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お店の新商品 まるで反省をしていない

 北の大陸に飛ばれされ大体120日、戻ってきて10日位。

 大体4ヶ月ほど宝石店の仕事を放置したことになるわけだが…

 ちょっと宝石店に行くのが怖いなぁ…注文がたまってる云々より苦情が来てないかが怖い。

 しかしこれ以上放置するわけにも行かないので宝石店へ。


「あら店長、暫く来なかったようですが何かありましたか?」

「ちょっと北の大陸まで…」

「そうですか、今月の注文はこちらになります」

「先月とか先々月の分は…?」

「そちらはユノー様が全て代行して済ませてあります」

「それならよかった…」

 ユノーが代わりに全てやってくれたらしい。

「それとこちらの注文書をテレサ様とフローレンス様に渡しておいてください」

「どういうことで?」

「今の流行は聖女様と元聖女様が作ったクリスタルグラスになりますね。

贈り物としても実用品としても使えますし、何より聖女様達が自らの手で作った、と言う特別感ですね。

お値段もお手頃ですので売れ行きは悪くないですね」

 ほーん…クリスタルグラスか…

「まあ注文の分作ってくるよ」

「急ぎはしませんがよろしくお願いしますね」

 工房に引籠り注文の品を作成。

 まあどうせ捏ねるだけだし、月に多くて4個位だし、時間余ったら何か作ってみようかな。


「はい、確かに、それではこちらでお預かりいたします。

今月もお疲れさまでした」

 作り終わった後は仲居さんに渡す、それとショーケースの中が寂しくならない様に数点補充。

 それと少し対抗してクリスタルグラスを2つほど、ただただシンプルに実用性のみを求めて装飾は無し。

 実用性を飲み求めた結果、薄くて軽いのに落としても割れないのだ!

 これもショーケースに収めてお値段は仲居さんにお任せ、まあどう考えても宝石細工よりは高くはならないだろう。

 流行に少し乗っかって在庫を整理するのも大事よね、結果次第では少し多めに作ろう。

 仲居さんと少し話しつつ店番をし、その日は来客が無いまま終わった。

 結果は来月にならないとわからない。


「テレサ、フローレンス、注文書預かってきたよ」

「あら、わざわざすみませんご主人様」

「最近の流行って聞いたけど、何故そんな事に?」

「ご主人様の御仕事の代行にユノー様について行ったとき、お店の中のショーケースの品物まではユノー様でも手が回りませんでしたので。

その時に以前から趣味でやっているクリスタルを削ってできたグラスを数点並べた所、翌月に全て売り切れていまして。

その時から私とフローレンス様宛てにグラスを作ってくれないかと依頼が来ていますね」

「私達の作った物は聖女や元聖女という肩書が付いているから売れているようなものだとは思いますけどね」

 注文書を受け取りクリスタルを削り、グラスの形にした後彫刻を入れて粉を落として綺麗にする。

 最後に緩衝材を詰めた木の箱に入れて出来上がり。

 ショーケースの中に入れたグラス入れ物のこと考えてなかった…まあ落としても割れないからいいか。

 出来上がった物を預かり、次回宝石店へ行ったときに仲居さんに渡すことにする。

 テレサとフローレンス合わせて計6個のグラス、量産品ではなく手作りだからこんな物か。


 翌日、新しく授業に加わったリッカを見ながら少し考え事。

 テレサとフローレンスが手作りしたグラスは彫刻も素晴らしく、実用するにはちょっと勿体無いかも知れないほどの出来、美術品とか芸術品と言った感じ…

 しかし贈り物にするのであればこれ以上無いくらいに相応しい。

 となると…実用性のみで対抗か芸術性も加えるか…でもやりすぎるとなぁ…

 いっその事共同作品にするか…?

 2人のグラスは落としてしまうとどうしても割れてしまう、ならば割れないように加工したグラスに彫刻…できるかな…

 うんうん考えながら授業を見ていると娘達が押し寄せてきて押しつぶされた、休憩時間になったらしい。


「テレサ、これに彫刻できる?」

「このグラスにですか…模様は如何致しましょうか?」

「模様はお任せかな」

「では少しお待ちください」

 ショーケースの中に有るグラスと同じものをテレサに渡して模様を付けて貰う事にする。

「…無理ですね、削れません。

これ本当にクリスタル製ですか?」

「紛れもなく、割れないように加工してるけど」

 テレサは削れないらしい。

「フローレンスなら彫刻できる?」

「無理だとは思いますが…ご主人様の願いです、やるだけやってみましょう」

 フローレンスがチャレンジするが…

「私も無理ですね、傷一つつきません」

 フローレンスでも駄目かぁ…

「このグラスは何を目的として作った物で?」

「落としても割れない様に実用品として、後クリスタルグラスが流行中って聞いたからお店に出そうかなーって」

「確かにこれなら落としても割れませんが…全力を出しても削れないのはさすがに硬すぎでは?」

 普段は軽く爪先をトンっと叩くだけで対象物を削るテレサとフローレンスだが、今は足をしっかり踏み込んで削ろうとしているが傷一つつかない。

「うーん…」

 どうやっても削れないらしいグラスを捏ね直す。

「じゃあ今度はこれで」

 テレサに渡し削ってもらう。

「あ、これなら削れますね」

「硬さはこの位でいいか、次は地面に落としてみて?」

「よろしいので?では少し失礼して」

 テレサが手に持ったグラスを地面に落とす。

「ひび無し傷無し、次は机に叩きつけてみて」

「わかりました」

 グラスを広い机に叩きつけてみると…

「割れはしないもののひび有り、この位かなぁ」

「ですね、落としても割れないのが目的であればこの程度で宜しいかと。

叩きつけるほどの力もかからないでしょうし、実用なら十分ですね」

「じゃあこの硬さで作るか」

 落としても割れず、叩きつけない限り割れないグラスをいろんな形で作る。

「後は来月これを店に並べるだけだな」

「彫刻はよろしいので?」

「そこはグラスを決めて貰ってその後に彫刻を入れるかどうかを聞く感じで」

「わかりました、では来月はお供致します」

 大分行き当たりばったりではあるが新しい商品が売れるかを来月試すことにした。


「おはようございます店長、今月の注文書はありません。

ショーケースの中だけ補充をお願いします」

 今月は注文書は無かった、テレサとフローレンスの作ったグラスを渡しショーケースの中を見る。

 ショーケースの中は一部を除き空っぽ、グラスは売れ残ってた…

 グラスを回収し、作ったグラスを並べる。

 ロックとタンブラーから始まりカクテルやゴブレット、ショット、他にも多数そろえてある。

「宝石店はやめるので?」

 ショーケースの中がグラスで埋め尽くされ宝石細工を置く所が無くなった…

「ちょっと作りすぎた…」

「こうなると…お酒でも仕入れますか?」

 グラスの種類が多すぎてもう一緒にアルコール類と抱合せて販売する方がいいかもしれない…

「まあ…うん…今回はこれで…」

 片隅にトンボ玉でも置いておこうかな…

 竹かごを取出し、緩衝材を敷いてトンボ玉とパパッと作りショーケースの上に置いておくことにした。


 本日の来客は3人、皆トンボ玉を買っていった。

 グラスは売れなかった…

 テレサとフローレンスに謝りながら屋敷へ帰り、グラスの事は仲居さんにお任せした。

 仲居さんならきっと全て売りつくしてくれるだろう…


「んー、何か違う気がする」

「ご主人様どうしました?」

「何かを間違えている気がする…」

「何か違うのお父様?」

 リッカとカレンを両腕に抱えながら考え事。

「流行に乗ってグラスを売れば儲かると思ったんだけどなぁ…」

「グラスを売ってどうするので?」

「それは勿論お金を稼ぐために」

「お父様お金欲しいの?」

「お金が無いと宿に泊まる事も食事を取ることも出来ないからねぇ…」

「ご主人様何を言っているのですか?

此処には止まる宿も、お金を払って食べる食事処も有りません」

 …あ!そういえば自分の屋敷じゃん!

「それとあの宝石店の売り上げは全て仲居さんの給金に回しているのをお忘れですね」

 いつの間にか来ていた狐さんにも突っ込まれた…

 あの宝石店出した理由は儲けなんてどうでもよくてとにかく宝石の在庫処理が目的じゃないか…

「そもそも新商品なんかいらなかったよね…宝石の在庫処理のために出した店なんだし…」

 北の大陸で宿に泊まったり食事の為にちょっとしたお金稼ぎと、屋敷を貰ってからも雇っていた元メイド達の御給金に食費に維持費と…お金が必要な期間が地味にあったからなぁ…

 お金に染まり切ってしまっていたか…

 ちょっとした自己嫌悪に陥っていると。

「お父様大丈夫?少しお昼寝する?」

「…する…」

 カレンにお昼寝の提案をされたので一緒にお昼寝をして癒されることにした。

「では私も隣で寝させていただきます」

 リッカもお昼寝に参加。

「私は特等席を頂きますね」

 狐さんは体の上にと、狐さんと子狐2人を抱えてお昼寝する事にした。


 翌月、宝石店に向かいグラスを処理しようとするとグラスは全て無くなってきた。

「おはようございます店長、グラスは全て売っておきました。

グラスに合わせたお酒をお付けすれば割と直ぐでした。

ですが流行はお終いですね、聖女様達への注文書も先月と同じくありません。

それと今月の注文書になります」

 グラスの流行は並べた時にはすでに終わっていたらしい、完売したのは仲居さんの実力によるものか…

 注文書を受け取り工房へ入り、仕事を開始するのであった。


「はい、確かにお預かりしました。

今月もお疲れさまでした」

 仕事を済ませ、注文の品を仲居さんに預ける。

 後は以前と同じようにショーケースの中には各種宝石細工。

 やっぱり宝石店なんだから宝石を並べないとね。

 もう迷いはない、これからもこの店は宝石店として続いていくだろう。


 屋敷に戻った後、少し部屋に籠り砂山を弄る。

 クリスタルを作りだし圧縮、アクアマリンも作り少し濃くする。

 アクアマリンで髪飾りを作りクリスタルで覆う、元にしたものは何もない。

 ただただシンプルに髪を飾るだけの物、宝石が放つ輝きだけで十分。

 後はリッカに贈るだけだが、売れなかったグラスも取り出す。

 片方のグラスにはルチルクォーツを使いリュウキンカの花を。

 もう片方のグラスにはアラゴナイトを使いカレープラントの花を。

 それぞれのグラスを箱に仕舞い、リッカとカレンへ贈る。

 リッカには髪飾りもあるがカレンにはすでに送ってるので我慢をして貰おう。


 翌日、授業が終わるタイミングで2人を呼び、プレゼントを贈る。

 リッカには髪飾りを付けて上げ、グラスの居れた箱をリッカとカレンに渡す。

 グラスには二人の名前の由来となった花の模様、二人は理解するかもしれないししないかもしれない。

 中に入ったグラスを見て大事そうに抱え込んでいたので何かを感じ取ったのは確かだろう。

 その後二人は部屋に戻り大事そうにグラスを飾っていた、クリスタルに覆われた宝石となったキツネノボタン、その左右にはリュウキンカとカレープレント花模様が象られたグラスが並ぶことになった。


「で、今回はなにを?」

「アクアマリンを少々…」

「日記の朗読会もう1回やりますか?」

「ごめんなさい許してください」

 髪飾りは速攻でばれた。

 そりゃね、幸運すぎて事象捻じ曲げちゃったらばれるよね!

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