子狐の名前を考えよう 殲滅戦
指を絶対に入れてはいけない
狐さんが子狐を引き取り1ヶ月、まだ目は覚めない。
体力の限界を超えても各地を放浪し逃げている状態だったようで、体の外から中に至るまでボロボロだった。
屋敷に居るだけでも治るのでその辺は大丈夫だったりするのだが、精神的な疲労、心の傷まではどうしようもない。
狐さんが薬を飲ませたので心の傷も少しずつ癒えているはずである、起きた後、辛い事は全て忘れているか覚えているかどうかは子狐さん次第である。
今日も目覚める様子はないが、焼け爛れた皮膚も切り落とした耳も尻尾も今では元通り、逃げ回り放浪した際に日に焼けたのであろう骨と皮だけだった褐色の肌も今ではちゃんと肉が付いていて健康的な見た目にはなっている。
切った後を隠すためにぼさぼさにしていた銀色の髪も今では輝くまでになっている。
ただ手入れをする時に見た限りでは全身万遍なく日焼けをしていた…服を一切纏わず逃げていた時期もあるのだろう、履く物も無かったらしく石とも取れるような硬さになっていた足の裏も今となってはぷにぷにになっているが。
狐さんと一緒に体を拭き、治った耳と尻尾を手入れし、服を着せ寝かせる。
寝かせた後はまた点滴、目が覚めるまではこれで栄養補給、世話を終えた後はユースティア達を連れて調べ物。
子狐の事を狐さんに任せて部屋を出ていった。
「城にある文献を調べても銀狐人族が国内に住んでいたという記録はやはりありません。
そもそも実家である国と温泉街を有する国のある大陸は奴隷を廃止しています。
おそらくは海を隔てた大陸から逃げてきたものかと思われます」
「んー、私の国が有った大陸は金狼くらいだねぇ…ユースティアちゃんところもフローレンスとテレサちゃんが銀狼って言う記録しかないでしょ?
まあテレサちゃんは銀狼かつアルビノって言うかなり珍しい事になっちゃってるけど。
何でかは知らないけど金狼とか銀狼って同じ大陸には住んでないんだよね、金狼の住んでいる地域には絶対に銀狼は居ない、その逆も。
まあ今外に金狼も銀狼も一人もいないけどね、皆此処にいるし」
「金狼とか銀狼ってそこまで珍しい種族なんですか?」
「普通の人間なら戦争を起こしてでも手に入れようとするくらいには。
見た目はもちろん、戦力としても申し分ないからね、フローレンスとかテレサって言っちゃなんだけど、頭おかしい位に強いでしょ?
まあもっと頭のおかしいのがいるからんなに目立たないけど」
「確かにフローレンス様もテレサもお強いですが…」
「見た目も良い、強さも破格、側室としても護衛としても戦争の道具としても欲しがる人が後を絶たなかったね。
まあ知っている限り金狼とか銀狼が捕まったことはないけどねー」
「それは一体なぜ?」
「その気になれば一人で襲ってきた国を潰せるから、後そもそも争う事はそんなに好まない。
襲ってきた時点でピューって逃げちゃう。
私はご主人様に拾われた後も狙われたりしてめんどいから国一つ潰して建国して早々手が出せないようにしたけど」
「そこまでですか…」
「銀狐も同じかはわからないけどね、私達の大陸に居なかったという事は似たようなものでしょう。
金狐は…居るかどうかも分かんないや、狐は金色ではあるんだけどねぇ…
でもあの狐の年を考えると違う気もする…」
「年齢の話はやめましょう、メイド長がすっ飛んで着ても庇いたくありませんので。
それより今は何所から来たかです、交流のない大陸に絞るのが早いかと思いますが」
「そうだねー、交流が無いのは北と南、そのうち人族至上主義が南、北は平和主義だからここ数百年争いらしい争いは無いね」
「では南でしょうか?」
「だね、南から調べていってみようか」
うーん、アリシアとユースティアの二人だけでほぼ調べものが終わってしまった、出番ないな!
「南の大陸ですか?ええ、シュリエルと今でも行っていますよ?」
「あそこ人族至上主義が極まりすぎて余り依頼受けたくないんだよね…」
世界中渡り歩いていると言えばベリスとシュリエル、何だかんだでこの2人全世界の国の王と面識あるからなぁ…
「そこまで酷い?」
「人族以外なら今すぐ南の大陸から離れて北に逃げろと言うくらいには」
「昔取引に来た船に猫人族が乗っていたというだけで猫人族を拘束、その場で奴隷落ちですからね。
他国であろうがお構いなしです、人族以外はただで使える労働力、好きに扱っていい家畜、実験動物」
「大陸の周辺を常に船が哨戒していますが、領海の外であろうと人族以外が乗っているのを見つけると襲い掛かって奴隷にしようとするくらいには危険です。
というか蛮族ですね、拘りがあるのか人族だけは解放されますけど」
「大陸消し飛ばした方が早くない?」
「極まっては居ますが何とか人族以外も暮らせるように頑張っている国もありますので…」
「依頼を受けても裏で根回しして誤魔化していますが今の所はばれていませんね」
「依頼ってどんなのがあるの?」
「見た目のいい亜人は奴隷に、悪い物はその場で処刑し見た目のいい亜人だけを連れて帰るようにとかですかね」
「城の兵士たちじゃ捕まえられないからって勇者とか魔王に頼む仕事じゃないよね、だからいつも里を探し出して逃げるように伝えて逃げた後の里を焼いて、その辺に居る野盗の首飛ばして幻影魔法かけてだましてる」
「後は幻影を被せた首をお届けして報酬を貰って終りですね、貰い次第首を消滅させるので証拠も残りません、また見破れる人がまずいません。
貰った報酬は里に居た者達に渡せば大体完了ですね」
「大陸外に逃がすことはできないのか?」
「何か大切な物を守っているようで、大陸を離れるわけにはいかないようです。
とても大切な物らしく誰にも知られてはいけないとかで教えてもらえませんでしたが」
「ふーんむ、まあ今は子狐がどこから来たかだな、調査をお願いできる?」
「かしこまりました」
「依頼を全てキャンセルしてでも調べてまいります」
「さすがに全部は不味くない?」
「大丈夫です、討伐などの依頼は無いのでお祭りが予定日より何日か遅れるだけです」
「うん、それはその国の人達が楽しみにしてるからちゃんと伝えておこうね?」
調査を頼んでから暫くたつがまだ進展は無し、まあ気長に行こう。
調査人数を増やしても良いが…人族至上主義だと流石にメイド達を派遣できないしなぁ…
皆手入れされた耳や尻尾に自信を持ち隠す気はさらさらないので争いの種にしかならないだろう。
まあそれは置いておいて、今日も子狐のお世話。
長く伸びすぎた髪を切り、肩くらいで切りそろえる。
目が覚めた後に長い方がいいかどうかを聞けばいいや、狐さんに頼めばすぐ伸びる。
切った髪は狐さんに渡す、何かに使うらしい。
髪を切りそろえた後は髪を洗い、付着している切った髪を流し、服を着せベッドに寝かせる。
後はいつも通り点滴、狐さんに任せまた調べ物。
メイド達もそろそろ何かあるかと何かと準備中。
南の大陸だろうと辺りは付けているが念のため他の所も調べる。
保護されたときに着ていたぼろ切れ以外は所持品が無く身元は分からない。
大陸外から来たとして船に乗っていたはずなので何所の港から入ってきたのか。
密航で無ければ手引きが有ったはずだが、密航は無理だろう、となれば何処かの港同士で連絡を取り合っていたはず。
なのでベリスとシュリエル以外に動けるメイド達は現在は各港で調査をして貰っている。
その他にも保護される前にどの経路を辿ってきたのかも調査中、どこか一つでも当たれば其処から遡っていくだけである。
「ご主人様、お待たせしました。
保護した子狐の出身地が分かりました」
出身地が割れたらしい。
「南の大陸で間違いないようです」
「それと各国が懸賞金をかけています、捕まえた者に白金貨1万出すと」
「匿っていた情報が洩れ、各国ほぼ全ての国民が森や山を切り開き、時には火を放ち里を探していたそうです」
「現在は獣人族達と共存している国に対し各国が包囲、銀色の狐を差し出せと迫っています。
包囲している国を滅ぼした後、もしいなかったときの為か外の大陸に打って出る準備もしているようですね。
軍艦には足枷や首輪などが大量に積みこまれていましたので、他の大陸の獣人族や森人族なども奴隷にするつもりかと」
うーん、野蛮人…
「何所から情報が漏れたかはわかった?」
「どうにも要領を得ないのですが、何やら神から神託を受けたと。
銀色の狐を手に入れた者は世界の支配者になれるとか、神になれるなどと言っていたそうです。」
狐さんとルシフの案件な感じだなぁ…
「神託の方はルシフに聞いておくか…」
「これからは如何致しましょうか?」
「ルシフの調査待ちかなぁ…包囲されてる国が危なそうだったら脱出の手引き位はしてあげて?」
「わかりました、脱出の経路を塞いでる群や船を蹴散らしておきます」
ベリスとシュリエルに任せルシフと相談に。
「最近何処か神託とかとばした所ってある?」
「ないけどどしたの?」
「いやー、子狐の出身だった南の大陸の王達が神託を受けて銀狐の存在をしって手に入れたら神になれるーとか言い出したらしい」
「んー…?大分前に潰した所の奴が出してたのかなぁ?
ちょっと調べてくるよ」
「時間はかかってもいいけど出来るだけ早くお願い」
「ははは、大丈夫大丈夫、10分もかからないから」
10分もかからないと言うのでお茶を飲んで待つ。
「んー、確かに飛ばしてるねぇ、やったのは…空き巣に入った男だね、多分ご主人様を模倣しようとしたんじゃないかな?もしくは自分が生まれ変わりだと勘違いしたか。
各大陸にいる銀狐を探して、南の大陸に居たからだしたっぽい。
それでも正確な場所は特定できず、探してる間に私が潰した感じだね。
神託は途絶えても銀狐を捧げれば神になれると聞かされてるからもう止まらないだろうねー」
「ふむふむ、つまりルシフが潰した時に調べていればこうはなっていなかったと」
「そうだね、ははは。
まあいいじゃん、狐の元に銀狐が来たんだから」
結果オーライと言っておられる、反省の色はない模様。
「それにご主人様、後は金狐保護すればコンプリートじゃん、やったね!」
「コレクターじゃないしコンプリートする気ないんだけど…」
「ここまで来たら金狐も保護しようよー、狐も多分喜ぶよ」
確かに喜ぶだろうけど、狐さんが探してない時点で探し出してまで保護する意味はない…
「まあ…狐さんが探していない時点で無理に保護してきてもね…」
「それもそうか、三姉妹は兎も角として他は探すでもなく向こうからやってきたしね、アリシアは隔離されてだけど、ははは」
「金狐は探さない方向で、何かあったら狐さんが保護してくるだろうし」
「はいはいー、じゃあ私はテレサたちの授業風景でも見てくるかな、三姉妹も混ざってるだろうし」
ルシフは部屋を出ていったので茶器などを片付け退室した。
「と言うわけで裏付けが取れました、情報の出所は神託で確定です」
「なるほど、道理で人との接触がないにもかかわらず存在が発覚したわけですね
「ルシフが言うにはもう止まらないらしいから、保護してる子狐か別の銀狐を見つけるまでは争い続けるだろうねー」
「他の銀狐の居場所は?」
「んー?居ないよー、銀狐はあの子狐一人だけ」
「これから生まれる可能性は?」
「今後永遠にない、だから世界中の狐人族を狩りつくしても銀狐は出てこないね」
「はぁ…居ない者を探して大陸外に打って出るとか面倒この上ないですね…全て消してしまいましょうか…」
「まあそこは暫く待ってね、まだどうやって渡ってきたか分かってないから」
「わかりました」
ベリスとシュリエルに待ったをかけて置いて、どうやって渡ってきたかの調査結果を待った。
「各大陸の港で聞き込みを行ったところ、何やら大きな船から樽が海に投げ込まれたそうです。
数日後その投げ込まれたと思わしき樽が浜辺に流れ着いていたようですが中身は空だったそうです。
ただ、樽の中には何かの毛と空き缶が数個残っていたようです」
ふむふむ。
「樽が流れ着いた浜辺の近辺での聞き込みでは、ぼろ切れを纏った者が森の中を歩いて山の方へ向かって行ったとの事です。
その後、足取りを辿り向かった山近辺を調べましたところ、保護された王都までの地図が書かれた紙と所々に空き缶が落ちていました。
後、残念ながら樽を海に投げ込んだ者と船は特定できませんでした、夜だったらしく大きな船と樽という事しかわからなかったとの事です」
「よく調べてくれたね、ありがとう」
「お褒めに預かり光栄です」
調べてきてくれたエリス達の頭を撫でる。
船と誰かは特定できずかー…ちょっと無茶な方法で特定できるけど狐さんの許可がいるなぁ…
「ちょっと無茶をするから許可ですか…ルシフがついて行くのであれば構いませんよ」
あっさり許可が下りた。
「じゃあ子狐の目が覚める前に終わらせて来るかな」
「はい、行ってらっしゃいませ」
寝ている子狐に変装し、メイド達に招集をかけ準備を開始した。
「エリスとルシフはこっちに、他はまだ待機で」
「わかりました、お供させていただきます」
「ははは、護衛ならばっちり任せなさい」
まずは包囲されている国を訪問、顔色をうかがう、エリスにも見てもらうがハズレ、手引きしたのは此処ではない。
包囲している軍に見えるよう堂々と歩く、全てがやっと出てきたかという表情、ここでもない。
港に軍船を多数配置している軍の前に行く、ここも全て同じようにやっと出てきたかという表情。
ルシフに抱きかかえて貰い軍船まで強行突破、いくつかの軍船が逃がすまいと砲を向けるために船を動かす、一隻だけ動かない、乗員達全員がなぜ戻ってきたという顔をしていた。
「エリス、あの船確保」
「わかりました」
エリスに動かなかった船を確保してもらい離脱、安全圏で話を聞くことに。
聞く所によるとこの船の乗組員は以前から演習と見せかけて大陸外への脱出を手助けしていたとの事。
何所に落とせばどこに流れ着くとかも調べてあるらしい。
子狐を保護したのは偶然、頭部に何か違和感があり調べてみると切り落とした後を見つけ、髪の色から件の狐と気づく。
南の大陸では奴隷には首輪さえついていればどう扱おうが自由、ぼろを被せ首輪をつけ、髪に泥を被せ銀色とわからない様に、その後雑用として船に乗せ、演習に行く振りをし首輪を外し、食料と共に樽に入れて流す。
後は何日か後に港に帰ってきた時に首輪を見せ奴隷は死んだから海に捨てたと証言すれば誰も気づかない。
今回は銀狼のいる国ならば何とかしてくれるかもしれないと地図を渡したらしい。
その後はメイド達の調査通り、浜辺に流れ着き樽に入れられた食料を持ち地図の示す場所へ向かい、目論見通りに保護された。
問題があるとすれば…
「私が堂々とこの船に乗り込んで船が逃げたように見えたからもう今まで通りにはいかないね…」
船を追いかけて軍艦が次々とやってくる、まだ距離は通りのでよく聞こえないが何かを叫んでいるようだった。
このままだと沈められてしまうのでルシフに待機していたメイド達を呼んでもらう。
「ご主人様、お呼びでしょうか」
「この船以外は全部沈めて良し」
「わかりました、では行ってまいります」
数人のメイド達が船から消え、追ってきていた船は全て沈んだ、別に言葉通りに全部沈めなくても消してもいいのに…
海に浮いている者もいるがそのまま放っておいて港へ帰る、今までの行いが良ければ生きて帰れるんじゃないかな?
港には軍艦を保有していた国の軍が集まっていたので、軍艦を沈めた所に捨ててきてもらった。
後はベリスとシュリエルを呼び、包囲されていた国の人達の脱出を開始。
最後の一席になった軍艦に乗れるだけのり、港に停泊してある船にも乗り込み、食料も積み込めるだけ詰み込む、後は追手が来ないうちに港を焼き、軍艦が先導し大陸を離れる。
何所に行くかは彼ら次第である、多分北を目指すであろう、彼らならきっと大丈夫。
「残っている人族至上主義たちは如何致しましょうか?」
「放っておけばいいんじゃない?」
「ははは、じゃあ屋敷に帰ろうか」
屋敷に帰って子狐さんのお世話をしないといけないので放っておいて帰る。
「まあこの大陸が死ぬのも時間の問題だねー」
大陸の9割以上が焦土と化し、今も燃えている森や山を見ながら屋敷へ帰っていった。
子狐の出身地割り出しと神託?の後始末の様なものを終わらせ、子狐のお世話をするだけの日々が戻ってきた。
ベリスとシュリエルももう守る者が居なくなったので南の大陸にはいかなくなった。
依頼で北の大陸に行ったときに脱出に使われた船を見つけ、全員無事に辿り着いたという話も聞いた。
北は平和主義らしいので軍艦に積まれていた砲などは全て解体、調理器具に加工されて移民となった者達に渡されたらしい。
まあうまくやっていくだろう。
脱出した者達のその後を軽く聞いた後もお世話、髪もまた膝下に届こうかという頃、瞼が少し動く。
髪を櫛で梳いてやると少し震える。
耳をくすぐってやるとひゃんっと可愛い声を上げた。
子狐さんの目が覚めたらしい。
船に乗せられた所からは覚えていてそれ以前は全く覚えていない。
名前は忘れているわけでは元々ないらしい。
「名前つけないとねぇ」
「ご主人様が付けるので?」
「付けるだけであれば構いませんが…私やルシフの時みたいな無茶は駄目ですよ?」
「ははは、今はもう出来ないから大丈夫だって」
一人で考えるのもあれなので狐さんも交え考えることにした。
「今日から君の名前はカレン、でどうかな?」
狐さんと話し合った結果カレンになった、なお可憐のカレンではなくカレープラントでカレンである。
「わかりました、あなた様の事は何とお呼びすれば?」
「んー、皆はご主人様って呼んでるかな、後一部で父様とか父上とかパパとか…」
まあアリサ達の事だが…
「ではお父様と」
血の繋がってない娘が4人になった。
「それでは私の事もお母様とお呼びください、ご主人様の妻ですので」
「わかりました、お母様」
お母様と呼ばれた瞬間狐さんはカレンに抱き着き頭を撫でていた。
カレンは少し苦しそうだが嬉しそうに尻尾を振っていた。
「カレン、髪の長さはどうする?」
今のカレンの髪は膝下に届こうかというくらい長い、なので希望を聞いて切りそろえる。
「お母様と一緒位が良い」
狐さんと同じ位…腰より少し上だな…
椅子に座らせ、櫛で梳き、まっすぐになった所で切りそろえる。
前髪はあごラインで、癖もないストレートなので後ろは弄らなくていいだろう。
寝ている間も手入れをしていただけあって銀色の髪の毛や耳、尻尾が日を反射して輝いている。
手入れをしていると狐さんは何か勝ち誇ったような顔をしているが…何かあったんかな…
「アリシアに紹介しますね、私とご主人様の娘、カレンです」
「初めまして、お父様とお母様の娘のカレンです、これからよろしくお願いいたします」
狐さんはカレンを連れて授業中だったアリシア達の所に乗り込んで行った。
「名前は私とご主人様で考えました、わ・た・し・と、ご・主・人・様・で!考えました。
これはもう実の娘と言っても良いくらいですね」
アリシア達が少し悔しがっている、元々名前が同じで紛らわしいと無理やり改名したのはアリシア達だしなぁ…
当人であるアリサ達とカレンは特に反応せず何の話と言った様子。
狐さんが勝ち誇っているのはそういう事か…アリサ達の名づけには参加してないしなぁ…
「くっ…!だがまだその子は体が未熟ではないか?」
「いえ、見た目的には13.4歳程度ですが、肉体はすでに大人の物です」
「え?まじで?」
「まじですよ?」
「身長も140位なのに?」
「銀狐はこんなものです、私も本来は130位しかありません、弄って伸ばしてるだけです。
カレンももう少しすれば身長も体形も自分の好きなように変えれるようになります」
「まじかぁ…」
はい、狐さん今は160位あるけど元に戻ると130あるかないかです、娘と言ってるカレンよりもさらに低い。
「私に限らず大抵の年を得た狐人族は出来ますけどね」
「何か知りたくない事を知った気がする…
じゃあ屋敷に居る狐人族ってみんな弄ってるの?」
「いえ、あれは通常ですね、私が低いだけです」
屋敷に居る狐人族メイド平均155、カレン140、狐さん130、いかに小さいかがわかるだろう…元のサイズで並んでしまえば狼三姉妹にも負ける。
下には妖精族が居るのが救いか…
まあ小さいと威厳が無いという事で普段は弄って伸ばしている。
「なんだ、なら胸も弄って大きくしているだけか」
「いえ、胸は逆に小さくしています、大きすぎると邪魔なので」
アリシアが固まった、いろいろと確かめた感じアリシアはアリサとほぼタイ、今の狐さんよりわずかに劣る程度。
元に戻すとその僅かだった差を大きく引き離す。
「ほ…本当に小さくしてるの…?」
「元に戻してみせましょうか?背丈も縮みますけど」
「じゃ…じゃあ見せて貰おうかな!」
「ではそこに座ってみてて下さいね」
なぜか見る場所の指定をする狐さん。
狐さんの身体がうっすらと光り、ポンっと音がすると、何かがはじけ飛ぶ音と共にアリシアがのけぞっていた。
場所指定はそのためか…アリシアの額にボタンがくっついている。
体は縮んでメイド服は大きすぎる物になっているはずなのに胸部だけは窮屈、ボタンが弾け飛んでいる。
「何その兵器、後で触らせて」
「嫌です、これはご主人様の物です、見ただけで満足してください」
アリシア絶好調だなぁ、元々素質はあったが完全に目覚めている様子、まあ特に禁止してないしそうもなるか。
実際屋敷のメイド達も何人かはそうなっている、が、それはそれ、これはこれらしい、順番が来ればキッチリ部屋に来る。
狐さんが体形を戻した後カレンもアリサ達と挨拶を終えていたので戻る。
弾け飛んだ部分はそのままだった。
カレンの目が覚めてからと言う物、狐さんは幸せな時間を享受していた。
アリシア達と同じく授業参観に行き、一緒の布団でお昼寝したり夜も一緒に寝たり。
完全に母娘のようになっていた、しかし幸せな時間を享受しすぎて悲劇も発生した。
カレンが部屋の片隅に置いてあったものに興味を示しついつい手に取ってしまった。
それが悲劇の始まりだった…
手に取った物には穴が開いており、中を確かめることも無く指を入れ、中にある物に触れてしまった。
確かめるために指を抜こうとするが抜けない、しかし指に何かが触る感触がある。
どうにかこうにか蓋の様なものを開き中を見てしまった…
その後カレンは悲鳴を上げ倒れた、悲鳴を聞きつけた狐さんが直ちに駆けつけカレンの様子を確認。
手に何かを持っているをを見つけ確認し…狐さんも悲鳴を上げた…
その出来事により狐さんがパニック状態に陥る、ルシフが抑えようとしたが失敗、屋敷は崩壊した。
その後カレンの手に持っていた物を処分、気を取り戻した狐さんが殲滅戦を開始。
今回は屋敷内だけではなく領域内全域の殲滅戦、長い戦いが始まった。
メイド達全員を導入し屋敷外の森の中、山の中、土の中まで探し、子供一匹すら逃がさず殲滅だと、昼夜を問わず休憩なしで狩りつくされるまで殲滅戦は続いた。
カレンは指を突っ込んだ記憶は無く何をしているのか不思議そうに見ていた、狐さんが陣頭指揮を執っているので、一人は寂しいというカレンと毎晩一緒に寝た。
2ヵ月と言う長丁場の戦いを終え、領内から黒いやつは卵すら残さず全て殲滅された。
しかし奴らはまた何時か戻ってくるだろう、そこが温暖で過ごしやすく餌も豊富な限り奴らは不滅だから。
なお狐さんが農場などを除く領域内全域を極寒の地に変えてしまったので奴らが蔓延る事は無くなった。
ついでに癒しの釣りスポットであった川も滝もで完全に凍結し魚も全滅した。




