くじ引き 不定期だけど恒例行事
素麺の白出汁マヨ豆板醤和えゆで豚乗せ
朝からメイド達の様子が少しおかしい。
落ち着きのない者、心ここにあらずの者、冷静を装っているが隠しきれていない者、メモを取り出してはしきりに確認する者、何か交渉をしている者もいる。
そして何より朝から狐さん達や纏め役達の姿が見えない。
姿が見えずメモを持ったメイド達、「あー、もうそんな時期かぁ」と思いつつ気にしない事にした。
「景品の展示終わったよー」
「注文通りのくじ箱を作ってきましたぞ」
景品の展示が終わり、くじ箱も設置されていき…
「メイド長、これで準備は終わりましたが確認をお願いします」
狐さんが確認を始める。
「まず景品の展示は問題なし、状態保存もちゃんとかかっていますね」
くじも試験的に何度か引き確かめる。
「くじ箱も問題ないようですね、これなら早々突破できないでしょう」
軽く透視だけして一等のくじを引き、くじを開いたときに三等になってるのを確認する。
「どれどれ、うわ…なにこれ…認識阻害はまだいい方で運命操作までついてんじゃん…
下手に不正に手を出すとスカか十等しか出ないし、不正をしないと特賞~三等まで引けないとかかエグすぎ…」
「うむ、なかなかの自信作ですぞ、まあここに居る方達には通用しませんがな」
「運に任せて引いただけ場合は普通のくじ箱として機能すると、ある意味公平ですね」
「では次に今回の特賞を手にするのは誰か賭けてください」
狐さんの進行により纏め役達による賭けが始まる。
エリス:1.2倍
タニア:2.5倍
アナト:3.7倍
ニール:4.1倍
ティア:4.2倍
・
・
・
「エリスが一番人気ですね」
「一番手堅い所だからなぁ…」
誰が誰に賭けたかはわからないように狐さんにメモをそっと渡していく。
「はい、皆さん賭け終わりましたね、泣いても笑っても後戻りはできません、私がルールです」
私がルールだ、そう言い切る狐さん。
「それではくじ引きを開始します、ミネルヴァ、開始のお知らせをお願いします」
「了解しました」
ミネルヴァが開始のお知らせに回り、今回はくじ引きであり思うがままに一枚引けばいいと説明も簡潔な物だった。
そして一部の運命を賭けたくじ引きが始まった。
メイド達が列をなしてくじ引きの会場である会議室の前に並んでいる。
何時もながら凄い光景だなぁ、と思いながらメイド達の観察をする。
なぜここでメイド達の観察をしているのかと言うと、ただやることが無いからである。
尻尾をフリフリしたり耳をピクピク羽をパタパタさせながら順番を待っているメイドの観察、すごく癒される。
癒されながらぼーっと観察しているといつの間にか隣にきていたミネルヴァに捕まった。
調理場まで連行されケーキとプリン作るように言われた、仕方がないので作り始める。
スポンジケーキを四角形にカット、そこから横にカットし間に薄く切ったフルーツとホイップクリームを挟む。
挟み込んだら適度な大きさにカットし、融かして置いたチョコを塗る。
チョコで薄くコーティングした後冷風もしくは冷蔵でチョコを固めパリッとさせる、仕上げにホイップクリームとお好みのフルーツで飾りつけして出来上がり。
プリンはシンプルにホイップクリームをかけてフルーツを乗せただけの物にする。
ミネルヴァが目をキラキラさせて見てくるので一個食べさせてあげる、雛鳥のように口を開けて次の分をまだかまだかと待っていた。
見た目凄く綺麗な美人でもこういうところは少し残念、でもそこが可愛い。
作ったケーキやプリンは会議室に運び込まれ、くじ引きに集中しているメイド達が息抜きに食べていた。
なおスポンジケーキの切れ端や余ったフルーツとホイップクリームで作ったパフェは全部狐さんが持って行った、二個しかなかったのに…
調理場の片づけが終わった後ミネルヴァを連れて庭に出て一緒に日向ぼっこをする、今回の催し物でミネルヴァの仕事はもう終わってるので何もやることが無いらしい。
他愛もない話をしやこれから何をしようかと話し合いながらのんびりとした時間を過ごした。
それにしてもくじ引きを開始してからそこそこの時間が経過し、お昼時になっていたがまだまだ終わりそうにない。
窓から中を見ても列が進んでいる様子はなかった。
さらに時間が経過し夕暮れ時、ようやく十人目が終わり、本日の受け付けは終了したらしい。
くじ引くのに大体一人一時間として、今回の催し物は何日で終わるのかなぁ…
ミネルヴァは初日終了時の結果を聞くために会議室へ戻っていった。
終わるまでは屋敷の機能はほぼ停止するが、実際の所何もしなくても良かったりするので影響はない。
ただ終わるまでの食事は全部私が作らなければならないのが何とも…簡単な物しか作れないけど皆喜んでくれるからいいんだけどね。
軽く考えて後八日か九日、この間は料理当番かー、と思いつつ皆の食事を用意していた。
「初日終了お疲れさまでした」
「おつかれー」
皆それぞれ労いの挨拶をする。
「まず初日の結果からですが。
スカ二人、八等一人、六等一人、五等三人、四等二人、三等一人、以上です」
「おー、意外といい結果だね、三等引いたの誰なん?」
「三等は最近来たばかりのフレールですね、認識阻害は軽く突破、運命操作も完全ではありませんが少しは干渉出来るようです」
「将来有望だねー、五等と四等は?」
「五等はカミラ・カーラ・カルラの狼人族三姉妹、四等は猫人族姉妹のミアとミウ、こちらは完全に狼三姉妹が直感、猫姉妹運任せですね」
「狼三姉妹は私が貰っていい?」
「それは構いませんが急にいなくなるとご主人様が悲しみますのでご主人様から許可を得るように」
「ははは」
「後今の無邪気な性格や姿を好んでますので性格を変えたり成長させたりしないように」
「わかってるって、付き合い長いんだからそんなことしないのは知ってるだろう狐?」
何やら不穏な相談をする狐さんとルシフ、周りに居る者達も基本似たようなものなので誰も突っ込まない。
他にも誰が誰を貰っていくかの話し合いが行われた。
調理場で夕食を作っているとルシフが来て狼三姉妹を催し物が終わり次第ちょっと修行に連れていってくると言ってきたので許可を出しておく。
「あーご主人様、そういえばご今日の夕食はなにー?」
愛情たっぷり猫まんまと冗談で返しておいた。
くじ引きが開始され残りの人数的に最終日になるであろう本日。
昼は軽めの軽食のみにし、終了して打ち上げになるであろう夜に向けて夕食の仕込みをする。
流石に一人だと手が足りないので狐さんの所から料理長を借りてくる。
立食形式にするにしてもとにかく量が必要、作ってはストック、作ってはストックを繰り返す。
ストックも十分にできた頃くじ引き終了のお知らせが回り、メイド達が打ち上げ会場に集まり始める。
料理長と共に出来上がったものを並べて行き、一通り並べ終わった後狐さんが出てくる。
「これよりくじ引きの結果を発表いたします、まずはハズレから四等まで引いた人数の発表から開始ます、こちらは名前の発表はありません、次回は呼ばれるように精進するように」
狐さんが集計結果を発表し始める。
スカ:二人
十等:二十一人
九等:十四人
八等:十二人
七等:六人
六等:九人
五等:十五人
四等:五人
「次は三等から一等まで、こちらは名前を呼びますので前に出て景品をお受け取りください」
三等からの発表が始まる。
「三等、フレール、アナトの二名」
フレールとアナトが前に行き景品を受け取っている、景品は枕と布団の寝具一式セットと新しいメイド服、何かのチケット3枚のようである、一等や特賞は取れなかったがかなり嬉しそうだ。
「二等、ニール、タニア、アナトの三名」
二等は三等の寝具一式に加え新しいメイド服のようで、後やはり何かのチケットが5あり枚。
「一等、ティア」
こちらも寝具一式とメイド服が共通、チケット10枚。
「特賞、エリス」
やはり寝具一式とメイド服に加えチケットを30枚貰っていた。
「次はチケットについての説明です。
チケットの交換は翌日から、優先度は特賞、一等、二等、三等の人の順になります。
物によっては数に限りがありますのでなくなっても泣かないようにお願いいたします。
それでは残りの時間ご主人様の用意した料理をお楽しみくださいませ」
打ち上げの立食パーティーが始まった、次から次へと消えて行きストックしていた物もつきかけ追加で作る羽目になる。
小柄なメイドもどこに入っているのか分からない位よく食べる、どれだけ食べてもお腹はでないし太りもしない、不思議である。
それにしても作って出した端から消えていく…いつまで作り続ければいいのだろうか…
翌日チケットを握りしめ仮設の交換所前で扉が空くのを待つエリスがいたので話しかける。
するとボンッと顔を真っ赤にしてこちらを振り向いてアワアワしていた。
可愛かったので頭を撫でてやると目をぐるぐるさせ始め耳も忙しなくピコピコ動き「あー…うぅ…」と言い始め扉が開くと同時に中に駆け込んでいってしまった。
「やーいらっしゃいエリスちゃん、何を交換するんだい?」
深呼吸をし、落ち着きを取り戻した後。
「この衣類一式と食器のセットをお願いします」
「衣類一式は20枚ね、食器セットは1枚の物から10枚の物まであるけどどれにする?」
「食器セットは10枚の物を」
「はいよ、エリスちゃんも好きだねー、これが何か分かっちゃった?」
「はい、ミネルヴァ様の使ってる食器と同じですね」
「ははは、あいつは常にご主人様の作った甘いものを食べてないとちょっと不機嫌になるからねー。
使い方は簡単、そのお皿にこれが食べたいと願えばその食べ物が出てくる。
茶器も飲みたいと願った物が出てくるよ」
「説明ありがとうございます」
「次は衣類一式の説明ね。
これは昔配布されたフリルのドレスやメイド服を着たご主人様の写真撮影で実際着ていたやつ。
他にも色々はいってるけど全部状態保存掛けてあるから部屋で確かめてね。
どう使うかは自由だよ、ご主人様にまた着てもらうもよし、サイズは自動調整されるから自分で着るも良し」
エリスは顔をちょっと赤くして耳をピクピクさせている。
「服持ってこれ着てくださいって迫ればご主人様も断らずにちゃんと来てくれるから大丈夫だよ。
それに身長やスリーサイズを指定してもちゃんと答えてくれるから。
一応サービスで複製品も付けておくからペアルックも楽しんでね。
何だったらツーショット写真も今なら一枚おまけするよ、ははは」
衣類の説明が終わった後エリスはお礼を言いご主人様を捕獲しに行った。
エリスの部屋にペアルックでご主人様と並ぶ写真が飾られることになった。
チケットの交換が終わった後、狼三姉妹はルシフの宣言通りに修行に連れていかれ、何やらパワーアップしたらしい。
何がパワーアップしたのかはわからないが以前よりスキンシップが激しくなった気がする。
ルシフがそれを見ながら「ははは、さすが私いい仕事するわー」と言っていた、何を仕込んできたんだ、何を。
他にも何人か鍛えられたのか以前より積極的になっていた。
スカを引いたらしい二人は暫くの間「私は不正に失敗したポンコツです」と書かれたプラカードを首から下げていた。
後で狐さんに聞いたらくじ箱の仕掛けについて説明されたので引いてみる。
普通に引くと七等・五等・八等とでる、狐さんに渡された簡易な透視が付いてるメガネをかけて引いてみるとスカしか出なくなった。
認識阻害無効付の物をつけると四等、稀に三等がでるように、二等からは運命操作で絶対にひかないという運命を捻じ曲げる必要があるのだとかなんとか、ただのくじ引きに対して本気出しすぎじゃない?
そう思いつつメガネをはずしくじを引き狐さんに渡す、特賞と書かれていたくじを見てクスクス笑っていた。
チケットの交換が終わり暫く立った頃フリルのドレスやメイド服を着て屋敷内を歩くご主人様がメイド達全員に目撃され、目撃したものはエリスに、エリスはルシフにお礼を言っていた。
ただ水着を着せた時は鼻血を出して倒れる者、部屋に連れ込んだ後ツヤツヤになって出てくる者が続出した。
狐さんも混ざっていたので止める者はいなかった…
後しばらくの間纏め役達の羽振りがほんの少しだけよくなった。
何やら賭け事をして勝ったらしい、でもルシフだけは素寒貧になっていた。
ポンコツな時と優秀な時との差が激しいやつである…