが居るので問題なし、岸まで引っ張って貰えばいいだけ。
片側にテントを設置、もう片側は食事などのスペースに、耐火処理はしてあるので火事の心配はないが、一応使わないときはコンロなどはしまっておく。
準備ができたので岸から離れ川の流れに乗り川下りを再開。
あと何日くらい川の流れに乗っていれば海に出られるんだろうなぁ…
ご主人様が水上生活を始め7日後。
「それではアタリを着けた場所を思い浮かべ手を伸ばしてください」
「…ふぅ…いきます!」
メイドが1人挑戦、しかし…
「空を切るだけで何もないです…」
「それは残念でしたね、また次回の挑戦をお待ちしております」
「次回の挑戦は何時頃になりそうですかね…?」
「そうですね…私の予想を大きく下回ったので…あと5カ月くらい先でしょうか?」
初日にヴリトラがニアピン、それから10日後2人組みのメイドが挑戦、しばらく間を置き3組目となる1人のメイドが挑戦。
狐さんの予想では2.3人組みでせめて2日に1回は来るだろうと予想をしていたが大外れ、ご主人様が飛ばされ約1ヶ月で3組、計6人のメイドしか挑戦していない。
残るメイドはまだまだ大勢いる、少しペースを速めたとしても5.6カ月で挑戦権が復活するかしないか程度かなと、次の予想を立てていた。
「それではお帰りはこちらから、他のメイド達を急かしたりしない様、普段通りに過ごしてくださいね。
誰か一人でもルールを破った場合は…」
「それは勿論分かっております!絶対に言いません!」
「よろしい、ではおやすみなさいませ」
「おやすみなさいメイド長!」
「叫ばなくてもよろしい、カレンとリッカが起きてしまいますので」
「…すみません」
狐さんはメイドを送り出し、カレン、リッカと共に寝始めた。
当然この後もルールを変えてヒントを出すことも無く、1日1組が1回挑戦したらその日の受け付けは終了と言う部分も変えず、誰が挑戦したかも完全に秘匿。
挑戦に参加するまでは挑戦するときの制限も明かされない、挑戦して初めて次の挑戦に挑めるのはまだ終わって無いメイド達全員が挑戦し終わってから漸く可能になると告げられる。
2巡目にもなればもし痕跡を掴んだ者がいれば我先にと挑戦するであろう。
しかし現状は挑戦者が月3組で6人のペース、これを最後まで維持した場合単純に参加しない者を除いても16ヶ月。
挑戦ペースが早まったり、すれば少しは短くなるが。
現在のメイド達のほぼ全ては独占を考えている、最初から山分けするつもりでチームを組んだヴリトラともう一組を除けばほぼ全て単独。
狐さんの予想をさらに下回ってくることになるのであった…
「ユースティア、マキア、ご主人様次は何所を目指すと思う?」
「どうでしょうね…初日の挑戦でニアピンは引けましたが…もうあれから1ヶ月…
まだ参加権が復活していない事を考えると、ご主人様が他の大陸に渡った―なんてことも有りえなくはないですね」
「メイド長が言うには痕跡を掴んだらそれをどんどん追って行って、最終的に追い詰めて捕獲すれば勝ち、の様ですが…」
「となるともうこの大陸を探すという選択肢は無くなるねぇ…」
「地図は大分書き換えられてますがメイド長は多分今どこそこの大陸に居るとか、その大陸を中心とした方角だけをヒントとして小出しにするつもりだったのではないでしょうか?
そこから皆でチームを組むなり単独で連日連夜挑戦、挑戦権もまたすぐに回復し2巡目が始まる、と言うのがメイド長の筋書きだったのかと…」
「うぅ…ごめんよぉ…私が変にニアピンしたせいで情報が出る前に情報が止まってしまってご主人様を完全に勘だけで探さないといけない様にしちゃって…」
「ヴリトラ様落ち込まないで…一度ニアピンできたんです、二度目もおおよそでアタリを付ければ今度こそ当たるかもしれません」
「そう、ヴリトラ様の勘は当たってた、私達がご主人様が既に横になっていると予想を立てれなかったせいでもある…」
「うん、そうだよね、掴んでいた情報は全て破棄、最終的に何所に居座るか予想を立てようか」
「まずは地図の整理からですね、ここまで巧妙に書き換えられていると自分の出身の国ですらどこにあるか分かりません」
「地図を見て北と予想していたけど、そこは西だったかもしれないし、南だったかもしれない」
「メイド長もこういうところいやらしいよねぇ…どう見ても改変前と同じようにしか見えないのに…」
「一つ一つ照合していきましょう…一応これでも王女として東限定ではありますが大陸中を視察し、ある程度記憶しておりますので…」
「私も一緒に行動していた時期の事なら覚えてる、頑張ろう」
ヴリトラはユースティア達の記憶を頼りに、形は全く同じように見えるのに中身が全く違う地図の整理を始めた。
その頃ご主人様は…
「筏の上で飛び乗ってこないの…安定性を出すために双胴船っぽくしてるけどあまり重量が傾くと転覆するから…」
「ごめんなさい」
サファイアとアウラのダイブにより筏が転覆しかけていた。
早い話ヴリトラのせいでノーヒントで砂漠の中からこの砂粒を一つ探せ、みたいなクソゲー化した
地図は見た目通りに認識して探ると全く別の所を探ることになる、気づかないとご主人様を追って南下したはずが実は北上していた、という事にもなる




